「3776を聴かない理由があるとすれば」再現ライブレポ!
絶賛の嵐で新たな伝説誕生!@富士宮
お待たせしました。富士山ご当地アイドル3776のアルバム再現ライブレポートをお送りします。
ライブ前に会場近くの富士宮浅間大社へお詣りに行きました。2018年夏、記録的な猛暑。こんな暑さが続くと湧玉池に飛び込みたくなります。 (飛び込むのはダメ絶対)
あらめまして、富士山ご当地アイドル3776の名盤「3776を聴かない理由があるとすれば」のアルバム再現ライブが2018年7月21日(土)22日(日)と富士宮市民文化会館で開催されました。
かつてアルバムの一部を再現するライブは行われましたが、全編再現という試みは今回が初。
さらに、両日Version AとBの2種類の公演があり、「オタ芸」大歓迎回と「オタ芸」禁止回まで定められているところがなんとも3776らしい。こちらについては後ほど言及します。
アイドル業界どころか音楽業界を震撼させた大名盤「3776を聴かない理由があれば」の再現ライブということで今回のライブはかなり注目度が高く、会場の富士宮市民文化会館には多くのハイカー(3776ファンの総称)が駆け付けました。なかには、はるばるサンフランシスコや上海から駆け付けたハイカーも!※ハイカー=3776ファン
結論から言いましょう!
3776は新たな伝説をつくりました!!!
名盤「3776を聴かない理由があるとすれば」
ここで「3776を聴かない理由があるとすれば」について簡単に振り返っておきましょう。
「3776を聴かない理由があるとすれば」のジャケット
3776を聴かない理由があるとすれば
- 2015年リリース、富士登山をテーマにしたコンセプトアルバム
- 富士山の標高にちなんで、全体が3776秒で構成されている。
- 1秒につき1m登ると想定し、アルバムを通して聴くと疑似富士登山ができる
- アルバム再生と同時にカウントアップが始まる
- カウントアップされる秒数=標高が曲に関連している
- 全体を3776秒に調整するため[Introduction] [Interval] [Ending]が設けられている
- 曲の前後にナレーションが導入されている
- 3776の過去曲やTEAM MⅡ※の曲がサンプリングされ、随所に散りばめられている
- 「3776」 の数字にちなんだ拍子、連符、フレーズなどが導入されている
- ボーカル・ナビゲーターは井出ちよの
- 作詞・作曲・編曲は3776プロデューサー石田彰
※TEAM MⅡ(チームエムツー):富士宮市制70周年を記念してつくられた3776の前身アイドルグループ。
つまり、凝りに凝った仕掛けが幾重にも張り巡らされた完成度の高いアルバムということです。1年半前に3776プロデューサー石田彰さんにアルバム全曲解説いただいたコチラの記事も参考に。
「3776を聴かない理由があるとすれば」再現ライブ会場にはふたつのステージが!
会場に入り、目についたのは、ギターが置かれている右手後方の小さなステージ! ということは・・・3776プロデューサー石田彰さんが生でギター弾くこと確定! これにはアキラー(石田さんファン)歓喜!
今回のアルバム再現ライブにはオープニングアクトがありました。
◇21日オープニングアクト O’CHAWANZ(おちゃわんず)from 東京
文化系HIPHOPユニットO’CHAWANZ、独特のゆるいフロウがクセになる! 擬似富士登山アルバム「3776を聴かない理由があるとすれば」をリスペクトし、O’CHAWANZにゆかりのある筑波山(標高877m)を登山〜下山するというコンセプトでパフォーマンス。
◇22日オープニングアクト うさぎのみみっく!! from お月さま
中学生とは思えないメンバーのポテンシャルと楽曲のクオリティで会場を驚かせたうさぎのみみっく!! うさみみ!!は充電期間を経てメンバーを増員し、活動拠点を東京へと移します。今後の活躍に期待!
7月21日 Version A
それではレポート開始。さすがに全4回の公演を全てレポートするわけにはいかないので、21日のVersion Aのレポートをお送りします。
オープニングアクトが終わり、ステージ現れたのは我らが井出ちよのさん! 3本指を立て、(3、2、1・・・)と無言で1本ずつ折っていき、
「スタート〜!」
こうして、待望のアルバム再現ライブ=3776秒の富士登山が幕を開けました!
