春の1枚からベストセラーまで
月刊ソネレコ【#1】
静岡県に生きる「音楽が友達」という人にきっかけを。新連載「月刊ソネレコ」です!
浜松市の中心街でひっそりと佇む、いまや絶滅危惧種のリアルレコードショップ「sone records(ソーンレコーズ)」。
sone records(通称:ソネレコ)
静岡県浜松市の田町で営業するリアルレコ屋。国内外のインディー全般を中心に取り扱う。Twitterに「まだ爆発中」と書いてあるけど・・・なんだろう。
Twitter:@sone_records
店主のクワケンさんに音楽を愛する吉松が月ごとのテーマを提示し、そのテーマに沿って数枚ピックアップしてもらうこの連載。
音楽のまちとして知られる浜松から、国内外のインディーをメインに毎月発信していきます!
初回なのでソネレコについて少しだけ
sone record(通称:ソネレコ)は、静岡県浜松市の田町で営業しているリアルレコ屋。
取り扱いジャンルはとにかく幅広く、インディーロック、シューゲイザー、ギターポップ、ニューウェイブ、ドローン、エレクトロニカなどなど。平たくいえば、冒頭の通りに国内外のインディーが中心です。
じつは昨年、mitecoライターの森谷楽がクワケンさんにソネレコの想いを聞いているので、メンタリティみたいなところは以下からどうぞ!
「月刊ソネレコ」3月のテーマ発表
ソネレコの店主クワケンさん。顔出しOKになりました。
吉松 |
はじまりました。月刊ソネレコ、よろしくお願いします。 |
クワケン |
どうもどうも。こちらこそよろしく。 |
吉松 |
今月のテーマは「春に聴きたい」「新入荷」「ベストセラー」の3つでいこうと思いますが、いかがでしょうか? |
クワケン |
3つかあ。うん。わかりました。 |
- 春に聴きたい(1枚)
- 新入荷(2枚)
- ベストセラー(1枚)
少し相談した結果、それぞれの枚数はこのように。ガンガンいきまっせ!
春に聴きたい「Luby Sparks / Hatehul Summer」
吉松 |
さっそくですけども、春ということで1枚を。 |
クワケン |
春ねえ。爽やかなノイジーポップみたいのにしときますかね。 |
吉松 |
お、ジャンルとしてすごい好きなところです。 |
クワケン |
でもこれ、タイトルが「ヘイトフルサマー」になってるな・・・(笑) |
吉松 |
(笑)いいですよ。 |
クワケン |
じゃあ、春はこの1枚で(曲を流しながら)。 |
「Luby Sparks / Hatehul Summer(税込1,944円)」。東京発5人組の男女ツインボーカル「Luby Sparks」による7インチシングルです。ノイジーなギターに浮遊感のあるメロディが乗っかった爽やかインディーポップ。
ライブの定番曲という『Hatehul Summer』をSIDE-Aに、グラスゴーのインディーポップバンド「Camera Obscura」の『Lunar Sea』をカバーした1曲をSIDE-Bに収録しています。
♪Luby Sparks – Hatehul Summer
吉松 |
めっちゃ爽やかですね。春っぽい。 |
クワケン |
だよね。爽やかな疾走感というか。まだ若い子たちなんだけど、そのフレッシュな感じがね。まあ、ジャケットもね。春っぽいよね。 |
吉松 |
桜色ですね。 |
クワケン |
そうだね(笑) |
吉松 |
ジャケットに「Mixied:Max Bloom(YUCK※)」ってありますけど、これはあのヤックですか? |
クワケン |
そうそう。ヤックのマックスがエンジニアをしていて。音も本当にヤックみたいな感じなんだよ。 |
吉松 |
たしかにめっちゃヤックっぽい。 |
クワケン |
ライブもよくてね。つい最近、ここ浜松でルビースパークスがライブしてたんだけど、すごいかっこよかった。たぶん人気出ると思うし、出てほしいんだけどねえ。 |
※Yuck(ヤック):ロンドン発4人組のインディーロックバンド。紅一点のベーシスト、マリコ・ドイは日本人。
