静岡の隠れ家カフェ「光と風のカフェ セロリ」
ギャップのありすぎる外観と内装の秘密
一見するとなにかの事務所。でも階段を上って扉を開ければ、大きな窓から光が差し込んで、元気な植物がいたるところに置かれた、自然いっぱいの空間が広がっています。
ここは、静岡市駿河区丸子新田にある隠れ家カフェ「光と風のカフェ セロリ」。
なんともともと造園業の事務所で、それを改装してカフェにした場所とのこと。いったいなぜ造園業からカフェになったのか、そしてどのような想いで切り盛りしているのか、店主の市川さんに伺ってきました。
造園業からカフェになった理由
光と風のカフェセロリ 店主 市川さん
吉松
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いや、外観と内装のギャップがありすぎると聞いていましたが、これではまるで別世界ですね・・・。 |
市川さん
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ありがとうございます(笑)普段いらっしゃるお客様も、お店に入ったときにギャップがすごいと驚かれています。 |
かつては造園業の事務所だったというセロリさんの外観。
そしてギャップのありすぎる内装。
吉松
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さっそくですが、セロリさんはいったいなぜ造園業からカフェになったんでしょうか? |
市川さん
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主人がずっと造園業を営んでいましたが、去年で65歳になりまして。定年でもないんですけど、それを機に閉めたんですね。ただこのようにとても広い事務所ですから、そのままにするのはもったいないなと。
そこでなにかしようかなと考えたときに、丸子新田にはくつろげる場所が少ないから、地域の皆さんがゆっくりできるような場所を作りたいな、と思ったのがきっかけですね。はじめは料理を提供するというよりも、そんな想いのほうが強かったです。 |
吉松
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たしかに丸子新田にはくつろげる場所がまだ少ないので、貴重な存在ですね。店内に緑が多いのは、やっぱり造園業とくつろげる空間との関係があるのでしょうか? |
市川さん
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そうですね。造園業だったことを活かして、店内は緑でいっぱいにしようというのは決めていました。
幸い窓も大きく風通しもいいので、野外にある木や自然な樹木を店内に配置すると、部屋の中にいながらにして広々とした野外にいるような気持ちを味わっていただけるのでは、と思いまして。
それで光と風のカフェという名前も付けたんですよ。 |
ふっと浮かんだ“セロリ”の名前
吉松
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それでは後ろの“セロリ”は、どこから名付けたんでしょうか? |
市川さん
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食材はなるべく、自家農園でとれたものを使いたいと考えていたので、野菜の名前なんかいいんじゃないかなと思いまして。そこでふっと浮かんだのがセロリでした。 |
吉松
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自家農園があるんですか! ・・・そこでふっと浮かんだと。 |
市川さん
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まあ、最近のカフェは横文字が多いじゃないですか、私なんか全然覚えられなくて。地域の皆さんに来ていただけるなら、カタカナでセロリが覚えやすいんじゃないかって。
あとセロリのことを調べてみたら、意外と優秀なお野菜だとわかったんです。ビタミンやカリウムが豊富だし、熱を入れても栄養素が逃げなくて。セロリの香り成分は、気分をほぐしてくれる力もあるんですよ。 |
吉松
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セロリがそんなに優等生だったとは・・・。 |
季節の野菜をふたつの自家農園で
吉松
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少し話を戻しますが、自家農園はこちらでやっているんでしょうか。 |
市川さん
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じつはふたつありまして、ひとつは自宅の裏、もうひとつは浜松にあります。どちらも主人がやってくれていますね。 |
吉松
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ご主人がふたつも!? すごいですね。 |
市川さん
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とってもありがたいですね。それから以前から考えていたとおり、ここで出しているメニューはすべて、ふたつの畑でとれたお野菜をできるだけ使うようにしているんですよ。 |
吉松
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オープン当初からそうなんですか? |
市川さん
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浜松の畑はそうですね。裏の畑は去年開墾して、今年から収穫できるようになりました。でもスペースがないものですから、浜松の畑では保管しておける野菜を育てて、裏の畑では季節に合った野菜を育てるようにと、上手い具合に調節しています。 |
裏の畑。取材の時期にはナスやズッキーニが育っていました。
吉松
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なるほど。たとえばメニューには、どんな野菜を使ってますかね。 |
市川さん
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「キッシュとお野菜のグラタン」というプレートだと、かぼちゃ・玉ねぎ・小松菜・ブロッコリー・まいたけ・パプリカ・レタス・セロリとか。だいたい13種類~15種類くらいは使ってます。中に入れるお野菜は季節ごとにどんどん変えてますよ。 |
野菜たっぷりの「キッシュとお野菜のグラタン」。甘さのある野菜がごろごろ入っています。
キッシュを食べて思わず、「おいしい!」と言ったシーン。素材が活きたヘルシーな味わいです。
緑いっぱいの空間でホッとひと息
吉松
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料理と自家栽培へのこだわりを感じましたが、はじめは地域の皆さんがゆっくりできる場所を作りたい、という想いのほうが強いと話されていましたね。 |
市川さん
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やっぱり地域の皆様に愛されるお店にしたいですね。ご近所の方々や久しぶりに会うお友だちと、時間を気にせずゆっくりお話ししたいときには、ぜひお見えになっていただきたいです。
緑いっぱいの空間でお喋りして、お店を出るときにはなぜか元気になっている・・・。そんな場所を作れたら最高です。また最近は少しずつですが、お客様から嬉しい声いただいていて励みになっていますね。 |
吉松
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嬉しい声ですか! それはどのような・・・? |
市川さん
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定期的にお顔を見せてくださるお客様の何人かは、「ほんとうにここは落ち着くよ」とか「この緑が癒されるのよねえ」なんて言ってくださります。
先日は、まだ小学生高学年のお子さんが、「今日はお友だちの誕生日だから、ここでお祝いしたかった!」と言って来てくれました。 |
吉松
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地域の皆さんに集まってほしい、という想いに近づいているように思えますね。 |
市川さん
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そうだと嬉しいですね。ただお店は、階段を上がっていただいて2階になっているので、道行く人に中の雰囲気を覗いていただけないのが残念です。
そのかわり、思い切って上がっていただければ、およそカフェらしくない外観と店内のギャップに、誰もがビックリされると思います。 |
もし見かけたことはあるけど、外観で入るのをためらったことがある人がいれば、一度階段を上ってみてはいかがでしょうか。ギャップがありすぎてびっくり、でも心が洗われるような不思議な空間が広がっています。
どうしても元気がでないとき、ちょっとゆっくりしたいとき、仕事が煮詰まったとき。どのようなシーンにもピッタリと合う、緑でいっぱいの隠れ家カフェが丸子新田にありました。