発売から84年!静岡市民ならご存じ「ウス茶糖」
元祖が語るずっと変わらないおいしさの秘密
こんにちは。コーヒー・紅茶には、砂糖ふたつと大量のミルクを入れて口の中をべたべたにするほう、川名です。
甘党静岡人の私が大好きな飲み物は、「ウス茶糖」。静岡市にお住いの方ならご存じのはず、これが甘くて口当たりはさわやかで、とってもおいしいんです。
ウス茶糖のパッケージ。
静岡ではスーパーでも購入できるほど一般的な飲み物ですが、県外ではほぼ見かけません。
静岡を離れていた大学時代、ウス茶糖恋しさにグリーンティーを購入したことがありますが、ちょっと予想と違う味がしました。私の知っている「ウス茶糖」とはいったい……?
というわけで、積年の疑問を晴らすため、静岡市葵区呉服町にあるウス茶糖の元祖・竹茗堂(ちくめいどう)さんにお話を伺ってきました!
竹茗堂は創業1781年という超老舗のお茶屋さん。お話をしてくださったのは、本店の店長をされている大友さんです。
発売以来84年!元祖「ウス茶糖」
竹茗堂本店 店長 大友さん
川名 |
本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、あらためて「ウス茶糖」とはなにか教えていただけますか? |
大友 |
ウス茶糖は、お抹茶と砂糖を混ぜて作ったグリーンティーの一種です。お抹茶には濃茶(こいちゃ)※1と薄茶(うすちゃ)※2っていう種類があるんですけど、その薄茶と砂糖を混ぜて作るから「ウス茶糖」。
当時は濃茶を使っていたから「濃茶糖」にしようかって話も出たらしいんだけど、「ウス茶糖」のほうが語呂がいいもんで、こちらに決まったそうですよ。 |
※1濃茶:ドロドロした濃いお抹茶。お茶会の席ではひとつの椀に練って、回し飲みをします。
※2薄茶:一般的に「抹茶」といえばこちらの薄茶を指します。ひとりにひとつの椀で点てていただくタイプ。
竹茗堂さんで取り扱っている「御濃茶」と「薄茶」。
川名 |
ということは、「ウス茶糖」というのはお茶の種類ではなく、竹茗堂さんの商品の名前ということでしょうか。 |
大友 |
ウス茶糖は、1933年に竹茗堂の七代目がはじめて作ったんですが、商標登録はしていないので、ほかの業者さんからもいくつか出てます。でも、味はやっぱり全然違いますよ。 |
大友 |
ちなみに、ほかの業者さんは「うす茶糖」ってひらがなで書くところばかりですが、うちの商品は「ウス茶糖」ってカタカナを使っています。「ウス」ってカタカナにすると、涼し気で夏っぽい感じがするでしょう。逆に、ホットで飲む「うす茶あられ」は全部ひらがななんですよ。 |
川名 |
たしかに! 名前も味も、厳密な意味での「ウス茶糖」は、竹茗堂さんの商品を指しているんですね。 |
ロングセラー商品「ウス茶糖」ができるまで
川名 |
先ほど「ウス茶糖は1933年発売」と伺いましたが、とても歴史の長い商品ですよね。当時のエピソードがあれば聞かせてください。 |
大友 |
生産が軌道に乗るまでは大変だったようです。売り出したばかりは、7代目の奥さんと女中さんが真っ白になりながらコーヒーのミルでザラメを粉にして、それにお抹茶を混ぜて作っていたんです。 |
川名 |
コーヒーミルで!? 大変……。 |
大友 |
夜の11時くらいまでかけて砂糖を挽いてたんですけど、お客さんの数に間に合わなくなっちゃって。能率を上げるためにワサビ屋さんのワサビ粉末機械を使ったとか、最終的には日出町の製粉会社のそば製粉機で砂糖を挽いたみたいですよ。 |
川名 |
ほ~……。発売当初から大変な人気だったんですね。 |
大友 |
ですが、当時はお茶屋さんとかお菓子屋さんからけっこう非難を浴びたみたいです。 |
川名 |
えっ、それはどうして……。 |
大友 |
いまでこそ甘いお茶や、お茶のスイーツなんか珍しくないですけどね。当時は、お茶屋さんはお茶専門。砂糖はお菓子屋さんの専門だったんです。昭和の戦前ですからね。砂糖を使った甘い飲み物を、お茶屋が作ったっていうのは衝撃だったみたいです。 |
川名 |
それでもおいしかったから、お客さんからは喜ばれて人気が出たってことなんですね。 |
大友 |
そうなんですよ。 |
鮮やかな緑色が特徴のウス茶糖。
大友 |
おかげさまで静岡中部では、けっこう小さいころから飲んでいたって人も多いです。それこそ親やおじいさんおばあさんの世代とか。 |
川名 |
たしかに私の親も祖父母も飲んでいますね。 |
大友 |
それだけロングセラーになっている商品なんです。発売から84年だから、もう四世代にわたって飲んでいる人も少なくないかもしれませんね。 |