新入荷「UV-TV /Glass」
吉松 |
新入荷は月にどれくらい仕入れているんですか? |
クワケン |
決まってないんだけど、月というよりかは毎週数タイトル入荷してるかな。 |
吉松 |
毎週でしたか。いつきてもフレッシュな新入荷がある! というわけで、1枚目をお願いします。 |
クワケン |
(笑)1枚目の新入荷はこれかな。 |
「UV-TV / Glass(税込3,089円)」。フロリダ州ゲインズヴィルの男女3ピースバンド「UV-TV」によるデビューアルバムです。ガールボーカルに爽やかでノイジーなギターが映えるガレージパンクポップ。2017年3月10日リリース、全11曲入りLP+DLコード付き。
♪UV-TV – TV ONLY MATTERS WHEN
吉松 |
UV-TV。知らないですね。 |
クワケン |
アメリカのパンキッシュなバンドだね。レーベルもディランジドっていうパンクレーベル。これも疾走感がすごい。 |
吉松 |
そうですね。バーッと走り出したくなる疾走感。快晴の日に聴きたい。 |
クワケン |
80年代のインディーポップというか、C-86系※って言われているのがあるんだけど。そのころのショップアシスタンツっぽいかも。 |
吉松 |
そのあたり守備範囲外ですね・・・。あとで聴いてみます(聴いたところたしかに似てました)。 |
※C-86系:英国の音楽誌「NME」が1986年、世に送り出した新人バンドのコンピレーションカセット「C-86」に由来する。収録バンドはSHOP ASSISTANTSをはじめ、PRIMAL SCREAMやPASTELSなどが知られている。
新入荷「The Courtneys / Ⅱ」
吉松 |
それでは2枚目を。 |
クワケン |
これはね、すでにLPは売り切れちゃってるんだけど、もうじきCDが入荷するもんで※。 |
吉松 |
すでに売り切れ? そんなに人気なんですか。 |
クワケン |
そうそう。コートニーズっていう。ジャケットの色がルビースパークスと被っちゃうんだけど(笑) |
「The Courtneys / Ⅱ(税込2,981円)」。カナダはバンクーバー発、ガールズ3ピースバンド「The Courtneys」の2ndアルバムです。思わず身体が揺れるキャッチーでキュートなガレージポップ。2017年2月17日リリース、全10曲入りLP+DLコード付き。
♪The Courtneys – Minnesota
クワケン |
これはもう素晴らしい。爽やかなギターのバンドばっかりになっちゃうんだけど、軽快なガレージポップというか。 |
吉松 |
いや、めちゃくちゃいいですね。 |
クワケン |
このバンドは3年ぐらい前に1stアルバムが出てて、それもすごい人気があった。誰でもすんなり聴けるのがいいね。イヤじゃない感じ。 |
吉松 |
そうですね。ポップで爽やか。耳に馴染みやすい。 |
クワケン |
全曲こんな感じだもんでね。音楽に詳しい必要が一切ないから、とっかかりの1枚にもなるかなと。 |
吉松 |
はーなるほど。これだけ聴きやすかったら、とっかかりになりそうですよ。 |
クワケン |
うん。あとうちのお客さん、うちに置いてあるようなインディーバンドが好きなら間違いない。ビジュアルの突き抜けた感じもいいね。 |
吉松 |
クワケンさん、コートニーズめっちゃ好きですね。 |
※3月26日(日)に国内版CDが入荷したそうです! こちらも早々に売り切れる可能性ありなので要チェック。
ベストセラー「ryohadano / me me me」
吉松 |
最後にベストセラーを1枚、よろしくお願いします。 |
クワケン |
そうだねえ。本当に純粋に売れた数のベストセラーでいえば、ハダノくんだね。 |
吉松 |
ハダノ!? ハダノリョウさんですか。 |
クワケン |
そう。レコードだったらウェストカストの最初の12インチになるんだけど、在庫がないもんで。ハダノくんにしとくかね。せっかくなんで。 |
