レトロなランタン&ランプ「すんぷらんぷ」
灯油らんぷは災害グッズの役割もある?
部屋の灯りが少なすぎる。こんにちは、miteco編集長の吉松です。
僕の部屋は2DKなのに、ダイニングのシーリングライトと、寝室の間接照明のふたつしか灯りがありません。
1年半前に引っ越してから、「いつか揃えてやるぞ・・・」と思いつつ、気に入った照明が見つからないまま、いまに至ります。だから夜はとくに暗い。とにかく暗い。
そして最近、思い出したように照明器具を調べていたところ、「すんぷらんぷ」という灯油らんぷの専門店を発見。公式サイトを見てみれば、レトロなデザインが目を引くランプがずらり。
レトロなアイテムに目がない僕は、「ついに見つけたぞ!!」と思ったんですが・・・。
灯油らんぷってなんでしょうか? 聞いたことがありません。
とりあえず詳しく知りたいなと連絡したところ、店主の三好さんに説明いただけることになりました。
灯油らんぷとは?
すんぷらんぷがあるのは、静岡市葵区大岩。閑静な住宅街にひっそりと佇んでいます。そして店内には――。
見慣れないレトロなランプがこんなに! 圧巻です。
すんぷらんぷ 店主 三好さん
吉松 |
さっそくですが、灯油らんぷってどういうものなんですか? |
三好 |
灯油を燃料としたランプですね。電気が普及する前の日本では、一般家庭でも灯りとして使われていたそうです。時代的には江戸時代の終わりから明治時代ですかね。 |
吉松 |
そんなに歴史のあるものなんですか。でも灯油らんぷっていう存在を、いままでまったく知りませんでした。 |
三好 |
そうですよね。普通知らないと思います(笑)じつは灯油らんぷが生まれてからすぐ、ガス灯が出てきちゃったので、使われた歴史としては短かったんですよね。だから、いまの時代では知らない人のほうが多いはずです。 |
吉松 |
あーなるほど。いまではもう電気ですし、余計にそうなんですかね。 |
吉松 |
いろんなランプが並んでいますけど、どれもかなりレトロなデザインですよね。 |
三好 |
そうですね。このデザインは生まれた当時から、まったく変わっていないんですよ。 |
吉松 |
あ、時代を感じるのはそのせいですか。でも形はどれも違うようで・・・。種類はどのくらいあるんですか? |
三好 |
大きく分けると、外で使う「ハリケーンランタン」と、部屋で使う「スタンドランプ」のふたつですね。どちらもサイズに比例して明るさが強くなりますよ。 |
アウトドアに使う「ハリケーンランタン」。見た目はごついけど持つと意外と軽い。
部屋の中で使う「スタンドランプ」。色鮮やかなガラスと独特の形がグッとくる。
吉松 |
おお・・・。どちらが人気ですかね。 |
三好 |
お客さんの層がバラバラなのでなんとも言えないですけど、男性はハリケーンランタン、女性はスタンドランプっていうのが大きな傾向になりますかね。 |
「1/fゆらぎ」がある
吉松 |
じつはちょっと家に置いてみたいと思っているんですが、灯油らんぷの魅力はどこにあるんでしょうか。 |
三好 |
いろいろありますが、まずは電気では表せない、なんともいえない雰囲気でしょうか。とくに“ゆらぎ”ですよね。 |
吉松 |
ゆらぎ・・・? |
三好 |
男の人だったらわかりやすいかもしれないですけど、火遊びがありますよね。そして不思議とじっと見てられますよね。ざっくりいうとあの感覚なんです。
専門的にいうと「1/fゆらぎ」なんですけど、波とか木漏れ日とか、不定期だけど心地よいっていう。歌手でも歌声を表すときにも言われますね。つまりは、癒し効果っていうのがあるんです。 |
ここで三好さんにランプに火をつけていただいて、ゆらぎを体験。僕は小さいころ、たき火などの火遊びをしてたので、ものすごいノスタルジックでした。
疑似的ですが、すんぷらんぷさんから提供していただいた「スタンドランプのゆらぎ」で、みなさんも体験してみてください。
吉松 |
いやー・・・。これは落ち着きますね。 |
三好 |
ですよね。じつは、これがお店を始めたきっかけでもあるんです。 |
吉松 |
え、これがきっかけに? |
すんぷらんぷが始まったきっかけ
吉松 |
そういえば、どうしてお店として灯油らんぷを選んだんですか? |
三好 |
以前はリフォームの会社で働いていて、そのなかで愛知県の春日井にある「江戸川屋らんぷ」さんっていう、有名なお店のランプに出会ったんです。ある人から教えてもらったんですけどね。
それで僕はもともとキャンプ好きだったんで、ランタンとかは頻繁に使っていて。試しに江戸川屋らんぷさんの商品も使ってみたら、「なんだこの不思議な感じは」と(笑) |
