3776LINKモードの構想はいつからあった?
石田Pの考える「アンチ一極集中」とは
どうも。オカムラです。
グループでもユニットでもない、「LINKアイドル」という新しい概念をつくりあげ、活動をしている富士山ご当地アイドル3776(みななろ)。
前々回は9月2日「あさぎりフードパーク」にておこなわれた、3776の特殊なライブ「LINKモード」の体験レポートを。
前回はLINKモードライブ直後、3776のメンバーふたりへのインタビューをお送りしました。
今回は同日に実施した、3776の楽曲制作をすべてひとりでおこない、奇抜なアイディアでいつもファンを驚かせてくれる「LINKモード」の発案者、3776プロデューサー石田彰さんのインタビューをお送りします。
「石田さんの脳ミソの中、わかんない」というのは、3776静岡担当・井出ちよのさんの言葉。その脳ミソの中をどこまで覗けるのか挑戦です・・・。
それではスタート!
3776「LINKモード」の実験は続いている
9月2日、LINKモードライブ終了後、あさぎりフードパークにてインタビュー。
オカムラ |
今日のLINKモードではそれぞれ、ステージのスピーカーを逆向きに置いてましたよね。あれを見たときは困惑しました。我々は石田さんの手のひらの上で踊らされてるんじゃないかって。 |
石田 |
ハッハッハ、別にそんな考えてないですよ。お客さんがこうなったらシメシメっていうのは一切なくて。 |
当日の会場図。
オカムラ |
今日のスピーカーの向きに意図はあったんですか? |
石田 |
意図っていうか、一番気にしてるのは、お互いの音が混じりすぎず、ほどよく離れているってことで。あんまり近いと音が混ざるかと思ったんですよね。
この環境でどこがいいかって探ったときに、建物に音が反射するとか、そういうことを考えたらこうなったってだけかな。今日どうでしたか? |
オカムラ |
真ん中で音をミックスして聴いてたんですけど、左右からいい感じで聴こえました。 |
それぞれのステージの中間地点、赤い矢印の場所で左右の音をミックス。
石田 |
あんまりお互いが離れてても、音が小さすぎて楽しめないでしょうし。今回ぐらいがちょうどいいのかもしれませんね。 |
オカムラ |
前回LINKモードをやった市場(岳南富士地方卸売市場)のときは、それぞれのステージの距離が今回よりも近かったですよね。
毎回距離が違うのは、実験は続いていると思っていいんですか? 会場の環境で、ステージの距離の制限はあるかとは思いますけど。 |
石田 |
そうですね。まだ落ち着いてはいないです。前は「1回あれぐらいの近さでやってみるか」って、そしたらやっぱりやりにくかったっていうか、やってる本人たちの声が混ざりすぎちゃって。 |
オカムラ |
今日は前回よりもステージが離れてるから、「声が混ざらないでやりやすかった」ってふたりが言ってました。 |
LINKモードの構想はいつから?
オカムラ |
LINKモードの構想はいつからあったんですか? |
石田 |
あー、その話・・・。 |
オカムラ |
WEB上の過去のインタビューを読んだら、2016年12月の時点で「メンバーを増やして、野外でやりたい」っていうようなLINKモードを思わせる発言があったんですよ。 |
石田 |
そのころはすでにちょっとはあったかな。離れた場所で同時進行みたいなのが。 |
オカムラ |
同時進行といえば、新宿LOFTのワンマンライブ※のときにも、ふたつのステージで同時進行のライブをやってましたね。 |
石田 |
まぁ、あれが最初っていうか、もともとそういうのはあったと思うんですよね。別々の場所で別々のドラマがある、じゃないけど。 |
オカムラ |
そのころからなんとなく構想はあったんですか? |
石田 |
それが・・・そうですね。その延長っちゃ延長かもしれないです。完全にこういうふうにやろうって決めたのは、やっぱり新しいメンバーが決まってからですね。 |
3776山梨担当・広瀬愛菜さん
オカムラ |
愛菜さんの加入がLINKモードをやる決め手だったと。 |
石田 |
そうですね。最初グループでやるつもりだったから、「その構想ができないぞ」というふうになって。 |
オカムラ |
別の構想があったんですね。 |
石田 |
そうですね。新メンバーを募集しているときはLINKモードのことは考えてなかったです。 |
オカムラ |
今日は次回のLINKモードライブで新曲を発表すると告知がありましたね。これからLINKモードはどうなっていくのかすごい興味あります。 |
石田 |
まぁ、新曲はこれからつくるんですけど。それは来てみてのお楽しみで。どっちにしても、いまある4曲だけじゃレパートリーが少ないんで。 |
オカムラ |
TEAM MⅡ※や過去の3776の曲を、LINKモードで再解釈っていうのも考えたりしますか? |
石田 |
そういうのがあっても面白いですよね。 |
3776静岡担当・井出ちよのさん
オカムラ |
