清水で80年以上愛され続ける純喫茶「富士」
商店街にたたずむ洋菓子喫茶の過去とこれから
こんにちは。人生初の花粉症から解放されたゆっけです。
じつは僕、大の「喫茶店」好きでして。
オシャレなカフェも魅力的なのですが、喫茶店の放つ独特な雰囲気に惹かれてしまうんです。オーラを放つ場所を見つけては、吸い込まれるように足を運んでいます。
こちらでご紹介する喫茶店は、以前ご紹介したオシャレな雑貨屋さん「S&K household」もある清水区が舞台です。
JR清水駅から徒歩8分ほどの場所に広がる清水銀座商店街。ここは昔から清水区(旧清水市)の人にとっては馴染みの深い場所で、七夕祭りや清水エスパルスの出陣式、銀座の裏手に流れる巴川での灯ろう祭りなど、地域色溢れるイベントが開かれています。
そんな清水銀座商店街に、なんと創業80年以上の喫茶店があるとのこと。地元民の僕としてはぜひ行ってみたい、というわけですぐに足を運んでみました!
レトロ感漂う老舗喫茶「富士」
長い間、地元民に愛され続ける老舗喫茶店、その名も洋菓子喫茶「富士」。そのいでたちから、昭和の雰囲気を感じさせます。レトロな建物や看板好きの方であれば思わず立ち止まってしまうインパクトです。
お店の扉を開けると、ひと際目を引く大きなカウンターの存在感に圧倒されます。
飾られている装飾品や調度品にも時の流れを感じ、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる空間が広がる店内。
昭和の時代にタイムスリップしたような錯覚を覚えます。
フードメニューは、「これぞ喫茶店」な内容。どれにしようか迷いましたが、今回は店主の実石さんオススメのカレーランチセットをいただくことにしました。
ランチのカレーセット(750円)。食後にコーヒーが付きます。
ほどよい辛さのなかにもしっかりとしたコクがあっておいしい!!!
優しい気持ちにさせてくれる味に、スプーンの手が止まりませんでした。
写真は店主の実石さんオススメの1冊「のらくろ」シリーズ。お店のロゴが印刷されたマッチには「マンガ喫茶」の表記があり、店内ではさまざまなマンガを読みながら、ゆったりとした時間を過ごすこともできます。
「昔のマンガってわかりやすくていいんですよ」と実石さんの言葉通り、はじめて読んだのらくろシリーズは一気読みの面白さでした。
創業当時は「甘味喫茶」だった!?
店主の実石巌(じついしいわお)さん。
「父の代の昭和6年から営業していて、私で2代目です」と実石さん。噂通り、お店は今年で86年目になるそう。創業当時の様子を伺ってみました。
実石 | 創業当時は「甘味喫茶」でした。おまんじゅうなどの餅菓子を売ったり、お雑煮やお汁粉も売ったりしていました。 |
ゆっけ | 当時とは商品もずいぶん変化したんですね! 店舗は創業当時のままなんでしょうか? |
実石 | 終戦後の昭和46年にお店を建て直しました。それがいまの店舗なので、建物としては50年近いですね。
商品については建て替え後、時代の流れとともにコーヒーやケーキを売ったりして、喫茶店にシフトしていきました。 |
ゆっけ | 「富士」という店名にはどんな想いが込められているんでしょうか? |
実石 | 創業当時は「みよし」という名前で営業していましたが、建て替え前から店名を「富士」に改名しました。父が名付け親ですが、清水からはよく富士山が見えるからというのが理由です。
いまでこそあまり見かけるものでもなくなりましたが、当時は会社でも飲食店でも「富士」という名前を付けることが多かったですね。 |
ご主人手作りの絶品ケーキはなんと100円~200円
店先のショーケースに並ぶケーキは全7種。
先ほどランチとしてカレーをいただいた私ですが、じつは喫茶富士で欠かすことができないのは、染みわたる料理ともうひとつ。ケーキです。なんと毎朝4時から実石さんがおひとりで作っているそう。
でも、驚くのはそこだけではありません。値札に注目してください。どれも100円〜200円とお手ごろ! でも、味が悪いとかではもちろんないんです。なにしろ毎日80個以上売れるほどですから。※ケーキはテイクアウトできます!
「どちらかというとうちはお菓子屋さんなので、ケーキセットがおすすめです」と実石さん。僕は食後にバターロールケーキ(100円)をいただきました。
写真ではわかりにくいですが、「ほんとに100円?!」と驚いてしまうほど、ワンカットが大きい・・・! 甘さを抑えながらもバターの風味が活きた1品で、コーヒーとの相性も抜群です。
ゆっけ | ケーキごちそうさまでした。とてもおいしかったです! なのにすごく安くてビックリしたんですけど・・・。これ大丈夫なんですか? |
実石 | 20年くらい前までは高くても1個180円で販売していました。でも、ウチが特別なわけではなく、物価も含めてそういう時代だったんですよね。どこのお店でもそのくらいの値段設定で。
そこから少し値上げもしましたが、いまでもうちのケーキは高くても200円です。 |
ゆっけ | お財布に優しい価格なのに、こんなにおいしいなんて・・・。 |
実石 | うちのケーキは単純だから、アレつけてコレつけてってしないぶん材料費がかからないんです。だから値段が上げられなくて(笑) |
清水銀座商店街の過去と現在
昭和初期から平成までの清水銀座を見守ってきた実石さん。ここ数十年で商店街はどう変化してきたのか、尋ねてみました。
ご店主 | ここは昔、東海道だったので人の流れが活発でしたが、バブルが弾けたころからだんだんと人通りが減り、いまでは人通りがほとんどなくなってしまいましたね。
いろんな場所でお店ができはじめ、商店街にこなくてもいいようになってしまって。シャッターの閉まる店舗もちらほら見られます。
昔は駅から商店街まで人がたくさん流れてきましたけど、車時代になって寂しくなってしまいました。 |
実石さんの言うとおり商店街のかつての賑わいは懐かしく、シャッターも目立つ清水銀座商店街。課題が多いのも事実です。
めまぐるしく状況が変化してきた商店街ですが、洋菓子喫茶「富士」は変わらずこの場所にお店を構え、いまでも多くのファンを魅了し続けています。それも地元だけでなく、その名声は県外から来店するお客さんもいるのだとか!
実石さんは現在85歳。「3代目の跡継ぎはいないので、できる範囲でできるとこまでやります」という言葉が印象的でした。
ここは古き良き時代の喫茶店を体現できる貴重な場所。懐かしい時間と格別なケーキを洋菓子喫茶「富士」で。