富士山と黒はんぺんを緑茶で煮込む・・・?
静岡おでんを知らない私が一から調べてみた

  • posted.2016/09/01
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富士山と黒はんぺんを緑茶で煮込む・・・?  静岡おでんを知らない私が一から調べてみた

こんにちは、ライターの馬場葵です。

肌寒い風が吹く季節。温かい食べ物が急に恋しくなりますね。たとえばおでんでしょうか。茶色いダシが沁みた具に、白くてふわふわのはんぺん、友達や家族と一緒につつけば心も身体もぽかぽかです。

でも静岡のおでんといえば、わたしの知っているそれとはまったく違うようです。「静岡おでん」っていったいなんだろう・・・。

わたしの頭のなかの静岡おでん

わたしはもともと福島県出身で、大学進学で静岡に移住して4年目。バイトとして働いていた居酒屋さんで、はじめて静岡おでんの存在を知りました。

「静岡のはんぺんは黒いことを知ってる?」と言いながら、なにやら黒いはんぺんを見せられたとき、“静岡のはんぺんといったら黒”という事実を知ったんです。

とはいっても、静岡おでんのことは話に聞いただけで、実際にはいままで食べたこともありません。はんぺんの色が正反対、その情報だけだとわたしの頭のなかの静岡おでんはこんな感じです。

oden_aoi_01富士山やサクラエビ、黒はんぺんなどを緑茶で煮込んでいます。

これでは静岡県民に叱られてしまいそう・・・。

ということで、“由緒ただしき静岡おでん”について調べてみました。

由緒正しき静岡おでんは・・・

調べてみると、静岡おでんは大正時代に誕生して、居酒屋のほかに駄菓子屋でも売られ、おやつ感覚で食べられていたものらしいです。だから食べやすいように、すべての具に串がささっていることが特徴なんだとか。

ほかにも、

静岡おでんの特徴

  • 長時間煮込まれた黒いスープ
  • 黒はんぺんが入っている
  • 食べるときにはだし粉と青のりをかける

など、他県のおでんにはない「オンリーワン」が静岡おでんにはたくさんあるようです。それを知らずに静岡で生活しているのは、ちょっともったいないような気がしてきました。というかわたしのイメージと違いすぎてちょっと困惑しています。

黒はんぺん:

イワシやアジをすり身にして作られる黒いはんぺんのこと。日持ちがしないことから、静岡県外でお目にかかることはなかなかありません。そのため、歴史は長いものの静岡の特産物となっているようです。

老舗が伝える静岡おでん

さらに静岡おでんについて詳しく知るため、わたしは老舗のおでん屋さんを探すことに。長い歴史を持つお店であれば、“静岡おでんの真髄”がわかるかもしれません。そうしてみつけたのが、「大やきいも」さんでした。

大やきいもさんは、その名のとおり焼き芋屋さんなんですが、静岡おでんをなんと明治時代から提供しているとのこと。「静岡おでんの良さを一番に知っているはず!」と思い、お話を伺ってみました。

馬場 いま静岡おでんについて調べていて、そこで出てきた疑問についてお話を伺いたくてお電話させていただきました。
大やきいも なるほど。どんなことでしょう?
馬場 ええと。まず、静岡おでんの作り方って、普通のおでんとは違うんですか?
大やきいも うちは100年近くやっているお店だけど、静岡おでんを提供しはじめてからはずっと、おつゆを継ぎ足してやっているよ。あとは、ネタもダシを吸うだけじゃなくて、自分からダシを出すようなものを選んで入れることかな。
馬場 静岡おでんの黒いおつゆは、長年継ぎ足して煮込まれてきたからなんですね・・・。そのダシを出してくれるネタってどういったものですか?
大やきいも 黒はんぺんをはじめとした練り物だよ。それと大根は入れないこと。大根はたくさんダシを吸ってくれるけど、水しか出してくれないから。おつゆが薄まってしまう大根は入れず、練り物をたくさん入れるのというのは、昔から変えていないよ。
馬場 大根を入れないおでんは初めて聞きました! その代わりに、練り物でダシを出すことがポイントなんですね。ありがとうございます、参考にさせていただきます!

実際に作って食べてみた

ここまできたら、由緒正しき静岡おでんを目指して作ってみたいし、食べてみたい!

でもいまから何十年もダシを継ぎ足し続けるわけにもいきません・・・。

んーそこは通常のおでんよりも少し長めに煮込むことにして。――いざ挑戦です!

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材料はこちら。大やきいもさんにならい、大根は入れず、黒はんぺんをはじめとした練り物を多く用意してみました。

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下処理を済ませた材料を串に刺します。

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よくばりすぎたせいでぎゅうぎゅうになってしまったお鍋を、火にかけること約2時間・・・。

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ついに完成です! 練り物からのダシと、しょうゆをベースにした味付けで、ほかの地方のおでんとは一味違う「黒いダシ」が出来上がりました。このダシの黒さ、伝わっているかな。

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完成した静岡おでんを、私とmiteco編集部のみなさんといただきます。

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生臭いのかなと思っていた黒はんぺんですが、ダシがしみていてとっても食べやすい。白はんぺんにはない、ちょっと大人向けなお魚の風味と、じっくりと滲みこませたおつゆがマッチして、これはいいおつまみになりそうです。一緒に冷えたビールを用意しておかなかったことが、ほんとうに残念でなりません。

あとコンビニおでんの具でこそよくみかける牛スジも、県外ではめったに使わない具材のひとつです。でも静岡では、「夕飯がおでんの日は、牛スジが柔らかくなるようお母さんがお昼から煮込んでくれていた」なんてエピソードは当たり前なんだそう(先輩談)。

下処理の段階では包丁がまったく通らず、「こんなに硬くて大丈夫かな」と不安でしたが、2時間ちょっと煮込んだだけでとろとろに柔らかくなりました。みなさんにも絶賛していただけるくらい、おいしくできあがっていてひと安心です。

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ちなみにエストリンクス(mitecoを運営する会社)のみなさんにも食べていただきました。練り物がいいダシを出してくれたようで、静岡県民の社員さんにも「ちゃんと静岡おでんになっているね」と言ってもらえました。嬉しい。

静岡おでんで冬を前に一足早くほっこり

 みなさんと食べてみて驚いたのが、静岡県民でも静岡おでんへの馴染みの深さには大きな差があるということ。あとから知ったのですが、静岡おでんは県中部(静岡市)を中心に親しまれていて、西部や東部の方だと詳しく知らない場合もあるそうです。

地元へ帰省するたびに、新幹線の中から静岡県の横の長さを感じてはいましたが、あらためて県内での文化の違いを知りました。

静岡県民に親しまれている静岡おでんを、もっとたくさんの人に食べてほしい、と素直に感じます。それほどのおいしさであることはもちろん、年中スーパーに並んでいるもので作れるのもいいところです。

静岡おでんのことを知りたい!という思いで書き始めたこの記事ですが、静岡県民と、他県出身者の私で静岡おでんを一緒に食べられて、心温まるひとときを過ごすことができました。ぜひともこれからの肌寒い季節には、馴染みのある方も、ない地域の方も、静岡おでんで温まってみてはいかがでしょうか!

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