お母さんが作った衣装でステージに立つ!
富士山ご当地アイドル3776 衣装特集《後編》
富士山ご当地アイドル「3776(ミナナロ)」といえば、井出ちよのさんのキャラや音楽通を唸らせる楽曲が話題にあがりますが、「衣装」も大きな魅力のひとつ。3776の衣装は、ちよのさんのお母さんが製作・管理しているのです。
ライターのオカムラが、アイドルの衣装に詳しい制服研究者・イラストレーターの森伸之さんに協力を要請し、井出ちよのさん、プロデューサーの石田彰さん、そしてちよのさんのお母さんを迎えた「3776衣装特集」。後編をお届けします!
前編では2012年~2015年までに着られていた衣装を、レアショット満載で振り返ってみました。後編では2016年~2019年現在までにお披露目された衣装について、じっくりと話を聞いていこうと思います。
未来の3776? 一部外注が入った「セーラー」
3776 Season#3 衣装③ 通称「セーラー」着用期間 2016年1月~
オカムラ | このセーラーは2016年1月のワンマン※で初披露されたものでしたよね。 |
石田 | ワンマンのときは、最初の3曲をハートの衣装※でやったんだよね。そのあとセーラーに着替えて、「待ったぁー!」みたいな感じで後ろから出てきた。 |
オカムラ | 「未来人」という設定でしたよね。 |
石田 | そう(笑)新しい衣装に「未来から来たっぽい感じを含められるといいね」みたいな話はしたと思う。 |
オカムラ | 難しい要望ですよね(笑)こちらは既製品に手を加えたのではなくて、お母さんがイチから作った初めての衣装だと聞いています。 |
ちよの母 | これに関してはチヨが描いた変な絵を思い出します(笑)ただの絵だから、現実的にはすっごい難しいこと考えてて。 |
※2016年1月16日、渋谷O-nestで開催された3776のワンマンライブ。「ニセ3776」を未来人に扮するちよのさんが歌とダンスでやっつけるという内容だった。
※ハートの衣装:2015年1月〜に着用されていた、3776 Season#3の衣装②。「セーラー」のひとつ前の衣装にあたる。詳しくは前編へ。
セーラーの襟は「スカラップ」。腰にホックがついている点にも注目。
森 | ちよのさんがデザイン画を描いたんですか? |
ちよの母 | そうです。本人が熱望したのは、「襟をスカラップ(波状)にしてほしい」って。難しいんですよ、これ。私がやるとあんまりうまくできないから、洋裁の先生をしている親戚の叔母さんに襟だけやってもらいました。 |
森 | 外注が入っている(笑) |
ちよの母 | あと、ひとつ前のハートの衣装と同じように、背が伸びてスカートの丈が短くなっちゃって。こっちも途中でスカートの裾にひらひらの布をつけました。 |
オカムラ | 星型のボタンは「ミトラパープ※」で買ったものらしいですね。 |
※ミトラパープ:静岡市の山奥に位置する雑貨屋さん。『岡田徹 featuring 3776 / マスカット ココナッツ バナナ メロン』MVのロケ地。
岡田徹 featuring 3776『マスカット ココナッツ バナナ メロン(シングル・ヴァージョン)』
ちよの母 | このボタンが大きすぎて、ボタンホールに通らなくて。結局ボタンを縫いつけちゃったんです。 |
オカムラ | へー、言われないとわかりませんね。 |
ちよの母 | ボタンホールはついてるんだけど、飾りで。amiinA(アミイナ)さん※とライブをやるときに、amiinA衣装担当のCodan(コダン)さん※と一緒になって。「これお母さんが作ったんですか、すごいですね!」って言われたけど、「ホント見ないでください!」って(笑) |
一同 ハッハッハッハ!
