mitecoまつり2017直前!会場場所の想いにふれる
静岡シネ・ギャラリー副支配人インタビュー
いよいよ今週末に迫った「mitecoまつり2017」。
静岡のローカルWEBマガジンであるmitecoが、「そのつながりをオフラインにも」という想いではじめたこのイベント。これまでにさまざまなアーティスト、登壇者、出店者さまを紹介してきました。
それぞれの内容は下のリンクより見てみてください。
そして、直前にご紹介したいのは、このイベントの実現には欠かせなかったサールナートホール、静岡シネ・ギャラリーについて。イベントを開催するのにあたってまず大切となる会場ですが、じつは最初からこの場所でと考えたうえで企画を進めてきました。
その理由はもちろん、雨天時にも問題なくイベントができることやいくつかのスペースに区切って会場を設営できることなど、開催にあたっての条件を満たしているからでもあります。
でも、それ以上にサールナートホールを運営する副支配人や支配人にインタビューをさせてもらったときに出てきた「地域とのコミュニティをつなぐ公園」という言葉にとても共感したからです。
開催前にあらためて、上の記事や連載とインタビュアーを担当した僕、山口が再び副支配人の川口さんと海野さんにお話をお伺いしました。
地方のミニシアターがまちの名前を冠する理由
インタビューはホール入口のホワイエで。
山口 | 僕たちがイベントを開催するときに会場をここにお願いしたいと思ったのは、とりわけ「地域とのかけはしとなる公園」という言葉がきっかけでした。 いろいろな検討はしたんですが、「同じような想いを持つ会場にお願いしたかった」というのが大きな理由でして。だからあらためてこのことについてお伺いしたいなと。 |
海野 | これは単館系の映画館の特徴なんですが、自分たちの館の名前にその地域、まちの名前を冠するところってすごく多いんですね。 |
山口 | そういえば! |
海野 | シネコンならどこそこのスクリーンだとわかりやすくするために必要な記号ですが、ミニシアターには普通に考えたらいらないじゃないですか。だって、全国にひとつしかないんだから。ここだって静岡シネ・ギャラリーじゃなくて単にシネ・ギャラリーでいいんですよ。 |
海野 | やっぱり地域の名前を冠するのは、そのまちの人たちにとっての場所でありたいという想いがあるからなんですよね。だから僕たちではなく、静岡の方たちによってサールナートホール、静岡シネ・ギャラリーが活かされる場所でありたいなという気持ちです。 |
山口 | 育児中の方が「公園デビュー」をするときに、不安だけど足を運んで、そして最初は知らない人たちに出会ってコミュニティを形成していくように、ここでもたくさんのコミュニティができるきっかけ作りができる場所というか。 |
川口 | そのとおりですね。映画だって、ここがなければ静岡に上陸していないものもたくさんあるわけで、そういう側面からも、コミュニケーション不全にならない役目を果たしたいというのはずっと考えていることです。 |
山口 | 場所そのものが大きな意味を持つという考え方って、いまはなかなか難しいようにも思いますが、じつはそれが大切だということもあるかもしれませんね。
個人的にはここがなかったら・・・。ずいぶん文化的には寂しい街になってしまったんじゃないかと。映画ファンとしてはですけど(笑) |
僕たちが積極的に取り組まなくてもいいんじゃないか
川口 | 映画館は映画も含めて、ほかの団体やモノと組んでなにかをやる「箱」ですが、最近は外のコミュニティとつながってなにか積極的に取り組む必要って必ずしもないなって思ったんです。これは海野くんがほかの方に話していたことで、「すでに僕たちはお客さんと直接のやりとりができているんだ」っていう。 |
山口 | それは「公園になりたい」というところにも紐づくのでしょうか? |
川口 | 「公園になりたい」といっておいてなんですが、僕たちって積極的にそのテーマに取り組むことはあまりしていなかったんです。
でも、ある映画を持ち込んできて「これを上映してくれないか」とお話をしてくださる方が結構いて。これって信頼や愛着を持ってくれている方がいるということじゃないですか。
そしたら、わざわざ僕たちが積極的に場所を提供したり、つくったりすることっていらないんじゃないかっていう。 |
