3776を追って鹿児島から富士宮へ移住!
あの掟ポルシェさんも絶賛の若者ハイカー
編集部の安藤です。
今年のお正月、ミュージシャンの掟ポルシェさんがこんなツイートをしていました。
3776を好きになった若いヲタの子が鹿児島から富士宮に引っ越してきた話聞いて何だよお前最高かよと胸熱
— 掟ポルシェ (@okiteporsche) 2017年1月1日
富士山ご当地アイドル・3776(みななろ)を追いかけて、鹿児島から富士宮へ移住した若者ハイカー(3776ヲタ)がいる・・・?
確かmitecoは静岡県への移住を扱うメディアだったはず。「これは取材しなければ」と思い、掟ポルシェさんのツイートを手がかりに調べてみました。
ホントに3776がきっかけで移住したの?
するとさっそく、鹿児島から移住したというハイカーさんが見つかりました。
今日の主役、「ぼんじん」さんです。本人いわく「普段は表に出ないタイプ」とのことでしたが、特別にご協力いただきました。
それでは、富士宮市へ移住するまでの経緯から伺ってみましょう。
ぼんじんさん
1988年生、鹿児島県指宿市出身。元々は映画や読書が好きだったが、アイドルグループ「ももいろクローバー」がきっかけでアイドル好きになる。鹿児島発のご当地アイドル、MINGO!×MINGO!(みんごみんご)の新川紗希さん推し。好きな音楽は、鈴木茂(元・はっぴいえんど)、谷山浩子、ワルター・ワンダレイ(オルガニスト)など。
安藤 | 今日はよろしくお願いします。さっそくですが、念のために引っ越したきっかけを教えてください。 |
ぼんじん | 3776さんが好きになったのがきっかけで、2016年6月9日に引越してきました。富士山本宮浅間大社の向かいにある花と食の元気広場で、3776さんの定期公演を観るためです。 |
安藤 | 鹿児島から引越す前に富士宮市に来たことはありますか? |
ぼんじん | はじめて来たのは2015年7月31日でした。3776さんの定期公演(翌日8月1日に開催)のために訪れたんですが、3776さんの曲を通して知った富士宮やきそばを食べたり湧玉池を眺めたりして。とても印象深く「こういう場所に引っ越したら・・・」と思いました。 |
安藤 | はじめて3776を生で見たときはどうでしたか? |
ぼんじん | 1日も欠かさず3776さんの曲を聴いていたので、本物を見たときに感動して号泣してしまいました。 |
安藤 | 好きなアイドルやバンドを見たとき、感動して泣いてしまいますよね。 |
ぼんじん | 一緒にチェキも撮ってもらいましたが、恐れ多くて緊張しました。毎日、画面越しに観ていた人なので、TVスターのような。それと、Twitterでは交流のあったハイカーさんたちともはじめてお会いしたのですが、みなさん親切にしてくださって。このときは3泊4日の旅行だったんですが、富士宮を離れたくないなと思って、鹿児島に帰ってすぐ引越しを決意したんです。 |
富士宮で死ぬ覚悟がある
鹿児島出身のぼんじんさんですが、「富士宮が地元になった」と言います。富士宮にコミュニティがどんどん広がっていったきっかけも3776だそうです。
安藤 | 3776の定期公演や曲への思い入れで引越すなんて、すごいエネルギーですよね! |
ぼんじん | 引っ越しは3776がきっかけだったんですが、じつはそれだけではありません。JR富士宮駅から少し歩くとマイロード本町という商店街があるんですが、ちょうどお祭りの時期でにぎわっていたんです。イベントがあったり子どもが道路にらくがきしてたりして、商店街の温かい雰囲気を感じて「引越してみたいな」と。 |
安藤 | なんと。町の雰囲気にも惹かれたんですね。引越してみてどうですか? |
ぼんじん | 富士宮やきそばの味がお店によるんだなと感じました。具材もソースもまったく違うのは、住んでみてわかったことですね。 |
安藤 | 富士市の「蛸のつぶやき」さんは行きましたか? |
ぼんじん | 行きました。「蛸のつぶやき」さんはもちろん、富士宮市のお宮横丁の「すぎ本」さんもおすすめですね。 |
