浜松初!電気代0円「オフグリッドの家」
電気を自給自足するその住みごこちとは?
2015年7月に浜松市初の「オフグリッド住宅※」が登場し、地元新聞などで話題となりました。
あれから1年以上が経ち、実際どのような暮らしをしているのか、その住みごこちが気になるところです。
そこで、浜松市中区富塚町のオフグリッド住宅で暮らす、下澤さん宅を訪ねてお話を伺ってきました。
※オフグリッド住宅:電力会社の送電線を繋がず、電気を自給自足する住宅のこと。
こちらが下澤さん宅の外観。ご覧の通り送電線がなく、傾斜のある屋根の一部にソーラーパネルが設置されているのみです。
電気を自給自足?
そもそも、オフグリッド住宅の特徴となる「電気を自給自足する」は、どういうことなのでしょうか?
たとえば、身近なところでは、一般家庭の屋根に設置されたソーラーパネル(太陽光発電システム)を目にすることがあるかと思います。
そうした自然エネルギー(または再生可能エネルギー)を利用した発電装置に加え、バッテリー(蓄電装置)やパワーコンディショナー(変換装置)を家の屋根や敷地内に設置することで、電気を自給自足できるのだそうです。
下澤さん宅では、屋根にソーラーパネル(2.9kw)が設置されており、再生鉛バッテリー(27.1kwh)やパワーコンディショナーなどの設備は屋外の倉庫に納められています。また、発電状況は室内のモニターなどで確認可能です。
費用は施工費・設備費で240万円のほか、2か月に1回1,000円前後の精製水代がランニングコストとして掛かるとのことですが、それ以外の電気代は0円!
しかし、下澤さんご一家は「電気代0円でお得だから!」という理由でオフグリッドの家にしたわけではありません。
暮らしを楽しむ省エネ生活からオフグリッド生活へ
下澤さんご一家は、ご夫婦と2人の息子さん(4歳、1歳)の4人家族。
今回は、奥さんの下澤未希さん(以下、未希さん)にお話しを伺いました。
オフグリッドの家に住む下澤未希さん
オオイシ |
では、さっそくですが、オフグリッドの家にしようとしたきっかけはなんですか? |
未希さん |
東日本大震災以降、原発に対する安全性を問う声が世間で聞かれるようになって、電気や発電方法に疑問を持つようになりました。
そのときにオフグリッドという生活スタイルを知り、大きな電力会社に頼らずに小さな設備(システム)でやっていけることを証明したいと思ったんです。 |
オオイシ |
オフグリッドということは、完全に電力を自給自足するということですよね。抵抗というか・・・電線がつながっていないことへ不安はなかったんですか? |
未希さん |
オフグリッドにしようかって話になったときに、可能かどうかを以前の我が家の電力使用量とオフグリッドの推定発電量を比較してみたところ、我が家の場合は十分に生活できそうだったので不安はなかったですね。 |
オオイシ |
我が家の場合、というのはつまり・・・? |
未希さん |
我が家は一般家庭の平均値に比べて、半分以下の電力しか使っていなかったんですよ。 |
オオイシ |
半分以下ってすごいですね! なにか特別な省エネ生活とかしていたんですか? |
未希さん |
どうしてこんなに差があるのかはよくわからないんだけど、以前の暮らしでは、電気調理器を使わずにやかんでお湯を沸かしたり、鍋でごはんを炊いていたりしてたかな。そういう暮らしを楽しんでやっていました。 |
オオイシ |
暮らしを楽しむことが省エネになっていたんですね。 |
電気天国生活!
丁寧な暮らしを楽しむ未希さんの現在の暮らしは、意外にも「電気天国!」なのだそうです。
未希さん |
太陽光発電のため、晴れた日はまさに電気天国! 電気オーブンや炊飯器、電気ポットとIHを駆使しています。
我が家にないのは、エアコン、ドライヤー、電子レンジ、たったこれだけ。それ以外の電化製品はいつも使いまくってます(笑) |
未希さん |
気兼ねなく電化製品を使うことができるので、IHで長時間じっくりコトコト煮込み料理もできるし、電気オーブンを使って子どもたちにクッキーやパンなどのおやつも手づくりできるんですよ! |
オフグリッド住宅にしても丁寧な暮らしには変わりなく、電気を使った楽しみがさらに増えたようです。
「天気に依存した電気を使う生活」
未希さん |
オフグリッドの暮らしは、天気を見て電気をどう使うかなど考えながらの生活です。天気天国と言いましたが、発電量が天気によって左右されるんです。 |
オオイシ |
曇りや雨の日もちゃんと発電できるんですか? |
未希さん |
できますよ。雲に隠れていても太陽はあるので。でもやっぱり、発電量は少なくなります。
そういう日は、電気オーブンでクッキーを焼くのはやめておこうとか、IHは使わずにガスで料理しようとか、極力電気を使わないように工夫しています。お湯を沸かすことひとつとっても、天気を見ながら今日はガスで沸かそうかな、電気で沸かそうかなと考えることも楽しみですね。
発電量は、ちょっと太陽が出てくれるだけで跳ね上がるので、本当にちょっとでも太陽が出てくれると嬉しいと思うんですよ。 |
蓄電もできるため、発電量の少ない日があっても心配はないそうですが、今年9月には思いがけない出来事があったそうです。
いったいなにがあったのでしょうか!? 後編へ続きます。