
株式会社エストリンクス代表取締役。2012年、htmlコーダーや業界紙の新聞記者を経てWEBライティング専門の記事作成代行・エストリンクスを創業。クラウドワークス様でのウェビナーなど、SEOやコンテンツマーケティングに関する講演実績多数の上級ウェブ解析士。
『カスタマージャーニー』という言葉を耳にしたことはありますか?
意味を知らなくとも、顧客の行動が時系列に記された1枚のシートを見たことがあるかもしれません。それはカスタマージャーニーマップと言います。
コンテンツマーケティングにおいて、ペルソナ(自社にとってのユーザー像)の明確化は非常に重要です。さらにそのペルソナが時系列でどのように行動するのか?を分析することで、いくつかのメリットがあります。
今回は、
上記を紹介します。
カスタマージャーニーマップの作り方を学べるよう、国内・海外の事例5選やカスタマージャーニーマップの作成ツールもご紹介します。
Contents
カスタマージャーニーの意味を直訳すると「顧客の旅」となります。顧客が商品を認知してから、購入し、さらに購入後の行動(例えば評価・レビュー・口コミなど)に至るまでを「旅」と捉え、その一連の行動を時系列で把握する考え方を、カスタマージャーニーと呼びます。
従来のマーケティング手法にも様々なものがありますが、例えばペルソナを設定する方法では、年齢・性別といった基本的な属性から、居住地や日々の生活習慣や好きな雑誌など。付随する様々な情報で1人の架空の人物をつくりあげ、ターゲットを具体的にイメージできるように社内で共有するといったものがあります。
しかし、ペルソナの設定で確かにターゲットが明確になりますが、このままでは肝心なことが考えに含まれていません。それは、ターゲットがとる行動は時系列に変化するということです。
例えば、ターゲットが飲食店を探すと仮定すると、「飲食店を探す」と「飲食店を予約する」の2つの時点での行動は当然、異なります。となると、必然的にマーケティングのアプローチも異なるはずです。
しかし、ペルソナを設定する手法では、ターゲットは明確化されていますが、時系列に異なる行動に対するアプローチまで想像は及んでいません。よって、カスタマージャーニーのように時系列で、ターゲットの行動を明確化できるマーケティング手法が必要となるのです。
カスタマージャーニーを分析することで得られるメリットは、上記した内容にとどまりません。ペルソナの設定にも同様のことが言えますが、ターゲットという見えない対象を明文化、ないしは図解することで、関係者が共通の認識を持つことができます。
コンテンツマーケティングは5W2Hを設定することが大切です。ペルソナの設定と共にカスタマージャーニーを分析することで、「WHO?(誰に?)」を、より明確化し、共通認識を持つことができることは、非常に大きなメリットだと言えます。
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カスタマージャーニーを一度でも調べたことがある方は、下記のような図をイメージするかもしれません。これはカスタマージャーニーマップと呼ばれるものです。
出展元:http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/14/16305
ターゲットの行動を時系列に並べるのであれば、文章よりも図の方がわかりやすいですね。上記の図は「ペルソナ」「フェーズ」「タッチポイント行動」「思考」「感情」「インサイト」といった縦軸の項目を設けていますが、提供する商品・サービスによって、この縦軸を工夫する必要があります。
ではなぜ、カスタマージャーニーが注目を集めるのでしょうか?大きく3つの理由を上げてみました。
総務省の発表によると、スマホの世帯普及率は、すでに平成25年末時点で6割を超えています。スマホの普及が意味するところは、WEBマーケティングにおいて非常に大きいものがあります。
顧客がいつでもどこでも、インターネットにアクセスできるようになったため、それだけ商品・サービスとの接点が多様になりました。その結果、従来のマーケティング手法では顧客の購買行動を把握しきれなくなり、カスタマージャーニーのような新しい考え方に注目が集まるようになったのです。
「SNSマーケティングとは?特徴・やり方・効果を徹底的に解説」でもFacebook、Instagram、Twitter、LINE、TikTok、Clubhouseと、6つのソーシャルメディアをご紹介しました。当然、ユーザー数が少ないものも含めると、今やソーシャルメディアの数は把握しきれないほど多くなりました。
photo by mkhmarketing−flickr
皆様は、ソーシャルメディア上の友達がリコメンドした記事を読んだり、そのリコメンドから商品を購入した経験はありませんか?しかもその経験は1つのソーシャルメディアからのみではなく、複数のソーシャルメディアで情報に触れたケースではないでしょうか?
