静岡県は雨も晴れも多いし暖かい!?
知ってトクするかもな気象特性のお話
こんにちは、miteco編集長の吉松です。
先日、静岡地方気象台で静岡県に雪が降らない理由を解明しました。めっちゃわかりやすい説明をしてくれたのは、気象情報官を務める寺嶋孝二さんでしたね。
その終盤で僕と寺嶋さんはこんな会話をしています――。
寺嶋 |
ちなみに静岡県は雪が降りにくいだけでなく、「雨が多い」「日照時間が長い」「暖かい」といった気象特性があることをご存じですか? |
吉松 |
え・・・? ところどころ矛盾してません? |
寺嶋 |
いいえ、まったくそんなことはないんですよ。 |
吉松 |
え、気になる。それ教えていただいてもいいですか。 |
というわけで、「静岡県の気象特性」の説明をしていただきます。あらためてこちらが寺嶋さんです。
さて静岡県に住んでいる(いた)みなさん。雨が多いとか、日がよく照るとか、暖かい日ばかりとか、そんな風に思ったことはあるでしょうか?
やはり前提は静岡県の地形特性
寺嶋 |
今度は「静岡県の気象特性」をテーマに、ざっくりとご説明していきますけども。 |
吉松 |
雪の説明をしていただいたばかりなのに、ありがとうございます。 |
寺嶋 |
いえいえ、とんでもないです。それではこちらのスクリーンに移りますよ。 |
寺嶋 |
はじめに静岡県の地形についておさらいしておきましょうか。どんな特性がありましたっけ、吉松さん。 |
吉松 |
えーと、静岡県は南アルプス、富士山、伊豆の山と全国屈指の山々に囲まれている。それを「中部山岳※」っていうんですよね(赤丸で囲まれているところ)。※中部山岳:3,000m級の山々が連なる中部地方特有の山岳。 |
寺嶋 |
そうですね。そのとおりです。あとは平野ですね。県内でも人口の多い静岡市や浜松市には、南の海に開けた平野が広がっていると(青丸で囲まれているところ)。 |
吉松 |
静岡に雪が降りにくいのは、この地形特性の影響で――。ってもしかして雨が多いとかの気象特性も、この地形が関係しているんですか? |
寺嶋 |
もちろんですよ。これを前提に話を進めていきますので、覚えておいてください。 |
静岡県は「大雨BIG4」の一員だった!?
寺嶋 |
はじめに全国で降水量の多い地域。調べてみると5つの地域が挙げられるんですね。こちらの資料に〇がついている箇所です。 |
吉松 |
・・・鹿児島あたり、四国、紀伊半島、北陸、それから静岡って感じですか? |
寺嶋 |
おおむね正解です。具体的には「北陸」「九州南部」「四国」「紀伊半島」「静岡県」ですね。 |
吉松 |
静岡だけ県単位・・・。勝手に日本海側のほうが雨は降りやすいって思っていたんですけど、そうでもないんですか。 |
寺嶋 |
ああ、そうですね。しかも日本海側、とくに北陸の降水量が多いのはほとんど雪によるところで・・・。日本国内の大雨BIG4といえば、北陸を除いた4つなんですよ。意外とこれが知られていなくて、とくに静岡県のみなさんに話してみると「え、そうなんですか?」という具合でして(笑) |
吉松 |
は~知らなかったですね。大雨BIG4なんていう言葉もはじめて聞きましたけど。 |
寺嶋 |
じゃあ、「なんで静岡県に雨が降りやすいのか?」ってことですけども。 |
吉松 |
そうですね。そこですね。 |
寺嶋 |
やはり太平洋に面していますので、南からの湿った空気を受け取りやすい、というのがあります。しかも中部山岳がありますので空気はそこでせき止められて、その結果、平野で混じり合って上昇気流となるわけです。 |
吉松 |
おお。なんとなくイメージはつきました。 |
寺嶋 |
それで上昇気流で持ち上げられた暖かく湿った空気は、平野の上空で冷やされて雨雲になります。だから浜松市から静岡市のあたりでも雨は降りやすいんです。たとえば、静岡市の年間降水量は約2,300mmなんですけど、名古屋と東京は約1,500mmなんですよね(数値は1981年~2010年の平均値)。 |
吉松 |
名古屋なんてお隣さんなのにそんなに違うんですね・・・。 |
寺嶋 |
ちなみに細かく見ていくと谷筋。天竜川、大井川、安倍川、富士川と県内にはたくさんの川がありますね。それらを上に登っていくと谷があるわけなんですけども。このあたりは風が駆け上がっていく地形の影響などで雲がものすごい発達するんですよ。 |
谷で雲が発達するイメージ。寺嶋さんからいただいた資料より抜粋。
吉松 |
ってことは・・・。山のあたりは雨がものすごい降ると。 |
寺嶋 |
そうですね。ものすごい降ります。伊豆半島の天城山なんかは、1年に一度や二度は400mmの雨が降るんですよ(1日の降水量)。 |
吉松 |
400mm!? そんなの災害が起きるレベルじゃないですか・・・。 |
寺嶋 |
ん~そうかもしれませんね。そこは最後に触れますよ。 |
吉松 |
あ、はい。 |
じゃあ、日照時間は少ないと思うでしょ?
