ママの“好き”が詰まった喫茶店「草里」
アンティークの調度品に隠された歴史編

  • posted.2016/09/10
  • 吉松京介
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ママの“好き”が詰まった喫茶店「草里」 アンティークの調度品に隠された歴史編

吉松

こんにちは、miteco編集長の吉松です。暑苦しい笑顔から失礼します。

看板

ここは静岡市清水区にある、創業45年の喫茶店「草里」さん。アンティークの調度品がずらりと並ぶ店内、無添加の手作りケーキが100種類以上、そして飲み物は40種類以上、という話題たっぷりのウワサを聞きつけてやってまいりました。

しかもそのすべては、草里を始めたママの趣味が発端になっているとか。

そこで草里のママという、横沢まりさん(以下、横沢さん)に草里の一から十までを伺ってみることにしました。

草里

ありがたいことにお話を伺う前、ブルーベリータルトとコーヒーを出していただきましたので、ティータイムっぽい雰囲気でお届けしちゃいます。ちなみに横沢さん(写真右)がいらっしゃるカウンターは、いつもの立ち位置だそう。

草里はママの趣味そのもの

横沢まり草里 横沢まりさん

吉松

吉松

まず店内の調度品についてですが、はじまりは横沢さんの趣味からだそうですね。
横沢まり

横沢さん

そうですね、私の好きなものを集めていたら、いつのまにかこうなっていたという感じです。そもそも、この建物も私が設計をしておりますので、お店そのものが私の趣味といっていいかもしれませんけど。

草里草里さんの内装。調度品がいちいちオシャレで、どこを見ても絵になります。

吉松

吉松

え、設計もされたんですか?
横沢まり

横沢さん

お店を作るときにいろんな設計者が入ったんですけど、どれもまったく気に入らなくて。だから私の身長にあわせて、カウンターはここまで手が伸ばせるとか、椅子は胸より下くらいとか、洗い物はここから渡したいとか、すべて自分の都合でやっちゃいましたね。
吉松

吉松

やっちゃいましたで、できるもんなんですね・・・。

「女性がどこに座っても楽しいように」

横沢まり

吉松

吉松

この店内は好きなものを集めた結果とのことでしたが、それにしては統一感がありますよね。
横沢まり

横沢さん

昔のものが好きなんですよ。アールヌーヴォー様式とか。テーマでいえば、統一感につながるかわかりませんが、「女性がどこに座っても楽しい」っていうのがそうですかね。

 

この席がダメってのはありませんし、たとえばあちらには華やかな器を入れた大きな棚を置いていて、チラっと見えるだけでとっても楽しめますよね。あとはお座敷に座れば、テーブルの中に猫ちゃんがいたりして。

 

※19世紀末~20世紀初頭に、ヨーロッパを中心として起こった芸術運動のこと。おもに植物のような曲線的なデザインが知られています。

草里店内の奥にあるお座敷。テーブルの中にいる猫ちゃんは実際に見るまでのお楽しみに。

吉松

吉松

素敵なテーマだ・・・! もしかして、店内のいたるところにバラが置いてあるのも、そのテーマに沿った演出ですか?
横沢まり

横沢さん

それもそうなんですが、清水はバラの産地でありますし、私がかなりのバラ好きなので。働いているときにバラが見えると、ずっとご機嫌でいられるんですよね。

 

私はいつもカウンターに立っていますけど、ここならお店の全体が見渡せますし。まあ、結局は自分の都合のいいようにですね(笑)

店内で一番高いものは・・・

草里

吉松

吉松

ネット上の口コミで、かなりお高いものがあると書いてあったんですが、これはほんとですか?
横沢まり

横沢さん

あー、高いものもあります(笑)。
吉松

吉松

一番高いものを教えていただくことは・・・?
横沢まり

横沢さん

なにをもって高いというかですけども、一番高いっていったら、後ろのバラの絵でしょうか。

 

和田英作さんっていって、美校(現:東京芸術大学)の校長をやっていた人の絵なんですが、絶筆なので値段がついたらすごい高いかなーと思いますよ。

 

うちのおばあちゃんがいただきまして、それから私にっていう流れですけどね。

和田英作日本を代表する美大の学長を務めた和田英作氏の絶筆。これに値段がついたら・・・。

横沢まり

横沢さん

あとは向こうにある、芹沢銈介さんの「花」という版画ですかね。あれはサインがないんです。

 

なんでないかっていうと、うちの父がいただいたものでして、売買するものでもないからと書かなかったんですよ。

 

※芹沢銈介(1895-1984)は、静岡市出身の世界的な染色工芸家。「重要無形文化財保持者(人間国宝)」「静岡市名誉市民」「文化功労者」などの栄誉を授けられています。

芹沢銈介

吉松

吉松

(もう、高いとかそういうレベルの話じゃないぞ・・・)

一つひとつが自分の歴史

横沢まり

吉松

吉松

少し気になりましたが、調度品のなかには、ご家族からもらったものもあるんですね。
横沢まり

横沢さん

そうですね。家族以外からもらったものもありますよ。一つひとつに自分自身のね、歴史が詰まっているんです。
吉松

吉松

歴史? それはどのような・・・?
横沢まり

横沢さん

これは嬉しいときに買ったもの、これは頑張ったときに買ったもの、これは辛いときにもらったものとか。

 

目の前にあるカウンターテーブルは、実家の近くのおじさんが「カウンターを作ってやるよ」って言って、もらったものなんですよ。

吉松

吉松

はーなるほど。一つひとつって、カウンターテーブルまで含まれるんですね。
横沢まり

横沢さん

そう、若いころから45年もお店をやっていることになるんですけど、そのすべてがここにあるんです。

草里

・・・グッときてしまいました。店内のものすべてに、横沢さんの想いが詰まっているのかと。それから「すべてがここにある」って言い切れるカッコよさですよね。力強い言葉に心が揺さぶられます。

さてここまでは、草里をつくっている調度品のお話でした。このあとケーキや飲み物のお話に入るんですが、なんと横沢さん――。

横沢まり

横沢さん

じつはね、私はケーキの修行とか、なにもしていないんですよ。適当につくったら売れちゃったんです(笑)。

後編に続く。

とっておきのアンティークに囲まれて過ごすなら

珈琲処 草里(ぞおりー)

住所:〒424-0842 静岡県静岡市清水区春日2-2-13
電話番号:054-352-4446
営業時間:10:00~22:00
定休日:毎週火曜日
駐車場あり