※amiinA(アミイナ):3776と親交が深いami、miyuのふたりから成るアイドルユニット。
※Conan(コダン):スタイリスト。amiinAの衣装担当。「井出ちよの」と「3776 LINKモード」の衣装デザインも手がけている。両衣装については下記で説明。
2018年7月21日ワンマンライブにて撮影。
ちよの | この衣装になるとき、ミントグリーンの靴を探したけど見つからなくて。ねむきゅんさん※が履いている靴の色なら合いそうだから、おんなじのを買おうとしたんです。でも売り切れてて、しぶしぶこっちの色に。
これ「Reebok」ってとこのなんですけど、ちゃんとした靴のメーカーで。今まで安い靴履いてたから靴底ベロベロ取れてたのに、「踊りやすい〜靴すげ〜」って。いい靴履き始めた喜びが溢れてました。 |
ちよの母 | あっダメだ、ズレてる。いやーっ。(腰部分からマジックテープが少し見えていたのを直す) |
森 | 腰の部分はマジックテープで留めてあるんですね。 |
ちよの | 最初はホックついてなかった。 |
ちよの母 | そう、あとからつけ足したんだ。この衣装になったときは今よりもうちょっと細くて、ダンスでぐるぐる回るとリボンがついているベルトが動いちゃったんですよ。だからホックをつけて、ベルトを固定できるようにしました。 |
森 | なるほど。この衣装はワンピースなんですね。お母さんが型紙からおこしたんですか? |
ちよの母 | 篠原ともえちゃん※の裁縫本に載っていたワンピースの型紙を、原型とどめないくらいに変えて。ひらひらのベルトは、ウエストの切り替えがヘタなのを隠すためっていうのと、ちょっと派手さを加えるためにつけました。 |
森 | ダンスで回ったときに、このベルトについた布がパッと広がったりして、すごい見栄えがいいですよね。動いたときの見栄えも考えて作られたんですか? |
ちよの母 | チヨはよく回るので、回ったときにかわいいほうがいいなと思って、広がるような形のスカートにしました。でも、広がりすぎちゃうんですよ。だからあとでベルトに布をつけて。スカートが広がりすぎないように、重りの役割も持たせてあります。 |
※ねむきゅん:元でんぱ組incのメンバー、夢眠ねむの愛称。担当カラーはミントグリーン。
※篠原ともえ:タレント。90年代後半、原色のカラフルなファッションとハイテンションなキャラクターで人気を博す。現在はファッションデザイナーとしても大活躍。ユーミン(松任谷由実)のステージ衣装を手がけたことも。お母さんのおっしゃる裁縫本とは、2015年発売『ザ・ワンピース 篠原ともえのソーイングBOOK』のこと。
衣装担当はチアダンス時代から
森 | お母さんは、ちよのさんがダンスされているのをライブ会場やYouTubeなどで見て、自分で作られた衣装の「ここはもうちょっと改善しよう」とか確認されているんですか? |
ちよの母 | そうです。それでリボンを動かないようにとか、作り直したり。2016年のワンマンのときも一番うしろでビデオを撮りながら見てたんですけど、衣装のことしか考えてなくて。チヨが歌えてるかどうかよりも、衣装が気になって(笑) |
森 | いやー贅沢ですよね。衣装担当の人が常に現場にいて、細かく調整をしてくれる。そんなアイドルってほかにいないですよ。 |
ちよの母 | でも、チヨはずっとチアダンスをやってて※。衣装は発注して作ってもらってたんですけど、装飾品はお母さんたちが作ってたんですよ。スワロフスキーのキラキラをつけたりとか。 |
森 | へぇ〜。 |
※ちよのさんはアイドル活動を始める以前、4〜11歳までチアダンスを習っていた。
セーラー衣装の髪飾りもお母さんのお手製。
ちよの母 | チアで仮装大会みたいなジャンルがあったんですけど、それは衣装・大道具・小道具、全部お母さんたちの手作りでした。現場で見て、その都度直すっていうのが常だったので。 |
森 | じゃあチア時代からの積み重ねがあって、ということですね。 |
ちよの母 | 本当は欽ちゃんの仮装大賞に出たかったんですけどね。フフフ。服はチヨが赤ちゃんのときから作ってあげていたんですよ。今はチヨが自分で服を作るときもあるよね。びっくりするぐらい間違えるよね(笑) |
ちよの | 初心者だからしょうがない。 |
森 | 自分で作った服を着てどっか遊びに行ったりするんですか? |
ちよの | 作るっていっても、まだズボンとセーラー襟だけ。ズボンは修学旅行のときに履いていきました。 |
井出ちよの「緑」似合わない論争勃発!?