寺嶋 |
さて静岡県は雨が多い。そうするとですね、年中曇っていると、日照時間も短いんだろうなと思いますよね。 |
吉松 |
普通にいけばそうですよね。 |
寺嶋 |
でも決してそうではないんです。 |
吉松 |
そうではない。 |
寺嶋 |
こちらをご覧ください。 |
寺嶋 |
じつは統計的に静岡県は日照時間が長いんですよね。まずは身近なところからいくと、静岡市の年間日照時間は約2,100時間。名古屋と比べるとそう変わらないんですが、東京は約1,900時間ですので200時間も違うんですよ。 |
吉松 |
200時間の差は大きいですね。でも名古屋とはほとんど一緒ですか。 |
寺嶋 |
そこで注目したいのが御前崎市です。じつはこちら、全国の主要154観測地点でもっとも平均日照時間が長いんですよ。その数値、約2,200時間です。 |
吉松 |
全国で一番・・・!? 驚きました。しかも御前崎市が1位ってことは、周辺地域の日照時間もそこそこ長そうですね。 |
寺嶋 |
よくお気づきで。2位は高知県の土佐清水ってところなんですが、3位は浜松市なんですよ。 |
吉松 |
なんと・・・。 |
吉松 |
でも待ってください。日照時間が長いのに、雨が多い理由はまだですよね? |
寺嶋 |
それはですね・・・。先ほど私、静岡県は大雨BIG4のひとつだと言いましたよね。 |
吉松 |
はい。 |
寺嶋 |
静岡県の降水量が多いのは大雨が降るからです。つまり、一度にドカッと降る、あとは日が照っているというのが静岡県なんですよ。極端な言い方ですけどね。 |
吉松 |
うわ~・・・。してやられた感じです。それならつじつまが合いますね。 |
寺嶋 |
ですので雨が多いってわりには、晴れの日も多いという特徴がございますと。そういうわけですね。 |
あの九州の県より暖かいらしい
寺嶋 |
それではそろそろ終盤です。次は気温ですね。 |
吉松 |
「静岡県は暖かい」って話でしたよね。日照時間が長いから暖かいってことかと。 |
寺嶋 |
そうですね。その通りです。とくに駿河湾に面したところは全国でも高い傾向です。具体的な数値のお話しをいたしますと、静岡市の年間平均気温は16.5℃※。名古屋や東京と比べると、およそ1℃は高いですね。※ちなみに浜松市は16.3℃、石廊崎は16.6℃。 |
吉松 |
名古屋と東京なんて近いのに、ここまで違うとめちゃくちゃ離れた地域な気がしてきますね・・・。 |
寺嶋 |
(笑)もうひとつ、1月の平均気温も見てみましょうか。 |
寺嶋 |
こちらです。静岡市は11.5℃、名古屋は9.0℃、東京は9.6℃となっていますね。なんと2℃も違っているんです。全国で見比べてみると静岡市は鹿児島くらい暖かいんですよ。 |
吉松 |
えええ・・・。九州の最南端と一緒ですか。 |
寺嶋 |
それだけ暖かいってことですね。あと住んでいてわかると思うんですけど、とくに静岡市は風もあまり吹かないんですね。 |
吉松 |
あーそうですね。浜松に住んでいたころに比べると、風はあまり強くないない気がします(以前、浜松市に4年間住んでいました)。 |
寺嶋 |
そうすると「日中は暖かい」「日差しが出ている」「風がない」となるので、体感的にも非常に暖かいんですね。それもこれも最初に述べた静岡県特有の地形が、このような状況を生んでいるというところです。 |
気象特性を踏まえた静岡県というのは・・・
寺嶋 |
さてまとめですけども、静岡県は「雨が多い」「日照時間が長い」「気温が高い」という特性があります。ということでなにが言えるかといいますと、静岡県は産業が発達しやすい地域だということですね。 |
吉松 |
あ、急ですね。でも確かにそうですね。 |
寺嶋 |
