「3776は終わってねぇよ」から始まった!
動画で刹那的美しさを記録するハイカー
アイドルは刹那的な美しさがあると言われています。だから、彼女たちの一番美しい瞬間を見るために多くの人が現場へ足を運ぶのですが、一方で動画に記録することも大切です。
こんにちは、miteco編集部の安藤です。最近、ハイカーさん(3776ファンの総称)から、「あんなに3776やMi-IIを取り上げて、mitecoさん的には大丈夫ですか?」と聞かれます。たぶん、大丈夫です。
今回は、静岡県東部のご当地アイドルファンからはすっかりおなじみ、いぬびのさんにお話しを伺いました。
いぬびの(inubino)
職業、会社員。10代のころからグラインド・コア(ハードコア・パンク)のライブハウスへ通うが、3776にハマって以降はアイドルの現場へ足を運ぶようになる。ハンドル名の由来は、80年代に活躍したイギリスのHead Of Davidの楽曲、『Dog Day Sunrise』とのこと。いのびのさんのYouTubeチャンネルはこちら。
動画撮影のきっかけはTwitterで見かけた心ない発言
いつも3776の動画を撮影し、YouTubeにアップロードしているいぬびのさん※。現地のライブに行けないハイカーさんからすると、とてもありがたい存在です。なぜ、いぬびのさんは動画撮影を始めたのでしょうか?
※3776のライブ動画は原則撮影フリー。いぬびのさんをはじめとした有志の手でアップロードされています。
安藤 |
いつも動画を拝見しています。まずは、3776を好きになった理由を教えてください。 |
いぬびの |
昔からアイドルの音楽は好きだったのですが、3776に出会ったきっかけは音楽ライターの南波一海さんがやっている『南波一海のアイドル三十六房』という番組でした。 |
安藤 |
では、動画撮影を始めたきっかけは? |
いぬびの |
きっかけは、3776に対する心ない言葉をTwitterで見かけたからなんです。 |
安藤 |
というと? |
いぬびの |
3776のエゴサーチをしていたら、「最近、YouTubeに3776の動画がアップロードされていない。3776終わったな」と。心ない発言を見て物凄く頭にきて、「終わってねぇよ」と。
確かに、一時期はYouTubeに動画が上がらない時期はありました。でも現場に来たら本当に楽しくて、誰もやらないならどうせ僕は見に行くから自分がやろうと。 |
安藤 |
なるほど。とすると、もしかして動画撮影の経験はないんですか? |
いぬびの |
そうです。当時はビデオカメラなんて持っていなかったし、じつは未だに動画を撮るという行為の喜びがよくわかっていないんです。動画撮影やカメラ撮影をしている人には本当に申し訳ないんですが・・・。 |
誰かが記録に残していかなければいけない
「動画撮影自体の喜びはまだわからない」と話すいぬびのさん。では、怒りの感情だけで続けているのでしょうか? 撮影者としてのお気持ちを聞いてみました。
安藤 |
はじめて動画撮影をしたときは、どんな気持ちでしたか? |
いぬびの |
正直、「つまらないなぁ」と。三脚も持っていなかったので、iPhoneのビデオカメラを手で持っていたんです。目の前には本物の3776がいるのに、彼女たちを液晶越しに見なければいけないんですね。 |
安藤 |
アイドルさんが目の前にいるのにという意味では、確かにそうですよね。僕もカメラを構えることがあるので、お気持ちはよくわかります。 |
いぬびの |
2回目の動画撮影は名古屋駅前での路上ライブでした。駅前にはビッグカメラがあったので、「iPhone用の三脚を買えば、僕も肉眼で見られるし、撮影もできる」と思って、すぐに買ったんです。
ただ、それも失敗して。 |
安藤 |
失敗ですか。 |
いぬびの |
『心配のタネ』という曲が始まったんですが、3776のちぃちゃん(井出ちよのさん)とまりりん※が左右を広く使ってダンスをするので、ふたりともぜんぜん映っていませんでした。どちらかのメンバーだけを映すのはもうひとりに申し訳ないので、これは画角の広いビデオカメラを買うしかないなと。ライブが終わって、すぐさまビデオカメラを買いに行きました。 |
安藤 |
すでに300本ほどのライブ動画を上げていますよね。怒りの感情だけでは続かないと思いますが・・・。 |
いぬびの |
動画がないと、そのとき見ていた人の思い出には残るかもしれないけど、それはほかの誰にもわからないんですよね。
何年前のある日にどんなことが起きたか、どんな髪型やどんな衣装で、どんな曲をやっていたか忘れ去られてしまうんです。だから、誰かが記録に残していかなければいけない。
いまだに撮影技術もないのに、こんなことを言うのは申し訳ないのですが・・・。 |
安藤 |
いえいえ。僕も微力ですがmitecoを通じて、3776や静岡の情報をアーカイブできる存在を目指したいと思っています。だから、すごく共感しました。 |
※まりりん:元・3776の中心的メンバー。脱退後もワンマンライブなどで出演することもあるほか、Mi-IIにダンスを教えたことも。
ちぃちゃんはアイドルになったなぁと
いぬびのさんが3776を記録に残し始めてから2年以上が経ちました。そのあいだ、井出ちよのさんはどのように変化したと感じているのでしょうか?
