静岡ユースカルチャーの入口「HEIGHTS」
古着から底上げする街のファッション
みなさん、「古着」着てますか?
こんにちは、ライターの岩本です。私は高校生のときからいまでも、ずっと古着が大好きでよく着ています。ただ、なかには
「古着って誰かが着てた古い服でしょ?」
「古着屋さんってちょっと入りづらい・・・」
そんな風に思っている方もいますよね。わかります。私も最初はそう思っていました。
そんな方にこそおすすめしたいのが、静岡市七間町の古着屋「HEIGHTS(ハイツ)」です。
HEIGHTS店主 イッキさん
「俺らの世代は『古着死んでる世代』だった」と話す、店主のイッキさん。イッキさんが学生だった約10年前は、いまと比べて古着を着ている人は少なく、もっと存在自体アンダーグラウンドな時代でした。
「周りの人が着ていない」ところに魅了され、また当時バイト代をつぎ込んでいた古着屋さんで音楽などのカルチャーを教えてもらった経験から、イッキさんは高校生の時点で古着屋さんになることを決意したそう。
綺麗な古着が並べられているHEIGHTSには、「古着をより多くの人に楽しんでもらいたい」というイッキさんの想いとこだわりがつまっています。
「生粋のファッション狂」イッキさんの考える、古着の魅力
岩本 | 10代から古着がお好きだったとのことですが・・・。イッキさんの考える、古着の魅力をおうかがいしても良いでしょうか? |
イッキ | ほかの服より自由だと思う。2000年代初頭くらいからさ、それまでモードやストリートが作ってきたものはあっても、まったく新しいスタイリングとか着こなしとかファッションでって生まれなくなってるから。 |
岩本 | たしかに。2000年以降は流行りが過去のくり返しですよね。 |
イッキ | たとえば、 2000年代に入ってモードが衰退したのを救ったのはエディ・スリマン※のクリスチャン・ディオール※のショウだった。
で、そのコレクションたちは過去のスタイルだったロックやガレージ、グランジなんかを落とし込んだストリートカジュアルがミックスされたスタイルだったと思うんだよ。
そういう服にスキニーパンツの元祖に通じる超細いパンツを合わせるみたいな。 |
古着のほかに、イッキさんがセレクトした国内ブランドの新品お洋服の販売もしています。
岩本 | 勉強になるなぁ・・・。全部がリバイバルなんですね。 |
イッキ | そう、だから俺たちは「リバイバル世代」でもある。「古着死んでる世代」だったし「リバイバル世代」。物心ついたときから流行りもんは全部リバイバル。そんな感じでリバイバルしかないから、どの年代もチョイスできるんだよ。 |
岩本 | いまのファッションは2000年以前のリバイバルなので、2000年以前のお洋服である古着を現代でもファッションとして自由にチョイスして楽しむことができるんですね。 |
イッキ | そう。年代を超えたアイテムを合わせたり、それによって唯一無二っぽい格好を提案できたりする。だから、自由。
そういう意味で、かっこいい合わせ方とかに壁がないというか、決まりがない。そこが1番いい。
いまさ、めっちゃ安くある程度の格好できるじゃん。そんななかで、わざわざ古着屋に来てチョイスするってことはさ、それだけでしゃれてると思うよ。 |
岩本 | 安く手軽におしゃれできる時代にあえてこだわるというマインドがでしょうか? |
イッキ | そう、マインド! そこのよさもある。 |
※エディ・スリマン:「イヴ・サン=ローラン」「ディオール・オム」など数々の有名ブランドでクリエイティブディレクターを務めた経歴を持つ、フランス出身のファッションデザイナー。
※クリスチャン・ディオール:1946年、フランスで創業。ウェア・ジュエリー・コスメなど幅広く展開するラグジュアリーブランド。
「より多くの人に古着を楽しんで欲しい!」
岩本 | HEIGHTSの古着って本当に状態がいいですよね。イッキさんが古着を大切にしているのが伝わってきます。 |
イッキ | 古着屋は、わざわざ古着に着目してそのよさを提案しようとしている人たちの集団。そのなかでも俺はより多くの人に伝えようとしている側で、「わかる人だけわかってくれればいいタイプ」じゃない。
そのためにどうしたらいいのか、一応気を使って仕入れているっていうのもあるんだけどたぶん、俺が独立した時点でラックに服を詰め込まずに高いハンガーにかけて並べたり、ちゃんとアイロンをかけていたり、そういう古着屋は当時少なかったんだよね。 |
岩本 | なかったと思います。 |
イッキ | 実際値段はそんなに高くないけど、高価にきれいに見せたいっていうのはやっぱ意識してる。たとえば、きれいな古着を置いていたほうが女性もより選びやすくなるし。
結局、新品と古着じゃなくても、なにかとなにかが合わさっているほうがかっこいいと思ってて。
自分が持っているもんに一点だけ古着、逆もしかりで1点だけ超ハイブランド着てるとかがかっこいい。だから、いろんなファッションに合うような古着をセレクトしてる。 |
岩本 | 全身同じブランド、ダサいですもんね〜(笑) |
イッキ | 「全身同じブランドの人はダサい」って書いておいていいよ(笑)俺の店はまさにそうだよ。俺の真のこだわりとか好きなのとかコンセプトはあるんだけど、うちの店のセレクトってけっこうバラバラじゃない? |
HEIGHTSの特徴はメンズもレディースもさまざまなスタイルの古着があること。
