巴川のほとりにたたずむお店「S&K Household」
「衣・食・住」の良品が集めるコンセプトとは
こんにちは、清水生まれの清水育ちの久保田雄介です。
突然ですが、みなさんは清水といったらなにを思い浮かべますか? エスパルス、日本平、次郎長、ちびまる子ちゃんといったところでしょうか。
どれも清水を象徴するものですが、清水といえばそう! 港町!
清水は缶詰のはごろもフーズが本社を構えるなど、漁業が盛んな町なんです。しかし、僕がするのは海鮮の話ではありません。
その港へと続く巴川沿いには、丸眼鏡がとてもよく似合う素敵なご夫婦が営むお店がひっそり。その名も「S&K Household」。
清水ではなかなかお目にかかれない魅力的な雑貨や洋服に加え、のんびりとしたご夫婦のキャラクターに惹かれて、郊外にありながらも僕自身ついつい通ってしまうんです。
オーナーの鈴木夫妻にお話しを伺いながらその魅力に迫ります。
「S&K Household」に込めた想い
久保田 | 「S&K Household」とは、どんな経緯で付けられた名前なんでしょうか? |
ご店主 | S&Kは僕たち夫婦のイニシャルから取っています。Householdというのは、「家のもの」「家族のもの」という意味があって、自分たちが実際に使ってきてよかったものしか置いていないんです。洋服や生活雑貨など、本当にいいものを家族で、みなさんで使ってほしいので。 |
久保田 | おふたりが使ったことのあるものだと、お客さんも安心して商品を購入できますね。商品から生まれるお店でのコミュニケーションも、とても豊かな時間になりそうです。どんなものを取り扱っていますか? |
ご店主 | 妻が福岡出身なので、静岡の人があまり触れる機会のない西日本のものや、静岡であまり見かけないものを手に取ってもらえたらなって。流行は考えず、長く使えるものを選んでいます。 |
久保田 | 静岡で西日本ゆかりのアイテムに実際に触れられる機会なんてそうそうないですね。それも含めて、全体にかかるお店のコンセプトはあるのでしょうか? |
ご店主 | 「コンセプトがないのがコンセプト」なのかもしれません。このお店が何屋であるのかも、お客さんの解釈に委ねています。 |
清水でお店を開いた理由は・・・?
さきほど奥さんが福岡の出身というお話しが出てきましたが、じつは店主さんも沼津市の出身。その後、社会人時代には名古屋市で暮らしていた方です。
清水にはお店を開くまであまり縁がなかったそう。どうして、清水出身でないおふたりがこの地でお店を開くことになったのか。移住の“キッカケ”に迫ります。
久保田 | どうして清水でお店を始めようと思われたんでしょうか? |
ご店主 | 清水を選んだのは「ちびまる子ちゃん」が好きだからです! |
久保田 | ちびまる子ちゃん! 確かに、ここ清水が舞台ですものね。でも、なぜ郊外なんでしょうか? |
ご店主 | 僕の出身は沼津なんですが、なんとなく県内でお店をやりたいというのがあって。サラリーマン時代に好きだったお店が、よく郊外にあったんですね。「なんでこんなところにお店があるんだろう」って不思議に思うくらい郊外で(笑) |
久保田 | あります! そういうお店! その理由が知りたくて、ついついお店に入ってしまいますよね。 |
ご店主 | そういう思いもあって、わざわざ足を運んでもらえるお店がいいな、というところが郊外を選んだ理由ですね。やっぱり、お客さんにはのんびりしていってほしいので。小学校と川が近くて、治安がよさそうなのもポイントでした(笑) |
清水に移住して気付く暮らしやすさ
鈴木さん夫婦は、清水にツテも繋がりもないなかでの移住をし、店舗を開いて2年半。そのあいだには、暮らす前と比べて心境に変化があったのでしょうか。
久保田 | 清水に住んでみて感じる、清水の魅力ってなんでしょうか? |
ご店主 | まずは、気候がいいことですね。清水に来る前はふたりとも愛知にいたんですが、夏はすごく暑くて、冬はすごく寒かったんです。それが清水では暑さ半減、寒さ半減で本当に過ごしやすいと感じます。 |
久保田 | 気候は本当に恵まれていると感じます。清水も含め、県内の沿岸部の都市は雪が降ればお祭り騒ぎになるので(笑) |
ご店主 | それになにより人ですね。人が本当に優しい。愛知県では、内弁慶でよそ者扱いされる風潮があったので。いい距離感でお節介してくれる人がいたり、お土産をいつも持ってきてくれるお客さんもいたりして。おかげさまでスッと清水に入り込めました。 |
久保田 | 最後に、今後の展望について教えていただけますか? |
ご店主 | もうひとつお店を出したいと思っています。いま考えているのはこのお店よりも小さいところにギャラリーを作ることです。いまはお客さんのリクエストで洋服が多いんですが、モノ全般が好きなので、生活にあまり必要のないものも紹介したいんです。 |
久保田 | 生活に必要ないもの!? |
ご店主 | 作家さんが作るペーパーウエイト、お香立て、トレイなど、生活になくても困らないじゃないですか。静岡ではまだそういったモノをたくさん扱うようなところは見かけないので、盛り上げられればなと。 |
こうしてあらためて、開店のきっかけや移住の話を聞いていくと、僕がはじめてS&Kさんにお伺いしたときの鈴木さんのひと言を思い出します。
――「あの、コーヒー飲めますか?」
そう僕に尋ねながら、商品の説明もなくコーヒーを出し、雑談に華を咲かせたことをいまでも鮮明に記憶しています。そんなのんびりしつつ芯のある空気にすっかり夢中になってしまい・・・その日以来、僕はすっかりS&Kさんのファンです。
ネット通販や大型ショッピングモールが大頭したいま。「誰から買うのか」「どこで買うのか」といった、人の体温を感じてモノを買う機会が失われつつあるのかもしれません。
そんななかで、「このお店で買うから満足、同じモノでもここのお店でほしい、と思っていただけたら」とおっしゃっていた鈴木さん。
鈴木夫妻のお人柄から、純粋に買い物を楽しむ気持ちやヒントを再発見できました。個人商店の役割、消費者である僕が郊外でも足を運びたいお店って、こういうお店なんだと思えるところがS&Kの魅力です。
川沿いのこのお店では、巴川の流れ同様、とてもゆったりとした時間が流れています。「S&K Household」で素敵な出逢いをしてみませんか?