日本家屋の心地よさ「cafe basso(カフェバッソ)」
地域の老若男女が集まるそのワケとは
木のぬくもりを感じる、アットホームで居心地のよい空間。静岡市駿河区下川原6丁目にある「cafe basso(カフェバッソ)」は、2016年7月16日で1周年を迎えました。本来住宅として設計された建物とヘルシーかつ色鮮やかなメニューが口コミで広がり、すでに周辺住民の憩いの場として親しまれているとか。
はじめは母体となるcasa cube静岡の玉木雄二郎さん(以下、玉木さん)に、途中から店主の鈴木可奈子さん(以下、カナさん)にも参加していただいて、cafe bassoの建物からメニュー、そして今後についてお話しを伺ってきました。
カフェへの転機は建物と趣味のマッチング
casa cube静岡 下川原model house 店主 玉木雄二郎さん
吉松
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もともと住宅として設計された建物とのことですが、なぜカフェになったんでしょうか? |
玉木さん
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そうですね、ここの隣にcasa cubeという商品住宅のモデルハウスがあるんですね。ここは敷地も広いので、まずはモデルハウスをもう一戸建てちゃおうと。
でも「なんかもったいないだろう」ということで、一部をキッチンに改装してカフェにしてしまったんです。 |
吉松
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カフェのほかにも選択肢はあったのでは・・・? |
玉木さん
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まあ、そうなんですけどね。この建物を見ると、カフェが一番合っているなーと思いました。あと僕はロックバンド好きで、店主はダンス好きで、ほかにも落語好きな人が内部にいて。
ライブや落語などのイベントを開催したいと思ったときに、カフェという形態がピッタリだったんです。 |
吉松
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なるほど。ってバンド好きなんですか! 僕もバンドをやっていてですね。 |
玉木さん
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あら、素晴らしい! どんなバンドをやってらっしゃるんですか? |
吉松
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僕はこんなバンドをやっていて――(省略) |
日本家屋をいまの時代に持ってきた建物
吉松
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少し話を戻しますが、カフェに合っているという建物について、木がいたるところに使われていたり、縁側があったり、外観は日本家屋そのものという印象を受けます。これはどのようなコンセプトでつくられているのでしょうか? |
玉木さん
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日本家屋というのはまさにその通り。「日本家屋を今の時代に」が大きなコンセプトです。そもそもcafe bassoのbassoは、ソプラノなどの声域における“バス”からきていまして、”低い”というイタリア語なんですけど。
だから建物は軒の深い、切妻屋根の平屋なんです。部材も天然のモノにこだわっていて、天井は杉、床はナラ、壁も木くずと再生紙でできた調湿効果のある壁紙を使っています。 |
cafe bassoの外観。切妻屋根とは山の形をした三角の屋根のこと。
全面に杉板を使っている開放感のある天井。
玉木さん
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あと表面の塗装には、“きぬか”という米ぬかを塗っています。きぬかはもう本当に、赤ちゃんがなめても大丈夫なものです。
ご飯を食べるところで科学物質が塗られていると嫌じゃないですか。もちろんテーブルにも塗ってます。そんな細かい配慮が、この空間には行き届いていますね。 |
テーブルが汚れたときは、きぬかを新たに塗り直すそう。
まるで家にいるような雰囲気で楽しいご飯を
吉松
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それではcafe bassoのメニューについて伺いたいんですけども――。 |
玉木さん
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あー。それは僕じゃなくて、店主のカナさんのほうがいいね。
カナさーーん。いま時間とれるー? |
カナさん
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はーい |
玉木さん
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(カナさん到着後、隣の椅子に移動しようとするも)あ、やっぱりこっち座りなよ。温まっちゃってるから。 |
カナさん
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ぬるいか |
玉木さん
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ぬるい |
cafe basso 店主 鈴木加奈子さん
吉松
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(このふたりゆるいな・・・)お忙しいところすみません。メニューについて公式サイトやFacebookを拝見して、どれも色鮮やかで身体に優しいということは知ったんですけども。そんなメニューへのこだわりを教えていただいてもよろしいでしょうか? |
カナさん
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そうですね。こだわりといったら言いすぎかもしれないんですが、出されて美味しそうに見えるもの、食べたーいと思えるようなものですね。視覚からして味覚を刺激するし、楽しんで食べていただくことを意識しています。 |
色とりどりの人気メニュー「basso おまかせプレート」。ヘルシーな黒米ごはんとスープ付き。
カナさん
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彩りも女性スタッフ中心ですので、彩りや盛り付けなど細かい気づかいを大切にしています。それからやっぱりここは住宅なので、お家で食べている感を、簡単に言っちゃえばラフなんですけど。あんまり堅苦しくないようにと考えています。 |
おまかせプレートのおかずは季節によって変わるそう。旬の食材を楽しめます。
文化を発信する地域のコミュニティカフェに
吉松
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最後になりますが、cafe bassoさんの今後について教えていただけるでしょうか? |
玉木さん
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昼間は「近所の食堂」といったイメージで。お年寄りが公民館を利用する感覚で、寄り合い所のようになればと思っています。もちろんお金を払って(笑)
あとは営業後の夜を使って、文化的なイベントというか、なにか面白いことをやってるな~と人が集まってくるようにしたいです。 |
以前に開催された寄席バッソの様子。※写真は玉木さんからいただきました。
玉木さん
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たとえば昨年から、寄席バッソという寄席※をここでやっています。その噂を聞きつけた近所のおじいちゃんやおばあちゃんたちが足を運んでくれて、「こんなところにカフェがあったのか」と言ってくださっているんですね。
やっぱりカフェは若い人のイメージがあるから、その障壁をいろんなイベントで取り除きたいのもあります。一旦入ってしまえばすごく来やすくなるし。
※寄席:落語をはじめとした大衆芸能を演じる場所のこと。寄席バッソでは、静岡ゆかりの落語家を中心に呼んで、本格的な落語会を開催しています。 |
カナさん
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うちの場合は年配の方が多いくらいだけどね(笑) |
玉木さん
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そうだった(笑) そこ、心配していたんだけどねー。近所のおじいちゃんおばあちゃんは来づらいんじゃないかって。なんのことはなくて、むしろ年配の方がご厚意にしてくれて、本当に嬉しいね。 |
カナさん
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そうね。ご家族にもどんどんつながっていて、年齢的にも広い層が足を運んでくれています。ほかのカフェではないような、お客さま同士の会話も生まれているし。隣同士になった常連のお客さまと、赤ちゃん連れの若いお母さんが話す姿なんてしょっちゅう見かけます。
うちはオープンキッチンだからスタッフとお客さまとの距離も近くて、私たちから話しかけたりとかもさせていただいているんですけどね。そんな感じで私も老若男女が気軽に集まれるような、地域のコミュニティカフェにしていきたい、なんて考えています。 |
お話しを伺って僕が感じたのは、ひとつの空間として一本の筋が通っているということ。日本人に馴染みの深い日本家屋で、メニューは楽しんで食べられてかつ、堅苦しくないものばかり。そして親しみやすいスタッフさんたちの雰囲気。
だから若いお母さんからご年配の方まで、さまざまな世代が集まる場所になっているんだなと。じつはmitecoのオフィスも下川原ということで、ご近所さんとして今後も注目していきたいと思います。