趣味で絵を描いてたらいつの間にか独立!?
静岡・起業家のホンネ【第2回】

  • posted.2016/10/09
  • 安藤悟
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趣味で絵を描いてたらいつの間にか独立!? 静岡・起業家のホンネ【第2回】

こんにちは、編集部の安藤悟です。

私は株式会社エストリンクスで代表取締役社長をしています。2012年9月に独立開業してからちょうど4年が経ちますが、同じ時代を生きる起業家は、何を考え、どんなことをしているのか、ふと知りたくなりました。

そんな経緯で始めた「静岡・起業家のホンネ」という企画の第2回目です。

フィーリングを大切にするイラストレーター

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさん

今回お会いしたのは、静岡県富士市を拠点に活躍する、イラストレーターのサノユカシさん(以下、ユカシさん)。

2009年から活動中・・・と、さっそく第1回に掲げた条件(独立後3年以内)と少し違いますが、「弊社の白鳥が紹介してくれたこと」「クリエイティブ職のお話が聞きたい」という理由で取材させていただきました。

さて、ユカシさんとお話しした第一印象は、お腹の底から笑う人というイメージです。

見たものや聞いたものをそのまま受け取る人というか。「フィーリングを大切にする方なのかな?」と思いながら、話を聞いてみました。

(個人的には最大級の賛辞ですがいかがでしょうか・・・?)

「絵を描きながらインタビュー」という、イラストレーターさんらしいスタイルでお届けします。

「なんか、苦しいぞ」と思って独立

静岡・起業家のホンネ_イラスト今日のために用意してくれた過去のイラスト作品。

「元々、起業する気がまったくなかった」というユカシさん。趣味のつもりで描いていたら忙しくなって、本業から押し出されるように独立したそうです。

プロフィール

安藤

ユカシさんはイラストレーターさんなんですよね。元々、絵を描き始めたのと、絵を仕事にしたきっかけはなんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

幼稚園のときからずーっと絵を描くのが好きだったので、覚えてないです。大人になってからも絵を続けていたんですけど、職業にしたいとは一切思っていなくて。友達に「絵を描いて」って言われたらお小遣い程度にお金をもらうくらいでした
プロフィール

安藤

なぜ、独立しようと思ったんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

成り行きですね(笑) 独立直前は「絵を描いて楽しく暮らせる毎日を過ごそう」と思ってパン工場で働いてました。朝8時から夕方5時まで工場勤務で、余った時間はずっと絵を描いていたんです。

 

でも、いつの間にか睡眠時間を削るくらい、絵のお仕事が忙しくなって。「なんか、絵を描くのが苦しいぞ」と思って、パン工場を辞めちゃいました。

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安藤

僕と似てます! 倉庫作業員をしながら趣味で文章を書いてたら、ライターになっちゃいました。 僕は独立するときに不安だったんですが、ユカシさんは不安じゃなかったですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

「生活できなくなったら、また就職すればいいかなぁ」くらいに思ってて。でも、7年続いちゃいましたねぇ(笑)

お酒を飲みながら、みんなでいいものを作るくらいの気持ちが楽しい!

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさん

趣味で絵を描き続けていたというユカシさん。いまどんな仕事をしていて、どんな気持ちで描いているのかを教えてくれました。

プロフィール

安藤

イラストレーターさんって、どんな仕事が多いんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

絵に関してはなんでも・・・というか文字も書いたり、アートディレクターみたいなこともしたり。イラストレーターっていうのが伝わりやすいと思うんだけど、なんか違うなとも思っていて、自分のことは「絵かき屋さん」って呼んでます。
プロフィール

安藤

じゃあ、これからはユカシさんのことを絵かき屋さんと呼びます(笑)趣味で描き始めたと言いますが、どこかで勉強したんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

ぜんぜん! 独学って言ったらカッコイイけど、ずっと勝手に描いてただけ。画風もどんどん変わってるし、絵を描くときは「偶然性」も大事にしたいなと思ってて。偶然できたアートってワクワクしませんか?

静岡・起業家のホンネ_イラストスケッチブックを見ずに引いた線に色付け。かわいいイラストになってます!

プロフィール

安藤

確かに、偶然生まれたモノって素敵です。でも、仕事はどうやって進めてるんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

もちろん、クライアントさんがいるときはきちんとやってますよ(笑)
逆に、「色は?」「イメージは?」とか、しつこいくらいすごいいろいろ聞く。でも、お酒でも飲みながらあーだこーだ言って、いいものをみんなで作るほうがよっぽど楽しい!

静岡・起業家のホンネ_過去の制作物会話から生まれる作品。「ノリさんのかき氷」の手ぬぐい(写真右)、山口県産コシヒカリ・「たわらの山」(写真左)。

プロフィール

安藤

じゃあ、クライアントさんとイメージを共有してから描いてるんですね。少し話は変わりますが、憧れているイラストレーターさんっていたんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

うーん・・・一番は楳図かずお先生ですよね(笑)
プロフィール

安藤

イラストレーターじゃないですね(笑)

会いたい人に会うことは絵を描くよりも大切

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさんよく絵を描きに来るという公園。

「気付いたら独立していた」と話すユカシさんですが、絵を勉強していたわけではないそう。さらに、営業活動らしいことも全然しなかったとか。どうして7年間も仕事が続いたのでしょうか?

