残暑から仕事にひりつくあなたの1枚まで
月刊ソネレコ【#6】
静岡県に生きる「音楽が友達」という人にきっかけを。今月もやってきました「月刊ソネレコ」です!
浜松市の中心街でひっそりと佇む、いまや絶滅危惧種のリアルレコードショップ「sone records(ソーンレコーズ)」。
sone records(通称:ソネレコ)
静岡県浜松市の田町で営業するリアルレコ屋。国内外のインディー全般を中心に取り扱う。細い階段を上るとフレンドリーな店主が待ってます。Twitter:@sone_records
店主のクワケンさんに、趣味はプレイリストづくりの吉松が月ごとのテーマを提示し、そのテーマに沿って数枚ピックアップしてもらうこの連載。
音楽のまちとして知られる浜松から、国内外のインディーをメインに毎月発信しています!
「月刊ソネレコ」8月のテーマ発表
ソネレコの店主クワケンさん。
クワケン | 8月のテーマはなににする? 新入荷はあるとして。 |
吉松 | 「残暑」です。最近、なんだかんだ涼しいですし、「もうそろそろ夏も終わりだよな~」と思っていて。 |
クワケン | 残暑か! 残暑ならすぐ思い付きそう。 |
吉松 | 新入荷と同じくレギュラーになった「リクエストコーナー」も、少ないですがきちんと届いてまして。今回は、新社会人の方からいただいた「仕事が辛くて辞めてしまいそう。こんな気分をどうにかする1枚を」というリクエストを採用しました。 |
クワケン | ヘビーだな。それ俺に相談していいの? ほんとに? |
月刊ソネレコ【#6】
- 新入荷(2枚)
- 残暑(1枚)
- 仕事にひりつくあなたの1枚(1枚)
月刊ソネレコ【#6】は久しぶりにゲストなしで、クワケンさんとのサシで進めます。それでは計4枚のインディーミュージックをどうぞ!
新入荷「Snail Mail / HABIT」
クワケン | 新入荷1枚目はスネイルメイルだね。アメリカの17歳の女の子でさ。去年カセットを出したんだけどそれがかなり評判よくて、ワシントンDCのレーベルからヴァイナルでリリース、ってやつ。 |
「Snail Mail / HABIT(税込2,549円)」。アメリカはボルチモア在住のセブンティーンガール「LINDSEY JORDAN」によるソロプロジェクト「Snail Mail」。
昨年リリースしたカセットとデジタルが大好評で、ついに今年ヴァイナルとして登場しました。等身大でセンチメンタルなメロディが沁みる、胸キュンかつ渋いローファイポップです。
♪Snail Mail – Thinning
吉松 | どんな17年を送ったらこんな音楽が出来上がるのかっていう。 |
クワケン | はっはっは(笑)ほんとだよね。17歳の女の子を前面に出してる感じではない。 |
吉松 | 渋いですよね。 |
クワケン | そう渋い。いいローファイ感でね。でもティーンっぽい胸キュンな感じもするし。今後どうなっていくのか楽しみだな~。 |
新入荷「shinowa / Snow,Moon,Flowers」
クワケン | 次は「シノワ」。山口のバンドでさ、キャリア長いだけあって音作りも完璧だなって。涼し気でいい具合のシューゲ感とエレクトロ。めちゃくちゃいいと思うね。 |
「shinowa / Snow,Moon,Flowers(税込1,080円)」。1996年に大阪で結成し、現在は山口で活動中のサイケデリック・ポップバンド「shinowa」の7インチシングルです。
A面は甘美で浮遊感のあるボーカルと轟音のギターに、幻想的な電子音が混ざり合ったドリームポップな印象。一方でカップリングはサイケデリックで攻撃的なサウンドです。2017年6月1日リリース、7インチ+CD付き。
♪shinowa – Snow,Moon,Flowers(A面)
吉松 | 少し前にここで買いましたけど、めちゃくちゃよかったです。完成度かなり高いですよね。 |
クワケン | 高い高い。こういう音楽性で完成度高いのはいそうでいないというか。 |
吉松 | 個人的には、Guiter※とかAsobi Sekusu※とかLuminous Orange※とか、そのあたりが好きな人におすすめしたいですね。 |
クワケン | あー! はいはい。ちょっとそういう感じするね。じつは今年アルバム出すらしいんけど、これはかなり楽しみだよ。 |
※Guiter(ギター):ドイツはケルンのエレクトロユニット。ボーカルの赤柴亜矢子さんは、mitecoに何度か出演した3776のプロデューサー石田さんと昔、音楽をやっていたそう。
※Asobi Sekusu(アソビ・セクス):アメリカはニューヨークのシューゲイザーバンド。フロントマンのYuki Chikudateは日本生まれ。
※Luminou Orange(ルミナスオレンジ):日本のオルタナティヴ・ロックバンド。国内のオルタナ~シューゲイザーシーンを代表する存在として知られる。現在はバンマス・竹内理恵のソロプロジェクトとして活動中。
残暑「Ekin Fil / GHOSTS INSIDE」
クワケン | 残暑はね、「エイキンフィル」。トルコのシンガーソングライターで、この1枚は今年の夏前に発売されたやつ。幽玄的なドローンというか、アンビエントシューゲイズというか。森の中みたいな涼しさがあるね。 |
「Ekin Fil / Ghosts Inside(税込2,981円)」。トルコはイスタンブールのシンガーソングライター「Ekin Fil」による最新フルアルバムです。うす暗いピアノとエレクトロサウンド、そして深いエコーがかかった女性ボーカル。