ちよのさんと愛菜さんは山梨でLINKモードをやりたいって言ってました。 |
石田 |
山梨県でもできる場所があればぜんぜんやりますし、やってあげたいですけどね。いつも静岡県内でやってるから、愛菜が肩身狭い思いしてるかもしれないし。 |
オカムラ |
たしかに静岡で「富士山は山梨県のものですよね?」って言うの、巨人側の応援席で「阪神頑張れ!」って言ってるようなもんですもんね。完全にアウェーっていうか。 |
石田 |
ハッハッハ! LINKモードは月に2回くらいやれればいいなと思ってはいるんですけどね。 |
※新宿LOFTワンマンライブ:2016年8月15日に開催された3776のワンマンライブ「盆と3776が一緒に来るよ!」のこと。メインステージとバーステージ、ふたつのステージを使って同時進行でライブがおこなわれた。
※TEAM MⅡ:3776の前身グループ。
無名でやる気がある人の方が面白い
8月30日に発売された3776『公開実験《LINK MIX》』。先に発売された『公開実験《静岡版》』と『公開実験《山梨版》』をミックス※した楽曲を収録しています。
また「ミキシング※をやってみたい」というアーティストやエンジニアを募集し、著名なミュージシャンや音楽に造詣が深いファンのミックスが採用されました。
オカムラ |
『公開実験《LINK MIX》』で、3776の曲でミックスをやってみたい人を公募して、CDを出すというのも石田さんの思いつきですよね。 |
石田 |
ミックスをやりたがる人けっこういるんじゃないかと思って。直枝さん(直枝広政 / カーネーション)にはこちらからお願いして、面白がっていい感じでやってくれたんでよかったです。掟さん(掟ポルシェ / ロマンポルシェ)はけっこうファンだからやってくれるだろうって。
あとはmuramasaさん(muramasa / DJ-S.A.L)っていう、この3方はこちらから声をかけて。あとは有名で3776を知らないけど「頼まれてお金もらうんだったらやるか」って人より、無名でやる気がある人にやってもらったほうが面白いかなぁって。 |
オカムラ |
ハイカーさん(3776ファンの総称)のミックスも採用されてますね。 |
石田 |
基本的に応募のあった人は全員入れてます。あまりにもひどいのがあったらどうしようかなと思ったんですけど、そんなにひどい人はいなかったですね。 |
※ミックス=ミキシング:曲を構成する様々な音のパートを編集しまとめる作業のこと。
石田PによるLINKモードの曲解説
オカムラ |
では、あらためてLINKモードの4曲を1曲づつ解説をお願いしてもいいですか。 |
石田 |
解説・・・解説しようがないですけどね。あんまり解説は好きじゃないんで、パパッと。ひと言ずつぐらいで。 |
オカムラ |
『見えない』は愛菜さん(山梨側)の方の歌詞が少なくて、ちよのさん(静岡側)のほうが多いですね。こっち(静岡側)は拍子が途中で変わったりして複雑っていうか。 |
石田 |
全体的にこの4曲に関しては、曲にもよるんですけど、(LINK MIXブックレットの写真を広げて)この写真どおりっていうか。山梨側は木が見えてて、静岡側は煙突があって、工場があって。曲も「自然」と「人工物」、その違いっていうか、そういう歌ですね。 |
オカムラ |
なにが「見えない」のかっていうのは明記されてないですね。今日のライブでは富士山が雲に覆われて見えなくて、歌詞通り「雲がかかって見えない」状態でしたけど、やっぱり見えないのは富士山なのかなと思いました。 |
石田 |
そうですね。なにがって言われたら富士山が一番いいですかね。富士山ご当地アイドルなんで。 |
オカムラ |
そうだ。今回の衣装についても聴きたかったんですよ。着物っぽいイメージですよね。 |
石田 |
「和」のニュアンスを入れたいっていうのはあったんですよね。あとはやっぱり「自然」と「人工物」のイメージで。 |
オカムラ |
では次は『桃としらすの歌』。山梨の桃っていうのはわかるんですけど、普通、静岡の名産品っていったらお茶とかだと思いきや、しらすっていうのが面白いなと。 |
石田 |
これは山梨といえば、桃。静岡っていうか、ちよのの近所といえばなにかなって思ったらしらすかなって。しらすってアイドルが使わないでしょって誰かにも言われたなぁ。 |
オカムラ |
静岡側はしらすについて主に歌ってますけど、歌詞に「桃のタルト」が出てきて、山梨のほうは桃について歌ってるけど「ちりめんじゃこ」が出てきますね。なぜかお互いの加工品が出てくる。 |
石田 |
「距離感」をつくりたかったんですよ。 |
LINKモードライブ中、移動して音の聴こえ方を何度も確認していた石田さん。
オカムラ |
『もうちょっとおやすみ』は、お互いに反対のことを歌っていますね。静岡側が寝てたい人で、山梨側が起きてたい人の歌っていうか。 |
石田 |
静岡側は富士山とかけてるんですけどね。自分が富士山みたいな。 |
オカムラ |