複数ソーシャルメディアの台頭で、顧客の商品認知や購買行動の経路は、多極化しました。結果、カスタマージャーニーのように、それらを時系列で把握できる考え方が注目されるようになったのです。
なお、ソーシャルメディアの運用時だけでなくSEOにおいてもカスタマージャーニーマップを考えます。むしろ、数年前まではサイト内回遊を高める必要があり、主にSEOの文脈で語られていました。
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今やWEBマーケティングにおいて、数値化できる顧客の行動は多岐にわたります。Googleアナリティクスのような高精度の分析ツールが、無料で提供されていることに驚きを隠せません。それに加え、ヒートマップツールをはじめとする、サイト分析ツールも高精度化しています。
カスタマージャーニーを用意しても、行動ごとに有用な数値が取得できなければ意味がありません。その点、上記したとおり分析ツールが高精度化した結果、より有用な数値が取得できるようになりました。このことも、カスタマージャーニーが注目を集める1つの要因だと言えます。
カスタマージャーニーをわかりやすく図解したものが、カスタマージャーニーマップです。カスタマージャーニーが「顧客の旅」なので、図解したものが「マップ=地図」となっています。
それでは、実際にどのようにカスタマージャーニーマップを作り方を、見ていきましょう。複雑すぎると難易度が上がるので、ここでは、比較的シンプルな作り方をご紹介します。
まずはペルソナの設定からはじめましょう。オムニチャネルという言葉をよく聞くようになった今、顧客との接点は多様化し、顧客の行動は複雑化しています。しかし、自社の商品・サービスの顧客をペルソナ化して把握するが重要であることは、変わりません。
カスタマージャーニーマップの作成においても、ペルソナの設定が非常に重要です。まずは手元にある情報を元に、ラフにペルソナを設定してみましょう。後ほど顧客アンケートをとって修正をするので、最初に作るペルソナは、想像力をおおいに使って作成してOKです。そのかわり、なるべく細部にわたって作り、具体的に1人の人物を想定することが重要です。
つづいて、先ほど設定したペルソナが、自社の商品・サービスを認知して購入するまで(あるいは購入後の行動まで)に、どのような行動を取るのかを仮説として設計します。
この時に、ペルソナの行動をいくつかのフェーズに分ける必要があります。このフェーズが、カスタマージャーニーマップにおける横軸にあたります。シンプルにフェーズを用意する場合は、「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」がおすすめです。
商品・サービスによっては、一概に購入をコンバージョンに設定できない場合もあるので、「購入」のフェーズは、商品・サービスに合わせて臨機応変に変えていただければと思います。
各フェーズを用意したら、そのフェーズでペルソナが取る行動を洗い出していきます。この工程には、複数人であたるのが良いでしょう。(顧客と一緒に仮説の設定ができたら、理想的です)最後は、洗い出したペルソナの行動をフェーズごとに整理しておきます。
各フェーズのペルソナの行動が本当に合っているのか、仮説を検証していきます。この工程には、なるべく顧客に参加していただきましょう。しかし、どうしても難しい場合は顧客アンケートを作成して、顧客の声を集めるのも手です。もし1つ前の工程に顧客が参加していれば、この工程は必要ありません。
顧客へのヒアリング・アンケートで仮説を検証すると、大抵の場合、想定と異なることがでてきます。改めて顧客の声を正として、各フェーズのペルソナの行動を整理し直していきましょう。
カスタマージャーニーマップのフレームワークを決定します。ここではなるべくシンプルなフレームワークをおすすめしたいので、横軸は「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」を。縦軸は、ペルソナにフォーカスを当てて「行動・タッチポイント」「思考」「感情」をおすすめします。
ちなみに「タッチポイント」とは、そのフェーズでペルソナが想起、ないしは行動を取る際に使うメディア・WEBサービス・SNSなどを指します。例えばInstagramで友達がシェアした記事から、商品・サービスを知った場合は、タッチポイントはInstagramとなります。
最後に、検証済みの仮説を先ほど決定したフレームワークに書き込んでいきます。この時のポイントは、カスタマージャーニーマップはあくまで図なので、視覚的に分かりやすいことが求められます。
文章をつらつらと書くのではなく、なるべく図を多く用いて、視覚的に分かりやすいマップになることを心がけましょう。全ての情報を書き込んだら、カスタマージャーニーマップの完成です。
それでは、実際にカスタマージャーニーマップにはどんな事例があるのかを見てみましょう。作り方の説明と合わせて見ていただくとより理解が深まるかと思います。
出典元:http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/27/16409