左:2代目衣装「ハート」 右:3代目衣装「セーラー」
オカムラ | ハート、セーラーと「ミントグリーン」の衣装が続きましたね。この色を選んだのは・・・? |
ちよの | あたしがこの色がいいって。 |
オカムラ | あとで着てもらう最新の衣装はミントグリーンからネイビーに色が変わりましたね。 |
ちよの | 最新の衣装を作るとき、母に「またミントグリーンがいいね」って話をしたら「あんたもうその色似合わないからやめなよ!」って。 |
一同 ハッハッハッハ!
ちよの | そう言ってきたから、「緑はもういいや」って思って。 |
ちよの母 | だって「緑がいい」「セーラーがいい」「パフスリーブがいい」って前と同じじゃん! 変わんないじゃん! |
森 | じゃあお母さんとしても、別の方向性の衣装を作ってみたいという気持ちがあったんですか? |
ちよの母 | 色が変わればだいぶ印象も変わるから、違う色のほうが作りやすいなと。 |
森 | 緑が似合わないとは全然思わないですけど。 |
オカムラ | うんうん。 |
ちよの | いや、似合わないそうなので。(お母さんに向かって)ねぇ? |
一同 ハッハッハッハ!
石田 | 高校入ってからしばらくは緑の衣装は着てなかったもんね。ずっと「LINKモード※」やってたから。 |
※LINKモード(=3776 Season#4):ふたつの離れたステージで、ふたり同時に歌うスタイル。衣装はプロに外注した和服風のものが採用されている。詳しくはのちほど説明。
LINKモードの衣装。
ちよの母 | LINKモードの衣装が大人っぽいじゃないですか。だから化粧も大人っぽくなっていって、たまに緑の衣装を着ると「化粧と合わないなー」って。 |
ちよの | 中3のときに受験でライブをしていない時期があって、メイクの意識が多少変わったのは、そんときぐらいかなぁ。成長して、顔も変わって。
中学生の頃は母の化粧道具をちょっと借りたりしてたんですけど、自分で買うようになって、それからメイクも気をつけようと思いました。
高校生に入ってからは、若干化粧の知識とかも勉強して。YouTubeのメイク動画とか流行ったじゃないですか。 |
オカムラ | JKになってメイクに関心が出てきたと。 |
ちよの | ミーハーだったので、話題になってるYouTuberとか観て。そのあたりから化粧の意識が変わったんだと思います。アイシャドウを高校に入って使うようになったから、それでちょっとメイクが濃くなったのかも。 |
森 | それがLINKモードにはハマったけど、昔の衣装にはあんまりハマらなくなってきたってことですかね。 |
プロ外注 その①「井出ちよの」
オカムラ | 先ほど少し話が出ましたけど、「井出ちよの※」と「LINKモード」の衣装はamiinAの衣装を作っているスタイリストのCodanさんに頼んだそうですね。 |
石田 | そうそう。CodanさんにはLINKモードの衣装をお願いする前に、井出ちよのソロの衣装も作ってもらっていて。 |
※「井出ちよの」:井出ちよのさんは富士山に関連する楽曲でパフォーマンスをする「3776」とは別に、高校生活をモチーフとしたソロアイドル「井出ちよの」としても活動している。
井出ちよのソロ衣装 着用期間2016年8月~
Codanさんは井出ちよのさんのデビューアルバム『もうすぐ高校生活』のスタイリングも担当しています。発注は石田さんいわく「基本的に制服っぽいようなベースで」とお任せしたとのこと。
井出ちよの『ラジオネーム』(『もうすぐ高校生活』収録)
2018年4月8日撮影。ちなみにこの日はベルトを忘れてつけていない。
スカートのベルトループに「IDE」、ブレザーに「CHIYONO」とフェルトが縫い付けられ、襟には大量の安全ピン。背中にはキルティング刺繍のほか、ネクタイが縫いつけられています。
こちらはジャケットを着てない半袖シャツversion。髪で隠れていますが、背中の数字「53」はちよのさんの誕生日、5月3日を表しています。
プロ外注 その②「LINKモード」
LINKモード衣装 着用期間2017年5月〜
