浜松のおしゃれ女子に思いがけない幸せを
街のお姉さんが待つレトロな古着屋さん「Serendipity」
こんにちは、ライターの馬場です。
11月、冬が本気をチラつかせてくる季節になりましたね。
ときに、いまこれを読んでいるかわいい女の子のみなさん、冬服の準備はいかがでしょう。クリスマスパーティーやイルミネーション、忘年会に初詣とイベントが盛りだくさんのこれからに向け、コーディネートのバリエーションを増やしておきたいところですよね。
かといって、おしゃれな洋服屋さんって、店員さんがグイグイくるので苦手・・・という方も多いのでは。わたし自身そういう接客はすこし苦手で、ひとりではなかなか買い物へ出かける気にもなりません。
そんなわたしが大学1年生のときから唯一通っている古着屋さん「glad store(以下、グラッド)」は、浜松のおしゃれ女子なら誰もが聞いたこと、行ったことのあるお店のひとつだと思います。
しかし、今回ご紹介するのはグラッドではありません。
グラッドのお姉さん店として、今年7月27日にオープンした「Serendipity(以下、セレンディピティ)」です。
その理由は、セレンディピティの店長「サオリさん」にあります。
「サオリさん」って?
浜松駅からほど近く、田町の細い路地を入ったところにあるセレンディピティは、外観からもレトロな雰囲気が漂います。
そして、こちらが店長のサオリさん。
とびきりのおしゃれさんであることはもちろん、お客さん一人ひとりの顔と名前、服の系統、さらに前回話したエピソードのことまで覚えていらっしゃるという・・・。
この、とことんお客さんに寄り添った接客スタイルが、わたしがサオリさんを推したいと思う魅力のひとつです。
もともとグラッドに勤めていたサオリさんが新たにお店をオープンするということで、セレンディピティのコンセプトや、あたたかすぎる接客スタイルのワケについて、いろいろとお話しを伺ってみました。
理由があるから「芯のあるゆるい接客」を
馬場 |
こんにちは、今日はよろしくお願いします。 |
サオリさん |
久しぶりだねえ。そんなにかしこまらないで、普通でいいよ(笑) |
馬場 |
え、わたしのこと覚えてくださっているんですか! 1年ぶりくらいなのに。 |
サオリさん |
当たり前だよ。お話して、お買い物もしてくれた人のことは忘れません! |
馬場 |
結構それ、すごいことだと思うんですけど。 |
サオリさん |
そうかねえ。でも、それがわたしの特技みたいで。日常生活では「なんでそんなことまで覚えてるの」って気持ち悪がられたりするけど、服屋さんをするのには活かされてはいるかな。 |
馬場 |
天職ですねえ。グラッドへお買いものに行くたび、自分を覚えてもらっていることも含めて、サオリさんの接客にびっくりした記憶があります。
フレンドリーで、居心地もよくて。いまのスタイルでお仕事をなさっているのには、なにか理由があるんですか? |
サオリさん |
わたし自身が、ぐいぐい来るような接客があんまり好きじゃなくて。逃げたくなっちゃう。でも、そういう「接客行ってきて!」っていう厳しいアパレルで働いていたこともあるし、逆に、あまりにも人の出入りが激しいから、まったくお客さんと話をしないっていう雑貨屋店員をしていた経験もあるし。
もちろんお客さん側の気持ちもわかるから、一応、芯のあるゆるさでやっているというか。
来いよ来いよ!って感じのお客さんだったらおすすめしに行くけど、のんびりお洋服を見に来た人だったら好きに回って欲しい。その人に合わせて臨機応変にやっています。気持ちよく帰って欲しいからこその、崩したスタイル。なのかな?(笑) |
馬場 |
(かわいい)
そうなんですね。あとサオリさんは、よくお客さんから日々の相談を受けて、それに親身に答えてあげているイメージがあります。不思議な関係性だなあって、印象に残っているんですけど。 |
店内には、サオリさんがセレクトしたおしゃれなアイテムがたくさん並んでいます。
サオリさん |