プロフィール

安藤

独立してから、どうやって仕事をもらったんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

最初は友達からもらってましたね。結婚式のウェルカムボードとか。元々、有限会社ケンブリッジの森(デザイン事務所)のカフェで、師匠の藤原さんの下で働いていたので、その縁でいろいろな人とつながりました。
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安藤

へぇ。でも、縁だけで仕事って増えるんですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

それが、お仕事がなくならないんです。ホントに周りの方のおかげでいただけている感じです。まぁ、宣伝して、忙しすぎたらギスギスしちゃう気がするし、お待たせしても悪いし・・・。

 

忙しいことも大事だけど、ちゃんと遊んだり寝たりすることも大切(笑)

プロフィール

安藤

どうして、宣伝しないのに仕事が続いたと思いますか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

お仕事をいただけているのは、ホントに人間関係ですね。師匠から、「上手な絵や美しい絵を描くための技術を磨くことも大切だけど、それ以上に人のつながりなくしてはお仕事にはならない」と教わりました。

 

たとえば、たくさんの縁がなくてもいいけど、せっかく出会ったのに、それからお手紙や電話がないのは寂しいじゃないですか。会いたい人にはちゃんと会うし、せめて忙しくても電話をすることのほうが、絵を描くよりもよっぽど大切だなって私は思います。

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさん

7年間でアレが一番泣きました

静岡・起業家のホンネ_絵本絵本「ちんじゅうくん」(作・あしざわまさみ/絵・サノユカシ)。こちらも知人の縁で誕生したそうです。

「人間関係を大切にしたい」と話すユカシさん。だからこそ、人間関係で真剣に悩んだり、つらかったりしたこともたくさんあるようです。

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安藤

「絵を描きながら楽しい毎日を過ごしたい」とお話していましたが、つらかったことってありますか? たとえば、お金とか。
sanoyukashi_sano

ユカシさん

最初の1年くらいは、お金の問題も気にしてました。でも、フリーランスは頑張ったら稼げるし自由にお休みも取れるから、いちいち考えなくなりました。どっちかというと、人間関係のほうが悩みましたね。
プロフィール

安藤

人を大切にするイメージがありますが、人間関係の悩みですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

一時期、一気に人が離れてしまって。「どうして必要とされないんだろう?」って思ってたけど、いま考えると、常識で考えたらありえないことをしてたんですよね・・・。あっ、でも、これ独立する前だ。 最近だと、アレですね。

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさん

プロフィール

安藤

アレ?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

廃ホテルのスペースを使って子どもと絵を描くことがあったんです。ちょっと目を離したスキに、子どもたちがトイレとかに筆を突っ込んだりして。

 

廃ホテルだからトイレも汚れているのに、絵を描かれちゃったんです。「私の大事な道具になんという・・・!」と思って、起業してから7年間でアレが一番泣きました。もう、子どもみたいにわんわんと。

プロフィール

安藤

うわっ、それは悲しいですね・・・
sanoyukashi_sano

ユカシさん

でも、私の落ち度とか情けなさもあったんで、仕方ないなぁって。これも人間関係の悩みのひとつかな。

起業したいって言うヒマがあるならやったらいいじゃん

静岡・起業家のホンネ_サノユカシさん

プロフィール

安藤

すごく面白い話でした! 最後に、「これから起業しよう」って思ってる人にメッセージとか、アドバイスってありますか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

「起業したい」って言うヒマがあるなら、「やったらいいじゃん」って言うかな~!

 

たとえば、何年も「外国行きた~い!」って言ってる人に「行けば?」って言うと、「いまは治安が悪いから・・・」とか言い訳が多いなって。

 

「死ぬときはどこでも死ぬんだから、行きたいときに行け!」って思うんですよね。

プロフィール

安藤

・・・これ、記事にして大丈夫ですか?
sanoyukashi_sano

ユカシさん

先輩方に「エラそうだなぁ」と怒られそうですが(笑)
sanoyukashi_sano

ユカシさん

・・・ぜんぜん関係ないんですけど、趣味ってありますか? 趣味が仕事になっちゃって困ってたんですが、私、最近釣りの楽しさを知っちゃったんですよ!
プロフィール

安藤

釣り、好きそうですね! 最近は、ボルダリングやってますね。
sanoyukashi_sano

ユカシさん

あ~、筆が握れなくなるから、私は絶対やらないわ・・・(笑)

途中から友達と話してるような感じになってしまいました。軽やかなタッチのイラストですが、絵かき屋さんとしてのプロ意識、フリーランスならではの根性みたいなものを感じます。街中に出かけるとユカシさんが描いた作品があるので、意外なところで出会うかもしれません!

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Writer安藤悟

1987年生まれ。静岡県静岡市出身、在住。株式会社エストリンクス代表取締役社長。中学時代の趣味は読書(筒井康隆、ビジネス新書)だった。10年以上ロックバンドでギターボーカルをしながら作詞作曲をする、“こじらせ系アラサー男子”。最近の趣味はダーツ。Twitter:@ando3106 Facebook:satoru.ando.986

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