本州ナンバーワンの源泉数を誇る静岡県!
静岡県温泉協会に温泉の基礎から聞いてみた

静岡県といえば、お茶、そして富士山。でもあとひとつ、仲間に入れてあげてもいいんじゃないかな。そんなふうに思う存在があります。
それは、「温泉」。
じつは静岡県の源泉数(温泉が湧き出ているもとの数)は約2,500で全国3位、温泉利用宿泊施設数(温泉を併設した宿泊施設の数)は約1,900で全国1位なんです※。
ちなみに源泉数は1位の大分県、2位の鹿児島県に続いてのランクイン。4位は北海道なので、本州だけで見ると静岡県は堂々の1位です。
それなのになぜ! 「静岡県=温泉」というイメージがあまりないのか! ・・・と思いましたが、そもそも僕自身もつい先日まで、温泉のイメージは全く持っていませんでした。
というわけで、県内の温泉地を統括する「静岡県温泉協会」に、まずは静岡県の温泉の基礎知識から聞いてみたいと思います。
※環境省「平成27年度温泉利用状況」、静岡県衛生課「温泉に関する統計(平成29年2月1日)」より出典。
地域によって全く違う「静岡県の温泉」 冷た~い温泉もあるらしい・・・
やってきたのは静岡県温泉協会の会長が運営する、熱海の旅館「ホテル貫一」。
こちらで出迎えていただいたのは、静岡県温泉協会会長の佐藤元昭さん(写真上)と、同事務局の松下由美子さん(写真下)。静岡県の温泉について質問をぶつけてみます!
![]() 吉松 |
はじめに唐突なんですけども、静岡県は温泉地として誇れる県だと言っていいですかね。 |
![]() 佐藤 |
ああ、もうそれは十分に言えると思います。 |
![]() 吉松 |
よかった・・・! それでは静岡県は源泉数全国3位、温泉利用宿泊施設数全国1位なんですよね。なぜここまで多いんでしょうか。 |
![]() 佐藤 |
まずですね、源泉数約2,500のうち、約2,300は伊豆半島にあります。 |
![]() 吉松 |
伊豆半島に約2,300!? 県内の温泉のほとんどは伊豆半島にあるんですか。 |
![]() 佐藤 |
そうですね。伊豆半島は、フィリピン海プレートの上に乗っている火山島や海底火山が火山活動を繰り返して、本州に衝突して誕生したんですけども。
つまり、源泉数が多いのは半島全体が火山の恩恵を受けているので、いたるところで温泉が湧き出る環境だからと言えますね。 |
![]() 吉松 |
伊豆半島にはそんな歴史が・・・。 |
![]() 佐藤 |
施設数は単純なことで、温泉が湧き出るところには宿泊施設が増えていきます。昔から日本人は温泉が好きですから。そういうことで、全国でもトップクラスの施設数になっていったわけです。 |
静岡県温泉協会提供の「静岡県温泉データ(2015年度版)」。細かすぎて見にくいと思いますが、表にずらっと並んでいるのは全て静岡県の温泉地です。緑色の表は伊豆地区。ほかの地区に比べて温泉地が抜きん出て多いのがわかります。※画像をクリックすると詳細を見られます。
![]() 吉松 |
伊豆半島に約2,300といっても、西部中部にも200はあるわけですよね。地域ごとで温泉の違いは見られるんですか? |
![]() 佐藤 |
泉質の違いはやっぱりありますね。大きく分けると地域ごとというより、海沿いと山沿いでしょうか。
海沿いは「塩化物泉」といって食塩を含んだ無色透明なお湯。静岡県で一番多いのはこれです。保温や保湿に優れていると言われています。
一方で山沿いになると「硫黄塩泉」といって、ぬるぬるした無色か黄色がかったお湯が増えますね。とくに伊豆半島の山に比較的多いかなと思います。 |
ホテル貫一の温泉は塩化物泉のひとつ「弱食塩泉」。100%天然で温まりやすい泉質とのこと。
参考までに極端な例を。三島市「竹倉温泉」。「鉄泉」というお湯でほのかに鉄臭がするそう。画像提供:静岡県温泉協会
![]() 吉松 |
温泉とひと括りにしちゃってましたが、海と山でも泉質はかなり違うんですね。 |
![]() 松下 |
もちろん細分化すると地域によっても異なりますけどね。たとえば、山のほうで川根あたりになると、色がにごったお湯が増えてきますし、富士宮のあたりだと冷鉱泉といって冷た~い温泉もありますよ。 |
![]() 吉松 |
冷た~い温泉! そんなものが県内にもあるんですか。 |
![]() 佐藤 |
温泉の定義は「摂氏25度以上、あるいは既定の物質を1種類含むこと」で、富士宮の冷たい温泉は30度もいかないくらいです。私のところは源泉で94度ありますけどね。
ともかく、静岡県内で温泉に入ろうと思ったらいろんなところでいろんな温泉が楽しめるので、そこをぜひおさえておいていただきたいです。 |
静岡県の温泉事情って実際どうなの?