「3776を聴かない理由があるとすれば」再現ライブ@富士宮のメンバー編成は以下のとおり。
- ボーカル:井出ちよの
- サポート:みゆう(元MI-Ⅱ※)、あきな(元MI-Ⅱ※)
- ギター:石田彰
※Mi-Ⅱ(ミートゥ):グループ形態であった初期3776やTEAM MⅡの楽曲を持ち曲として活動していた富士山麓グループ。2018年3月にあきな、みゆう、すずなが所属していた第1章が終了。2018年7月に全員新メンバーという体制で第2章がスタートことを発表。
1.[Introduction]
「あなたは…富士山に…登ったこと が…ありますか?」とナレーションを始めるちよのさん。
前回の取材で、アルバム再現ライブは「広辞苑を頭に入れるのと一緒」と語ってくれていましたが、歌とダンスだけでなく、ナレーションもせねばならないこのライブ、相当レッスンをしたに違いない。
3776秒のカウントアップも開始。すると、ちよのさんの後方に現れたのは登山者に扮した山ガールファッションの元Mi-Ⅱのあきなさんとみゆうさん。カウントアップに合わせ一歩一歩進み、左から右へステージを横切って行きます。
2.登らない理由があるとすれば
ちよのさんの「3776を聴かない理由があるとすれば再現ライブー!」の声に沸く会場。
軽快なダンスとファンクなギターのアルバムリード曲「登らない理由があるとすれば」が始まると、ちよのさんのステージも見たいわ、石田さんのギターも見たいわで、首が忙しい! 石田さんのステージ近くの席にはアキラーが陣取り、ここぞとばかりに演奏を堪能していました。
石田さんに聞いたところ、今回のライブでは一部を除き「3776を聴かない理由があるとすれば」の録音で使ったギターと同じギターを弾いていたそう。ギターの演奏もできるだけ忠実にアルバムの再現をしていたんですね。
3.[ Intervel A] / 4.水でできている
[ Intervel A ]では、ちよのさんとみゆうさんが「私の世界遺産」※を一部パフォーマンス。※私の世界遺産:3776のファーストシングル。
惜しまれつつ活動を終了したMi-Ⅱ。「3776を聴かない理由があるとすれば」には、このアルバムが発売する以前の3776の曲がサンプリングされており、その中にはMi-Ⅱがパフォーマンスをしていた曲も含まれているため、みゆうさんとあきなさんがMi-Ⅱであったときと同じようにパフォーマンスする場面がライブ中に何度も見られました。思わぬ形でのMi-Ⅱプチ復活に胸熱のファンも多かったのでは?
ここでカウントアップは483 = 標高483mに到達!
このタイミングで披露されたのは実際に標高483mに位置する白糸の滝をイメージした「水でできている」。ギターの音色が清らかな水流を連想させます。
歌い出しではちよのさんが歌詞を飛ばすハプニングが! さすがのちよのさんも今回のライブは緊張していたのか? これには「がんばれちぃちゃん!」と心の中で叫んだハイカーも多かったはず。
5.[Interval B] / 6.洞窟探検 / 7.避難計画と防災グッズ / 8.日本全国どこでも富士山
標高は693mに。
ソリッドなギターが印象的な「洞窟探検」は標高693mに位置する人穴洞窟がテーマ。サポート担当のみゆうさんがちよのさんの後ろにいると、安心してステージを見ていられました。
続いて「な〜んだ。緊急地震速報の通知音ね」と、ちょっとやそっとの地震では動じない「静岡県民あるある」から始まる「避難計画と防災グッズ」。
恋愛禁止を守り、素敵な彼から避難するアイドルの心情を面白おかしく綴った曲ですが、暴れまわるギターが不安を煽り、震災時の混乱も連想させます。
会場のボルテージが上がったところで次の曲「日本全国どこでも富士山」。サポートがいなければ披露できないこの曲は久しぶりのお目見え。
アルバムの「全国には『富士』と名のつく山がたっくさんあります。2015年現在、その数は少なくとも340〜」というセリフが、ライブでは「2018年現在〜」に変更されていました。
9.[ Interval C] / 10.春がきた / 11.湧玉池便り / 12.生徒の本業
1460m、二号目に到着!
コミカルな曲が続いた流れを一変させる「春がきた」。シンプルな歌詞、ギターのつま弾き、腹に響く低音、炸裂するキックドラム、パーカッションのポリリズム。ステージ上のちよのさんは季節の移ろいの中で舞い踊る妖精のよう。
続いて、富士宮浅間大社の境内にある湧玉池がテーマとなっているアンビエントかつ壮大な楽曲「湧玉池便り」。もともとTEAM MⅡの曲だったこの曲は、ダブアレンジされてアルバムに収録されています。
3776を聴かない理由があるとすれば版「湧玉池便り」が披露されるのは意外にもこの日が初めて。Version A公演の「湧玉池便り」のボーカルを務めたのはあきなさん、コーラスはみゆうさんでした。
ちよのさんにとっては休憩ポイントだったよう。曲中、「ニュートラル」※の一部が歌われる場面では3人が登場! 圧巻のステージでした。※ニュートラル:3776がかつてグループだったときの楽曲。ボサノバっぽいギターとエレクトロニカが絡み合う名曲。
「湧玉池便り」の神秘的な空気はどこへやら、ちよのさんがもうすぐテストだったことを思い出し始まる「生徒の本業」。みゆうさんによってステージ上に学校の椅子が持ち込まれ、ちよのさんが教師、みゆうさんが生徒に扮して曲を披露。変拍子を飄々と歌いこなすちよのさんにはさすがのひと言!
