静岡コスプレイヤーの聖地「清水ノンタウン」
レイヤー文化は市民権を得たから危ない?
レイヤーとは、アニメやゲームキャラのコスチュームをまとう人「コスプレイヤー」の略。じつはJR清水駅前の清水駅前銀座商店街では、数年前から「レイヤー文化」が育っています。
たとえば、全国から清水にレイヤーが集まる「富士山コスプレ世界大会」は、今年で第5回を迎えました。
でもレイヤー文化は少し前にピークを迎えて、いまは元気がなくなりつつあるという話もあったりなかったり・・・。
清水ノンタウン2F「アイドルステージ」。5階建てのビルに30近くの撮影シチュエーションがあります。
清水に限らず、静岡レイヤーの聖地といえば「清水ノンタウン」。JR清水駅から徒歩3分、コスプレ撮影に特化した大型撮影スタジオです。
そもそもどうして、清水駅前銀座商店街にオープンしたの? いまの清水レイヤー文化はどうなってる? そんな疑問を素直に聞いてみました。
「清水ノンタウン」はなぜ清水駅前銀座商店街に?
お話をしてくれるのは、清水ノンタウンのキャラクター「ノンタン」です(!?)。
編集部 | なんで清水駅前銀座商店街にコスプレ特化の撮影スタジオを作ったんですか? |
ノンタン | 清水駅前銀座商店街の賃料が安かったからです! |
編集部 | (笑)そこまでのストーリーを教えていただけますか? |
ノンタン | 流れをお話するとオーナーは昔、フリーでカメラマンをしていました。最初はコスプレと全く関係のない写真を撮っていたんですよ! |
編集部 | あ、そうだったんですか? |
ノンタン | はい! でも当時はまだ初心者だったから「練習しなきゃ」と考えて、ちょうど浜名湖パルパルで開催されていたコスプレイベントに行きました。そこでレイヤーに声をかけて、自宅のセットで何度も撮らせてもらうことになったみたいです。 |
編集部 | レイヤーさんは「撮られたい」って気持ちがあるとよく聞くので、そこを狙ったんでしょうか。 |
清水ノンタウン「3F酒場」。
ノンタン | かもしれないですね。するとレイヤーの撮影は仕事に比べて、暗い写真とか派手な写真をたくさん撮れることに気付いて、どんどん楽しくなっちゃって・・・。そのうち仕事を辞めて、地元の浜松で倉庫を借りて、レイヤー撮影専用のスタジオ※を作ったんです。 |
編集部 | それが原点ですか。作ったのはいつごろですか? |
ノンタン | 2013年ですかね。当時は全国的に「レイヤーに特化した撮影スタジオ」がなかったので、ものすごいお客さんが来てくれたんですよ! |
編集部 | 2013年っていうと4年前ですか。たしかにあまり聞いたことなかった気がします。 |
ノンタン | そこで店舗を増やしてみようと考えて、静岡市で探していたら清水銀座商店街の空きビルが見つかって。浜松でスタジオを作った翌年、2014年に清水ノンタウンをオープンすることになったんです。 |
※撮影専用のスタジオ:浜松市西区「ノンアートフォトスタジオ」のこと。2017年11月現在も営業中。
清水ノンタウンのリアルな現状・・・
清水ノンタウン3F「廃墟風ブース」。
編集部 | 清水ノンタウンはオープンして3年目という話ですけど、利用者の数はどうですか? |
ノンタン | 3年前と比べると減りましたね・・・。いまはすごく減ることもないし増えることもないです。安定しています。 |
編集部 | 同じ人がずっと来ているような状況ですか? |
ノンタン | いや、レイヤーさんもカメラマンさんも入れ替わってます! 昔いた人はいないですし、若い人がどんどん入ってきている様子で、絶えず循環しているような。 |
編集部 | そうなんですか。文化が根付いているというか、下の世代にずっと引き継がれているんですかね? |
ノンタン | そんな気がします。でも静岡はレイヤーを引退するまでが早いとも言えるんです。東京とか名古屋だったら、30歳を過ぎてもコスプレする人は結構いるんですけど・・・。 |
清水ノンタウン4F「女の子部屋」。
編集部 | すると実際のところ、運営は厳しいですか? |
ノンタン | 厳しいです。家賃と電気代をまかなうので精一杯で・・・。 |
編集部 | そうですよね・・・。 |
ノンタン | こんなこと言うのもアレなんですけど、「いつか行きたい」って思っている人は結構いるみたいで。たとえば、ノンタウンでの撮影を来年の予定に入れている人とか見かけるんですよ。 |
編集部 | なるほど。それはあると思います。 |
ノンタン | でもですよ、儲かっていないので、いつまであるのか分からないことは言いたいです! |
編集部 | リアルな話ですね・・・。 |
ノンタン | もちろん頑張りますよ! でもあることが当たり前ではないので、そこだけは知っておいてほしいです。 |
清水ノンタウンが鳴らすレイヤー文化への警報
清水ノンタウン4F「教室」。
編集部 | ここまでの話を踏まえて、清水レイヤー文化について思うところはありますか? |
ノンタン | 清水駅前銀座商店街に一定のレイヤーさんがいるのはすごく嬉しいです! いまは全国的にもレイヤーが浸透しているので、市民権を得たような雰囲気もありますし、コスプレしやすい流れになっていると思います。でもそれだけに・・・。 |
編集部 | それだけに? |
ノンタン | マナーはきちんと守らなきゃいけないです! |
編集部 | おお。レイヤーとしてのマナーですか? |
ノンタン | カメラマンさんもですね! 最近の流れを見ると、外で撮影したがる人が増えているんです。清水駅前銀座商店街はノンタウンと連携していて、商店街のどこでも撮影OKなので、この中ならいいんですけどね。
問題は清水駅のほうまで撮影に出ちゃって、みなさんに迷惑をかけてしまっていることです。コスプレはどうしても目立つので、一部のレイヤーさんとカメラマンさんがマナーを守らないと、業界すべてに悪いイメージが付くかもしれないですし・・・。 |
編集部 | そんな状況があったんですか・・・。 |
清水ノンタウン5F「屋上」。
ノンタン | だからレイヤーさんとカメラマンさんは、コスプレの前に基本的なルールをググったりして押さえておいてほしいです! |
編集部 | 基本的なルールがあるんですか。それは知っておくべきですね。※少し調べてみると、「公の場でのコスプレはNG」「コスプレの着替えは現地で」「ゴミは持ち帰ること」などがありました。 |
ノンタン | そうなんです。とくに新規のレイヤーさんやカメラマンさんはそこから始めてほしい・・・。 |
編集部 | 文化として根付いてきているいまだからこそ、マナーは大事になりますね。 |
ノンタン | きちんとマナーを守れるレイヤーさんとカメラマンさんが増えたら、それこそ本当の意味での市民権を得られると思います。清水に限らずですけど、レイヤー文化がどうなるのかは今後次第かもしれないです! |
清水レイヤー文化を担ってきた「清水ノンタウン」を通して見えたのは、意外とシビアな現状でした。
清水に来るレイヤーの数は、数年前にピークを過ぎたのは本当みたいです。
でもいま間違いなくあるレイヤー文化が続くかどうかは、主役であるレイヤーはもちろん、カメラマンの行動にもかかっているかもしれません。