浜松音楽界の母、アブのおばちゃんに聞く!
アブミュージックにまつわる4つの謎
こんにちは、編集部の安藤です。私はロックバンドでギターボーカルをしているのですが、よく「アブミュージック(浜松市中区相生町)」というリハーサルスタジオで練習しています。
浜松の音楽シーンを長いこと見守り続ける存在で、さまざまな歴史やウワサが飛び交うアブミュージック。今日は「アブのおばちゃん」こと大西さんに、普段は聞けないアブミュージックにまつわる謎の真相を、スタジオ練習ついでに尋ねてみました。
1.入口にいるアブラックってなに?
大西さんは、「買い物してるとよく声を掛けられるので、これ以上顔が広まっても・・・」という理由で顔出しはNGとのこと。
代わりに登場してくれたのは、入口にいるアヒルのアブラックくん。いろいろお話を伺いたいところですが、その前にアブラックっていったい・・・。
安藤 |
入口にあるアヒルのキャラクター、やっぱり「アフラック」さんのCMを意識したんですか? |
大西さん |
ぜんぜん。入口が寂しいから、「アヒルの置物でも置いておこうか」って思って。そしたら、みんなが「アフラック」だっていうから、じゃあ「アブラック」でいいかって。 |
安藤 |
あ、CMを意識してたわけじゃないんですね! いつから置いてるんですか? 多分最近ですよね・・・? |
大西さん |
半年くらい前じゃないかなぁ。若い子は、アヒルじゃなくて、アフラックって言うのよ。 |
安藤 |
CMの影響力ってすごいですね。 |
大西さん |
そうそう。これ、娘が東京から帰ってくるついでに持ってきたんだけど。 電車に乗るときにバックから顔がはみ出ていたアヒルを、「生き物じゃないか」って駅員さんに止められちゃったみたいで(笑) |
安藤 |
わかりそうなものですけどね(笑)というか、娘さんいるんですね! |
大西さん |
跡取り娘を薬剤師にしたのに、ドラムにハマってプロになっちゃって。パール※のドラムのカタログにも名前が載ってるのよ。 それに、ムッシュ※のバックでTVにも出たよ。これが本当の「ドラ娘」って言うんだよネ(笑) |
安藤 |
おおっ(笑)すごい人なんですね!(ん、薬剤師?) |
※パール(PEARL):パール楽器製造株式会社。ドラムやフルートで有名なメーカーです。
※ムッシュ:ミュージシャンのかまやつひろしさん。
2. 40年以上! アブミュージックの歴史
アブミュージックのカウンター。写真左側奥が元調剤室だったそうです。
入口のアヒルの謎が解けたところで、新たな謎が出てきました。「娘を薬剤師にするつもりだった」という話ですが、じつは、アブミュージックはもともと薬局だったそうで。
安藤 |
アブミュージックって、いつからあるんですか? |
大西さん |
もう、ずっと昔から。主人も、主人のお父さんも薬剤師なのよ。元々、薬局の2号店を出そうと思って蜆塚に土地を買ったんだけど、結局そこには出店しなくて。 |
安藤 |
あっ、はじめは薬局予定だったんですね。それで買った土地はどうしたんですか? |
大西さん |
昭和48年に生演奏が楽しめる「ABU ABU」という喫茶店を作って、その2階に練習スタジオを作ったの。その後、手狭になったので病院を作る予定だったいまのビルに移動したのよ。
さらに、ミュージシャンが「公民館で演奏ができなくなった」とかで、「演奏できる場所を作ろう」って。それで、今のビルの2階にホールを作ったのよ。ちなみに、ONOYA珈琲という喫茶店もいっしょにやってて。 |
安藤 |
昭和48年というと・・・1973年だから、40年以上やってることになりますね! でも、どうして音楽を? |
大西さん |
主人がジャズをやっていて。 |
安藤 |
なるほど。 |
大西さん |
それで、こっち(相生町)は大西薬局という薬局だったんだけど。スタジオを移転したら、どんどん大きくなって。
薬局の前にミュージシャンがたむろして薬局のお客さんが少なくなったので、10年前くらいにスタジオだけにしちゃった(笑)
あと、元々薬局だから、レジの後ろの部屋をいまだに調剤室って呼んじゃうのよね。 |
安藤 |
薬局じゃなくてリハーサルスタジオ1本に絞るなんて、すごいですね。さすが「音楽の街・浜松」というエピソードって気がしました。 |
3.LINDBERGや鈴木砂羽さんも使っていた!?
薬局部分を改装してスタジオにしてしまったそうです。
長い歴史があるアブミュージック。ここを利用していた人のなかには、のちに有名人になった人もいるようです。
安藤 |
アブミュージックを使っていた人で、有名になったミュージシャンはいますか? |
大西さん |
LINDBERG※のふたりが、うちを利用してくれてたね。 |
安藤 |
えっ、すごい! ちなみに、誰ですか? |
大西さん |
平川さんと小柳さん。他には浅田信一※さんや鈴木重子※さんが使ってくれました。 |
安藤 |
おぉ~! |
大西さん |
あと、女優の鈴木砂羽さんがアマチュアのときに来てたみたい。 |
安藤 |
鈴木砂羽さんって、元々バンドマンなんですか? |
大西さん |
いや、コピーバンドをしてたみたいだけどね。それで、「鈴木砂羽の思い出の場所」ってことで、前に鶴瓶さんが取材に来たけど(笑) |
安藤 |
なんと・・・意外なビッグネームの名前が出てきたのでビックリです。 |
※LINDBERG(リンドバーグ):1989年結成。『今すぐKISS ME』『BELIEVE IN LOVE』などで注目を集めたロックバンド。
※浅田信一さん:元SMILEのボーカル&ギター。V6、CHEMISTRY、関ジャニ∞などへ楽曲提供するシンガーソングライターとしても有名。
※鈴木重子さん: 東京大学卒のJAZZシンガー。名門ブルーノート・ニューヨークにはじめて日本人ボーカリストとして出演したことも有名。
4.夜中4時に寝ている!
若いアブミュージック利用者のあいだで、「アブのおばちゃんは寝てない」というウワサがあります。たしかに、いまは深夜2時ですが、リハーサルスタジオを利用しているバンドマンもチラチラ見かけます。
そこで、ウワサの真相をそれとなく尋ねてみました。
安藤 |
ところで、大西さんっていつ寝てるんですか? |
大西さん |
だいたい深夜4時くらいです。 |
安藤 |
遅いですね。朝は何時くらいに起きてるんですか? |
大西さん |
ぜんぜんバラバラ。ゴミ出しがある日は8時くらいには起きるし、そうじゃなきゃ10時くらいまで。 |
安藤 |
寝てる日でも6時間なんですね。 |
大西さん |
でも、いまは子どもがいるわけじゃないから、ゆっくりできる日のほうが多いよ。 |
安藤 |
それなら安心です。バンドマンってわりと夜型なので、大変ですよね。 |
浜松の音楽シーンを支え続けるアブミュージック
ほかにも、「L’Arc〜en〜Cielがライブの前に来た」とか、「ライブハウスに歌手の弘田三枝子さんが遊びに来て歌ってくれた」とか、「ドラマーの沼澤尚さんが練習に来た」とか。
大西さんからいろいろなお話を伺うことができました。さすが、長く営業しているといろいろなエピソードが生まれるようです。
最近は、バンド音楽よりクラブミュージックが主流です。それでも、プロ・アマチュアを問わず、リハーサルスタジオの需要は確実にあります。
浜松の音楽シーンを支え続けるアブミュージック。まだまだお世話になるバンドマンは増えると思います!