「LINKモード(Season#4)」とは、ふたつの離れたステージを静岡側、山梨側とし、両ステージで同時に歌うスタイル。観客はふたつのステージの間を自由に行き来してパフォーマンスを楽しみ、中間地点では曲をミックスして聴くことも可能。
山梨側を担当していた広瀬愛菜さんが降板(休止)し、2019年3月現在、LINKモードは静岡側を3776ちよのさん、山梨側をほかのアイドルが担当する形態となっています。
石田 | LINKモード衣装を作ってもらうときは、まずLINKモードの説明からしなくてはいけなくて。「こういうことをやっていきたい」っていうのを話すのに、ある程度知ってくれてる人のほうがスムーズだろうと思って、Codanさんに。 |
森 | そのときにイメージは伝えました? |
石田 | 井出ちよのソロのときはあんまりなかったんですけど、LINKモードはかなり伝えましたね。それで向こうがいくつかデザインを考えてくれました。 |
森 | どんなイメージを伝えたんですか? |
石田 | 自分でもイメージを絵に描けないくらいわからなかったから、いろんな言葉を出して伝えて。「同じステージには立たない」とか「山梨のほうは自然、静岡は工業地帯」とか、そういう対比をいろいろ。
できあがってきたものを見ると、「和っぽいことも考えてる」って言ったのかもしれませんね。「絶対に入れてくれ」とは言ってないと思うんですけど。いくつかデザインを出してくれたなかで、「これいいな」と思ったものを選んだんですよね。 |
2017年12月23日撮影。
森 | 衣装のなかに「工業地帯」はどういう感じで入ってるんでしょうか? |
石田 | 蛍光色っぽいようなところ? |
森 | なるほど。人工的な感じの色が入ってる。 |
石田 | そういうことかな。「完全に色を分けたらどうか」「袖の柄を半分半分に分けたらどうか」ってひねってくれて。 |
森 | LINKモードの衣装は「富士山神話※」の曲調にものすごくハマってましたね。 |
石田 | でも神話は後づけで。今になって考えると、確かに富士山神話があってこそって感じがしますね。 |
オカムラ | 和のイメージが強いLINKモードの衣装は、それまでの3776の衣装と印象がガラッと変わりましたよね。ちよのさんは初めて見たときどう思いました? |
ちよの | Codanさんの作るamiinAの衣装がめちゃめちゃ好きだったので、「ありがてぇ〜」って超うれしかったです。「すげーしっかりした生地ー!」って思って。 |
ちよの母 | 「プロだぁ!」って思ったんでしょ(笑) |
※富士山神話:富士山にまつわる神話がテーマの楽曲。全四楽章から成り、2019年3月現在、第三楽章までが披露されている。曲中には巫女神楽のような振り付けを取り入れた場面も。
LINKモード静岡担当のちよのさんと、元山梨担当の広瀬愛菜さん。
森 | 初めてこの衣装を見たときは、静岡側のちよのさんと山梨側の愛菜さんが同じデザインで左右対称かなと思ったんですけど、見ているうちにどんどん違うところが見つかって。全然違う衣装だったという。それぞれ違う個性が絶妙に出ているデザインですよね。 |
石田 | 完全にそろえるんじゃなくて別物。そういう感じがよかったんです。 |
オカムラ | LINKモードの衣装に合わせている靴はブーツですね。踊りにくくないんですか? |
ちよの | あたしけっこう踊りながらコケてた気がします。愛菜ちゃんが「ヒールがあるほうがいい」って言ってて。ふたりで靴下も合わせて買った。 |
腰につけている富士山と静岡県のブローチは、沼津市にある小野銅工店のもの。
オカムラ | 和服っぽいアイドルの衣装はたくさん見ますけど、LINKモードの衣装は特に個性的ですよね。 |
森 | 単なる和じゃなくて、ビビッドな色も入ってるからだと思います。 |
石田 | こんなの思いつかないし、作れないですよね。 |
ちよの | 神。ホント神。ありがたすぎます。ありがたさが9割。 |
ちよの母 | この衣装を初めて着たのは、LINKモードのビジュアル撮影のときだったよね。プロが作ってくれた衣装を着て、プロのカメラマンさんに撮ってもらって、芸能人になったみたいな気分を味わったんだよね(笑) |
