ダイバーのメッカ「大瀬崎」の神池
これを神秘と言わずなんと呼ぶ!
先日、筆者が紹介した「内浦漁協食堂 いけすや」から、海沿いを車で南下すること約30分。
市町村でいえばまだ沼津市になりますが、ここにとんでもない「神秘の泉」があるのです。
伊豆半島西岸から駿河湾に突き出た岬「大瀬崎(おせざき)」。海原越しに富士山を望む素晴らしい眺望です。
県道17号からのこの構図は、カメラマンにも親しまれています。
しかし“泉”がどこを指すのか、これだとわかりませんね。次の写真で、もう少し答えをお見せします。
海に囲まれていながら淡水の池
それでは、ドローン・フォトグラファーでもある筆者、渾身の一枚をご覧ください。
上空から俯瞰して見ると、まるで巨大なイヤリングを思わせるフォルム。“泉”とは、この岬の先端にある池です。まるで海とつながっているかのようですが、実際はつながっていません。
別の角度から、もう1枚。
池の畔から、もう1枚。
これは岬に鎮座する大瀬神社の神域にある、神池とよばれる淡水池です。そう、海に囲まれていながら淡水なのです。
池のなかでは鯉やフナ、ナマズなど無数の淡水魚が生息しています。鯉は神の使いである、だなんて言い伝えもありますね。
神社の鳥居をくぐると受付があり、鯉のエサを購入できます。おびただしい数の鯉が一斉に群がってくるので、ちょっとビックリするかも……。
筆者はこのときエサは持っていませんでしたが、写真のような状況でした。よほどお腹が空いていたのでしょうね。
神聖なる神の池。だから調査もしない
昔から伊豆半島に伝わる「伊豆七不思議」という七つの物語があり、神池はそのひとつに数えられています。
以前、筆者が取材した、ある東海大学海洋学部の教授がこんな風に言っていました。
「神池の不思議を解くために水質調査をしたいと、大瀬神社の宮司さんに依頼しました。すると“どうか調べないでほしい”とおっしゃられて。神聖な池だから、と」。
大瀬神社の鳥居と本殿。神池もこの神域内にある。
どうやらこの池が発生してからいままで、まともな調査の記録というのはない模様。うーむ、ますます気になります。
だからといって、池の水をペットボトルに汲んだりしないようお願いします。絶対に。
大瀬崎はダイバーのメッカでもあります。前述の教授によればこの辺りには、駿河湾南方から黒潮が流れ込んでいるそう。水温の高い黒潮が流入することで、水温の高い海域にしかいない魚類、あるいはホ乳類がやってくるのです。
大瀬崎でダイビング経験のある筆者の知人によりますと、エイやマンボウ、ウミガメなどが見られるそうです。
ちなみに私、駿河湾フェリーで土肥港へ向かう際、伊豆半島沖でクジラの親子が泳いでいるのを見たことがあります。驚きましたが、いま思えばそれも珍しいことではなかったのかもしれません。
また大瀬崎一帯を覆い尽くす「ビャクシン樹林」も見もの。国の天然記念物に指定されています。なかには樹齢1,300年以上の老木もあるとのこと。
樹林のなかにある、大瀬神社のご神木。
海の向こうにそびえ立つ富士山と、霊験あらたかな社や泉、重厚な年輪を刻んだビャクシン。見どころ多すぎの大瀬崎でした。
なお、岬でのドローン使用は大瀬神社の許可が必要です。社殿や神池付近では飛行しないようお願いします。