静岡の古着屋「chubby×eight(チャビィエイト)」
女の子の「着たい」が詰まったお部屋
拝啓、モテがほしい女の子たちへ。
以前、吉松編集長がご紹介した、アーティストやクリエイターのためのシェアオフィス、静岡市葵区「金座ボタニカ」。
その1室に入居している古着屋さん「chubby×eight(チャビィエイト)」をご紹介します。
ヨーロッパのヴィンテージアイテムを中心に、アメリカ古着や100年以上前のアンティークものまで取り揃えているこのお店。
日中でもほの暗く、独特の静けさをたたえる3階廊下のつきあたりです。
どこか入りづらい雰囲気が漂いますが、店内にところせましと並ぶかわいいお洋服と、からっとした笑顔が印象的な店長の尾崎さんに緊張もほぐれます。
そんなchubby×eightのお話しを伺いつつ、スタイリストとしても活躍する尾崎さんに、好きな人の気を惹けるようなコーディネートを選んでもらってきました。
先輩のお部屋へ遊びに行くような安心感
chubby×eight 店長 尾崎さん
馬場 |
こんにちは、今日はお願いいたします。まず、尾崎さんがこのお店を始めた経緯を伺ってもいいですか? |
尾崎 |
もともとはインテリアショップに勤めていて。そこのいち部署でリサイクルショップをやることになったときに、古着を触るようになったんです。じつはきちんと服屋さんで働いた経験はなくて。で、そのときの職場で出会った人が古着屋さんをやりたいと言っていたので、「じゃあやろうよ」と。 |
馬場 |
そんな気軽な感じで。 |
尾崎 |
そうですね。当時静岡の街中にはレディースの古着屋さんがなかったですし、わたし自身、漠然と「なにかやりたい」と思っていたので。誘われたときにはふたつ返事でしたね。4年やっていた仕事を辞めて、1週間後にはボタニカと契約しました。 |
馬場 |
わ、あっという間ですね。インテリア系のお仕事をなさっていたということは、内装にもこだわっているんでしょうか。 |
尾崎 |
それがねえ、あんまり。本当はもっとやりたいことがいっぱいあって。でも、これは後付けですけど、ここってお店というよりはちょっと部屋っぽいじゃないですか。 |
馬場 |
あー、たしかに。ボタニカってもとは社員寮でしたもんね。 |
尾崎 |
そう。ここにはキッチンがあったし、いまでも押し入れとかハンガーをかけるところもある。改装しているとはいってもなんとなく部屋っぽいから、それを活かして「わたしのお部屋に遊びに来てもらう」みたいな雰囲気にしたいと思っています。 |
馬場 |
その空気感はありますねえ。居心地がよくて、長居しちゃいそう。HPにも「自分の好きなものだけを集めたクローゼットのような場所」ってありますもんね。 |
尾崎 |
あーーそうそう、忘れてたっけ(笑)わたしの気に入ったものがクローゼットみたいにここに詰まってるから、好きなものがあれば持っていってって感じ。
そもそも古着屋さんってそういうところがあって。親に言えないこととか、先生にも聞けないようなこと、ファッションのこと、メイクのこと、恋のこととか。それを入り浸って話せる場所だと思うんですよね。 |
馬場 |
それはすごくわかります。 |
尾崎 |
わたしも10代、20代のときは、そういうことをまちの古着屋さんでやっていて。でもこのお店を始めた当時、そういう古着屋さんはあんまりなかったから、そんな場所をつくりたいって想いはあったな。かわいいお洋服をみながらコーヒーを飲んで、なんでも相談できるようなね。 |
馬場 |
古着屋のお姉さんのパワーってなんでしょうね。気づいたら誰にも言えなかった悩みを話しちゃってますもん。 |
尾崎 |
昨日も相談に来てくれた女の子がいましたよ。「最近彼氏っぽい人ができたけど、態度がつれないから距離を置くことにした。そのあいだに大人っぽく変身したい」って。「よし、服を考えよう!」って上下コーディネートして、メイクのアドバイスもして。 |
馬場 |
うわ、いいですね。「コーディネートしてください」って相談されること、結構ありますか。 |
尾崎 |
あるねえ。古着初心者の子が来てくれることも多くて。それまでは親と一緒にデパートで買い物していた子が、自分で選びたいけどおしゃれのことがわからないって、ここに相談に来てくれるんです。だから「はじめての古着はここ」って女の子もいますよ。 |
およそ100年前の愛着が残る古着たち
馬場 |
古着初心者さんも来るお店ということで、商品のセレクトにはなにかこだわってますか。 |
尾崎 |
なんだろうなあ。一応日常着というか、カジュアルなものを選んでるんだけど。わたし自身新品のお洋服も着るから、それと合わせてもしっくりくるものというか。コーディネートのしやすさもポイントですかね。それでいて人とちょっと差をつけられるような、個性的なものもあるかな。 |
馬場 |
たしかに、コーディネートの主役や名脇役になりそうなお洋服ばっかり。 |
尾崎 |