山口 | 公園そのものが魅力化できてて、そこにわざわざ中身を持ってくる必要がない、みたいな感じですかね。 |
川口 | 以前の取材でもお話ししたように、僕たちは会員制度を導入していて毎年4,000人以上の方が登録してくださっているんです。 でもそのうちの多くの方は更新をしてくれた方。「じゃあ、その方の期待に応えられるような映画を見つけてこなくちゃ」というのは当然なんですが、そうでなくとも話を持ってきてくれる。
「公園」というのは、あえてこちらからアプローチしなくてもお客さん自身が価値を見つける場所づくりのことだな、とあらためて感じましたね。 |
海野 | あるイベントをサールナートホールで開催したときに、そこの代表の方が「コミュニティじゃなくてプラットフォームを作りたいんだ」というお話をしていらして。「あ、それって僕らも近いな」と思ったんですね。
なにかのコミュニティを作ってしまったら、ほかのなにかを排除することにもなるじゃないですか。 |
山口 | 場所づくりのために積極的に取り組むと、かえって余分に感じられる方がいるかもしれない、ということですかね。 |
川口 | そう。案外、「舞台挨拶なんて要らない。監督の言葉もいいから作品を観せてくれ」みたいな人もいる(笑) |
海野 | だからオプション的には用意しておきたいんだけど、あくまで「箱」というのも大切にすべきだなと。公園の楽しみ方は、来た人やそこでなにかをする人が決められた方がいいと思っているんです。無理して「静岡シネ・ギャラリー感」みたいのを押し出す必要はない気がしますね。 |
「法人って概念を考えた人はすげぇなって」
海野 | ちょっと切り口が変わるんですけど、株式会社とかにある「法人格」って考え方をはじめてした人はすげぇなって思ってるんです。 |
山口 | 法人格がですか? |
海野 | そうです。あれって究極の擬人化じゃないですか(笑)
僕たちは株式会社サールナートホールという法人のもとで働いているんですけど、一見すると配給する映画を決めて公開スケジュールを組んだり、ホール運営でもどんな催しを開催するか決めたりするのを僕らふたりでやっていると、あたかも僕たちが法人を動かしているように見えますよね。
でも、実際はその逆で、法人によって僕たちは動かされているんですよ。 |
山口 | 「中の人」的な考えですかね? 会社や団体にある哲学を汲み取って判断するというか。 |
海野 | なにかを考えるときに、この株式会社サールナートホールさんに聞くわけです。「これってどうよ?」みたいな(笑)で、「うーん。どうかなあ」みたいになるのを想像して、「あ、じゃあやめておこうか」と決めたりとか。 |
山口 | なるほど。じゃあ、mitecoまつりについても? |
海野 | 話が来たときにパッと決まったんですが、それってサールナートホールさんがちょっとやりたそうにしてたからなんですよね。全然イベントの内容わからないけど、なんかやったら面白そうみたいな。 |
川口 | だから僕たちは席が向かい合わせにあって、「話もらったけど」で「あー。いいんじゃない?」って(笑) |
山口 | それは本当に嬉しいですね。お会いできたタイミングも、こうして記事にさせていただいたことも含めて縁かなと勝手に思ってまして。 それがうまくつながって開催できたことがまずよかったですし、願わくばここをきっかけにしてより大きなものにしていくスタートになればなと思っています。 |
川口 | いやいや、僕たちも楽しみにしています。 |
海野 | どうぞよろしくお願いします。 |
ひとつのまちにはたくさんの想いや考えが、それぞれの場所に宿っています。もしかしたら、それは場所や集まる人がそうさせたのかもしれません。
今回僕たちが、サールナートホールを選んだのも、そうしたちょっとした空気や縁が導いたものなんじゃないか、と思うと不思議な気持ちになります。
一つひとつが小さな集まりでも、公園でそれぞれが集まってみたら思ったより大きなものになるかも。そして、それぞれが出会うことによって、もっと大きなつながりに変わっていくのかもしれないですよね。
僕たちmitecoはそれをお手伝いするための場所。そのつながりをぜひ、「mitecoまつり2017」で体感しにきてみてくださいね。