伝統製法の逸品を求めて「マルイエ醤油」へ
感動に出会う大井川鐵道沿線の旅【3話目】

  • posted.2017/06/20
  • Takashi
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伝統製法の逸品を求めて「マルイエ醤油」へ 感動に出会う大井川鐵道沿線の旅【3話目】

魅力いっぱいの大井川鐵道沿線を語るシリーズ第3談。今回は家山駅から徒歩5分の場所にある醤油・味噌の醸造元を紹介します。

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明治43年から続く「マルイエ醤油 川根本家」。創業年を聞かなくても、店構えからひしひしと風格が伝わってくるようです。ここを紹介したかったのは、昔ながらの伝統製法による醤油・味噌づくりを守り続けているから。

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大量生産・大量販売という時代になって久しいですが、だからこそこのような店が残っていることを、筆者は嬉しく思うのです。加えて“多事業化”していないこと。ある専門に特化しながら長年続けている事実は、商品の質を物語っていると感じます。

まずは100年の蔵を見学! 酵母が生き続ける二十石桶

四代目当主の村松岳さんに、まずは蔵へ案内してもらいました。普段も見たいという方には、蔵見学を受け入れているそうです。

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立ち入った瞬間、醤油の香ばしい香りが漂ってきました。もろみ(発酵中の液体)の入った桶が圧巻で、初代のころからずっと使い続けているそうです。

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100年以上使い続けているこの二十石の杉桶に、もろみをずっと継ぎ足しています。だから旨みのもととなる菌も増えつづけているんですよ。
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Takashi

ということは、歳月を経るごとに旨みも少しずつ増していくということですね……。すみません、製造工程を簡単に伺ってもよろしいですか?
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まず醤油は、厳選した大豆をやわらかく蒸し、煎った小麦を合わせて麹を作ります。それから食塩と混ぜ合わせ、杉桶で1年半から2年寝かせています。
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Takashi

1年半から2年! そうやってじっくり熟成させることで、味の深いもろみができあがっていくのですね。

daitetsu_25手作業で圧搾機に重りをのせていく岳さん。

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それからこの「梃子式圧搾機」で、醤油を搾りだします。石の重さは最大約300kg。先端にかける石の重りを徐々に増やし、少しずつ搾ることで、まろやかな味わいの醤油ができあがります。あ、危ないので天秤の下側に入らないようご注意くださいね。

daitetsu_26熟成させたもろみをこの下に敷きつめ、石の重さで搾りだしていく。

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Takashi

うーむ。本当にアナログというか、昔ながらの製法ですね……。この蔵に入ってひと昔、ふた昔前に戻ったような感覚です。

代々伝わるお味噌と新作「けいこのおみそ」

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Takashi

味噌もやはり同様に、長い時間をかけているのですか?
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そうですね。味噌は米麹と麦麹、食塩を合わせ、丁寧に仕込んで約1年待ちます。仕込み方は職人の勘というか、長年やってきた感覚的な部分も大きいですね。

長年の経験が必要とされる醤油・味噌づくり。いまではその場に、鹿児島から嫁がれた奥さま、桂子さんも参戦されて、味噌づくりに励んでいるとのこと。そうして二人三脚でできあがったのが「けいこのおみそ」です。

daitetsu_28村松岳さんと桂子さん。

daitetsu_29けいこのおみそ、1kgで1,296円(税込)。大人気のため現在品切れ中。 画像提供:マルイエ醤油

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Takashi

「けいこのおみそ」は、どういった経緯でできあがったのですか?
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桂子

マルイエに嫁いだので、鹿児島にいる両親にも、それを食べてほしいな、と思いました。でも静岡と鹿児島くらい離れた土地だと、やっぱり味覚が少し違うんですよね。向こうでは、代々のマルイエのものよりもっと甘口のものが好まれているので……。それで「じゃあ作ってしまおう」と。実家は個人で米を作っていまして、その米を使っています。
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Takashi

というと、代々のマルイエの味噌との違いは甘み、ということですか?
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桂子

そうですね……。マルイエの味噌は力強く、味噌汁にしたときにどんな具材でも合います。けいこのおみそは逆にやさしい味なので、どんな具材を合わせるか、好みで工夫してみていただければ。「味噌汁といえば」みたいな先入観をもたず、いろいろ試してみてほしいですね。

言われてみればたしかに、味噌汁ならコレだろうという前提の意識が、少なからずある気もします。桂子さんは以前、モッツァレラチーズとトマトをけいこのおみそに合わせてみたのだとか(とてもおいしかったそう)。

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桂子

時代に合わせた、いろんなアイデアがあっていいと思うのです。逆に時代が変わっても、先代の想いとか伝統とか、守り続けるべきものがあって。その両方の気持ちを大切にしていきたいと思います。

マルイエの製品は遠くは北海道まで、全国から注文があるそうです。じつは筆者もここでマルイエの味噌を購入し、自宅でいただきました。おそらく、1度この味に慣れ親しんでしまうと、もうほかのものに代えられず、リピーターとなる方が多いのだと思います。ぜひ1度、日本伝統の手づくりの味わいを試してみてください。

趣深い川根町のよりどころ

マルイエ醤油 川根本家

住所:〒428-0104 島田市川根町家山796
電話番号:0547-53-2212
営業時間:9:00~19:00
定休日:無休
アクセス:大井川鐵道家山駅より徒歩5分(公共交通機関)