そもそもは自分が見ていてかわいいとか、わたしが着られないものを若い子に着てほしいとか、ここまできれいに残ってるヴィンテージ見つけたよとか、これかわいいから見てみてって感じですね。 |
馬場 |
ヴィンテージの古着って、実際どれくらい前のものなんですか? |
尾崎 |
年代にはそんなにこだわってないんだけど、古いもので100年以上前のやつもあります。一応、ヴィンテージが50年、アンティークが100年以上経ったもののことを言うから、じつはここにはアンティークも置いてるのよ。
うちはヨーロッパ古着を中心に揃えていて、その年代ならではのレースの繊細さとか、生地の厚みがあるので、きれいに着られるものも多いし。あとは、あえて縫い直してある服もある。これとかがそうなんだけど。 |
尾崎 |
ここがね、直してあるところ。わざと丸く縫ってあったり、四角くしてあったりする。フランスのアンティークのナイティ(夜着)だから夜に着て寝るものなんだけど、昔のコットンって着心地がいいからちょっと穴が空いても直して着たいなって、そういう愛着が感じられるでしょう。そういうのは古着にしかなくて、買っちゃうんだよねえ。 |
馬場 |
なんかぐっときました。これまで「前の持ち主の愛着」ってところに着目したことがなかったかもしれません。 |
尾崎 |
正直、誰が着たのかもわからないから、あんまり店員さんは説明したがらないけど。直してまでも大事に着たいって気持ちが、こうやってずっと残っているのは大きな魅力だと思う。 |
尾崎さんにコーディネートしてもらってみた
馬場 |
最後になんですが。わたしをコーディネートしていただくことってできますか? |
尾崎 |
しますか! ぜひぜひ。ちなみにどんな音楽が好きなんですか。 |
馬場 |
音楽……? |
尾崎 |
音楽のことを聞くとテイストがわかるじゃん。たくさんライブハウスに行くような子ならパンツスタイルが多いだろうし。 |
馬場 |
なるほど! よく聞くのはシューゲイザーとかですかね……。 |
尾崎 |
なにそれ、知らない!(笑) |
馬場 |
あー、写真を撮ってくれているこの人(吉松)がシューゲイザー大好きなので。説明頼みます。 |
吉松 |
(笑)シューゲイザーはですね、フィードバックノイズがあるなかできれいめのメロディーが乗っているっていう。My Bloody Valentineってバンドご存じですか? うんぬんかんぬん――。 |
尾崎 |
……なるほどね。絶対変態が好きなやつじゃん。じゃあ、デートとかもニッチそう。エロい系でいくか! |
馬場 |
エロい系!(笑) |
尾崎 |
これとかまさに。あとは赤リップしたほうがいいよね。髪も暗めだから、赤いアクセサリーとかも似合うよ。 |
馬場 |
ホエ―、赤いものあんまり持ってないですねえ。 |
尾崎 |
黒をよく着るでしょう。それに差し色で赤を持ってくると、女っぽさを演出できるから。服で「がっつり赤を入れるのはな~」って思うだろうけど。うん、赤ぜったいに似合うね。こういうのとか。 |
馬場 |
かわいい……好きです。 |
尾崎 |
これにレースのタイツを履いて、サンダルとか。赤リップと濃い目のアイラインは必須ね。あとはゴールドの揺れるアクセサリー。最近の子ってエロいとかセクシーとか、恥ずかしいのかあんまり着ないけど、好きだから男は。 |
馬場 |
勉強になります。 |
尾崎 |
あとは――。あれ? 売れちゃったかな。超絶ミニの。あ、あった。 |
馬場 |
ヒャー! |
尾崎 |
ドルガバのミニスカートなんだけど、これに黒のマーチンとか履くのよくない? |
馬場 |
めちゃめちゃえっちですね。好みを見透かされている。なんというか、こうしてお話ししていると本当に頼れる先輩感があります。 |
尾崎 |
おせっかいなところもあると思うよ(笑)でも、似合うものの幅が広がって本人のおしゃれが楽しくなるなら、それが一番だしね。 |
取材中、chubby×eightのお洋服や尾崎さんのアドバイスをきっかけに恋が発展したという、くすぐったいお話しをいくつも聞けました。
「chubby×eightのブラウスを着ていたら、学校でずっと気になっていた人に『そのブラウスかわいいね』と声をかけてもらい、それがきっかけでデートできた」「ここのお洋服をプレゼントして告白するという男性がいて、後日カップルになったふたりが手をつないでやってきた」などなど。
それを聞きながら、女の子本人の魅力があって、それを汲んだうえで後押ししてくれる存在がchubby×eightなのだと感じました。わたしのコーディネートをしてくださった際も、とにかく現在の古着の流行りを推すような接客ではなく、見た目や好みを察したうえで提案してくれるような印象。
生粋の古着好きにも、着たことはないけどチャレンジしてみたいという方も満足できるに違いない。とびきり大きなクローゼットのような空間から、お気に入りの1着を見つけてみてはいかがでしょうか?