蛸のつぶやきさんの富士宮やきそば。このお店は3776が参加したムーンライダーズ、岡田徹さんのセルフカバー曲『マスカット ココナッツ バナナ メロン』のPVで使用されています。
安藤 | ほかに、富士宮と鹿児島ではどんな違いがあるんでしょうか? |
ぼんじん | 日の出の時間が早いなと感じました。6月の富士宮は朝4時過ぎには空が明るくなるんですが、鹿児島より約40分早いみたいですね。それと、コンビニに登山棒が置いてあったり、夕方4時にチャイムが鳴ったり、雲の流れが速いからか鹿児島より天気が変わりやすかったりするんです。 |
安藤 | へぇ、それは知らなかったです! もうすっかり地元ですね。富士宮には住み続けたいですか? |
ぼんじん | そうですね・・・極端かもしれませんが、富士宮で死ぬくらいの覚悟で来ています。いまは、困ったときには相談できる人も身の回りにいるので。 |
安藤 | すごい覚悟ですね・・・困ったときに相談する人とはハイカーさんでしょうか? |
ぼんじん | いえ、3776さんがやっていた水曜元気広場でのつながりですね。富士市や富士宮市のお店を紹介するためのライブで知ったお店に伺っているうち、その人たちと知り合いになりました。 |
安藤 | すごい! 水曜元気広場から、そんな風にコミュニティが広がっていくんですね。 |
ぼんじん | もちろん、私くらいかと思いますが(笑) |
『ノートブックの私』を聴いて「只者ではない!」と感じた
ぼんじんさんの移住・定住は、すべて3776がきっかけでした。ここからは「なぜ、そんなに3776が好きなの?」という理由について聞いてみましょう。
安藤 | ここまで富士宮への移住を軸にお話しを伺いました。きっかけである3776に対して、ぼんじんさんの想いを教えてください。 |
ぼんじん | 元々、ももいろクローバーさんがきっかけで、アイドルが好きになったんです。それで1960年代から現在まで、楽曲を中心に地方のアイドルも含めていろいろ調べていました。3776を好きになったのは、2014年の3月ころだったでしょうか。前身グループであるTEAM MIIの『ノートブックの私』という曲を聴いてから、彼女たちのことが好きになりました。 |
安藤 | 『ノートブックの私』は、どんなところが好きだったんですか? |
ぼんじん | 郷愁的な雰囲気というんでしょうか。柔和で繊細な歌詞と、曲中の印象的なギターのディレイも含めて好きになりました。 |
安藤 | 確かに、ステキな曲ですよね。 |
ぼんじん | この曲を作った人は只者ではない、さらに、そんな曲が地方で生まれるなんて・・・と衝撃を受けたんです。そこから、3776のほかの曲も聴き始めました。『序曲』や『心配のタネ』、『さよなら小学生』も好きな曲です。『心配のタネ』はU2※のようなギターカッティングが好きです。 |
安藤 | プロデューサーの石田さんが「すごい!」というお話しだと思うのですが、どんな印象をお持ちでしょうか? |
ぼんじん | 3776のライブ中、PAをしているときの表情を見ると厳格な印象を受けます。一方で、ライブ中に冗談を交えたMCをしたりアイドルさんといっしょに踊ったりと、誰よりも楽しそうな瞬間もあるんです。なんともつかみどころのない魅力がある人だなと。 |
安藤 | 確かに。 |
ぼんじん | 地元に根付いたものを取り入れるというご当地アイドルの命題をクリアしつつ、ニューウェイブやアンビエントのような音楽性、複雑な変拍子にポリリズムも取り入れていますよね。それでアイドルソングが成り立っているのが不思議でならないなと驚きます。 |
※U2:アイルランド生まれの世界的ロックバンド。1980年に結成し、コンサートに関するさまざまな記録を樹立した。
ちよのさんと話してみたときの印象
ぼんじんさん作の井出ちよのさん。これまで、落書き程度しか描いたことがなかったそうです。
3776を楽曲から好きになったと話すぼんじんさんですが、ちよのさんや3776の妹分アイドルのMi-II(ミートゥー)に対してのお話しも教えてくれました。
安藤 | 3776のSeason3というと、ちよのさんがひとりでやっていますよね。彼女に対しては、どんな印象がありますか? |