ちよの | (次の衣装に着替える準備を始め、LINKモードの衣装のパーツを外す) |
森 | この衣装は上下の合わせじゃないんですね。ワンピースなんですね。 |
オカムラ | ちょっと写真撮らせてもらってもいいですか? |
ちよの | なんだこれ・・・剥がされてる(笑) |
最新衣装を徹底解剖!
Season#3Neo衣装:通称「今の」着用期間2018年7月~
オカムラ | 2018年7月のアルバム再現ライブ時に初披露された、最新の衣装ですね。セーラー襟とパフスリーブ、それから腰のリボンっていうのは前の衣装から続くデザインですけど、色がネイビーになって雰囲気が変わりましたね。「進化した感」がある。 |
ちよの | 石田さんが「寒色系で」って。 |
ちよの母 | 漠然と新しい衣装を作るのが難しくて、色とか形とか「石田さんに聞いてみたら?」っていったんです。 |
オカムラ | 寒色系を指定した理由は何かあったんですか? |
石田 | いや、そんなに深い意味はないと思う。 |
ちよの | ミントグリーンは似合わねーから。 |
オカムラ | 根に持ってるじゃないですか(笑) |
石田 | とにかく、ちよのが気に入ってやれる服だったらなんでもいいかなって。 |
ちよの | セーラーがいいっていうのは私の意見。自分的には普通のセーラー襟の形がよかった。よかったっていうか普通に好き。 |
オカムラ | このセーラー襟は四角いタイプですね。 |
ちよの母 | 最初は普通のセーラー襟にするつもりだったんだけど、そうすると結局なんか前の衣装とおんなじになっちゃうし。行き当たりばったりでこういうふうになってるんですよ。スカートを後ろ下がりにしようっていうのは決めてたけどね。 |
ちよの | 私が絵を描いたときに後ろ下がりになってたんだよね。 |
ちよの母 | それに近い服のパターンが載っている本を探して買って。それをまた原型をとどめないくらいに変えました。 |
きれいに広がる後ろ下がりのスカート。ちなみにこの日のインナーは長袖だった。
森 | ダンスで回ったときにこの後ろ下がりの部分がバァッと広がって、すごいきれいですよね。 |
ちよの母 | スカートをプリーツにしたのは広がりすぎないようにって。型紙にはなかったんだけど、ただ後ろ下がりだとパッとしなかったから。プリーツはアイロンで形をつけるだけじゃなくて、縫い目を入れてあります。 |
森 | この後ろ下がりのスカートは本当にいいですよね。前から見ると、ちよのさんのスタイルのよさが際立つ。 |
ちよの | (納得していないような表情を浮かべ)・・・ちょっとよくわからない。 |
森 | なんですかその表情(笑) |
ちよの母 | 後ろ下がりにすると、スカートの裏側が見えちゃうじゃないですか。なので縫い合わせたところが見えないようにレースを合わせて。 |
森 | これはレースなんですね。 |
ちよの母 | 唐突にスカートの裏にだけにレースがあると繋がりがないなと思って、ベルトに少し残ってたレース生地を重ねて使いました。胸のフリルも型紙になかったんですけど、地味だなって付け足したんだよね。 |
ちよの | だけどワンマン当日になって、母が「このベルトいらないんじゃないか」って。 |
ちよの母 | リハーサルの時点で、ベルトがあると太って見える気がしたんです。やめようと思ったけど「変えるの大変だからいいや」って(笑)
あと袖のパフスリーブは何回かワンピースにつけたんですけど、それだと腕が上がらないので、結局パフスリーブをつけたTシャツを中に着せています。 |
オカムラ | ワンピースの中にTシャツを着てたんですか。ワンピースに袖がついてるとばかり思ってました。 |
ちよの母 | そうなんです。襟もつけ襟なので、取り外しできるようになっています。 |
セーラー襟を取り外した状態。
ちよの母 | 私が勝手に思ってるだけかもしれないけど、この衣装に関してはチヨが描いたデザイン画にだいぶ近い。 |