吉松 |
それが先ほどの、電気では表せないなんともいえない雰囲気ですか。 |
三好 |
そうですね。いまは電気で当たり前で暮らしているんですけど、昔の人は火の灯りで暮らしていて、なんか心に響いたところがあったんですよね。 |
三好 |
あと静岡って、昔から地震がくるくるって言われていますよね。江戸川屋らんぷさんから聞いたんですけど、東北震災のときにはランプが必要だということで、結構出たらしいんですよ。そういう災害グッズとしての役割もあるんです。 |
吉松 |
はーたしかに。電気要らずなので災害時の灯りにはもってこいですね。 |
三好 |
しかも灯油らんぷだったら、インテリアやアウトドアでも使えますし、ただの災害グッズにはとどまらない使い方ができるんですよね。
静岡県という土地柄、万が一のときに役立つものを広げられたらなって。だから江戸川屋らんぷさんに話をしに行って、取り扱うことにしたんです。 |
吉松 |
・・・納得です。あの、ちなみに、公式HPに静岡県外の販売店情報もありますよね。あれはすんぷらんぷさんが卸している取扱店になるんですか? |
三好 |
そうですね。いま話したような想いがあるので、全国各地に灯油らんぷ専門店ができたらいいなと思っていて。
最初は静岡でやるから「すんぷらんぷ」とつけましたが、同じように藩の名前を冠したお店を全国各地にちょこちょこと増やしていってます。 |
吉松 |
災害は静岡だけの話じゃないですもんね・・・。 |
火は危ないだけのもの?
三好 |
あとね、そう。全国各地に広がるといいな、と思っているのはもうひとつの理由があって。僕の家はオール電化なんですよ。 |
吉松 |
オール電化・・・? |
三好 |
まあ、最近の家はほとんどそうだと思うんですが、その結果として、いまの子どもが家庭で火に触れないことが普通になっている気がするんです。
しかもいまの時代は安全面の観点から、「危ないよ、恐ろしいよ」ってされるのが火であって、そればかりフューチャーされていますよね。 |
吉松 |
ハッとしました。そうですね。たしかに。 |
三好 |
でも火は昔から、人が生きていく上で欠かせないものなんです。おおごとかもしれないですが、危険な面はもちろんあるけど、そればっかりではないってことを伝えていけたらなとも思いますね。 |
吉松 |
いやーほんとにそうですね。先ほどの災害時の話もそうですが、いざというときには必要になっている、っていう現状が物語っている気がします。 |
吉松 |
ちょっと突っ込んだ質問ですが、灯油らんぷの安全性は・・・? |
三好 |
もちろん火なので危ない面もあります。でも「ほや」がついている種類を選んだり、98度までは火がつかない専用オイルを使ったりすれば、安全性は高まりますよ。灯油は42度で火がつくんですけどね。 |
吉松 |
あ、燃料は灯油だけではないんですね。 |
三好 |
そうですね。灯油だとすすとかにおいが出ますけど、専用オイルだったらそれもないので、結構人気です。お客さんに説明するときは、ストーブとかで灯油が余っていたら、安く済むのでそれを使ってくださいと。ストーブがないときは専用オイルをおすすめしていますね。 |
専用オイルは好きなカラーから選ぶことができる。ガラスのスタンドランプとの相性は抜群だそう。
吉松 |
なるほど・・・! |
三好 |
ちなみに灯油と専用オイルは混ぜても使えるので、両方使うのもありですよ。 |
吉松 |
便利すぎる。えーと、この赤いランプ(上部写真のスタンドランプ)と専用オイルはおいくらですかね。 |
三好 |
赤いランプは、一番小さなタイプなので1,080円。専用オイルは540円ですね。 |
安すぎる。
一見すると凝った装飾があるので、高いと思い込んでいました。災害グッズとしてはもちろん、インテリアにもアウトドアにも使える汎用性の高さで、このお値段はすごい。
三好さんによると「とてもシンプルな作りなので、安いものは安いですよ」とのことです。
まだ知られないことだらけの灯油らんぷですが、もっともっと広まるだけのポテンシャルはあると、三好さんのお話しを聞いて思いました。灯油らんぷのことをひとりでも多くの人に知ってほしい・・・!
ちなみに僕の部屋にも灯油らんぷが仲間入りしました。もともと暗い部屋だったので、灯りのゆらぎをそのままに感じられます。
明るさでいえば、これは一番小さなタイプということもあって、手元をほんのり照らせる程度。でも暗さを解決するとこれが見れなくなるのか・・・と思えば、前以上に灯りを揃える気がなくなりました。
おそらく僕の部屋は当分暗いままです。