岩本 | たしかに! |
イッキ | だからなにを合わせるかイメージしやすいように綺麗に見せてるし、いろんなもんを置いてるんだよ。真の部分では全部合わせやすいようになってるはずなの。 |
古着屋として売れて静岡を盛り上げる
岩本 | イッキさんのルーツってけっこうアンダーグラウンドだと思うのですが、お店はそういう「入りづらさ」を極力なくそうとしていますよね。 |
イッキ | そう。それは意識してる。 |
岩本 | それは、古着を着る人の全体数を増やすため「わからなかった人にもわかるようになってほしい」というイッキさんの気持ちがあるからかなと思います。 |
イッキ | そうだね。このスタイルでやりたいことはできてるけど、それで売れたい。お金持ちになりたい。アンダーグランドとか個人の服屋ではっきりそう言える人って少ないと思う。 |
岩本 | 少ないと思います。「お金じゃないんだよ」みたいな。 |
店内では静岡のかっこいいミュージシャンの音源なども販売しています。
イッキ | 俺はまったくそう思わない。自分がかっこいいと思うことをより伝えるためにはお金を稼がないといけないし、店を続けなければならないし、もっといいもん仕入れたいし。 |
岩本 | たしかにそうですね。 |
イッキ | 何事もキャッチーさが大事かなって思うんだよ。自分のやりたいことを崩さずにマニアックでいたいけど、最低限キャッチーさがないと一切受け入れられない。
前言われたんだけど、「メジャーかインディーズじゃなくて、インディーズ実力派」。そういうところを狙いたいかな。 |
岩本 | 独立性を持って自分の姿勢は貫くけど、多数から評価されることも目指すと。 |
イッキ | そう。それでちゃんと売れたい。 |
岩本 | 売れるって、評価されるってことですもんね。 |
イッキ | 俺自身が評価されなくてもいいんだけど、お店はもちろん評価されたいしさ、うちがあることでもっともっと静岡市のファッション全体を盛り上げたいわけ。わかる人だけわかってくれとか俺自身が儲かればいいってわけじゃない。 |
岩本 | なるほど〜。 |
イッキ | もっと売れて発信力が増えたら、静岡のファッション業界も盛り上がると思うんだよ。底上げできる気がする。
静岡県ってけっこういろんなものが全国レベルだと思うんだけど、ファッションの観点でいったらあんまり評価されてない気がして。そこをさ、燃え上がらせたいんだよね。 |
岩本 | よりよい商品を仕入れて発信力をつけて、静岡のファッション業界を盛り上げたいと。アートとお金が結びつくことに抵抗感がある人って、日本にはすごく多いと思います。 |
イッキ | めちゃくちゃいいこと言うねぇ! |
岩本 | ・・・ありがとうございます(照) |
イッキ | アートとお金は結びつくべきなんだよ。とくに日本ではその抵抗感が強い。 |
古着やカルチャーへの入り口として情報を発信し続ける
写真提供:Onishi Yuji
岩本 | いまの静岡のユースカルチャーについてどう思いますか? |
イッキ | いや、本当にめちゃくちゃ盛り上がってきてると思うよ。バントのイベントでも手づくり市でも絵でもアート的なことでも、昔よりやっている子が増えたって感じていて。
当時の俺と同い年くらいの10代とか20そこらの子たちを見ていると、古着はもちろんのことコレクションもそうだし、昔よりよっぽどみんな服好きだよ。 |
岩本 | そうですね、古着を着ている人は増えていると思います。 |
写真提供:Onishi Yuji
イッキ | それは世間の流行りとかもある。芸能人の人とかも昔から着ているんだけどさ、最近さらに目立つようになったじゃん。若い子が憧れる人が古着着てくれたりね。菅田将暉くんのおかげです(笑) |
岩本 | ありがたいですね(笑)確かに菅田くんが古着のマイナーな部分を一般に出してくれた印象です。 |
イッキ | 菅田くんだけじゃないけど、あれがひとつのきっかけになった。まじありがたい!
でも、本当そうなんだよ。メディアとか有名な人を通して、マスな人がコアなものに触れてくれる機会が昔より増えたのかな。 |
岩本 | そもそも古着がかっこいいから広く一般で受け入れられるようになったと思います。 |
イッキ | そういうこと。「古着はかっこいい」って信じてやってきた人たちが報われてる状況ではある。 |
岩本 | HEIGHTSは服屋さんですけど、古着っていう固定観念を崩すようなイッキさんの服への愛を感じます。 |
イッキ | 書いといて。「服マジ愛してるから」って(笑)一歩踏み出して来てくれる人もいるし、俺はなるべくいろんな人が来やすいように環境づくりに気をつけてやってるんだけど、間口がせまい部分もあってちょっと入りづらかったりとか。俺の理想はもっともっといろんな人が来てくれるといいな。 |
岩本 | より多くの人に古着を知ってもらえるようにもっと来やすく。 |
イッキ | うん、古着だけじゃなく音楽とかファッションとかカルチャーとかの入口としても存在したいし、フレッシュな情報の発信地としても発達したい。なにかへの入口としても利用できる店にもっとなりたい。これは目標。 |
古着の魅力を伝えるだけでなく、静岡のファッション業界も盛りあげようとしている「HEIGHTS」。ぜひ、勇気を踏み出して魅力的な古着の世界に足を踏み入れてみませんか?
アイキャッチ提供:Satoshi Takei