静岡から関西に移り住んで感じた言葉の壁
通じる静岡弁、通じない静岡弁
わたしは生まれてから高校卒業まで静岡県富士市で過ごし、大学進学とともに関西に移り住みました。関西では当然のことながらみんな関西弁です。
大学には各地方から人が集まってきているものの、関西出身者が多数を占めていました。大学の講義も関西弁、お店の人も関西弁という環境です。
ただわたしは頑なに静岡弁を話し続けています。とくに困ることはないのですが、ごくまれに言葉の壁を感じることがあります。
静岡弁の定番「ら」「だら」
静岡の方言の定番といえば「~だら(~でしょの意味)」ですが、「そうだら?」と言えば相手は同意を求められているのだとわかるので、ほぼ通じます。
親しい人はわたしが静岡弁だということがわかっているので、もはや突っ込みません。富山県出身の同級生から「『だら』は富山では『馬鹿』って意味なんだよ」と教えてもらったことはあります。
よく「ら」と「だら」の使い分けを聞かれるのですが、ひと言で説明できるものではありませんよね。アメリカ人が「a」と「the」を無意識に使い分けるのと同じことです。静岡弁のネイティブスピーカーならほぼ間違うことはないでしょう。
通じなかった静岡弁
わたしは両親とも富士市の出身なので、通じなかった静岡弁は、主に静岡県東部の方言だと思われます。
せんびき
短い定規のことを「せんびき」と言ったら「なにそれ?」と返されたことがあります。「『せんひき』というのが正しい」と聞いた覚えがあったので「せんひき」と言い直したものの、「『せんひき』自体言わない」と再び返されてしまいました。
かじる
わたしの知る富士市民に関してはほぼ100%、かゆいところをかくという意味で「かじる」を使っていました。「かく」という言葉があることは知っていますが、「かじる」と言うほうがメジャーです。
静岡以外で「かじる」というのは、歯で噛み付くときにしか使わないそうです。かゆいところを「かじる」と言うと「えっ?」と返されます。
ちゃんこ
静岡では子どもを座らせるのに「ちゃんこ」という言葉がよく使われています。関西では「ちんとん」や「おっちん」と言うので、「ちゃんこ」が一切通じません。
ちなみに娘は「ちゃんこ」でも「ちんとん」でも座るようになりました。家では静岡弁、外では関西弁を聞いているせいで、バイリンガルになりつつあります。
これからも静岡弁を使い続けたい
ほかにも静岡独特の言い回しはあります。たとえば誰かが同行するのを伝える際、「Xさんも行くだって」という言い方をするかと思います。「行くって」や「行くんだって」が一般的で、「行くだって」は方言です。
わたしが静岡弁を使うために、関西出身の主人もすっかり静岡弁ナイズされてしまいました。静岡出身として、これからも静岡弁を伝道していきたいと思います。
(イラスト / 川名ひろ)