大切な人と生き残るための「防災・減災」
いつかくる大地震で意外な○○が役立つ?

  • posted.2018/03/06
  • オオイシマオ
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大切な人と生き残るための「防災・減災」 いつかくる大地震で意外な○○が役立つ?

かれこれ1年ほど前の、こちらの記事を覚えていますか?

大規模地震が「そのうちくる」と言われて30年あまり。「地震対策日本一のしぞ〜か」において、自治体の取り組む対策を取材した内容でしたね。

静岡県に暮らしているからには避けられない、「いつかくる巨大地震」への不安や恐怖。そんななかでも、防災先進県を自負する自治体の備えには頼もしさを感じます!

では、そんな「もしも」のとき、あなた自身は動けますか?

「ばっちり! 備えは万全!」という人よりも、「なにをどうしたらいいかわからない……」という人のほうが多いのではないでしょうか?

――飴を持ち歩くだけでも、災害時に役立ちます!

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さいのこ代表 菊池日向さん(左)、メンバー 瀬谷健太さん(右)

そう話すのは、静岡文化芸術大学の防災・減災サークル「さいのこ」の代表、菊池日向さん。さいのこの取材を通して、防災を考えてみたいと思います。

最後まで生き残ろう!「さいのこ」

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2011年3月11日に起きた東日本大震災のとき、菊池さんは長野県に暮らす高校生でした。未だかつてない自然災害による被害と混乱を映像で目にして、衝撃を受けたといいます。

sainoko_face_01菊池 こうした状況のとき、大人がわたしたちを守ってくれると思っていたんです。でも違って……。同じように混乱する大人を目の当たりにして、自分の身は自分で守らなくてはいけないと感じました。

 

また、ちょうど東日本大震災が起きたのは卒業シーズンで、ある東北の中学生が卒業式の答辞を読んでいる場面をテレビで見たんです。その子は「みんなで卒業できないなんて思ってもいなかった」と……。

 

わたしは未来の子どもたちにこんな答辞を読ませたくない、自分が興味を持たなかったことで奪われるものがあってはいけない、と思ったんです。

sainoko_face_02オオイシ その思いが防災への関心に。でも、なぜ進学先に静岡文化芸術大学を選んだんでしょう?
sainoko_face_01菊池 学びたいことがあっただけでなく、大規模地震がいつかくると言われている静岡県ならば、もっと防災を学ぶことができると期待してきました。
sainoko_face_02オオイシ おお、すごい情熱ですね!
sainoko_face_01菊池 ただ、大学内で防災活動をするサークルは見当たりませんでした。静岡県にある大学なんだから、当然あると思っていたんですよね。

 

大学内での反応もさまざまで、静岡県出身の人たちは「いつかくるとは言われているけどねえ」という様子。

 

逆に他県から来た人たちのほうが、「実際どうなの? 大丈夫なの?」と危機感を抱いているような声も聞かれました。

sainoko_face_02オオイシ 全国から人が集まる大学だからこそ、地震に対する認識もいろいろですね。
sainoko_face_01菊池 そうですね。わたし自身が災害防災に関心があることを授業などいたるところで伝えていたら、教授たちのすすめもあり、2014年に防災・減災サークルとして「さいのこ」を立ち上げることになりました。

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さいのこ、熊本の学生、浜医の学生集合写真。防災に取り組む学生による、横のつながりが生まれた。

sainoko_face_02オオイシ 「さいのこ」とは、どういう意味ですか?
sainoko_face_01菊池 よく、シビアだと言われるんですけど(笑)「最後まで生き残ろう」というメッセージを、かわいくまとめて「さいのこ」です!

熊本の教訓から学ぶ「自分にできること」

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発足からは、防災を学ぶフィリピンの学生らとの交流会や、「HUG(ハグ)」という避難所運営ゲームをモデルに手を加えた「SUG(サグ)」をつくるなどして、防災知識や経験の向上を目指し学内で活動してきたそう。

2017年9月には、被災地熊本県を訪ねる機会を得ました。

そして2017年11月、静岡文化芸術大学にて「若い力による防災・減災」をテーマにシンポジウムを開催。静岡文化芸術大学、浜松医科大学で防災活動に取り組む学生に、熊本大学と熊本県立大学から参加者を迎え、自分にできることや若い力の活かし方について考えました。

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熊本県を訪ねた際に撮影したという、益城町役場。壁には大きな亀裂が入り、建物内には物が置かれたまま。

sainoko_face_01菊池 熊本大地震発生後、実家に帰った学生も多かったそうです。でも、家に帰れない状況の人たちは大学に残り、避難所運営を手伝いました。

 

災害時にこうして行動した学生たちは、もともと防災に関心が高かったわけでも、備えていたわけでもありません。それでも十分に活躍したんです。

sainoko_face_02オオイシ なるほど。緊急事態におかれたら、手探りでも行動できるんですね。熊本の学生たちは、どのような行動をとったのでしょうか?