ちよの | かなり近いです。 |
オカムラ | この衣装がアルバム再現ライブでお披露目されたとき、「おお!」って声が客席から聞こえましたよ。ライブが終わったあと、あの衣装はお母さんが作ったのか、外注したのかって話題になってて。 |
ちよの母 | 外注感あった? でも進歩したんだよね。アハハ。 |
森 | 今まで作ってきた技術とノウハウですね。衣装の生地はどこで買ってるんですか? |
ちよの母 | これは新宿の「オカダヤ」で。 |
オカムラ | オカダヤは衣装を作る人にとってメッカなんですよね。コスプレ衣装を作る人たちも、オカダヤに生地をよく買いに行くってテレビでやってました。 |
ちよの母 | そもそも、私が子どものときから服を作ってたので、家には売るほどたくさん布があります。本人(ちよのさん)が「これがいい」って言って買ったのもあります。 |
森 | この次また新しい衣装を作るとしたら、ちよのさんとお母さん、それぞれどんな衣装がいいですか? |
ちよの母 | 私に主体性はないので、本人にどんな感じがいいかを聞いて、私のできる範囲だったら。 |
森 | デザインはやっぱりセーラー服っぽいのがいいですか? |
ちよの | セーラーは大好きだし、そんなにこだわりもないんですけど・・・。あたし「服の襟まわり」が好きで。デザイン画を描いたときも、タートルネックにセーラーとヨーク(切り替え布)がついた衣装を考えてた。 |
森 | てんこ盛りじゃないですか(笑) |
ちよの | 本当に襟まわりが大好きで。だから結局セーラー服になると思います。 |
森 | じゃあ、今までの衣装で一番好きなものをあげるとしたらどれですかね? |
ちよの | 一番好きなの? ・・・ハートの衣装に、セーラーのベルトをつけたやつがすごい好きです。衣装が好きっていうか、ふたつの衣装が混ざったその感覚が好きみたいな。 |
こちらがハートの衣装にセーラー衣装のベルトをつけた姿
ちよの母 | 色が一緒だからベルトも合うと思ってね。兼用にしたんです。 | |
オカムラ | 新旧の衣装を組み合わせてコーディネートしてるっていうのも面白いですよね。 | |
ちよの | でも全部好きだなぁ、衣装! | |
オカムラ | オーダーメイドですもんね。 | |
ちよの | そうなんですよ。恵まれた環境すぎてねぇ。 | |
オカムラ | 3776って、全国行脚※のときとか、ときどき先代の衣装を着てパフォーマンスをしてくれるじゃないですか。あれ、ファンにとってはありがたいです。長く着ていた衣装が見れなくなっちゃうのもさみしいので。 | |
森 | ちよのさん、お母さんにあらためて一言ありますか? | |
ちよの | (いろんな人に衣装の製作をお願いしても)荷が重いと断られてきたので、最終的に母が受け持ってくれて大変ありがたいです。感謝です! |
※全国行脚:知名度向上のため、日本全国に出向き、簡易的な機材セットでライブをおこなう企画。
番外編①その他、お母さんが作った衣装
・「ベルハー」コスプレ衣装
ちよのさんがハロウィンのコスプレで着用し、その完成度の高さからファンの間でも話題になっていた「ベルハー※」風衣装。
※ベルハー:アイドルグループ「BELLING少女ハート」の略称。2012年デビュー。黒いセーラー服に黒い羽をつけたカラスのような衣装がトレードマーク。2017年にメンバー編成を変え「There There Theres(通称・ゼアゼア)」へと改名。2019年2月解散。
こちらは本家のセーラー服に近いものをネットで探し、カスタマイズ。腕部分の黒い羽はフェルトで製作したそう。お母さんいわく「これ作った私すごいと思う!」とのこと。ちなみにちよのさんはこの衣装を着て本家と共演している。
・『富士消失』インディアン娘衣装
左は共演の大村波彦さん。
2017年公開のオムニバスアイドル映画『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』。3776が出演した『富士消失』でちよのさんが着ていたインディアン風の衣装。じつはこちらもお母さんのお手製なのです!
