「なにもないところに魅力を感じてもらえたら」
「ゲストハウスSEKINO」が生み出す地域ムーブメント
静岡県沼津市内浦・西浦地区。駿河湾によって育まれる豊かな自然に、風情ある古民家が立ち並ぶここは、“奥駿河”とも呼ばれています。
2017年11月中旬、海と山に面するこの地域に、築90年の古民家をリノベーションした「ゲストハウスSEKINO」がオープンしました。
手掛けたのは、オープンの約半年前に設立されたまちづくり会社「奥駿河家守舎」。
立ち上げメンバー3名のうち、現在物件を運営管理しているCafe NORA経営の今井風多さん(以下、今井さん)に、ゲストハウスオープンに至ったきっかけ、内浦地区の魅力、今後の活動についてお話を伺ってきました。
この土地が持つ魅力が、僕たちを動かした
ゲストハウスSEKINO運営管理 今井さん
kajo |
築90年の古民家をリノベーションして、ゲストハウスにしようと思われたきっかけってなんですか? |
今井 |
もともとは、沼津市の遊休不動産の利活用企画「リノベーションまちづくり」のイベントがきっかけですね。2017年の春に、趣旨に賛同したみかん農家を営む関野さんに物件を見せてもらいました。
柱とか梁とか、建物の状態がとてもよくて、直感で「ここがいい!」と思いました。同年の7月には、地元出身の岩崎くんと真野くんと「奥駿河家守舎」を設立して、11月のオープンに至ります。 |
kajo |
すごいスピード感・・・! ゲストハウスに宿泊されるお客様はどんな方たちなんですか? |
今井 |
問い合わせの9割が外国人観光客の方で、宿泊も外国人のお客様が多いですね。ただ、交通の便が足を引っ張る部分はあります。車がどうしても必須になっちゃうから。 |
kajo |
“奥駿河”と呼ばれる自然が美しいこの地域ですが、近辺でオススメのスポットはありますか? |
今井 |
海水浴場は海岸沿いの至るところにありますよね。ダイビングのメッカである大瀬崎も、タカアシガニのおいしい戸田も、伊豆の豊かな温泉が楽しめる修善寺も伊豆長岡も車で30分〜40分ほど。
でも僕としては宿泊者の方に、この地域の“なにもないところ”に魅力を感じてもらえるんじゃないかとは思ってます。 |
沼津市西浦にあるダイビングのメッカ「大瀬崎」。 撮影:村松高志
kajo |
(おいしいと楽しいで頭がいっぱい!) |
「奥駿河」に惚れ込むのはなぜ?
kajo |
今井さん含め、奥駿河家守舎の岩崎さん、真野さんが惚れ込む、奥駿河という地域の魅力をズバリ教えてください。 |
今井 |
奥駿河という限られた狭いエリアには、なんとも言えない奥深さが息吹いています。5月にみかんの花が咲いて、9月にはオレンジの実をつける。
オレンジ色に染まる山を背後に、穏やかな表情の駿河湾、海越しには淡島と富士山が控えるっていう。なんにも無い事が一番の魅力だなって思います。 |
今井 |
そして僕たちは、自分たちの好きなこの場所に、人を呼びたいんです。ただ、それだけで動いています。これから観光シーズンを迎えるので、純粋に楽しみにしています。 |
地域が生きる方法、地域と生きる方法を考える
kajo |
最後になりますが、ゲストハウスSEKINOだけでない、奥駿河家守舎の今後について教えていただけますか? |
今井 |
まずは、地域の特産品であるみかんを使って、作業場が可視化された環境のなかで地域還元を実行したいですね。
加工することによって、廃棄されてしまうみかんを有効活用できるんじゃないかと考えています。毎時期、相当量のみかんが廃棄されていくのをご存じですか? |
今井 |
あとは、パン屋さんをやりたいです。「僕らの街にパン屋さんを作ろうプロジェクト」とかクラウドファンディングでどうでしょう?
人口4,000人弱のこのエリアに、パン屋さんはひとつもありません。誰もがふらっと立ち寄れる場所をなるべく多く作り上げていくことで、地域は生きていくんじゃないかな。 |
人と人のつながりから、街が豊かになる。
今井さんの真っ直ぐで迷いのない志が、人を巻き込み渦となりこの街を彩っていく、そんな近い未来が眼に浮かぶようでした。
路地裏を抜ける潮風の匂いや静かに息づく古民家・・・この地域の持つ特別な空気は、人が住むことによってより濃度の高いものになるような気がします。
秋に始動したばかりの彼らの活動が、今後どのように発展を遂げ、新たな出会いを生み出していくのか、これからのゲストハウスSEKINO、そして奥駿河家守舎に注目です。