魅力的なあの人vol.5
探求心あふれるカフェ&家具屋のオーナー
日常生活のなかで魅力的な人に出会うときがありますよね。ひと目惚れのときもあれば、だんだんと惹かれていくこともあります。
そんなときに「知りたい。話したい。でも、そんなにいろいろと聞いたら迷惑かな……」と考えてしまいませんか? 私は臆病になってしまいます。でも知りたい……。
そんなシャイな気持ちから生まれたのが、「魅力的なあの人」というシリーズ企画です。
第5回目のあの人は……?
魅力的なあの人とは、私が魅力を感じた人に「いまなにをしているの?」「なにを考えているの?」などとグイグイお話しを聞き、その人の奥にひそむ魅力の元を探していくというものです。
第5回目のあの人は、静岡県沼津市出身でHINA-CAFÉ、HINA-KAGU、HINA-FUKUのオーナー「藁科和也」さん。
藁科和也
静岡県沼津市出身。静岡工科専門学校卒業。2005年、富士市比奈に「HINA-CAFÉ」をオープン。6年後に「HINA-KAGU」さらに6年後は「HINA-FUKU」をオープン。静岡県東部唯一のカリモク60※正規取扱店ということもあり、「長く使えるおしゃれな家具」を求めて県内各地から人が訪れる。公式HPはコチラ。
※カリモク60:1940年創業の老舗家具メーカー「カリモク家具株式会社」が手がけるブランド。
昨年の11月、私の家もHINA-KAGUでカリモクソファを購入しました。お店の方が配送&組み立てをしてくれるというサービスがあり、そのときに家に来てくれたのが藁科さんでした。
オーナーさんが配送してくれて組み立てまでしてくれるのか、丁寧だなぁ。と驚いたのですが、さらにお話を聞くと「今までの配送、組み立ても全部ひとりでしていて一度も業者に頼んでいない。家具のクリーニングも自身でおこなっている」とのことでした。
なんだかこだわりがありそうで素敵です。うーん、もう少しお話を聞かせてください……!
ということで、HINA-CAFÉに伺いました。こちらのカフェには私もよく行くのですが、ランチメニューが豊富でコーヒーもおいしいんです。レジ前で販売している手作りクッキーはついつい買ってしまいます。
今回は藁科さんの魅力に関係していそうな「こだわり」の理由を知るため、富士市比奈にカフェや家具屋さんをオープンしたきっかけ、仕事への想い、考え方について、お話を聞いてみました。
元整備士でバーテンダー!?
落ち着いた店内にはカリモクのソファが置いてあります。
花 | 藁科さんがカフェをオープンしたきっかけから教えていただけますか? |
藁科 | 妻がカフェをやりたかったんですよね。それで僕も仕事を辞めて一緒にカフェを……。 |
花 | あ! そうなんですか。以前はなんのお仕事を? |
藁科 | トヨタ自動車の整備士をしていて、夜はバーテンダーのアルバイトもしていました。バーテンダーはアルバイトっていうより勉強に近いですね。 |
花 | 整備士! 意外です……。かけ持ちは大変だったかと思いますが、どうしてバーテンダーのアルバイトもしていたのですか? |
藁科 | BARの空気が好きだったので働いてみようって思ったんです。あと、そのくらいの年齢ってカクテル作るのに憧れるんだよね、かっこいいから。 |
花 | たしかに。シャカシャカしてお酒作れたらいいって思います。 |
藁科 | そうそう、「お酒に詳しいとかっこいいかな?」とかね。でも、カフェのアルコールメニューを作るときにバーテンダーの経験が役立ちましたよ。 |
カフェオープンから家具屋が始まったわけ
花 | カフェをオープンした理由はわかったのですが、それがどのように家具に結びついたのですか? |
藁科 | カフェをつくっているときに家具を探していて、まず「このあたりって家具屋が少ないね」って話になったんですよね。そのときに奥さんの実家の物置からカリモクのソファを見つけて、「これいいね」って使うことにしました。昔は会社の応接室で使われていたものだから、作りもしっかりしているんです。