ぼんじん | 天真爛漫ですが、物腰が低くて周りへの配慮ができる人だなと感じます。たとえば、話しているときに「誰かを批判しているかもしれない」と感じたら、自分が喋った内容を修正するんです。頭の回転もよく、気遣いの上手な人だなと感じました。 |
安藤 | 私もちよのさんお話ししたときに、頭の回転の速さを思いました。ところで、チェキを撮ってもらったときに本人と話すと思うんですが、実際に話してみた印象はどうでしょうか? |
ぼんじん | チェキのときの対応はあっさり目なんですが、私はアイドルと話すのが得意じゃないのでほどよいという感覚です。 |
安藤 | なるほど。ちなみに、Mi-IIと比べてみるとどんな印象でしょうか? |
ぼんじん | Mi-IIさんのほうがちよのさんよりぐいぐい来る印象です。物販はメンバーとたくさんお話しできますよ。・・・あ、彼女たちは3770(3776の研修生グループ)時代から、2年くらい3776やTEAM MIIの曲を歌って、踊っていて、すっかり自分のものにしている気もします。ファンのことを大切に考えていて、いい子たちが揃ってると思います。 |
何万人かのうちのひとりでもいいから3776やMi-IIを知ってほしい
全国流通していないCDや自作のブリーフケースなど、ぼんじんさん所有のグッズは多数。
いまテーブルに並んでいるのは、ぼんじんさんが数年かけて集めたグッズたち。じつは、ぼんじんさんが自分で作ったものもあるそうです。
安藤 | 今日は、ぼんじんさんに3776グッズを持ってきてもらっています。CDは会場などで見かけたことがありますが、このブリーフケースって発売していたものなんですか? |
ぼんじん | 鹿児島に住んでいたとき、カッティングシートを使って自分で作りました。普段から持ち歩いていたので、少し汚れてしまったんですけど・・・。何万人にひとりかもしれないんですが、3776やMi-IIの名前を見て興味を持ってくれる人がいてほしいと思ったんです。 |
安藤 | 自作なんですか! |
ぼんじん | ほかにも、公式サイトでCDを買ったりWEBアンケートに投票したり。ワンマンライブのアンケートでは、『ノートブックの私』や『湧玉池便り』、『誰かのモノです』に投票しました。 |
安藤 | 石田さんが「『湧玉池便り』に投票した人もいた」と言っていましたが、ぼんじんさんだったんですね。 |
ぼんじん | あとは、「すきっと」というカラオケの機種で、自分が推しているアイドルの曲を歌って応援するイベントがあったので、3時間パックを何回も通って3776の曲を歌い続けたんです。曲を歌うとポイントが入るんですが、結果的にTO(トップオタ)賞を獲得しました。そんなこともあって、石田さんも「鹿児島にファンがいる」ということは知ってくれていたみたいです。 |
自分の立場だったらうれしいと思う
3776のために、さまざまな行動をしているぼんじんさん。最後に、ぼんじんさんがなぜここまで尽くしているのか教えていただきました。
安藤 | 3776に対してすごいエネルギーですよね。なにが、ぼんじんさんをそうさせるのでしょうか? |
ぼんじん | ただ、3776さんのお力になれたらいいなと。「遠くから応援しているファンもいる」と相手に伝わることは、自分に置き換えて考えたらうれしいと思うんですよ。その気持ちが伝わることは、ムダではないかなと。 |
安藤 | 静岡のご当地アイドルの存在が鹿児島まで伝わり、その地で愛されているってことですからね。さらにその勢いで移住してしまったなんて、とても強いエネルギーが必要なんじゃないでしょうか。 |
ぼんじん | 逆に離れすぎていたので、かえって思い入れが膨らむなと思いました。いまは、ちよのさんが観られないとか石田さんの曲が聴けないとか、そういう生活のほうが考えられないです。 |
ご当地アイドルの存在が移住のきっかけを作り、移住者がコミュニティに溶け込む筋道を作ったという事実。今日のお話しのなかに、あらためて3776が持つパワーや移住に関するヒントがあったような気がします。
最後に、今日の取材も「彼女たちのためになるなら」と引き受けてくれたぼんじんさん。あらためてこの場を借りてお礼を言いたいです。ありがとうございました。