静岡大学 小二田教授と地元の絆
ネタの宝庫「小島」で仕掛ける勉強会とは?
こんにちは編集部の山口です。
miteco公開から1か月経ちました。でも、僕らが考える「いいところばっかりの静岡」は本当なのか?
その疑問を解決するために、安藤社長に静岡大学の小二田教授を紹介していただきました。
小二田教授は静岡の地を20年以上も歩き回って研究をしています。教授が考える静岡のよさや面白さについて、最近、興味をもっているという静岡市清水区小島町を歩きながら聞かせてくれました。
前日の記事はこちら。
小島陣屋跡を歩きながらお話ししていただいて、これで取材時間は終わりかと思いきや、小二田教授はまだ目的地が残っているといいます。
同行させていただくと、教授がフィールドワークで出会った地元の人たちとお話させてもらうことができ、そして、そこから生まれた小二田教授ならではのイベントについても教えていただけました。
小島の龍津寺さんにあった「とても貴重な逸品」
小二田教授 | さて、最後の目的地なんだけど、近くに龍津寺というお寺さんがあって。そこで、打ち合わせがあるから一緒に行かない? |
と、陣屋跡をひとしきり見終わったあとに切り出した小二田教授。打ち合わせ、というと何か研究会でもあるのかな? でもどうしてお寺で・・・? と思いつつ龍津寺へと向かいます。
門をくぐって奥に行くと・・・
大きなお堂が顔をのぞかせます。
山口 | すごく立派なお寺さん! 結構歴史もあるんですか? |
小二田教授 | かなり古い由緒のあるところだよ。で、ここには立派な須弥山儀(しゅみせんぎ)があって・・・。 |
山口 | 須弥山儀・・・? すみません、無学なもので・・・。 |
小二田教授 | 和式の時計、宇宙の模型といえばいいのか。仏教思想を元に作られたもので、その辺に転がっているようなものではなくとても珍しい逸品。
そんなものが小島に残っているなんてことは知らなかったんだけど、それこそ知り合いと小島をふらふらと歩いているときに龍津寺さんに立ち寄ったら・・・あった。 |
こちらが須弥山儀。中にはなにやら精密ななにかが・・・。
山口 | あった、って。そんなことってあるんですね。まさに歩いていたからこそ出会ったというか。 |
小二田教授 | そうそう。だから、足を使うってとっても大切。mitecoでも草薙伝説や興津の坐漁荘はフィールドワークのような記事で、とってもいいことだなぁと思っているよ。 |
山口 | 恐れ多いです。 |
須弥山儀でつながった龍津寺と演奏会
須弥山儀の話をしていると、龍津寺の住職さんが話に加わってくれることに。大学教授の方とお話しするだけでも身の引き締まる思いをしているというのに、さらにお坊さんとは・・・!
小二田教授 | 紹介が遅れました。住職の勝野さんです。 |
勝野さん | どうも、はじめまして。須弥山儀のときには小二田教授に勉強会を開いていただいて、それからはもう本当にお世話になってます。 |
小二田教授 | いえいえ。とても素晴らしいものをお持ちなので、あのときはなにかできないかと思って。 |
山口 | あ、なるほど。こちらでセミナーのようなものを開いているんですね。 |
小二田教授 | そうそう。それで、今度もやることになって。箏(琴の一種)と篠笛とギターで演奏会。で、その打ち合わせが今日。 |
勝野さん | そうなんですよ。10月16日に開催するんです。 |
山口 | ここで? 演奏会ですか? |
あれれ。静岡の魅力について小二田教授について聞く取材のはずが、なにやら面白そうなイベントの話へとつながっていきそう。じつは、このイベントも小二田教授がフィールドワークで培った経験や人との絆がきっかけとなったみたいです。
地域の魅力を発信するメディアmitecoとしては、取り上げないわけにはいかない!
