県内初「学生向けシェアハウス」が静岡市に!
「コクーンベース静岡」の背景にある就活うつ
静岡大学や静岡県立大学、常葉大学など多数の大学が集まる静岡市。
2018年4月にはJR草薙駅付近に常葉大学の新キャンパスの建設が予定されており、市内はいま以上に学生で溢れかえるかもしれない。
その流れを見据えたかのように2015年12月、静岡市葵区駒形通に“静岡初の学生向けシェアハウス”が誕生しました。
写真提供:コクーンベース静岡
その名も「コクーンベース静岡」。コンセプトは「挑戦したい学生が、挑戦できる基地」です。
オープンからもうすぐ1年の現状※と、思いもよらなかったスタートのきっかけ。静岡初の学生向けシェアハウスについて話してくれたのは、運営事務局の代表を務める鈴木駿矢さん(以下、鈴木さん)です。
※2016年9月下旬にお伺いしています。
いまのコクーンベース静岡について
コクーンベース静岡 運営事務局 代表 鈴木さん
吉松 |
お邪魔します。・・・じつはシェアハウスに来たのは人生で初なんですよ。 |
鈴木さん |
あーそうですか! じゃあ、とりあえずここを案内しますよ。 |
はじめに案内していただいのは、102号室の共用リビングとダイニング。102号室には男性用個室が3つあります。
写真提供:コクーンベース静岡
男性用個室。利用者が住んでいてプライバシーもありますので、写真はオープン当初の様子です。
女性用個室3つと共用ワークスペースがある101号室。101号室と102号室は中庭でつながっていて、玄関のカギも一緒です。共用部分は男女兼用とのこと。
写真提供:コクーンベース静岡
女性用個室はこちら。さきほどと同様にオープン当初の様子です。
吉松 |
どこもオシャレですね。いま利用者は何人くらいですか? |
鈴木さん |
ちょうど先月に留学に行った子がいて、いまは男女ひとりずつになりましたね。もう少しでもうひとり増えることになっていますけど。 |
吉松 |
そうなんですか。実際のところ、どれくらいの問い合わせがありますか? |
鈴木さん |
ありがたいことに問い合わせは多いんですよ。オープンから問い合わせがなかった月は1回もないですね。ただ成約ってなると学生さん本人からのお問い合わせが多いので、親御さんの理解などでなかなか難しい感じです。 |
写真提供:コクーンベース静岡
吉松 |
どんな学生さんが住んでいるんですか? |
鈴木さん |
わりと面白い人が集まってますよ。たとえば、いま暮らしている男の子は滋賀出身で、三島の学校にここから通っているんですけど。入居予定日のときなんか急に彼から連絡がきて、「実家からヒッチハイクで向かってるんですけど、ちょっと辿り着かなくて。もう何日かかかりそうです」って。 |
吉松 |
え、どういうことですか(笑) |
鈴木さん |
かなり変わってますよね(笑)あと親からもらった自動車学校の費用を使い込んで、オーストラリアを1周してきちゃうとか。 |
吉松 |
(笑)変わってますねえ。 |
鈴木さん |
そうなんですよ。あと女の子は大分県出身で、「学生寮の〆切が終わったから内覧させてください」って連絡が来たんですけど、僕が半日くらい返事できなかったんですよ。
そしたらすぐに「返信がないので来ちゃいました。住人にも会って中を見せてもらってます。決めました」ってここでバッタリ出会ったんですよね(笑) |
吉松 |
はー(笑)バイタリティに溢れたふたりですね。 |
オープンのきっかけは大学生活の出来事
吉松 |
それでは、ここをオープンしたきっかけを伺ってもいいですか? |
鈴木さん |
そもそもは僕は静岡県立大学の卒業生で、在学中に「テラスハウス※」が流行ってシェアハウスって言葉を知ったんですね。そこから大学のゼミでプロジェクトを進めていたとき、放課後のミーティングとかで実家生のメンバーが終電があるので帰らなきゃいけないと。歯切れの悪いまま終わる日が続いていたんですよ。
※テラスハウス:2012年10月~2014年9月までフジテレビ系列で放送されていた人気バラエティ番組。 |
吉松 |
実家生の終電問題は、僕が大学生のころもありましたね。 |
鈴木さん |
そうですよね。でも一緒に住んでいたら夜通し話せるし、大学生活の自由な時間をもっと活かせるよなーと思いまして。そこで在学中に会社を立ち上げてから、シェアハウスとして貸してくれる物件を探したんです。 |
吉松 |
会社を立ち上げちゃったんですか。 |
鈴木さん |
ええ(笑)でも、大学生に物件を貸してくれる大家さんっていなかったんですよね。箸にも棒にもって感じで、そのまま卒業して就職して。
