極上「カヌレ」とフルーツの生きたケーキ
「PATISSERIE46」が込める創造・調和・愛情のエッセンス
ハンバーグといったら「さわやか」、オムライスは「キネマ座」、トマトクリームパスタならお母さん。これらはわたしの殿堂入りグルメで、秘密にしたい、でも知ってほしい最高の味です。
「PATISSERIE46(パティスリーヨンロク)」もまた、わたしにとって○○といえば、なお店。甘いものに、とくに”カヌレ”に目がないみなさんなら、きっと心撃ち抜かれてしまうはずです。
PATISSERIE46のあらまし
新静岡駅から北街道沿いに徒歩2分、大きなガラス戸に描かれた太陽と「46」のロゴ。PATISSERIE46は、2017年1月に誕生した洋菓子屋さんです。おやつを探してウロウロお散歩をしていたある休日の午後、ドアから漏れる甘い香りに誘われるように出会いました。
イートインスペースあり
クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子のほか、ショーケースには常時10種類ほどのケーキが並びます。そのラインナップは季節ごとに変わるだけでなく、飽き性というオーナーシェフの気まぐれでも変化。「明日にはないかも」と思うと、毎回やたらに買いすぎます。
バランス、創造、美、調和、愛情のケーキ
ガラスケースに整列するケーキは、遠目に見ても美しいことがわかるはず。それは小さな建築物のようで、一つひとつが絵になります。
無花果タルト 500円
本日のタルト(旬のフルーツ) 500円
こうして見てみると、フルーツにあまり手は加えず、果実をごろっと入れているのが伝わるでしょうか。先日食べたここのフルーツサンドも、半分にカットしたオレンジがまるまる1個ぶん入っていて笑いました(写真を撮る前に食べちゃった)。
これはオーナーシェフ・兼高さんが果物農家さんのもと修行をするなかで、だんだんと「手を加えられなくなってしまった」のがじつのところです。大切に育てられた果物は、素材の良さを引き出してあげるだけで立派なごちそうに。
カット面積が少ないぶん、瑞々しさもまるっとスイーツに落とし込むことができます。
アップルパイ(900円)には林檎がどかんと半分
スイーツ作りといえば「計量がなにより大切」とばかり思っていましたが、46のパティシエさんはあえて、量りを使わないようにしているそう。その日に使うフルーツの甘みや酸味に合わせて、レシピに微調整を加えます。いつ食べてもおいしいわけだ。
洗練された見た目からは想像もつかないほど、スポンジとクリームはどこまでも優しく、まるっこく、懐かしい味がします。
じつは兼高さんのご実家もまたケーキ屋さん。両親のつくる愛情と温かみに満ちたケーキが、46の根っこにあります。
ここのスイーツを食べると「しあわせ!」と大声を出したくなるのは、このためかもしれません。
あまりの優しさに泣きそうになっちゃう「46ロール(450円)」
「カヌレといったら46」です
フランス生まれのスイーツ、カヌレ。古くはボルドー地方の女子修道院で作られていた伝統菓子です。
ブラウンの艶やかな表面が香ばしく、中身は絡みつくようにしっとりと柔らか。鼻先をくすぐるバニラの香り、品のある甘さ、なんといってもあの食感が魅力ですよね。カリカリモチモチ。わたしも大好きです。
なかでもPATISSERIE46のカヌレは衝撃でした。ビジュアル・味・食感、どれをとってもぴかいちです。もうこのカヌレなしには生きていけない。46のカヌレを愛してる。
1個180円
兼高さんはこれまでに、100店舗近くものカヌレを食べ歩いてきたと言います。お店のオープンにあたっても、まずカヌレを扱うことは決めていたそう。
おいしさの秘密は、ボルドーに古くから伝わる製法に、あえて則らないひと工夫。これが脳を蕩かすような「食感の心地よさ」に繋がっています。伝統的なものに比べると、外側のカリカリ感がまったく違うんです。
以前は店頭に常時並んでいたものの、いまは予約制。ときたま多く焼き上げたぶんを店頭販売することもありますが、前日までにお電話を1本いれておいたほうが安心です。少量からでも受け付けているとのことなのでぜひ。
我が家はむかしから、ケーキと一緒にお漬物が出てきました。その血をみゃくみゃくと受け継いだわたしも、甘いものには胡瓜の浅漬けが不可欠。でも、46のスイーツは違います。
おばあちゃん、いいから、お漬物はしまっておいていいから、座って、食べてみて。ね、優しくておいしいでしょう。