安藤 |
3776を記録し続けるいぬびのさんから見て、ちよのさんに対しての印象はありますか? |
いぬびの |
ライブに足を運べばすぐにわかることですが、やはりアイドルさんなので演者が一番すごいと感じます。「ちぃちゃんはアイドルになったなぁ」と。 |
安藤 |
アイドルになった、ですか。 |
いぬびの |
もともと僕が見始めたころの3776は三人組のアイドルだったので、ちぃちゃんはキャッキャとはしゃぐ末っ子という印象でした。それがソロ活動と並行するとひとりでライブをする機会が増えて、世間の評価とともにひとりでやる責任感がついて、アイドル然としてきた印象です。エラそうなことを言って申し訳ないですが。 |
安藤 |
なるほど。 |
いぬびの |
物販でお話しする分には、あのころのちぃちゃんと変わらないなと思います。でもステージで見ると、ちぃちゃんはアイドルさんなんだなと。 |
たった数人のためにこんなにしてくれるなんてどうかしてる
3776を構成する要素として、プロデューサーの石田さんの話題も欠かすことができません。いぬびのさんはどのような印象を持っているのでしょうか。
安藤 |
3776について、石田さんの楽曲やプロデュースの部分はいかがでしょうか。 |
いぬびの |
とてもいい意味で、「どうかしてる」ってことですよね。なんで、こんなことを思いつくんだろうって。
僕が言うのも恐縮なのですが、ファンを驚かせる斬新さと、高い音楽性を両立しているからだと思います。まったく誰もやったことのないことを高いレベルで実現しているから、すべての面でいつも刺激的なんですよね。 |
安藤 |
たとえば、どんなエピソードがありますか? |
いぬびの |
『3776を聴かない理由があるとすれば』の収録時間が3,776秒というのはわかりやすいですよね。思いついたこと自体もそうですが、音楽業界でも多くの人が話題にしていましたよね。 |
安藤 |
確かに。 |
いぬびの |
印象的だったのは、2015年夏に行われた20名限定の「女王陛下の3776~2015夏~」という昆虫採集イベントです。 |
安藤 |
それだけで斬新な気がします(笑) |
いぬびの |
このイベントですが、「たった20人のためにここまでこだわるの!?」と感動しました。配布されたイベントのしおりが3つあるんですが、オールカラーだし、ちょっとした昆虫図鑑のページも入っていたんです。 |
安藤 |
すごいですね! |
いぬびの |
プロデューサーの石田さんが富士宮駅からライトバンで送り迎えをしてくれるんですが、実際にちぃちゃんの送迎と同じ気分が味わえるというコンセプトなんです。
さらに、石田さんがラジオDJのように、自分が昔作った曲を紹介してくれました。そのなかには、先日アイドル業界で話題になった「木村沙織全国ツアー2017※」の楽曲もあったんです。たった数人のためにこんなにしてくれるなんて、どうかしてるなと。 |
安藤 |
なるほど、曲のクオリティも去ることながら、石田さんのホスピタリティは3776を構築する大切な要素ということですね。 |
※木村沙織全国ツアー2017:3776・石田彰プロデューサーが愛してやまない、バレーボールの木村沙織選手をユニット名に冠した期間限定アイドル。Mi-IIのすずなさんが木村沙織選手に扮している。
すずなさんが3770になった瞬間はとても嬉しかった
Mi-IIのライブ中。撮影する後ろ姿も真剣です。
3776について熱く語ってくれたいぬびのさんですが、ここでひとつの疑問がわきました。「なぜ、Mi-IIやほかのアイドルの動画も撮影しているのか?」と。
安藤 |
いぬびのさんは、3776だけでなくMi-IIの動画も頻繁にアップしていますよね。妹分とはいえ、なぜほかのアイドルも応援しているのでしょうか? |
いぬびの |
もともとMi-IIは3770という3776の研修生グループでした。ちぃちゃんのソロであるSeason3(3776)を進めながら、「6人メンバーが揃ったらSeason4を始めよう」という石田さんの構想があったようなんです。 |