そう、相談ごといっぱいされる!(笑)そういうお客さんと10歳、15歳とか離れてることもあるんだけど、わたしもそのくらいのとき、恋愛とか仕事とか全部がうまくいっていたわけじゃなくて。
「ああ、自分もこのときこんなことを思ってたなあ」ってすごく気持ちはわかるから、相談ごとをされたら乗ってあげたいし。あと、わたしにできることと言えば、洋服を通して心を軽くしてあげることだと思うのね。
うちに来て、悩みを話して、ちょっとすっきりして、お洋服を見て、ウキウキするとか気分が明るくなったとか、おしゃれしてどこかへ出かけてみようかな、とか。そういうお手伝いができたらいいなと。いい街のお姉さんでいられたらって思います。 |
馬場 |
わたしも以前、これから好きな人に会うからって全身コーディネートしてもらったことがあります・・・。あのときはありがとうございました(笑) |
サオリさん |
わー、そうだったね。覚えてる覚えてる。そういうお手伝いがしたいかも。ただ服屋さんとして商品の売り買いをするんじゃなくて、わたしがセレクトしたお洋服を着ることによって、その女の子の1日が楽しくなったり、いいことが巡ってきたりして欲しい。 |
オープンの原動力は大好きなお客さんたち
馬場 |
これまでにいろんなお仕事を経験されてるとおっしゃっていましたけど、古着屋さんで働こうと思ったきっかけってなんですか? |
サオリさん |
前に店長をしていたグラッドには、もともとお客さんとして行っていたんだけど。当時は普通に会社員をしていたし、古着屋さんをやりたいとは考えてなかったなあ。
でも、そのときの店長が辞められることになって、どうですかって声をかけていただいたのがきっかけ。服とか、雑貨とか、ファッション小物全般は好きだなーってずっと思っていたので。 |
馬場 |
なるほどー。好きなことがお仕事になるって、いいですねえ。 |
サオリさん |
うん。おしゃれに関することが自分の救われる場所だったから。疲れたなあってときも、お買い物に行けばモチベーションを上げられたし。
でも、服屋さんで働くために勉強しよう!って思ったことはなくて、20代はそのときそのときで好きなことをやっていたかも。お金が欲しいときはお給料のいい工場に勤めてみたり、やっぱり服が好きだ~ってアパレルに勤めてみたり。
あんまり先のことは考えずに好きなことをやっていたらこういう運びになっていたので、自然と導かれたというか、いつしか身になっていたって感じだなあ。だから、自分の好きなことを続けてみるのって、すごくパワーになるんだなって思う。 |
馬場 |
その言葉めちゃ沁みます。でも、好きだったとはいえ目指してなかったお仕事を何年も続けて、さらに自分のお店を持つようになるまで、挫折してしまいそうなときってなかったですか? |
サオリさん |
挫折というか、去年、結婚を機に一度グラッドを退職して、自分でこじんまりお店をやろうかっていうのは考えてた。 |
馬場 |
そうか、ご結婚! インスタグラムで見ました、おめでとうございます。 |
サオリさん |
ありがとうございます(笑) そのときにもう辞めて、主婦になって子どもを作るのも幸せだったと思うんだけど。やっぱりグラッドがあって、いまのお客さんたちと繋がれたので。お客さんのこと好きなんだー、すごく。
喜んでもらえることがしたいって思っていたし、それがここをオープンさせるエネルギーにもなったかな。
それに、子どもを産もうか、服屋さんを諦めようかの分かれ道はすごく悩んだんだけど、いまは一度きりの人生だし、悩むくらいなら全部やってしまおうと思っていて。 |
馬場 |
かっこいい・・・。サオリさんのそのパワーがあって、こうしてセレンディピティはオープンしたんですね。 |
サオリさん |
でも、こんなにすぐに自分のお店を持てるとも思っていなかったから、そういうお話がいただけたことも、無事オープンしたことも、まだ不思議な気持ちです(笑) |
自分の好きとお客さんの好きがつまったお店
馬場 |