竹茗堂唯一の味を守るために
川名 |
ちなみにレシピは当時から同じものを使われているんでしょうか? |
大友 |
いまもずっと変わりません。ウス茶糖っていうのは、ただ砂糖と抹茶を混ぜればいいわけじゃなくて、それぞれの品質や分量が大切ですから。どのくらいで混ぜたらいいのかとか、水の溶けやすさとか、抹茶の味とか、いろいろ研究した結果、現在の味に至っています。
たとえば、うちは粉末のウス茶糖を出してますけど、顆粒タイプを作っているところも多いんですよ。うちみたいな粉末は、機械を使ってもすごいロスが出ちゃうから。 |
川名 |
ついちゃったりとか、舞い上がったりとかですか。 |
大友 |
そうそう。あと顆粒にすれば詰めるのがうんと楽になるんですが、粉を固めるための成分を入れないとなりません。そうすると、うちのウス茶糖ではなくなっちゃうので。 |
川名 |
味が変わってしまうということでしょうか? |
大友 |
飲んだときに全然違いますよ。甘さとか、風味とか、別物です。 |
川名 |
発売当初の、一番おいしいレシピを守り続けているんですね……。 |
川名 |
ほかにこだわりなどはありますか? |
大友 |
お砂糖ですね。原材料名には単純に「砂糖」って書いてますけど、使っているのは「白ザラ」っていって、普通のより大きくて、品質もいい砂糖を粉末にして使っているんです。ウス茶糖は、飲んだあとさっぱりしてるでしょう。 |
川名 |
はい。口に残らない感じというか。飲みやすいです。 |
大友 |
品質のよくない砂糖を使うと、口に残っちゃうんですよ。もちろん安い砂糖を使えば儲かるかもしれないけれど、やはりよい砂糖を使って、口当たりがさっぱりした品質のものを作りたいので。 |
ウス茶糖のおいしい飲み方は?
川名 |
最後に、ウス茶糖のおいしい飲み方があれば教えてください! |
大友 |
そうですね……。13g(スティック1本分)で140ccがひとつの目安ですけど、基本的にはお好みです。甘いのが好きな方は100ccくらいでお飲みになるとか。 |
川名 |
濃いウス茶糖大好きです。 |
大友 |
そうしたら、水を少なくして氷をいっぱい入れるといいですよ。 |
川名 |
なるほど、ありがとうございます! 水で溶く以外の飲み方もあると聞きましたが、おすすめはありますか? |
大友 |
いろんな方がいますよ。ほかの使い方っていうと、ウス茶糖を濃いめに溶いて、かき氷にかけるとか。ウス茶糖は抹茶とお砂糖でできていますから、これだけで抹茶シロップの代わりになります。 |
川名 |
お、おいしそう。 |
大友 |
あとは、製氷機でウス茶糖を溶かした水を凍らせて、シャーベットみたいにしたり、お酒で割る方もいたり……。ホットミルクで溶いてもおいしいですよ。 |
川名 |
ホットミルク! 絶対おいしい。帰ったらぜひ試します。 |
竹茗堂さんがこだわりぬいて作っているウス茶糖。おいしさの秘密をたっぷり聞かせていただきました。さっそく我慢できずに買ってきたので、まずは水と氷でいただきます。
昔と同じ飲み方ですが、いまの私には社会人の経済力があるので粉入れ放題・濃くし放題。手始めにティースプーンに山盛り3杯入れてみました。
濃い緑が美しいです。
お、おいしい。
水は少量でしたが、よく溶けるので粉っぽくなく、べたついたり、こずんだり※する感じは一切ありません。甘味が強いのに、上品でさわやかな口当たり。昔、夏休みに友達の家で出してもらった、よそゆきのウス茶糖の味がしました。
ちょっと濃いめのぜいたくなウス茶糖は、お客さまが来たときもよさそうです。
※こずんだり:静岡の方言で沈殿していること。
お次は、これからの肌寒い季節にぴったりなホットミルクで。
牛乳で割ったのは初めてでしたが、これはおいしい……! 立派な抹茶ラテですが苦みもなく、とってもまろやか。
おかわりしようと思いましたが、レンジでホットミルクを作る時間が惜しくて冷たい牛乳で飲みました。そちらもおいしかったです。
ほかにも「水割りに溶かす」「ヨーグルトに入れる」「クッキーに混ぜる」などもできるらしいので、いろいろ試してみたいと思っています。
80年以上、変わらず静岡市民の生活に寄り添ってきたウス茶糖。昔からずっと変わらない味ではありますが、飽きのこないおいしさであるのと同時に、自分なりのアレンジが楽しめるのも人気の秘密かもしれません。
ウス茶糖は、竹茗堂さんの店舗または売店、市内のスーパーなどで購入できます。県外の方も、送料はかかってしまいますが通販で購入が可能です。好きで毎年飲んでいるという方はもちろん、「最近飲んでないな~」という方もぜひどうぞ!