安藤 |
なるほど。 |
いぬびの |
つまり、Mi-IIは3776になりたいと思う子たちだから、僕はそれだけで彼女たちも応援したいという気持ちになるんです。
デビュー当時、金髪だったすずなさんが3770として元気広場に出てきたとき、感動が籠った歓声が動画でも残っていて、いま振り返っても嬉しかった出来事だなと思います。 |
ファンが気に掛けていることをどうにかして伝えたかった
「動画にはあまり関心が持てない」と話していたいぬびのさんですが、じつは『コケモモ』という曲のMAD動画を作っています。
安藤 |
年末ごろでしょうか、『コケモモのアレ、21連発』という動画が上がっていました。動画に興味がないとおっしゃっていましたが、なぜこんなに手の込んだ編集をしたのでしょうか? |
いぬびの |
ヲタクの気持ち悪い話で申し訳ないんですが・・・。 |
安藤 |
もし、よかったら教えていただけますか? |
いぬびの |
Mi-IIのメンバーのツイッターを読んでいて、「元気がないな」と感じたんですね。それで、なにかしてあげたいなと思ったんです。ちょうどそれはMi-IIの移籍問題が持ち上がっていた時期でした。ファンもこれからのMi-IIはどうなっちゃうんだろうって。 |
安藤 |
なるほど。 |
いぬびの |
ただ、Twitterでメンバーに「辞めないで」と簡単に言えるものでもなくて。ファンが気に掛けていることをどうにか伝えたくてなにかしようと。
そこで、K-POPのファンがよくやるMAD動画をマネして、そのアイドルの動画でとくにかわいいという部分だけをつないでみたら面白いかもなと。それを見て、メンバーが面白いと思ってくれたらいいなと思ったんです。 |
安藤 |
実際に、Twitter上でメンバーからの反応もありましたね。 |
いぬびの |
『コケモモ』はMi-IIにとっても特別な曲で。以前、Mi-IIに居たメンバーの卒業ライブで初披露された曲で、再スタートの意味があるんです。つまり、Mi-IIと『コケモモ』の歴史はそのまま、いまのメンバー体制の歴史でもあるのかなと。 |
安藤 |
メンバーの多くも『コケモモ』が好きだと話していました。 |
いぬびの |
さらに、MAD動画の部分のあとなんですが、「上を目指していきなりなにかの拍子でこけても僕は見ているよ絶対」という歌詞があるんです。
そういう気持ちだったんですが、あまりに遠回りすぎてメンバーに伝わらなかったらしく。あとでメンバーに話したら、「そんな意味だったの?」って笑われてしまいました。 |
安藤 |
Mi-IIのメンバーのみなさんが、「ファンのみんなはいい意味で過保護」と言う理由が少しわかった気がします(笑)僕も面白い動画だと思いましたが、そこまでは読み取れませんでした。 |
いぬびの |
所詮はヲタクの自己満足なので、みなさんには面白いと思ってもらえればいいんです。なにより、4人揃って事務所移籍に納得してくれたので本当に安心しました。 |
YouTubeをご覧の皆様へ
ハイカーやファン、ひいてはアイドルファンのあいだで、動画撮影がこんなに深い意味を持つとは思いませんでした。
いぬびのさんが撮影した動画は、3776やMi-IIのメンバーやファンに少なからずよい影響を与えているはずです。
いつも当たり前のように見ているYouTube動画ですが、こんな深い気持ちがあったんだなと感じるとともに、あらためて3776やMi-IIの魅力がわかるインタビューだったと思います。
いぬびのさん自身は、「こんなすごいグループが存在しているんだ」ということを記録したいという気持ちで撮影しているそうです。
確かに、YouTubeで見ても十分に彼女たちの魅力は伝わるかもしれません。
ただ、やっぱりアイドルは現場が一番だと思います。
いぬびのさんの動画を見て興味を持った人は、一度現場へ足を運ぶことをおすすめします!