「ドットツリープロジェクト」とはいったい?
日本中が熱い視線を注ぐ新たな移住のカタチ
地方創生を合い言葉にした移住促進の取り組みは全国各地、さまざまな手法で試みられている昨今。
静岡市でも「オクシズ」における空き家情報の提供などが行なわれていますが、そんななか、伊豆で進行中の画期的なプロジェクトが、県内外から注目を集めています。
写真提供:NPOサプライズ
その名も「.tree project shuzenji(ドットツリープロジェクト修善寺)」。職住近接と移住定住、産業集積をひとつにまとめた、まったく新しい地域活性プログラムです。
全国から視察団が訪れる伊豆のコンセプト賃貸住宅
2016年3月に始動したこのプロジェクト。以来さまざまな自治体が視察に訪れており、筆者もかねてから噂を耳にしていました。なんと、遠くは大分県から視察に来ているとのこと。実態を詳しく知るために現地――伊豆市修善寺へ。
写真提供:NPOサプライズ
先鋭的なデザインが目を引く、全12戸のオフィス付き賃貸物件。この一帯が「ドットツリー修善寺」です。地元で50年、生コン建材業を営んでいる「古藤田商店」と、伊豆で地域活動を実施してきた「NPOサプライズ」が運営。NPOサプライズ代表である飯倉清太さんがプロジェクトリーダーを務めています。
NPOサプライズ、代表理事の飯倉清太さん。
Takashi |
静岡市の街中には、主にクリエイター向けの「オフィス兼住居」が何軒かありますが、ドットツリーにはどのような方がお住まいですか? |
飯倉 |
建築士、デザイナー、カメラマン、着地型観光会社、フランチャイザー、翻訳家の方など全12業種で、県外から移住されてきた方もいます。すでに全室が埋まっており、空きを待っている方がいる状況ですね。 |
Takashi |
「現入居者と同じ職種の方は住めない」という決まりがありましたね。 |
飯倉 |
ドットツリーは伊豆の老舗建材資材会社「古藤田商店」の社長と、私との会話から始まったプロジェクトです。社長にとって、伊豆はずっと暮らしてきた町。私は静岡市出身ですが、天城で飲食業を経営してきた経緯もあり、伊豆に愛着があります。
人口流出が著しく活気を失っている自分の町をどうにかしたい、という想いがともにありました。そこで、複数の事業からなる「ひとつの商社」をつくろうと。異なる職種の人々が集い、基本はおのおのが独立していながら、恊働が可能なビジネスは互いに協力していく。そんな形です。だから同じ職種は被らないようにしたくて。 |
Takashi |
つまり、全12業種からなる商社として、互いに協力していくことのなかに、地域創生のアプローチも含まれているのですね。県外からの移住者もいて、ドットツリーそのものが移住定住の地でもあり。まさに“職住近接・移住定住・産業集積をひとつに”集めたモデルですね! |
飯倉さんと、NPOサプライズ事務局長の森嶋康代さん。
「互いに協力していく地域創生」に関しては、写真の飯倉さんが手に持っている『伊豆食べる通信』がその一例。
伊豆の生産者にクローズアップした記事に加え、取材対象者が収穫した食べ物もセットで、読者に届けている冊子です。NPOサプライズを発行元として、ドットツリーのメンバーも関わりながら年4回制作しているそう。記事と地場産品を同時に楽しめるアイデアも秀逸です。
ゴミ拾いから始まり7年。そこになにが生まれたか
Takashi |
NPOサプライズは、どのような活動をされてきた法人なのでしょうか。 |
飯倉 |
僕たちの活動の核となっているのは「ゴミ拾い」です。8年前から毎月1度の清掃活動を各地で続けてきました。単に町が綺麗になってよかった、で終わるのではなく、それを人とのつながりを育む場にしたのです。 |
Takashi |
と、おっしゃいますと。 |
飯倉 |
いまはネットがあるので、一連の活動内容をアーカイブして、ブログを使ってその状況を発信してきました。その繰り返しによって、関連する行政との関わりや、参加者同士のつながりが生まれたのです。「場を創り人をつなげコトを起こす」。これが僕らのコンセプトになります。 |
視察団の前でドットツリーについて語る飯倉さん。 写真提供:NPOサプライズ
飯倉 |
始めたきっかけは、いま思えば反骨精神かな。天城で飲食を営むあいだ、誰と話してもリーマンショックやらガソリンの高騰やら……。観光客が来ないことをなにかのせいにする状況に困惑していました。
だからといって、自分はなにかしているのかと。行動しないものに発信力はない。それで、たったひとりで0円からできることとして、思い付いたのがゴミ拾いだったわけです。ゴミ拾いを続けて自分が何者になれるのか、まず証明したかった。 |
飯倉さんが成したのは、清掃活動を通じた「地域の交流施設」の創出。清掃を活用した新しい形の観光に取り組み、2011年には伊豆市若者交流施設「9izu」プロデューサーに就任しました。
さらに、日本に300人しかいない「内閣官房地域活性化伝道師」に任命され、地域創生への貢献度を公に認められています。「ゴミ拾いから自分が何者になるか」、本当に証明してしまったのですね。
清掃活動はいまも続いており、県東部伊豆地域の広範囲において17の支部を構築している。
清掃活動のメンバーは学生を中心に若者も多数。ここから飯倉さんが語ってくれたことは、身を乗り出して聞き入ってしまう内容でした。
……その内容は、ぜひともお伝えしたいのですが、飯倉さんに聞きたいことが多すぎて、取材内容が濃くなりすぎてしまいました。
ひとまず今回はここまで。次回、その内容に加え、実際に現ドットツリーのメンバーがどんな仕事をしているのか、具体的に紹介したいと思います。伊豆へ観光にいく際にも役立つ情報を掲載しますので、楽しみにお待ちください。