富士山の噴火を思わせるような歌詞ですよね。歌詞も山の形になってる。 |
石田 |
たまたまですけどね。だんだん歌うとこが増えてくから。結果的にこういう形になるってだけですけどね。
まあ、『もうちょっとおやすみ』と『桃としらすの歌』は、本人たちのクセみたいなのは入れてるかな。愛菜が夜更かしが好きみたいなこと言ってて。朝よく寝坊するって。静岡側は・・・そうでもないかな。ちよのは機械的に歌わせてるかな(笑) |
オカムラ |
『私のものです!』は4曲のなかのリード曲ですよね。 |
石田 |
そうですね。今度7インチ※でこの曲が出るんですけど・・・。 |
オカムラ |
針を落とすまでどちらの曲かわからない仕様(『私のものです!アトランダムEP』※)で、話題になったやつですね。 |
石田 |
それはレコード会社の方からそういう話があって。最初はどうかなって思ったんですけど、考え方によっては面白いかなと。LINKモードとかの流れがあればね。 |
オカムラ |
『私のものです!』にも、ふたりの個性は反映されてますか? 山梨の歌詞で「Peach Flaver」とか「Snow Flakes」っていうのは愛菜さんが前に活動していたPeach suger snowを連想させますけど。 |
石田 |
そう、敬意を表してじゃないですけど。ちよののほうは、こっちもあんまりその個性に合わせてないかな。曲については昔、聞かれたから語っていたけど、あんまり・・・。 |
オカムラ |
・・・そうですね。説明しすぎるとつまらないですし。想像するための余白っていうか、想像できることが必要だと思います。 |
石田 |
そう、そこなんですよね。 |
※7インチ:シングルレコード盤のこと。
※『私のものです!アトランダムEP』:2017年11月3日発売予定。A面に収録されている『私のものです!』が、静岡版か山梨版か聴くまでわからない仕様となっている。
最近のテーマは「アンチ一極集中」
3776ふたりへのインタビューでもふれた「全国行脚」。3776のファンが少ない都道府県での認知度を高めようという目的でおこなわれた企画です。
井出ちよのさんがMONOモード(ソロ)で日本各地のアイドルイベントを訪ね飛び込みライブをしたり、公園や広場でゲリラライブをしました。行脚は夏以降も継続しておこわれることが決定しています。
オカムラ |
全国行脚についても聞きたかったんですよ。 |
石田 |
行脚もいろいろあったんですねけどね・・・その・・・きっかけは。 |
オカムラ |
「少なくともいまは、東京のアイドルよりも地方のアイドルと仲良くしたい」とTwitterでつぶやいていたのが、すごく気になってたんですけど。 |
石田 |
うーん・・・そうですね。「アンチ一極集中」みたいなことが最近の自分のなかのテーマっていうか。LINKモードもそうなんですよ。
ひとつの場所でひとつのものを応援するんじゃなくて、ばらけていきたいと。地方分散じゃないですけど。 |
オカムラ |
なるほど。 |
石田 |
ここに集まれじゃなくて、もう分かれろって。結局、東京でやると地方の人が東京に集まるんですよ。そうじゃない方向であえてできないかな、というのはありました。 |
オカムラ |
ちよのさんが東北のほうでは思ったより3776の知名度があったと感じたって言ってましたけど。 |
石田 |
なんとなく3776を知っている人は多いと思うんですよ。知ってても聴いたことがない人が聴いてくれればいいですね。まずはそこからかなと。薄いファンが濃くなってほしいというか。 |
オカムラ |
ファンは音楽好きの方が多いと思うんですが、たとえば、ちよのさんとか愛菜さんと同年代のファンを増やしたいとか思ったりはしないんですか? |
石田 |
別にファン層はこだわってないですね。こっちから選べるものでもないし。 |
オカムラ |
失礼かもしれないですけど、3776って日本一説明のいるアイドルじゃないかと思うんですよ。LINKモードのこととか。音楽的にレベルの高いことをやってるから、とっかかりが難しいんじゃないかと。 |
石田 |
ハッハッハ! 説明なしでも、ここに来てくれたらわかるじゃないですか。LINKモードもね。難しく考えずに来てくれればいいと思います。説明なしでも聴けると思うんですけどね。音楽だから。 |
オカムラ |
そうですね。まずは来てもらって、細かい説明はmitecoに任せてもらえれば! |
やっぱり石田さんの頭の中はわからない
いまやアイドルを語るには運営に触れないわけにはいきません。
奇才と呼ばれ、音楽に造詣の深いファンからも一目置かれる石田さんですが、インタビューをしてみて思ったのは、プロデューサーでありながらアーティストなのだということ。まだまだ手の内は明かしてくれていないだろうけれど、そういうミステリアスなところが魅力なんだな、と。
そんな石田さんの口から出た「アンチ一極集中」という言葉。これをキーワードに、これからも3776の活動に注目していこうと思います!