そういえば、セレンディピティってグラッドよりもあとにオープンしたのに、HPに「glad storeのお姉さん店」って書いてありましたけど、どういうことでしょう? |
サオリさん |
グラッドの店長は卒業したけど、アイテムのセレクトとお店のプロデュースはわたしがそのまま続けていて。一応あちらが学生さん向け、セレンディピティはもう少し大人向けにしてあるんだよ。 |
馬場 |
セレンディピティのこのしっとりとした雰囲気はそういうことか。 |
サオリさん |
グラッドに比べてこのお店は、シンプルだけど面白みがあって、でもカジュアルで、大人の女の人が着られるような雰囲気をイメージしていて。
わたしがもともと渋めのオリエンタルっぽい柄物が好きで、それがグラッドではちょっと浮く部分だったんだけど、セレンディピティはそういうものを切り取った感があるかな。 |
馬場 |
なるほど。オリエンタルっぽいものがお好きとのことですが、セレンディピティのお洋服を買い付けるときのポイントってどんなことですか。 |
サオリさん |
こんなに機能性がよくて、柄もかわいくてレアなものだよっていう、自分のおすすめもあるし、お洋服を見て「あの子これ好きそうだな、似合いそうだな」ってお客さんの顔が浮かぶときもあるよ。
幅があるというか、オールマイティだねって言ってもらえるときがあるけれど、それはみんなの顔を思い出すからかも。あとは、実際にお客さんの要望を聞いてみたりとか・・・。いろいろあるなあ。
あ、でもひとつ、そのときの流行りや情報に流されないっていうのは無意識でやっていて。テレビをたくさん観たり、雑誌を買いあさったり、買い付け前にトレンドチェック!とかはしないようにしてる。そういうものが頭の中に入ってくると、自分の感覚が信じられなくなるから。
ここはむしろ、流行りものは好きじゃない!みたいな、自分らしさをうまく表現した子が集まる場所だなと感じるし、わたしが本当にかわいい、着てみたいって思うものを信じていたい。 |
「Serendipity」とサオリさんのこれから
馬場 |
最後に、今後の展望について聞かせてください。 |
サオリさん |
このお店で誰かとコラボするとか、イベントに出店してみたい。わたしは野外フェスが好きだから、ちょっと濃度の濃い「いつ着るんだよ」みたいなお洋服をそういうイベントシーンで着てもらって、楽しくなってもらえたらいいなあ。
一応このお店、旦那さんも内装を手伝ってくれたり、一緒にアメリカへ買い付けに行ったりしていて。わたしひとりじゃなにもできないし、いろいろなサポートをしてもらって、力を合わせてこのお店が出来ているので、今後もそういうサポートに感謝しながら、また新しい人と繋がれるような場に出店してみたい。
わたし個人としては、お客さんに楽しんでもらうことが第一だから、みんながお店を出ていくときに、来てよかった、楽しかった、ハッピーって思ってもらえるような、喜びを与えられる人でありたいなって思います。 |
サオリさんとトルソーが羽織っているキルティングのジャケット、いま推しているらしいです。かわいい。
「Serendipity」を辞書で引くと、「思いがけない幸運」とあります。
その店名について、「ふらっとこのお店に入った女の子が、思いがけずいいお洋服と出会って幸せになってくれればいいなっていうわたしの想いに、ぴったりの言葉だと思って」と、話してくださったサオリさん。本当に端から端まで、お客さんへの想いがたっぷりなんです。
アイテムのセレクトや、お店作りへのこだわりも当然のことながら、お客さんに喜んでもらうためならどれほどの時間と労力をもいとわない真摯さと、それを「好きだから」とやってのけてしまうパワーにはあらためて驚きました。
そして、そんなサオリさんだからこそ、ただの店員とお客さんで終わらない、素敵な関係が築けているのだなと。
恋に仕事におしゃれに悩める女の子は、ぜひ「セレンディピティ」でサオリさんとかわいいお洋服たちに心を癒されてみてはいかがでしょうか。