夏支度から夏デートにおすすめの1枚まで
月刊ソネレコ【#4】
静岡県に生きる「音楽が友達」という人にきっかけを。今月もお待たせしました「月刊ソネレコ」です!
浜松市の中心街でひっそりと佇む、いまや絶滅危惧種のリアルレコードショップ「sone records(ソーンレコーズ)」。
sone records(通称:ソネレコ)
静岡県浜松市の田町で営業するリアルレコ屋。国内外のインディー全般を中心に取り扱う。行けば行くほど新しい発見があるスルメのようなレコ屋。
Twitter:@sone_records
店主のクワケンさんに、もはや音楽は親友だという吉松が月ごとのテーマを提示し、そのテーマに沿って数枚ピックアップしてもらうこの連載。
音楽のまちとして知られる浜松から、国内外のインディーをメインに毎月発信しています!
「月刊ソネレコ」6月のテーマ発表
ソネレコの店主クワケンさん。
吉松 |
先月、「6月は雨をテーマにしようかな」と話しましたけど、意外と梅雨が本気を出しておらず・・・。 |
クワケン |
こないだ1日ドカッと降っただけだよね。 |
吉松 |
だからもう、夏に備えた夏支度のタイミングかなと。それと読者からのリクエストもやってみたいと考えていて。たとえば、「最近、こういうことがありました。そんな気分に合う音楽はありませんか?」というリクエストを、クワケンさんに答えていただきたいと。 |
クワケン |
難しいこと言うな~(笑)そんなの大丈夫かな。 |
吉松 |
今日はテストとして僕のリクエストで。最近、仕事が立て込んでいたので癒しの1枚なんて・・・。 |
クワケン |
癒しの1枚なら大丈夫かな。わかりました! |
今月のテーマは以上の「はず」でした。というのも、取材途中で月刊ソネレコを読んでくれているというお客さんがやってきまして、その人にクワケンさんへのリクエストを頼んでみたところ快諾いただけたんです。リクエストは「夏デートにおすすめの1枚」。
月刊ソネレコ【#4】
- 新入荷(2枚)
- 夏支度(1枚)
- 仕事に疲れたあなたに(1枚)
- 夏デートにおすすめ(1枚)
お客さんがやってきた流れは、リアルにお届けしますので最後までお見逃しなく。それでは計5枚をピックアップしてもらいます!
新入荷「Wallflower / Nowhere」
クワケン |
新入荷の1枚目は「ウォールフラワー」にしちゃおうかな。吉松くん、さっきも気に入ってたもんね。※ソネレコに来たときこの1枚が流れていて、吉松が「めちゃくちゃいいじゃないですか。誰ですか?」とクワケンさんに聞いていたことから。 |
吉松 |
!! ドストライクすぎて誰だろうと思ったら、ウォールフラワーって言うので「そりゃ好きだな」と。このバンドは普通にファンです。 |
クワケン |
こないだ紹介したルビースパークスを出してるレーベルの母体「ファストカット(fastcut records)」からの新入荷だね。 |
「Wallflower / Nowhere(税込1,944円)」。大阪発、男女5人組インディーポップバンド「Wallflower」の7インチシングルです。やわらかいコーラスが効いたギターとシンセに、心地よい女性のウィスパーボイスがふわっと浮かぶドリーミーなサウンド。2017年6月24日リリース、ミニジン+DLコード付き。水色がかったクリアヴァイナル仕様です。
♪Wallflower – Nowhere
クワケン |
ウォールフラワーはペインズ※が前に来日したとき、前座をやってたバンドで。あれは直々にご指名を受けたんだよね。ひょっとしたら違うかもしれないけど、たしかそう。 |
吉松 |
あれ直々だったんですか! ペインズ直系みたいなイメージはあるバンドですけど。 |
クワケン |
B面は元ペインズのドラムがギタボをやってるバンド、アイスクワイアがリミックスしてるんだけど。シンセポップでダンサブルな、これまたいいんだよ。 |
吉松 |
たしかにめちゃくちゃいい。リミックスといっても、シンセポップとして普通に聴けちゃう。 |
クワケン |
あとプロデューサーはさ、イアンキャットっていう人が担当してて。フィールドマイス※とかアルパカスポーツ※とか、ネオアコからインディーポップのなかでは結構知られた人なんだよ。まあ、これぞギターポップっていう、最高の仕上がりだと思うな。 |
※The Pains of Being Pure at Heart(ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート):2007年結成、ニューヨーク発の4人組インディーポップバンド。新世代を代表するシューゲイザーバンドとして世界中から評価を集めた。
※The Field Mice(フィールド・マイス):1987年結成、1991年解散、ロンドン発のインディーロックバンド。いわゆるネコアコに分類されるサウンドで、当時はインディーアルバムチャートで上位に食い込むほどの支持を集めた。