たとえば、農産物がそうです。お茶やみかんをはじめとして、わさびにいちごなんかも盛んですよね。これは成長に必要な水、日光がきちんと揃っていてさらに温暖だからです。幅広い農産物を育てる環境が整っているといえますね。 |
吉松 |
なるほど。 |
寺嶋 |
あとは雨に対する防災体制ですね。先ほど大雨のくだりで、「災害が起きるのでは」ということをおっしゃいましたけども。 |
吉松 |
はい。1日に400mmなんていうのは相当な雨量だと思うので。 |
寺嶋 |
じつはですね、静岡県は昔から雨が降る地域ですので、ダムや堤防などの設備が非常に整っております。雑な言い方を言いますと、ちょっとやそっとの雨では災害にならないかなと。 |
吉松 |
いろいろ大丈夫ですか・・・? |
寺嶋 |
ええ。例を出しますと、去年の夏に北海道や東北で、大雨による大きな被害がありましたよね。 |
吉松 |
ありました。川の氾濫や浸水が大変だったと全国ニュースでも。 |
寺嶋 |
こう言ってはなんですけども、あの降水量であれば静岡県で災害は発生しません。逆にいうと北海道や東北にとって、それくらい稀なケースだったんですね。 |
吉松 |
というと? |
寺嶋 |
北海道や東北は、雪や風、それから吹雪には強いんです。ただ夏の雨にはさほど強くありません。これはいままでの歴史のなかで、去年ほどの雨が降ったケースがなかったからなんです。 |
吉松 |
完全に想定外だったわけですか。 |
寺嶋 |
あのときは確か1日に200mm~300mmでしたかね。静岡県では先ほど申し上げた通り、天城山のほうだと1年に数回は400mmの雨が降っておりますので、その対策はもちろんしているわけです。逆にですね、同じように静岡県で大雪が何日も降った場合、なにが起こるかは容易に想像つきますよね。 |
吉松 |
・・・大混乱でしょうね。 |
寺嶋 |
とにかく、その対策がどうこうというわけではなくて、地域には地域に合わせた防災体制があるというお話です。とりあえず静岡県は雨に対する防災体制は整っていますよ、と理解いただければよろしいかと。それではこちらで、静岡県の気象特性の説明は以上とさせていただきます。 |
静岡県の気象特性まとめ
余談ですが、気象台の施設内は学校のようでした。
完全に想定外の着地をしたわけですが、寺嶋さんのお話をまとめてみます。
- 「雨が多い」
静岡県は南からの湿った空気をもろに受けるうえに、中部山岳や谷場の影響などで雲が発達する地形特性があるから大雨が降りやすい。
- 「日照時間が長い」
主要154観測地点における平均日照時間の全国1位は御前崎市。3位は浜松市。降水量が多いのに日照時間が長い理由は、一度にドカッと雨が降ってあとは晴れている、という気象特性による。
- 「暖かい」
日照時間が長いゆえに静岡県は暖かい。その暖かさは鹿児島と肩を並べるくらい。
以上を踏まえて、静岡県は「産業が発達しやすい」「雨に対する防災体制が整っている」という特徴を持った地域だと。ここまでが気象特性の総括です。
・・・どうでしょうか。日常のなかで「雨が降るといつもどしゃ降りだ」「晴れの日が多いかも」「いつも暖かいな」などと思ったことはあるでしょうか。
なにごとも比較対象がないと自分事にしづらいものですが、気象の話なんてとくにそのはずで。でもこうやって知ってみると、静岡県は暮らしやすい地域だと気付くんですよね。雨が降り続けることもなく、むしろ晴れの日ばかりで暖かくて。
静岡県民のみなさんには「こんな場所に住んでいるんだな~」と、少しでも知っていただけたらいいなと思います。
ちなみにこのお話は、あくまで「静岡県の気象特性」ですので、県内でも地域によって特性が異なるのはあしからず!