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sainoko_face_01菊池 避難所では学生たちが食料の分配、避難所の見回りやトイレの管理などをおこなったそうです。

 

たとえば食料の分配も、あるものをほしい人に配ればいいかといったらそうではなくて、決まった時間に一斉に配布をはじめなくてはいけません。

 

多く持ち帰る人や取り損ねる人がいないように、こういった工夫が必要なんです。

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訪問当時、熊本城の天守閣は修復が進んでいたそう。ただ、有名な美しい石垣は手付かずです。

sainoko_face_01菊池 とくに若者がほかの世代よりも得意とするのは、情報収集能力。「知識が詰まった箱=スマートフォン」を持ち、使いこなしている若者はすごいですよ! 過去の大震災から得られた教訓も、すぐに検索して知ることができますから。
sainoko_face_02オオイシ たしかにそうですね。
sainoko_face_01菊池 スマホアプリのLINEを、トランシーバーとして使うこともできます。実家に帰った友達と連絡を取り合って、足りない物資を調達してもらったり、連携も生まれたりしたそうです。
sainoko_face_02オオイシ とっさにそれだけのことができるのであれば、事前に知識をつけておくだけでも災害時に役立ちますよね。
sainoko_face_01菊池 いざというとき、目の前に困っている人がいたら「なにかしたい」と、きっと感じる人たちがいると思います。事前に知識・情報があれば、よりスマートな行動ができるはずです。

 

いつ起きるかはわからないけど、いつか起きるから……。興味を持っていない人たちにも、なんとなく興味を持ってもらうことって大事ですね。まずはなんとなくでいいと思います。

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sainoko_face_02オオイシ いまからできるちょっとした備えってありますか?
sainoko_face_01菊池 水よりもなによりも、モバイルバッテリーを必ず持ち歩いて!」これだけは知ってもらいたいという熊本地震からの教訓です。

 

情報収集や情報発信手段の確保をなによりも大切にしてください。それから、飴やティッシュを普段から持ち歩くこともすぐにできる備えです。

sainoko_face_02オオイシ 飴……ですか?
sainoko_face_01菊池 口にできるものがあるって安心するんですよ。飴なら日持ちもするし、普段から持ち歩いて食べてもいいし。自分が持っていれば、友達や家族や周りの人に分けてあげることもできます。
sainoko_face_02オオイシ 非常時の助け合いにも役立つんですね。

あなたの「大切な人」を守るために備えよう

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sainoko_face_01菊池 最初にお話したとおり、静岡県出身者と他県出身者とでは地震の認識に差があります。シンポジウムのときも、熊本の学生が話していました。「地震の避難訓練はほとんどしたことがなかった」と。

 

静岡県民にとって地震を想定した避難訓練は一般的ですが、他県の人からすれば当たり前ではないんです。

sainoko_face_02オオイシ 静岡県で育ってきたわたしが経験した避難訓練は、ほとんどが地震を想定したものばかりです。他県と違いがあるとは知りませんでした。
sainoko_face_01菊池 全ての人が同じ意識で防災に取り組むことはできません。だからこそ、意識的に防災に取り組む層がいることが重要になります。

 

できる人ができるだけを備える。それも、たくさんの人のためではなく、自分と自分の大切な人のためにでいいと思います。

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sainoko_face_01菊池 わたしは「友達に死んでほしくない」という気持ちで防災に取り組んでいます。友達のためにわたしが少し多く備えておけば、もしものときに助けることができるから。

 

みなさんにも、家族や恋人や友達……大切な人がいるなら、まずはその人を守るために、できることをしてみてほしいと思います。

まずは、飴玉やモバイルバッテリーの持ち歩きから。あなたもはじめてみませんか?

観光で復興支援 旅行情報サイト「Kumarism」

最後に「さいのこ」と交流をした熊本の学生による魅力的な活動を紹介します。現役大学生が運営する熊本の旅行情報サイト「Kumarism(クマリズム)」。

熊本大地震をきっかけに地震からの創造的復興を支援すべく、熊本の旅行情報を一括にまとめ紹介する地域密着型ウェブサイトです。公式HPはコチラ

防災の第一歩!「震災」を考える

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Writerオオイシマオ

1991年神奈川県横浜市生まれ、静岡県掛川市育ち。一冊のノートとの出会いをきっかけに、19歳でフェアトレード雑貨店を起業。現在はカフェという切り口からフェアトレードやコミュニティトレードに取り組む。2016年3月には一児の母となり育児奮闘中。新米ママライターとしても地域や暮らしを見つめ伝えていく。

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