13.[Interval D] / 14.旅ふぉとセレクション
2400m、五合目にたどり着きました!
「このあたりでしか見れない高山植物も自生していますよ」というナレーション。のバックに流れるのは「コケモモ」※。さぁ、登山はここからです!※コケモモ:3776がグループだったときの楽曲。高山植物コケモモが元ネタ。ナレーションのとおり、コケモモは富士山5合目付近で観察することができる。
2490m、すぐに六合目に到着。
「この辺で記念写真でも撮りましょうか?」のナレーションから始まる、日本各地で撮影されたちよのさんのブロマイド「旅ふぉと」のキャンペーンソング「旅ふぉとセレクション」。曲中のクラップで会場の一体感は高まっていきます。
15.[ Interval E ]/ 16.八合目にゃまだ早い
2780m、新七合目!
富士宮口から富士山に登ったことがある方ならおわかりかと思うのですが、七合目は「新七合目」と「元祖七合目」があるのです。ややこしや!
[ Interval E ]はもっとも長いインターバル。ここでは「ゆるメーター」※でラップをちよのさんとみゆうさんを披露。※ゆるメーター:TEAM MⅡの楽曲。原曲のアイドルラップのゆるさハンパないって!
3010m、元祖七合目!
3000mを超えたところでクセのあるリズムに面食らう、アヴァンギャルド・ポップ「八合目にゃまだ早い」。この曲を聴いている最中、あらためて「3776を聴かない理由があるとすれば」に収録されている曲がバリエーション豊富で緩急が激しいと実感しました。
17.[ Interval F ] / 18.「春は巡る」
3250m、今度こそ八合目!
バラード「春は巡る」。アコースティックギターの響きに色を塗り替えられたように静まる会場。歌だけで魅せるちよのさんに釘付けになる観客。
「春がきた」に続き、タイトルに「春」が入っているこの曲ですが、ここで歌われている「春」とは、季節のそれではありません。過去に想いを馳せながら、さあ、頂上へ。
19.「3.11」
3460m、とうとう九合目!
東北地震が発生した日付をタイトルに冠するこの曲は、「震災復興支援ソング」としてつくられました。アルバムに張り巡らされたさまざまな仕掛けの力が集約され、心に染み入る「3.11」。東海地震発生後や富士山噴火後の世界を思わせる歌詞は、「今をどう生きるか」問いかけてきます。
ポニーテールを振り回し熱唱するちよのさんは、神々しさを纏って見えました。
あともう少し、がんばれ3776!
20.[ Ending ]
3776m登頂成功!
「3776を…聴かない…理由があるとすれば…ふぅ」ステージに座り込んだちよのさんの最後のセリフは演技を超越していました。会場からは万雷の拍手!
ここに至るまでの努力、偶然、・・・いろいろなものが積み重なって実現したアルバム再現ライブ。「塵も積もれば山となる」とはよく言ったもので、今までの集積が富士山になったということでしょう!
Version AとBの違い
続いて、21日のVersion B公演を見ました。Aとの違いは以下のとおり。
- ナレーション担当は、Aがちよのさん、Bはあきなさん
Bではちよのさんがナレーションをしない分、パフォーマンスに集中できていた印象。あきなさんはサポートが決まってから本番まであまり時間がなかった分、相当練習したのだろうと思います。
- みゆうさんとあきなさんのサポートパートがAとBでところどころ異なる
- 湧玉池便りのボーカルが、Aはあきなさん、Bはちよのさん
- ちよのさんがステージ上でお茶を飲まないのがA、飲むのがB
Bではあきなさんが水筒をちよのさんに渡し、ステージ上で水分補給する場面が見られました。
- 石田さんの使用するギターと演奏パートがAとBで異なる
Aはストラトとアコギ、Bはレスポールとガットギター。ギターを使い分け、AとBで別パートの演奏をしていました。
AとB、2つのVersionがあることでよりライブ楽しむことができました。演者にとってはかなり大変だったと思いますが、いつも多様な楽しみ方を用意してくれるのが3776クオリティ。
「オタ芸」大歓迎回、「オタ芸」禁止回とはなんだったのか
21日のVersion Bは「オタ芸」大歓迎回との名目でしたが、3776はオタ芸がしにくいアイドルなので、ハイカーが試されている回だったわけです。蓋を開けてみると・・・
オタ芸は申し訳程度でした!(笑)
ミックス(タイガー! ファイバー! のアレ)はありましたが途中から失速し不発に(笑)「湧玉池便り」では、圧巻のステージにオタ芸する者どこへやら状態!