冷た~い温泉の正体は「新稲子川温泉ユートリオ」。写真は通常の温泉。施設内には源泉100%で28.4度の温泉プールがある。写真提供:静岡県温泉協会
![]() 吉松 |
「いろんなところでいろんな温泉を楽しめるのが静岡県」ということですが、近年の利用客数というか、実際のところ静岡の温泉はどういう状況なんでしょうか? |
![]() 佐藤 |
静岡県に限った話ではないですけど、やっぱり難しいところはあります。昔は温泉に入っておいしいものを食べるのがお休みの過ごし方でしたけども、現代は楽しみ方も多様化してますので。宿泊施設数を例にすると静岡は依然として全国1位ですが、数は間違いなく減ってきていますし。 |
![]() 吉松 |
多様化の波は温泉にまで広がってきているんですね・・・。 |
![]() 松下 |
それでもここ数年で伊豆半島を中心に、少しずつ盛り上がりは見せていますよ。たとえば、熱海だと観光客数が数年前に比べてV字回復している状況もあって。 |
![]() 吉松 |
そういえば、大学生のころ熱海に遊びに行ったとき、正直に言って誰も歩いていなかったんですけども。今日なんか平日なのに、若い人たちが結構歩いていてびっくりしました。 |
つい先日、社内の3人で熱海に遊びにいったときの様子。海沿いでマルシェが開催されるなどまちは元気そうでした。
![]() 佐藤 |
まあ、いずれにしても活性化が必要だと思いますので、時代の流れに合わせた取り組みをしていきたいです。約2,500もの源泉がありながら、十分に活かせていない現状はやはりありますから。 |
![]() 吉松 |
たとえば、どんな取り組みを考えていますか? |
![]() 佐藤 |
県内のみなさんをはじめとして、まずは静岡県の温泉を理解していただくことが大事なのでは、と思います。地域による違い、泉質、いまの状況などですね。だからこうやって発信していただけるのはとても嬉しいですよ。 |
![]() 吉松 |
ありがとうございます。僕も同じように考えていたので嬉しいです。 |
![]() 佐藤 |
それとですね、じつは外国人の旅行者も増えてきていますので、温泉に入るマナーだとかも発信したいです。お風呂に入る文化は日本ならではですし、現地の利用者も観光客もみなさんが気持ちよく過ごせる空間にしていきたいので。 |
![]() 吉松 |
なるほど。では、せっかくなのでマナーも伺っていいでしょうか。意外と日本人でもあいまいだと思いますし、僕みたいな温泉初心者だと「常連さんに叱られそうだから行きづらい」みたいなこともあるんですよね。 |
![]() 佐藤 |
あ~(笑)そういったこともありますかね。わかりました。なんでも聞いてください。 |
最低限のマナーに「和み」と「ふれあい」を
浜松市西区舘山寺温泉のひとつ「ホテル九重」。2種類の大浴場と20種類の湯めぐりができる。画像提供:静岡県温泉協会
![]() 吉松 |
「これだけはおさえておくべき」みたいなマナーはありますか? |
![]() 佐藤 |
マナーはとてもシンプルで、まずは「お風呂を入る前にかけ湯をする」「タオルはお湯に入れない」がありますね。最低限のマナーというか、常識の範囲内だと思います。 |
![]() 吉松 |
たしかにそのあたりは最低限しますね・・・。個人的に気になっているのは、「かけ湯をすれば本当に入っていいのか。身体をきちんと洗ってからがいいのか」「髪の毛は洗うべきかどうか」のふたつなんですけど。 |
![]() 佐藤 |
たしかに(笑)面白いですね。身体のほうはかけ湯をすればいいと思いますが、髪の毛はどうでしょうか。女性のほうが自分事かもしれないです。 |
![]() 松下 |
んー、「髪の毛はお湯につけない」のはマナーだと思うんです。でも洗うのは温泉のあとにご飯を食べたり、お出かけしたりすることもあるので・・・。一応つけないようにアップさせておくといいんじゃないでしょうか。 |
![]() 吉松 |
なるほど! イメージどおりで安心しました。このマナーは全国的になにかしらの取り決めがあったりしますか? |
![]() 佐藤 |
ないんじゃないですかね。常識の範囲内、最低限のルールってことで、各施設によっても違うと思います。そもそもですね、温泉というのは「和み」とか「ふれあい」がメインの場所なんですよ。 |
![]() 松下 |
そうですね。だからあまりに厳しいルールを設けると、温泉がピリピリした雰囲気になっちゃって。和みもなければ、ふれあいも生まれない場所になりかねないんです。 |
![]() 吉松 |
和みとふれあいですか・・・。その視点はちょっとなかったですね。 |
![]() 松下 |
たとえば、地元の方がよく利用するところに初心者の方が行ったとき、常連さんが入り方の指導をすることもよくあるんですよ。
でも「叱られちゃったわ!」と捉えるのではなくて、地元の人も大切にしているからこその指導なので。ここぞとばかりにコミュニケーションをとるのもいいですよね。 |
![]() 佐藤 |
昔ながらのところだと一緒に歌を歌ったりとかね(笑)そういう文化は大切にしていきたいです。 |
![]() 吉松 |
これ全部、静岡県の温泉で起こってる話ですよね。地元の温泉はまだまだ行けてないので、そんな和みとふれあいがあるのは発見でした・・・。 |
![]() 佐藤 |
よかったです。まあ、静岡県は横に長いと言われますけども、各地にまんべんなく温泉がありますので。ぜひ県内の温泉地を知って巡っていただき、このWEBマガジンをご覧の若い方々にも楽しんでいただければと思っています。 |
![]() 吉松 |
(笑)まとめていただきましてありがとうございます。 |
静岡県が外国人向けに作成した動画「静岡県の魅力と温泉の入り方」。もし外国人に静岡と温泉のことを教える機会があればぜひ活用してください。
不思議なもので話を聞けば聞くほど、「温泉に入りたい・・・!」と思う自分がいました。
ここで出た話題は本当に基礎の基礎なんですが、そこを知るだけで温泉がグッと身近になったような。そもそも静岡県は温泉が身近な地域なので、みなさんも知ることでより親しみを持っていただけると嬉しいなと思います。
さてこれから不定期ではありますが、静岡県内の温泉を発信していこうと考えていますので、ぜひ楽しみにお待ちください!