クワケンさんの言うとおり幽玄的な雰囲気のあるドローン~アンビエントです。2017年6月30日リリース、LP+DLコード付き。
クワケン | 人によっては「どこが残暑だよ」って言うかもしれないですね。でもいいんです。コレって決めちゃったから。 |
吉松 | (笑)でもこの物悲しい音は、夏の終わりのセンチメンタルな気分にピッタリですよ。 |
クワケン | よかったよかった。・・・あと宣伝になっちゃうんだけどさ、エイキンフィルのデビューアルバムも入荷していて。同じような音だけど、こっちはエレクトロ色が強くて、もっと淡くて儚い印象だね。 |
「Ekin Fil / S/T(税込2,657円)」。1度足を踏み入れたら帰ってこられなくなる、白昼夢サイケデリアの森へようこそ(byクワケン)。
♪Ekin Fil – Anything Anywhere
吉松 | これはドストライク・・・! よりエレクトロニカっぽいですね(吉松はエレクトロニカ好き)。 |
クワケン | いいでしょ。残暑っていうか秋って感じもするけど。季節先取りで。 |
吉松 | 秋にこれは最高ですね。個人的に残暑と秋の入口は、あんまり元気な曲を聴きたくないんですよ。「でもなんか流したいな」っていうときに応えてくれそうな感じがします。 |
クワケン | そうだね。暑苦しくもなく。残暑にもいいんじゃないですかね! |
クワケン | そしてリクエストですよね。新社会人でいろいろ辛いと。モチベーション上がんねえと。 |
吉松 | はじめましょうか。それでは読者からの投稿を読ませていただきます。 |
ペンネーム:ミカド
はじめまして。初の投稿です。インディーロックが好きでいつも読んでいます。
私は今年から社会人になりました。でもこのごろ、業務も人間関係もうまくいかなくて、気分が落ち込んでいます。このままいくと辞めてしまいそうです。
こんな気分をどうにかする1枚を選んでいただけないでしょうか?
クワケン | まあ、まだ4か月ですから、仕事も人間関係もうまくいかなくて当然なんですよ。でも、できなくて悩んじゃうんだよね。 |
吉松 | 新社会人の秋前は、「辞めたい」ってよく聞く時期な気がします。 |
クワケン | ちょっと慣れてくるからだろうね。研修が終わって配属されて、「ここで私やっていけるかな。話も周りと合わないし、笑顔も引きつっちゃう」みたいな。でもさ、たとえば人間関係なんて、すぐにうまくいくはずないんですよ。そもそも赤の他人ですからね。 |
吉松 | おっしゃるとおりです。・・・なんかあれですね、「クワケンのお悩み相談コーナー」とかできそうですね。 |
クワケン | (笑)というか、これじゃないよね。ミカドさんが求めてるのは俺の相談じゃなくて音楽だよね。 |
仕事にひりつくあなたの1枚「Agent blå / Agent blå」
クワケン | ということで、無理やり話を結びつけますけども。そういう気分のときに明るい音楽を聴いても入ってこないじゃないですか。落ち込んでるときはとことんダークな気分になりましょう。ひりついたあなたに「アゲントブロー」です。 |
「Agent blå / Agent blå(税込2,160円)」。スウェーデンはヨーデボリを拠点に活動する、男女5人組インディーロックバンド「Agent blå」によるデビューCDアルバム。初期衝動むき出しのひりついたゴシックドリームポップです。
17歳~20歳で構成されたティーンバンドながら、本国では月刊ソネレコ【#2】でも紹介したWESTKUSTと同じレーベルからリリース。店頭にあるのは、大阪のレーベルから発売された国内版CDです。※現在、アメリカのレーベルから発売されたLPも入荷努力中。
♪Agent blå – (Don’t) Talk to Strangers
吉松 | 青春ゴシックロックって感じで、かなり尖ったサウンドですね。 |
クワケン | ヒリヒリしながら、メロディはちょっと切なくてね。これを聴いて社会と断絶しましょうと。 |
吉松 | 社会と断絶? |
クワケン | そうそう。いままでどおり、会社では迎合しなくていいんです。自分をどれだけ演じ切るかですよ。でもそれだけじゃ疲れちゃうから、仕事が終わったらアゲントブローで断絶して自分を取り戻そうと。 |
吉松 | クワケン先輩・・・。 |
クワケン | ミカドさんもね、「おはようございます」ってウソの笑顔で乗り切ってください。応援してるからね。 |
ミカドさん、会社では自分を演じて、会社から出たらアゲントブローで社会と断絶してみてください。そうすれば、いまを乗り切れるかもしれません・・・!
ということで、月刊ソネレコ【#6】は以上です。ここ最近は涼しい日も増えて、夏の終わりを肌で感じます。僕は季節ごとに聴きたくなる音楽が変わるんですが、ソネレコにはその聴きたくなる音楽がいつも揃っていてありがたいなとしみじみ。
そしてみなさんからのリクエストは引き続き募集中です! 「ペンネーム(本名でも可)」「リクエストをする理由(シチュエーションなど)」を書き添えたうえ、吉松のTwitter(誰でもDMが送れるようになっています)か、ページ下部「miteco編集部へのメッセージ」にてお待ちしています。
次の月刊ソネレコでは、もう秋になっていそうですね。また来月会いましょう!