そう思って、野次馬根性ですが、お話をお伺いすることにしました。
毎年恒例、子ども相撲のお祭り
勝野さん | もともとこの日(10月16日)は小島のお祭りを開催する日で。 |
山口 | 地元のお祭りですね。 |
勝野さん | ええ。このお祭りは毎年、秋に開かれているものでメインは子ども相撲大会です。地元の子どもたちが回しを巻いて近くの神社で相撲を取るんです。これはもう結構な迫力で、毎年大盛り上がりなんですよ。
で、以前は・・・(ポスターを見ながら)ああ、2010年ですからもう6年前になりますね。小二田先生に手伝ってもらって、夜はここ(龍津寺)で須弥山儀についての講座を開いていただいたんです。 |
小二田教授 | 正確には、このポスターにもある通り、専門家の先生をお招きしてお話ししていただいたんだ。僕はその間を取り持っただけだけれど・・・。 |
勝野さん | そういう部分も含めて本当にお世話になったんですよ! |
当時のポスター。このときは他県の研究者をお招きして「勉強会」を開いたとのこと。
山口 | なるほど。須弥山儀について地元の人たちに知ってもらおう、というのは小二田教授がお話になられた「フィールドワークで地元の人とのふれあい」に通じるところがありますね。 |
小二田教授 | そうだね。こんなに素晴らしいものをお持ちなのに、知らないのはもったいないな、という気持ちはあったと思う。 |
山口 | そして、今度は琴とギター、篠笛ですよね。こちらの経緯もお聞かせいただけますか? |
小二田教授 | 「また、小島で何かやれないか」とおもっていたら、ちょうど僕の兄のほうからも連絡があったんだ。兄は、ギター奏者をしながら東京で練習スタジオの経営もしていて。
その縁で、箏の演奏者の方からぜひ演奏したいという話をいただいた、というのがだいたいの経緯。 |
相撲大会のポスターの隣には小二田教授の開催するイベントのポスターも。
勝野さん | もともとお祭りは日が沈むころには終わってしまうのが通例でした。ですから、日が落ちたころになにかやれないかなぁ、というのはずっと考えていたんですね。
小二田先生がお手伝いをしてくださったおかげで、「夜の部」みたいのが生まれて結構好評なんです。 |
山口 | なるほど。地域の伝統的なお祭りのときに、大学の教授さんがイベントを開くっていうのは独特な感じがして面白いなぁと、地元民ではない僕も興味を惹かれますね。
小二田教授には小島の人はもちろんですが、祭りも含めて「外の人にも小島を広めていきたい」みたいな気持ちもあるんですか? |
小二田教授 | 小島の人には、僕自身もいろいろとお世話になっていることもあって、その恩返しみたいな気持ちはまずあるかな。
ところで、地方の社会では、地元住民ってふたつのタイプに分かれると思うんだ。 |
山口 | ふたつのタイプ、ですか・・・? |
小二田教授 | そう。ひとつは「ちょっと保守的でなかなか外からの人に心を開くのが苦手な人たち」、そしてもうひとつが「外からの人も受け入れてくれた上で地元にも誇りを持っている人たち」かなって感じていて。小島の人たちは後者だなぁと思っているんだ。
実際、小島の人たちは、最近移り住んできたようなニューカマーたちにも優しい。僕のような研究者として歩き回っている人にもたくさんお話をしてくれるから、そういう素晴らしい町を知ってほしいという気持ちもあるなぁ。 |
山口 | なるほど。イベントのポスターにも、「知っていそうで知らない箏。体験してみませんか。」との表記がありますよね。
もちろん、箏の演奏っていまではなかなか見られないことにもかかっていると思うんですが、小島のこういうお祭り自体もなかなか見られないですよね。
僕はその辺もあるのかなぁと。 |
小二田教授 | なるほど。そこまでは考えていなかったかもしれないなぁ。でも、小島の人も外から人が来ると喜ぶのは間違いないよ。 |
勝野さん | 小二田先生は前も学生さんを連れて来てくれたんですよ。 |
小二田教授 | 小島の人も若い子を連れてこいっていうもんだから(笑) |
山口 | (笑)
でも、箏と歴史と雰囲気のあるお寺さん。とても素晴らしい組み合わせだと思います。想像するだけでいいだろうなぁ、と感じてしまいますね。しかも、ギターや入ってなんだかいろんな文化が交じり合う企画だと思いました。
ぜひたくさんの人に来ていただきたいですね。 |
勝野さん | そうなってくれると私も嬉しいです。 |
このあと、僕たちは龍津寺を離れ静岡大学へと戻りました。帰りの車の中ではこのイベントのお話を聞いたり、小二田教授の研究についてお尋ねしたりと、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
紹介していただいたイベントには、小二田教授のフィールドワークの大切さや地元の人との対話で生まれた絆を感じます。温かい人たちがたくさんいる小島の町での箏の演奏。昼間は相撲大会を眺めながらジビエ(狩猟肉)や地元の魚を食べて、夜は荘厳な龍津寺での箏の演奏。
秋を感じるこのごろですが、来週はぜひ静岡の小さなローカル、小島町の文化を感じに行ってみてはいかがでしょうか?
酒瓶神社奉納相撲大会連動 公開勉強会@龍津寺
詳細はFacebookページをご参照ください。また、当日の昼間には相撲大会が見られます。こちらもご興味のある方はぜひ足を運んでください。 ※相撲大会は龍津寺ではなく酒瓶神社となっておりますのでご注意ください。