番外編②3776 Extendedの衣装は「私服」!
左写真提供:DAI TSUCHIYAさん
パフォーマンススタイルに応じて衣装を変える3776。ルーパーを駆使して即興曲を演奏するスタイル「3776 Extended(ミナナロエクステンデッド)」の衣装は、ちよのさんの私服!
毎回どんな私服で登場するか楽しみにしている方も少なくないはず。
母は娘のアイドル活動をどう思っているのか?
オカムラ | 衣装作りはお母さんにとってチャレンジの場になってるんですね。 |
ちよの母 | 人に見られる衣装を作るっていうのは、なかなか難しいですよね。チヨが小さいとき、子ども服はよく作っていたけど、大きくなってからはあんまり作ってなかったので。 |
オカムラ | 今回お話を聞かせてもらって、「井出家じゃなかったら3776の活動は成り立ってないんじゃないか」と思いました。 |
ちよの母 | そんなことない! そんなことない! |
石田 | 衣装に関してはそうかもしれない(笑)AKBとかだと、ちゃんと衣装担当がいて全部管理してるんでしょうね。 |
森 | お母さんは洋裁の学校に行ってらしたんですか? |
ちよの母 | 行ってません、趣味です! 幼稚園の頃から布を縫ってたりはしてたんですけど。 |
森 | お母さんが衣装をデザインするとき、ほかのアイドルを参考にすることはありましたか? |
ちよの母 | してないですね。作るときは「洗えるかどうか」とか、そういうことを考えてます。 |
左:小学生のちよのさんが作った、クマに見えるネコのぬいぐるみ「調理師」。井出ちよの『ラジオネーム』MVにも出演している。右:お母さんが作ったクマのぬいぐるみ。名前はまだない。
オカムラ | ちよのさんはお母さんが好きなミュージシャンと共演したとき、いつもインスタで「親孝行した」とコメントしてますよね。お母さんとしては、ちよのさんのアイドル活動についてどう思ってるんですか? |
ちよの母 | 普通の子どもなのにねぇ・・・。最初、チヨは全然アイドルを好きじゃなくて、そんなに熱心じゃなかったんです。まさかこんなに長くやるとは思ってなくて。
本人が好きでやってるぶんには、できることはサポートしてあげたいなと思ってます。それくらいです。 |
オカムラ | (こ、これが聖母か・・・)ありがとうございます。森さん、今回の取材はいかがでしたか? |
記事内では言及できなかったちよのさんの衣装について、森さんがイラストを描いてくださいました。本当にありがとうございます!
森 | 楽曲も活動形態も井出ちよのさん本人のキャラクターも個性的な3776は、衣装に関しても本当にユニークだなと。プロの方に製作を依頼した「LINKモード」や「井出ちよの」の衣装も素晴らしいデザインですが、やはり大きいのはお母さんの存在ですね。
去年、ライムスター宇多丸さんの番組『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)に「制服アイドルの系譜」というテーマで出演させていただき、3776の衣装を紹介したのですが、お母さんが衣装を作っているという話をしたら「ぐっときますね!」とスタジオが盛り上がりました。
今回、お母さんが衣装に関わるようになった経緯や、デザインが決まるまでの過程、それを着てステージに立つちよのさんの感想などを聞けて、3776のライブを見るのがいっそう楽しみになりました。これからも応援します! |
3776ワンマンライブ告知!
