港町の生活雑貨屋「Timeless Gallery&Store」
不思議空間に詰まった暮らしのヒントとは
こんにちは、ライターの馬場葵です。
突然ですが、ツタでびっしりと覆われたこの建物。何屋さんだと思いますか?
お花屋さん? ぶぶー。
喫茶店? 惜しい、でも違うんです。
――「何屋さんかわからないとよく言われるけど、そこも面白いんじゃないかなと思います。入ってみるまで、ドキドキしますよね」
そう話してくれた店長の西田さんが働く、からみあうツタが印象的なこのお店。じつは、「Timeless Gallery&Store(以下、Timeless)」という生活雑貨店さんなんです。
Timelessの店内。入ってからもドキドキしてしまう雑貨がずらり。
でも、この建物があるのは、静岡市駿河区用宗。生しらすをはじめとした魚貝類がとれる港町としてご存じの方も多いはず。
「なんでココにこんなお店が?」
そんな素朴な疑問から、店長の西田さんにいろいろとお話を伺ってみることにしました。
もともとは喫茶店「キャッスル」
Timeless Gallery&Store 店長 西田さん
馬場 |
なぜ用宗のこの場所で、生活雑貨店を始めようと思われたのでしょう? |
西田 |
港町の雰囲気とこの建物ですね。外観に一目ぼれという感じです。もともとここは、「キャッスル」という地元に愛されていた喫茶店でした。
そのときの情緒はいまでも残っています。もちろんツタもそう。ココは私たちが欲しい「生活の道具」を集めて提案するお店としてはピッタリでした。 |
セレクトされたデザインアイテムなども多く並んでいます。
馬場 |
えっと、西田さんは用宗のご出身ではないですよね……。何かここに特別な思い入れがあるのかなと思ったのですが。※西田さんは清水区のご出身。 |
西田 |
そう、スタッフもみんなこの辺出身じゃなくて。ここにある理由は、やっぱり建物が大きいですね。知らない人が見たらビックリするような建物。でも用宗の人にとっては普段の一部。そんなところも気に入りました。 |
馬場 |
なるほどー。確かにそれだけの理由になりそうな、かなり趣のある建物ですよね。では、外観からこだわって選ばれたTimelessさんのコンセプトを教えていただけますか? |
西田 |
このお店のコンセプトは「時間」ですね。時間にはいろいろな捉え方があって、みんな同じ長さのはずなのに、感じ方でその長さは大きく変わります。
時間を考えることで、逆に普段しばられがちな時間から自由になれるんじゃないかというのが、コンセプトとしてあります。
古いモノと新しいモノ。この建物の中に並ぶ暮らしの道具を眺めながら、いつもの時間を少しリセットしてほしいと思っています。 |
いまの暮らしに馴染む商品たちを
馬場 |
HPを見させていただいたんですが、窓辺にヴィンテージグラスが並んでいる写真、とっても素敵でした。ああいった、ヴィンテージのものを買い付けるときのポイントってありますか? |
西田 |
ありがとうございます。好みもありますが、その時代でしか作れないものや、昔にどこの家にもあったような「定番」を選ぶようにしています。
「懐かしいな」と感じてもらえたら嬉しいですし、それはこれからも大切にしてもらえる基準になります。いま、また使いたいな、と思えるものを置きたいですね。 |
馬場 |
それは大切ですね。ヴィンテージとはいえ、生活に密着して使えるものというか。 |
西田 |
そうですね。古いものだからといって気を使うのは好きじゃないので。絵柄は笑えるものでも(笑)生活のなかに溶け込めるものを選んでいます。
それと、古いからって値段をとるよりも、気軽に使えるっていうのがまずはじめにあって。お客さんにこういう古いものも気負わなくていいんだ、って思ってもらえたらいいですね。 |
左上から、牛乳パックから作られたTearable Lampと、国産木材を切り出して出来るBase。
馬場 |
じつはわたし、前々から気になっていたものがあって。「Base」って一輪指しがあるじゃないですか。あれ、ネットで見かけてほしいなって思ってたんです。 |
西田 |
ありがとうございます。あれは清水の若手職人さんに作ってもらっていますね。 |
馬場 |
あ、そうなんですか。「Base」は国産木材から作られていたり、ほかにも溶かした牛乳パックから作られた照明があったりしますよね。商品のこだわりのひとつに、素材のことがあるのかなと感じたのですが、ほかにも何かこだわっているところってありますか? |
西田 |
生活用品は、その後に長くお付き合いする「相棒」みたいなものです。素材や製法のこだわり、飽きないデザイン、実用性など、その持ち主が気に入ってくれるだろう何か、を持っているかどうか。そのあたりにこだわりをもってセレクトしています。 |
老舗Tシャツブランド・チャンピオンのボディに、スタッフさんが手でロゴを刷っているというオリジナルTシャツ。
「定番」と出会える「特別」な場所
馬場 |
では最後に、Timelessさんの今後について教えていただけますか? |
西田 |
たぶん、もっとお店のオリジナルが増えていくんだろうと、増やしてきたいんですけど。なるべく、昔からずっと作り続けられている定番のものと、新しく定番になっていくだろうというものを増やしていって。
それをお客さんが、自分の暮らしに組み合わせてもらえるのが一番嬉しいです。そういう場所であればいいなと思いますね。
Timelessで眺めた道具が、ほかとはちょっと違って見えるような場所であれたらなと。Timelessのためにわざわざ用宗に来ていただけるようになったらいいですよね。それも嬉しいです(笑) |
お話を伺ってみて感じたのは、伸び放題のツタがからむ奔放な外観とは裏腹に、店内に並ぶ商品はどれも、お客さんの生活に馴染ませるための心づかいがされつくされているということ。
それはまた、インタビュー後に「あまり商品の説明はしません。お客さんとするのは日常会話が多いですね。緊張して入ってきて、いきなり説明を受けたんじゃ、ねえ。僕自身人見知りなので、それは、これまで働いてきた僕なりの工夫です」と話してくださった西田さんの、気遣う接客の仕方にも表れているのではないかなと。
ときの流れとともに、気持ちまでゆったりとさせてくれるTimeless Gallery&Storeさん。これから、季節の移り変わりでせわしなくなる前に、暮らしのなかへちょっとしたゆとりを取り入れてみてはいかがでしょうか。
毎日にゆとりをもたらすアイテムたち
Timeless Gallery&Store
JR用宗駅から徒歩7分。駐車場は階段横に2台。