吉松 |
あ、これ持ってますよ。大好きな一枚です。名盤ですね。 |
クワケン |
これは名盤だね。でもノイジーなギターが続いたこの流れで、突然ハダノくんなんて(笑) |
「ryohadano / me me me(税込1,296円)」。浜松市のシンガーソングライター、ryohadanoの3rdアルバムです。包まれるような暖かいギターとヴォーカルを中心に、ドリーミーなサウンドが広がるフォークトロニカ。全7曲入りCD、クラフト紙ジャケット仕様。
♪ryohadano – me me me Trailer
クワケン |
いやね、もう何回入荷しているんだろうっていうくらい。 |
吉松 |
どこから買っていく人が多いんですか? |
クワケン |
もうわかんないね。僕の顔見知りで、CDを買ってくれている人はみんな持ってるかな。あとは若い大学生が「ハダノさんありませんか?」とか、はじめてきた人に「地元の人の作品だからおすすめだよ」って聴かせるとほとんど1発で「めちゃくちゃいい!」と言って買ったり。 |
吉松 |
はーすごい。それだけ引き寄せちゃうパワーがあるんですかね。 |
クワケン |
かなあ。何枚売れたか俺も覚えてない。 |
吉松 |
このアルバムはどこがいいんでしょうか? |
クワケン |
また難しいこと聞くね(笑) |
吉松 |
すみません(笑) |
クワケン |
どこだろうねえ。エレクトロニカ半分、フォーク半分みたいな音作りもすごくいいなと思う。だけどこのアルバムはもちろん、全体的にハダノくんは歌詞がすごくいいなと思っていて。 |
吉松 |
歌詞ですか。 |
クワケン |
うん。やっぱりこう絶対に誰にも書けない歌詞じゃない。たとえば、知り合いとかで真面目な歌詞を歌われると気恥ずかしくなるときあるじゃん。 |
吉松 |
たまにありますね。 |
クワケン |
そういうのをまったく感じないから。本当になんで浜松で会社員やってるんだろうっていう(笑) |
吉松 |
はっはっは(笑)でもクオリティとして凄まじいものがありますよね。いわゆるフォークトロニカだと思うんですけど。 |
クワケン |
言ってみればそうだね。 |
吉松 |
世に出ているそれらと比べてもまったく遜色ないというか。むしろハダノさんのほうが・・・って思うこともあります。いちリスナーとして。 |
クワケン |
僕もそう思うよ。知り合いだとかいう色眼鏡はなしにね。なにかがどうにかなればブレイクするようなクオリティがあると思うんだけど。 |
県内外の国内アーティストをメインに置いている棚。
クワケン |
まあ、あんまりハダノくんのことばっかりは言えないんだけどね。 |
吉松 |
立場としてそうですよね(笑) |
クワケン |
でもやっぱり、うちのベストセラーっていえばこれかなと。これだけ海外のインディーばっか並べといてなに言ってんだって話になるけど(笑) |
吉松 |
そのなかでここ浜松のアーティストがベストセラー、っていうのはすごくいいですね。 |
クワケン |
そうだね。うちっぽいかな。それではこの4枚で。 |
はい。こんな感じで進めていきます。月刊ソネレコ【#1】でした!
ちなみに今回紹介した4枚のうち3枚はレコードですが、どれもDLコードといって音源をインターネット上でダウンロードできるシリアルコードが付いています。
クワケンさんによるとDLコードは、2000年代後半から海外のレコードを中心に採用されるようになってきて、いまでは海外の8割~9割くらいのアナログに入っているそう。
「レコードで買っちゃうとデータにできない」というのがアナログのネックでしたが、いまではそんな心配はほとんど必要ありません。家ではレコードとしてインテリアとして楽しんで、あとは持ち出せばいいわけです。
音楽が友達の人なら絶対に知っておくべきなのに、わりと知られていない情報なので補足でした(僕はクワケンさんに聞くまで知らなかったです)。それではまた来月!