それでも光り輝くサイリウムにはファンの愛を感じずにはいられませんでした。
そして、22日のVersion A「オタ芸」禁止回。そもそもどこまでがオタ芸か分からず拍手さえしてよいのか躊躇っている方もいましたが、こちらは通常回と大きな変化はありませんでした(笑)
井出ちよのさん新衣装のサプライズ!
22日のライブでは、ちよのさんが新衣装で登場!
以前の衣装と雰囲気がガラッと変わった青を基調とした新衣装。個人的にはガンダムの主人公が物語後半になり、新しい機体(モビルスーツ)に乗り換えて敵をバッタバッタ倒していくときのような無敵感を感じました(笑)
なんとこの衣装の製作はちよのさんのお母様! お母さんがつくった衣装を着てるアイドルって、最高じゃないですか!
アルバム再現ライブに絶賛の嵐
回を重ねる毎に良くなるパフォーマンス。2日間4公演、最高のパフォーマンスを見せてくれたみなさんに感謝。
終演後、興奮冷めやらぬ中、ハイカーのみなさんにライブの感想を聞いてみました。いくつか紹介させてもらいます。ご協力いただいたハイカーのみなさん、ありがとうございます。載せられなかったハイカーのみなさんごめんなさい!
くまひこさん
――「雨降って地固まる」と思ったんです。事前にトラブルがあって参加できなくなった子もいたわけですけど、Mi-Ⅱの2人とちよのちゃんの3人で、たぶんものすごい大変やったと思うんですけど、それをきっちり乗り越えてやりきってくれた。そこに絆を感じたし、ずっと見てきた人間からすれば、感動があったなぁと。
teruyasu takayukiさん
――「3776を聴かない理由があるとすれば」は東北震災以降のアーティストの想像力が結集した最上級の作品で、シン・ゴジラよりも「3.11」の方が上回っていると思います。今日のライブを見て、富士宮から石田さんが世界へ叫んでいるアルバムだと思いました。
3776を見るために日本へ移住したロジャーさん
――去年までサンフランシスコに住んでいましたから、ずっと3776のワンマンを見に行きたかったけど行けなかったから・・・見れて幸せです。AとBのバージョンで石田さんが弾いているギターパートが違って、それを聴いてアルバムの曲がもっとわかるようになった気がします。
制服アイドル研究家 森伸之さん
――21日に着ていたセーラーの衣装は井出ちよのさんが約2年半着ていたものです。そういう意味では中学を引きずってたんですね。
今までずっとパステルカラーだったものが、今回は色調が変わってシックになった。新衣装のセーラー服風の襟とパフスリーブは、井出ちよのさんからのお母さんへリクエストらしいです。新衣装になったことで、高校生としての井出ちよのが始まって、心身ともに成長したっていうのを衣装でも表していたなと。
とはいえ、制服アイドルの定義でいうと、おんなじ衣装を長く着れば着るほどいいので、以前のセーラーの衣装も、これからも3年、4年と着続けてくれたらそれはそれで嬉しいですね。
再現ライブを見て4回泣いた掟ポルシェさん
――2年前のCD発売記念ワンマンはアルバムの曲が3曲と既存曲、その日いきなり発表される新曲、あと寸劇だったんですよ。石田さんは芸術家でありサービス精神の人だから、ただアルバムの曲を多めにやるだけのライブじゃあ芸がないと思っていたんだろうなと。
こんなに曲だけをやってくれるワンマンは今までなかったです。いや、できなかった事情もわかります。
それは井出さんの喉の調子もあって、3776秒もの長時間休みなく歌い続けるのを2日間も繰り返すなんてことは2年前の井出ちよのだったらできなかった。去年から始めたボイストレーニングの成果もあったと思います。
物販で「井出さん、今日体力的に大変じゃなかったですか?」って聞いたら、レッスンをかなりやったらしく、「練習しているうちに慣れました」と言ってました。こんなに井出ちよのが歌い続けても声が裏返らないなんて、かつては想像できなかったです。井出さんに体力がついて昔より歌が上手くなったから、3776秒を成立させることができたんですね。
「3776を聴かない理由があるとすれば」という名盤アルバムを、曲間なしのリアルタイムで再現するだけの純度の高いライブ。石田彰の作り上げた最高の芸術の再現は、井出ちよのの成長によって、今日ここに結実しました。今日が3776のライブの中でベストですよ! 俺から言えることはこれだけです!
あらためて3776を聴かない理由があるとすれば?
21日の物販で浴衣姿を披露した井出ちよのさん
語り継がれるであろうとんでもないライブをやってのけた3776。富士山登頂に成功し、これからどんな景色を見せてくれるのか? 今後の活躍に期待! 3776の最新情報はコチラ。