オカムラ | では最後にワンマンの告知を。石田さんとちよのさんからPRのコメントをお願いします。 |
石田 | 今回のワンマンは、ほかのアイドルのサポートメンバーがいないんですよ。演奏会的な音楽寄りのライブになるかなって感じがするので、あんまりアイドルっぽいライブにはならないかも。
だけど「アイドルのなかでも井出ちよのが好き」って人は来ていただければ。音楽ファンと井出ちよのファンが来てくれたらいいなと。 |
オカムラ | 普通のライブにはならない? |
石田 | 普通のライブ・・・いや、何にも言えないですね(笑)一応サブタイトルはつけようと思ってるんですよ。 |
オカムラ | 教えてください! |
石田 | 『ダイナミクスへの誘い(いざない)』。 |
オカムラ | おお〜! |
こちらがワンマンのビジュアル。サブタイトルがもはやメインタイトルになっていたりと、ツッコミどころ満載の内容。
石田 | 音楽的にいろんなものを見せられればなぁって。たとえば全国行脚でやってたようなやつとか。 |
オカムラ | 全国行脚というと、アコギを使ったり、簡易的な機材セットでやったりするってことですか? ・・・ダイナミクス(音量の強弱)ってそういうことですか! ちよのさんはこのタイトルを聞いたとき、どう思いました? |
ちよの | あたしダイナミクスって言葉の意味がわかってなくて。『ダイナミクスへの誘い』だけ聞くと、RPGのサブタイトルみたいだなと思いました。 |
石田 | ハッハッハ! 3776は知っていても、「井出ちよの」はあんまり知らない人もいると思うので、「井出ちよの」なんかもやれたらいいですね。 |
ちよの | とってもいいワンマンライブになります。来たほうがいいかもしれないです。 |
・第5回3776ワンマンライブ『ダイナミクスへの誘い』
場所:青山月見ル君想フ
住所:〒107-0062 東京都港区 南青山4-9-1シンプル青山ビルB1F
日時:2019年3月21日(木)17:30開場 / 18:00開演
料金:前売り 2,800円 / 当日 3,000円
予約:https://eplus.jp/sf/detail/2798780001-P0030001?P1=0163
・3776Extended「火曜エクステンデッド」
日時:不定期火曜日(公式サイトにて告知)
詳細: https://lineblog.me/minanaro/archives/13207408.html
・3776
公式サイト:http://m3776.com
井出ちよの公式Twitter:https://twitter.com/IdeChiyono
森伸之さんの情報
ニッポン制服百年史
展覧会に監修としてご参加。今や日本のポップカルチャーのアイコンともなった女子制服の歴史を紹介。
場所:弥生美術館
住所:〒113-0032 東京都文京区弥生2丁目4-3
会期:2019年4月4日(火)〜2019年6月30日(日)
料金:一般900円 / 大・高生800円 / 中・小生400円
HP:http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/next.html
「鈴木邸〜登録有形文化財〜春の探書会2019」にて特別講演
静岡市内、有形文化財の古民家「鈴木邸」にて県内外の古書店が集い、古本を販売。(主催:あべの古書店)イベント内にて森伸之さんによる特別講演「21世紀考現学 女子校制服からアイドル、そして路上」を開催。
場所:鈴木邸
住所:静岡県静岡市葵区中ノ郷249
日程:4月20日(土)21日(日)
※森伸之さんの特別講演は20日(土)13:30〜 要予約
入場無料・講演参加費:1,000円(古書券500円付)
詳細・予約:鈴木邸〜登録有形文化財〜 春の探書会2019ホームページ