国内の事例の中ではわかりやすい秀逸な事例です。実際に顧客である就活生が、手を動かしてカスタマージャーニーマップを作っている点からも、信頼のおけるマップだと言えます。
実際に作成した背景や過程など、WEB担当者フォーラム内の記事も参考になります。
参考記事:WEB担当者フォーラム|2時間で作るカスタマージャーニーマップ――実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ」
出典元:http://www.d2c-smile.com/201408282941
このカスタマージャーニーマップは横軸である顧客のフェーズが細かく分かれています。提供する商品・サービスによって横軸の設け方は異なりますが、特に旅行は認知してから検討を経て、購入に至るまで、比較的フェーズが分かれる商品・サービスだと言えるでしょう。
出典元:http://www.adaptivepath.com/ideas/the-anatomy-of-an-experience-map/
海外からの事例もあります。英語が読めないと詳細の内容まで理解できませんが、縦軸・横軸を見ることで参考になります。こうして見ると図解は分かりやすいですね。言語の壁を超えて理解が深まります。
出典元:http://www.heartofthecustomer.com/customer-experience-journey-map-the-top-10-requirements/
こちらも海外のカスタマージャーニーマップ事例です。タッチポイントが折れ線グラフの形状で一見してわかりやすいのが良いですね。ペルソナの情報も写真つきで解説しているので、例えばチーム内で共有する際など、初見の印象がよく、かつ理解してもらいやすいでしょう。
こうした小さな工夫を見習うと、より分かりやすいカスタマージャーニーマップが作れるでしょう。
出典元:https://www.demo.co.jp/blog/archives/595/
国内事例です。顧客の感情をポジティブ・ネガティブに分けていたり、ビジネス上の課題をマップに盛り込んだり、「ファクト」と題して統計データを用いていたりと、独自の工夫が多く見られるのでピックアップしました。カスタマージャーニーマップが作られる過程も参考になるので、ぜひ出典元の記事もご一読ください。
カスタマージャーニーマップの作成に便利なツールを3つ紹介します。
ネットイヤーグループ株式会社が、2015年6月から提供を開始したカスタマージャーニーマップ作成ツールです。作り方は、動画を見ると良く分かります。先に挙げた事例のように詳細が書き込まれたマップはオリジナルで用意するとして、まずはラフなマップを手軽に作るのにUX Recipeを使ってみるのが良いかもしれません。
http://www.experiencefellow.com/
海外のカスタマージャーニーマップ作成ツールです。Marc Stickdorn氏と Jakob Schneider氏が共同開発したツールとのことで、使い方などは参考記事に詳しいです。英語に理解力があればこちらのツールも選択肢に入るでしょう。
参考記事:ExperienceFellow|カスタマージャーニーマップの自動生成ツール
https://www.thinkwithgoogle.com/tools/customer-journey-to-online-purchase.html
Googleは本当に様々なツールを提供しています。今回、カスタマージャーニーマップの作成ツールを調査して、筆者も初めて知りました。先にご紹介したツールと異なるところは、このツールはGoogleが保有する億単位のユーザーの行動データが元になっている点です。
仕様は自由にマップを作成できるツールではなく、Googleが指定した項目をこちらが選択すると、その結果をカスタマージャーニーマップとして返してくれるというものです。
「The Customer Journey 「選ばれるブランド」になるマーケティングの新技法を大解説」は、カスタマージャーニーを学ぶ上で参考になる本です。表紙にもありますが、ANA・ネスレ・レクサスといった大企業が、どのようにカスタマージャーニーをマーケティング戦略に組み込んでいるのか?
そういった具体的な事例の詳細が気になる方は、ぜひ手に取ってください。
ここまでカスタマージャーニーの意味や、カスタマージャーニーマップの作り方について書きました。冒頭にも述べましたが、WEBマーケティングにおいて「WHO?(誰に?)」を、より明確化し共通認識を持つことができることは非常に大きなメリットです。
特にチームで共通の施策を実施する場合は、開始時に設定した「WHO?(誰に?)」を、全員が認識しつづけることは並大抵のことではありません。そこはリーダーが意識的にチームメンバーと確認する場を設けるべきですが、その際にもカスタマージャーニーマップがあると確認もスムーズです。
カスタマージャーニーマップを作って終わりにしないように、上記したようにチームで何度も確認しながら、いま進んでいる施策が正しい方向に向かっているのかを自問自答するのが良いでしょう。
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