※Alpaca Sports(アルパカ・スポーツ):スウェーデンはヨーテボリを拠点に活動するインディーポップバンド。去年の3月にはソネレコ企画で浜松のライブハウス「KIRCHHERR(キルヒヘア)」でライブをしている。
新入荷「HAZEl ENGLISH / JUST GIVE IN & NEVER GOING HOME」
クワケン |
次は「ヘイゼルイングリッシュ」にしようかな。 |
吉松 |
お、きましたね。じつはこれひととおり聴いたんですけど、最高でした。インディーポップ全開のミドルテンポで、音も涼し気だからこれからの夏にもピッタリみたいな。どうですか? |
クワケン |
いや、いいよね(笑)ジャケットを決して裏切らないインディーポップというかドリームポップというか。 |
「HAZEL ENGLISH / JUST GIVE IN & NEVER GOING HOME(税込3,089円)」。オーストラリア発、アメリカはオークランドを拠点に活動するシンガーソングライター「HAZEl ENGLISH」によるEPです。去年イギリスのレーベルからリリースされたEPに、新たなEPを追加したカップリング。2017年5月17日リリース、ボナトラ+DLコード付きのカラーヴァイナル2枚組です。
♪HAZEL ENGLISH – Never Going Home
吉松 |
淡い雰囲気で、気を張らずに1枚聴きとおせますね。ゆる~い気持ちのいいノリがある。 |
クワケン |
そうだねえ。誰が聴いてもいいみたいな、普遍的なポップスで。 |
吉松 |
日本でも人気出そうですね。 |
クワケン |
わりとお客さんでも「もうCD買っちゃいました」って人は多いよ。「これも買えばいいじゃん。両方買えばいいじゃん」って言うんだけど、「い、いや・・・」みたいな(笑) |
吉松 |
(笑)耳が早い人はすでに押さえてるんですね。まあ、シーズン的に間違いないか。 |
クワケン |
完全に夏支度の2枚を紹介しちゃった感あるけどね。どうしたらいいんでしょう、次のやつ(笑) |
夏支度「Phoenix / TI AMO」
吉松 |
続いては夏支度ですけども。 |
クワケン |
もうあえて、大ネタでいこうと思う。フェニックスをね・・・! |
吉松 |
ついにきましたか!! フランスの大御所。 |
クワケン |
大御所なんすよ。だけどね最近、ちょうどそれについてお客さんと盛り上がったんだよ。最初のシングルは90年代後半に出してて、言ったらベテランじゃないですか。なのにその風を吹かさない! 別に渋くなるわけでもなく! 奇をてらったこともせず、みんなの求めるダンスポップをつくり続けてるって。 |
「Phoenix / TI AMO(税込3,305円)」。フランスが世界に誇るエレクトロポップバンド「Phoenix」。前作から4年ぶりとなる待望のニューアルバムです。芯をぶらさずも全く色あせないサウンドは、もはやジャンルPhoenixというべき貫禄の出来。安定感抜群です。2017年6月9日リリース、カラーヴァイナル+DLコード付き。
♪Phoenix – J-Boy
吉松 |
僕もこれ聴いたんですけど、たまげましたね。いつものフェニックスなのに新しいっていう、簡単にできることじゃないですよ。 |
クワケン |
余裕でやってる感じだよね。あとさ、カラーヴァイナルでDLコードはステッカーなのに、ジャケットにはひと言も書いてないんだよ。普通は書くもんなんだけど。 |
吉松 |
というと? |
クワケン |
買った人が開けてはじめて、「うわ、カラーだ。ラッキー。え、ステッカーも!?」みたくなるわけ。そのサプライズ感ね。さすがフランス人。仕事やってなくて、めちゃくちゃ遊んでるのにデキる男みたいな。 |
吉松 |
めっちゃモテるタイプじゃないですか。 |
クワケン |
そう。だから上司にしたいバンドナンバーワンだし、男ならフェニックスを目指すべき。もうフェニックス先輩ですよ。音と関係ない話ですけど。 |
吉松 |
はっはっは(笑)でも、いまの話が詰まってるような1枚ですね。 |
クワケン |
まあ、サマーソニックも来ますし、予習の意味でも夏支度でいいんじゃないでしょうか。 |
仕事に疲れたあなたに「Colleen / THE GOLDEN MORNIG BREAKS」
吉松 |
それでは、いまは落ち着きましたけど、ついこの前まで仕事が立て込んでいたので、癒しの1枚をお願いします(静岡市在住25歳男性)。 |
クワケン |
決めました。フェニックスと同じく、フランスの女性アーティスト「コリーン」で。 |
「Colleen / THE GOLDEN MORNING BREAKS(税込3,553円)」。フランス人女性Cecile Schottのソロプロジェクト「Colleen」による、2005年に発売された2ndアルバムのLPリイシュー盤。ヴィオラをメインで使いつつ、幅広い楽器を操って表現する儚いインストゥルメンタルアルバムです。ジャンルでいうと、アンビエントやエレクトロニカ、ドローンといった世界観。レコードストアデイに合わせて2017年4月22日リリース、ゴールドヴァイナル+DLコード付きです。
