デザインのベースを造り、地域から広げる
シェアオフィス「NUMAZU DESIGN CENTER」
沼津駅・南口から西に向かって徒歩10分弱。2018年11月下旬、沼津市大手町「新仲見商店街」の一角に、シェアオフィス「NUMAZU DESIGN CENTER」がオープンしました。
沼津市民にとっては馴染み深い、どこか懐かしい雰囲気を醸し出す仲見世〜新仲見世商店街間。
今も昔も沼津の中心街のひとつであるこの場所から、デザインを通して町に新たな風を吹き込もうとしているNUMAZU DESIGN CENTERを訪ねて来ました。
グラフィックデザインに特化したシェアオフィス
沼津市はアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地。年末の仲見世商店街は、「Aqours」メンバーの紅白出演決定で盛り上がりを見せていました。各キャラクターのカラーが色とりどりに際立つ仲見世商店街を越えると、次なる通り新仲見世商店街へ。
レトロな雰囲気が漂う新仲見世商店街は距離的には短いものの、独特の街の魅力がギュッと詰まっているような印象を受けます。
商店街の一角、じっくりと読み込んでしまう売り文句をかかげた「テレビのイマイ」のシャッターが目印。そこからくるっと振り返れば1階に中華料理屋、その横の階段を上って2階部分にNUMAZU DESIGN CENTERがあります。
街のディープな部分が反映されているかのようなエリアです。
階段を上がると、スタイリッシュな扉が見えてました。空気感がガラリと変わる空間の予感に、ドアを開けると・・・。
白が基調となった、清潔感あふれるオフィスが現れました。レトロな商店街にいたかと思えば、佇まいがまったく異なる空間の出現に、脳内転換が突然すぎて驚き。
こちらはグラフィックデザイナーを中心に、フリーランスで活動をしている人たち向けに特化したシェアオフィス。玄関を入ってすぐのスペースにはソファ・テーブル、椅子が並び、いくつにも間切りをされた目の前の棚には、デザインに特化した書籍が並んでいます。
初めて見る専門書は、背表紙を眺めているだけでもワクワク。
何百冊もの本が並ぶ棚は、各ボックスでカテゴリ分けがされているそう。
デザインに詳しくない私でも、興味を惹かれるような本がいくつかありました。そのなかには、将来の選択肢のひとつとしてグラフィックデザイナーを指南する内容のものもあり、興味のある学生は要チェック!
この図書スペースは一般の方向けに解放されており、平日の10:00~17:30ならどなたでも利用することができます。
フリーランス同士の“横のつながり”を持てる場所
図書スペースの奥には、7席のパソコン利用者向けの専用ブースとミーティングスペースが。
すでにこちらには、月単位で固定してご契約されているデザイナーさんたちがいらっしゃるそう。ご自身もフリーのグラフィックデザイナーとしてご活躍されている、代表の大木さんに少しお話を伺ってみましょう。
Kajo | すでにご契約されている方もいらっしゃるとのことですが、新規で利用を考えている場合、どのようなペースでの利用が可能ですか? |
大木 | 月契約でご使用いただく場合、365日・24時間の利用が可能です。また固定席以外に、1日単位(ドロップイン)でもご利用いただけます。 |
Kajo | グラフィックに特化しているということですが、どういった方々がご利用されているのでしょうか? |
大木 | 月で契約されている方は、みなさんグラフィックデザイナーです。現役のフリーランスで活躍されている方で、経歴もさまざま。都内から沼津へ移住してきた方が多いですね。 |
Kajo | 都内や都市部以外にもグラフィックデザイナーの方々、いたんですね・・・。 |
大木 | そうなんです、みなさん驚かれます。横のつながりが薄いので可視化されないんですよ。ここの利用者にはオープンな方が多いので、同業者ではあるもののプラスに転じる関係が築けています。 |
Kajo | ちなみに私のような一般人でも気軽に利用できるでしょうか? |
大木 | もちろんです! 街の人にも気軽に訪れてもらえるような場所を目指しています。人の交流は街の活性化につながりますから。 |
ご自身もグラフィックデザイナーとして15年以上、キャリアを積まれている大木さん。
東京から沼津への移住をきっかけにフリーランスに転向したものの、地方でフリーランスの仕事をしようとしても思うようにうまくいきませんでした。今までのやり方が通用しないという現実を突きつけられたそう。
その経験から「実際に、地方でグラフィックデザイナーの仕事を諦めてしまう人たちもいるのではないか」と気づきます。地域のデザインについての考え方・価値観を変えていくきっかけのベースとして、このシェアオフィスを立ち上げたそうです。
Kajo | そういえば室内の照明が、通常のオフィス以上に明るい気がしますが。 |
大木 | そうなんです。グラフィックデザインは色を見る作業が必須のため、照明は明るく設定しています。 |
Kajo | なるほど、目から鱗! |
色の見本や紙のサンプルなど、作業をするうえでの必要資料も充実。中央部分には作業台がおいてあるなど、手作業が多いグラフィックデザイナーのためのノウハウが詰め込まれた空間となっています。
沼津から都心へと出て行ったフリーランスの方や、地元に戻り独立を考えている方など、2拠点生活の候補地にオススメです。
「NUMAZU DESIGN CENTER」のこれから
NUMZU DESIGN CENTERでは今後、ワークショップの開催なども継続的に計画されており、沼津の街をベースとしたさまざまなイベントも予定しています。市外・県外からも利用者が訪れ、日々感性の交換が行われるこの場所の居心地の良さに、大木さんのお人柄が滲むようです。
大木さんが仕掛けるさまざまな催しがやがて街全体を大きな渦となり、沼津を舞台に日常にアートやデザインが普及していく、そんな未来の予感がしました。