社会人になってからも会社は続けていたんですけど、ようやく一昨年くらいに物件が見つかりまして、実現にこぎつけたってところですね。 |
鈴木さん |
ただオープンの理由はもうひとつありまして・・・。 |
吉松 |
もうひとつの理由・・・? |
鈴木さん |
就職活動をしていたとき、ゼミの先輩とか同級生が就職活動を機に不登校になったり、ゼミの最中に泣きだしちゃったりしたんです。そういうのを目の当たりにして、なんかおかしいなと思ったんですよね。 |
吉松 |
いわゆる就活うつみたいな。 |
鈴木さん |
そうですね。・・・正直なところ、当時は就活鬱になるような人って、大学生活でのアピールポイントがない人たちがなると思っていたんです。
でも、たとえばゼミの先輩は、自身のプロジェクトで大学食堂を撮影して導線を円滑にするよう組み替えたり、食堂と交渉して学生の意見を取り入れようとメニューを増やしたりだとか。アピールポイントはいっぱいあったんですよ。 |
吉松 |
たしかにアピールポイントばかりですね。・・・それなのに追い込まれたと。 |
鈴木さん |
はい。同級生もゼミの大きなプロジェクトを回してるような人でした。だから「これって本当に個人の問題なのか?」と思ったんですね。個人、大学、社会のどれかに原因があるか、もしくは全部かもしれない。
それをなんとかしたいと思って、まずは就活うつをテーマに卒論を書いたんですよ。就活うつにならない大学生活の過ごし方みたいな。 |
社会の仮入部をシェアハウスで・・・?
吉松 |
その卒論でなにがわかったんですか? |
鈴木さん |
僕は専門が経営学の組織行動論で、いわゆるマネジメントとかですね。組織に参入するって観点から、「学生がイメージする社会」と「実際に社会に出たときのイメージ」のギャップが激しいことがわかったんです。 |
吉松 |
感覚としてはありましたけど、やっぱりあるんですね。 |
鈴木さん |
そうなんです。たとえば、高校の部活とかで仮入部ってあるじゃないですか。それで嫌だと思ったら辞めるし、いけると思ったらやる。部活には組織に入るための準備期間があるのに、社会にはそれがないんですよね。
インターンとかに行っても、きちんと仮入部させてくれるところは少なくて、いいところだけを見せるところが多いなかで、いきなり面接で企業理念とか聞かれてもわかんないじゃないですか。社会に出るまでのルートがまったくデザインされていないんです。 |
吉松 |
なるほど。 |
写真提供:コクーンベース静岡
鈴木さん |
そうして研究していくと、学生時代のときに社会人と密接なコミュニケーションをとるとか、プロジェクトをするなら社会人とガッツリなにかに取り組んだ経験があると、就活うつになりにくいこともわかって。
じゃあ、自分でそういったことをできる環境を作りたいと、そんな理由がありました。だからこのシェアハウスでは、社会人を招いてお話しをしてもらう「オープンシェアハウス」を月1回ペースで開催しています。 |
吉松 |
そんな理由があったんですか。オープンシェアハウスではどんな社会人を? |
鈴木さん |
偏った社会像にならないよう考えていまして。毎日定時で帰って家庭を充実させることが生きがいの社会人とか、その一方で夜遅くまで仕事をして結果を出すことが生きがいの社会人とか・・・。
いろんな人がいてこんな人が社会にいるんだ、っていう気づきを与えられる場を作っていますね。社会に出るときの予備知識になったらいいなと。 |
吉松 |
ここまでの話を聞いていると、その経験がどれだけ大切なことなのかと思いますね。 |
鈴木さん |
ありがとうございます。まあ、そういう流れで「挑戦したい学生が挑戦できる基地」をコンセプトに動いているって感じです。もちろんそこにはバックアップも必要なので、そこは僕たちが担いますよっていう。 |
コクーンベース静岡は、鈴木さんを合わせて計6名の社会人で運営されているとのこと。入居者は運営のみなさんからも社会を知るきっかけを得られそうです。
また鈴木さんは、「静岡にとってはシェアハウスはまだ新しい文化」とも話していました。たしかにその通りで、静岡全域を見渡してもシェアハウスの数は多くありません。
でも、生活をする拠点としての選択肢が増えたことが自体が大切ですし、これから学生がより増えるであろう静岡市にはより必要な存在になるのではないかと僕は思います。
さて気になる家賃は月36,000円~で、管理費・共益費は無料。水道光熱費は入居者で等分ですので、費用はかなりリーズナブルです。
「挑戦したい学生」のみなさん、暮らしの選択肢に入れてみてもいいかもしれません。