それからしばらく店でカリモクのソファを使っていたんですけど、たまたま深夜に観ていたテレビにデザイナーのナガオカケンメイさんが出演していて。店で使っているカリモクソファと今でも同じものをつくっているって知ったんです。
それで翌日、「うちでも売らせてくれないか?」ってそこに電話しました。 |
花 | えっ、翌日!? 行動が早い……。それって言えばすぐに取り扱えるものなんですか? |
藁科 | いえ、後日、担当者さんがわざわざ店に来てくれて面接しました。OKが出たのは半年後。最初はカフェ内で販売していたんですけど、カリモク60以外も取り扱うようになって今はカフェの隣で家具屋をやっています。 |
自分で配送するのは「好奇心」と「責任感」
花 | 藁科さんって私のお家にソファとテーブルを直接持ってきてくださったじゃないですか、あれって大変じゃないですか? 運送業者に頼む家具屋さんも多いですよね。 |
藁科 | 一番はどんなところに家具が行くのか僕が気になるっていうのがあります。
あと、なにか問題が起きたときに責任を持てないことが嫌なんです。もし家具が壊れていた場合、「どこで壊れたか?」を探り合うこととか……。だから全部自分ひとりがやってしまうほうが合っているなって思います。それに楽しいですよ。 |
花 | 楽しい? |
藁科 | 配送で行ったことない地域に行けるのが、探検みたいで楽しいです(笑)あと、配達したら写真を撮らせてもらっているんですけど「この色の家具はこの床の色に合うな……」と考えることも楽しいですよ。 |
花 | たしかに、リアリティのあるカタログが増えるようなものですね。 |
藁科 | そうなんです。あとはお客さんも運送業者さんより、その店の人が来てくれるほうが安心するかなってのもあります。家具のクリーニングも行っているので、家具を購入してからも交流がありますしね。 |
花 | なるほど。そういえば、なんでクリーニングまで始めたのですか? |
藁科 | 僕は永くいいものを使ってほしいと思っていて。でも小さなお子さんがいるお客さんは「いいものってのはわかるんだけど、子供が汚すのが心配で」って言って購入を断念する方も多かったんです。
「いいもの」ってわかってもらえたのに「汚れたら悲しいから買わない」ってのは、悔しいじゃないですか。だってほかのソファも汚れるけどショックが少し軽いってだけだしね。 |
藁科 | だから「汚しても綺麗になればいいんだよな」って思って調べて、クリーニングを知って、講習に行きました。そして業務用のクリーニング機械も購入して……200万くらいしたけど。 |
花 | たけぇ。 |
藁科 | でも「うちで購入すればクリーニングサービスがあるので、汚れても大丈夫ですよ」って言えるようになりましたよ。 |
花 | (200万で機械を買ってるのにクリーニングはサービスなのか……) |
藁科 | 実際、小さいお子さんがいる家庭でも購入してくださる方は増えましたね。問題を見つけたらそこで折れるのが嫌で、悔しいからなんとかしたいって思ってしまうんです。 |
花 | なるほど、普通はあきらめてしまいそうなことを「じゃあどうしたらいいか?」って違う視点で考えて行動されているんですね。 |
藁科 | そうですね。たとえば、なにかしたいことがあってお金が必要、でもお金がないからできない。じゃなくて、「したいこと」に注目していろいろなやり方を考えていくことが、物事をよりたのしめるコツだと思っています。 |
お話していくなかで「いいものを永く大切にしたい」という気持ちと、自分のやっていることに探求心を持つ性格が、より藁科さんの販売する家具を魅力的にしているのではと思いました。
また、ままならないことを「悔しい」と思い、そこから改善策を探し出す姿を私も見習いたいと思います……!
家具のネット販売はおこなっていないそうなので、気になる方はぜひお店に足を運んでみてください。家具選びのあとは、落ち着いたこだわりのカフェでお腹も心も満たされるはずです。