♪Colleen – Summer Water
クワケン |
どうですか。この癒しの音は。 |
吉松 |
ああ、浸れますねえ・・・。音に包まれるような、不思議な包容力があります。 |
クワケン |
疲れた身体にいいでしょう。じつは同じタイミングで、2007年に発売されたサードアルバムもLPリイシューされているんだけど。これも併せて聴くといいかも。 |
こちらが3rdアルバムのLPリイシュ―盤、Colleenの『Les ondes silencienuses』。
吉松 |
前に紹介いただいたタラを思い出しました(月刊ソネレコ#2参照)。 |
クワケン |
タラジェンか。あれにも通じるよね。癒しにはやっぱりこういう音がいいと思う。 |
吉松 |
ありがとうございました。こんな感じで読者からのリクエストを始めてみたいなと――。 |
(ドアが開く音)
?? |
いいですか・・・? |
クワケン |
おお、いいよいいよ。いまmitecoの取材でね。 |
?? |
あ、いつも連載見てます。クワケンチルドレンとしては見ないと・・・(笑) |
吉松 |
クワケンチルドレンなんですか。 |
クワケン |
そう。クワチルね。クワチル。 |
やってきたのは、浜松を拠点に活動する双子DJユニット「Kitty Twins」のナホさん。クワチルです。
吉松 |
そうだ。もしよかったらなんですけど――(読者リクエストの趣旨説明)。 |
ナホ |
じゃあ、こんなのどうですか。夏デートにおすすめの1枚。よくないですか? |
吉松 |
お、いいですね! |
クワケン |
・・・読者から「夏デートにおすすめの1枚を探してください」というご依頼を受けました。 |
吉松 |
・・・クワケンさんはいったいなにを選ぶんでしょうか? |
ナホ |
(笑)ぜひお願いします。 |
夏デートにおすすめの1枚「Slowdive / Slowdive」
クワケン |
これとか盤名がスロウダイヴだしな~。ふたりはゆっくりと恋に落ちていく、「恋のスロウダイヴ」みたいな。 |
ナホ |
やばい(笑) |
クワケン |
フジロックにも来なかったっけ? |
吉松 |
3日目ですね。 |
クワケン |
さりげなく時事ネタを盛り込んだりもして。どうですか、こういうの!(曲を流しつつ) |
ナホ |
あ! いいです。涼しげでちょっと大人っぽいデートかも。 |
「Slowdive / Slowdive(税込2,981円)」。イングランドはレディング発のシューゲイザーを代表するバンド「Slowdive」による22年ぶりのニューアルバムです。1stシングル以来のセルフタイトルとなった本作は、当時を思い出させる浮遊感がより洗練されたようなシューゲイズ。2017年5月5日リリース、カラーヴァイナル+DLコード付き。
♪Slowdive – Star Roving
吉松 |
これを聴いてどんなところに行きたいですか? |
ナホ |
おしゃれ感がすごいんで、ガッツリ夜景とか。海とかもよさそう。でも夜かな。 |
クワケン |
っぽいね。夜景とか夜の海っぽいわ。もともとあんまり昼っていうバンドでもないし。 |
吉松 |
スロウダイヴを聴きながらの夜はかなりロマンチックかも。 |
クワケン |
スロウダイヴが解散してから(1995年に1度解散)、メンバー数名が始めたモハーヴィ3ってバンドがあるんだけど、あれもすごくよくてね。
解散直前に出したアルバムとか悲しみに暮れてたサウンドだったのに、こっちは「Tシャツ短パンでイエーイ!」みたいな感じで(笑)歌心爆発しててめちゃくちゃおすすめ。 |
吉松 |
なんかイメージつかないですね・・・。でもそれを経て再結成、そして22年ぶりのアルバムと。原点に立ち返ったんですかね。 |
クワケン |
そう。だから「ふたりの恋も紆余曲折するんじゃないですか?」っていう。これからいろんなことが起こるふたりにどうでしょうと。適当ばっかりですけど。 |
ナホ |
このお題、結構ノリノリじゃないですか(笑) |
吉松 |
はっはっは(笑)ナホさん、リクエストに対していかがでしょうか? |
ナホ |
おっけーです。合格です。 |
以上、月刊ソネレコ【#4】でした! 結果的にほとんどが夏に向けてピッタリな音楽です。夏本番を間近に控えたいま、チェックしておいて損のない音楽ばかりですのでぜひご参考に。
それと「恋のスロウダイヴ」という名言(迷言?)が飛び出したリクエストコーナーですが、みなさんからの声を大募集します! 応募条件はとくにありませんが、なにか具体的なエピソードがあるとクワケンさんも選びやすいと思います。
「今度ドライブデートに行く予定がある。音楽をきっかけに相手の心を掴みたい」「仕事が上手くいかない。憂鬱な気分をどうにかしたい」などなど。
リクエストは僕のTwitter(DMはyokeyokoで検索すると出てきます)か、ページ下部「miteco編集部へのメッセージ」にお願いします。またそのときに「ペンネーム(本名でも可)」「住んでいる地域」「年齢」「性別」の4つを添えていただけると嬉しいです。
それではまた来月!