静岡のDeepな心霊スポット【第7話】
丸火自然公園・大渕小僧(富士市)
富士市大渕の山中にある、自然豊かな丸火自然公園。その林の奥、ひっそりと佇む小さな祠をご存じだろうか。今回は富士市で語り継がれる昔話や筆者の考察も織り交ぜながら、心霊スポット「大渕小僧」をご紹介したい。
大渕小僧にまつわる怖い話
大渕小僧は、心霊スポットとして動画投稿されることもある場所だ。山中にある小さな祠へ行くと、「大渕小僧に肝試しをした帰り、風もないのに公園のブランコが何度も揺れた」「肝試し中にすべての照明が消えた」「肝試し中、林から話し声が聞こえた」など、心霊現象の報告がある。
どうやら肝試しのときに心霊現象が起きたという話が多い。
地元出身者であるmitecoライター・宮島ムーさんによると、富士市では小学5年生になると、みどりの学校(林間学校)で丸火自然公園に足を運ぶという。そのとき、大渕小僧の祠までナイトハイク(肝試し)をしているようだ。これが肝試しのときに心霊現象がよく報告される理由だろう。
大渕小僧の昔話
心霊現象には、大人が仕掛けたケースもあるはずだ。ただ、そう結論付けて終わり・・・では面白くない。
どうして大渕小僧がナイトハイクのコースに選ばれるのか。その理由を解き明かすべく、まずは富士市が編さんした『ふるさとの昔話』から大渕小僧のいわれをお伝えしたい。
はるか昔、おばあさんと少年が大渕新田という土地に暮らしていた。少年は幼くして両親を亡くしたため、村人から「親なし」といじめられ、心がすさみ、寂しさからか数々の悪行を働くようになる。そして、彼は村人から「大渕小僧」と呼ばれ忌み嫌われる存在となった。
近所の子供は大渕小僧を嫌い、一緒に遊ぼうとしない。そのせいで小僧はますます悪さをするようになってしまい、畑を荒らしたり人を騙したりと、子供とは思えないような行動をとるようになったという。
困った村人はおばあさんに注意するように相談した。しかし、おばあさんは知らん顔をしたそうだ。ほとほと困った村人たちは小僧を殺そうと決意。名主は反対したそうだが、村人たちの手で小僧を殴り殺してしまう。
小僧が亡くなる間際、おばあさんは「粟の粒ほど祟ってやれ」と言った。その後、小僧を殴った村人たちが急死したうえ、村中に原因不明の病気が流行ってしまう。
村人たちは「大渕小僧の祟りだ」とすぐにわかったため、小さな祠をつくった。すると、村人たちの病気は途端に治ったそうだ。
参考:富士市「ふるさと昔話『大渕の大渕小蔵』」
大渕小僧に関する考察
人の気配がなく鬱そうとした森の中というロケーション。そして、悪さをする子どもが殺されたという逸話。現代の子供たちが大渕小僧を畏怖するには十分な環境だろう。
いたずら好きな子供がナイトハイクをきっかけに、いたずらを控えるケースもあるかもしれない。大渕小僧の話を聞いたあとにナイトハイクへ行くと考えると、大人でさえ少し恐怖を覚えるはずだ。
心霊スポットから見える地域伝承の存在意義
大渕小僧は健全な青少年育成のため、非行に対する一種の抑止力として機能しているのかもしれない。地元で言い伝えられている民話の存在意義が垣間見えたように思う。
ところで、もしかすると、地域伝承に紐づいた心霊スポットは別の視点が必要ではないだろうか。大渕小僧の調査を経て、新たな疑問が生まれてしまった。
今回ご紹介したのは富士市の大渕小僧。
今後も静岡のDeepな心霊スポットについて、さまざまな切り口から紹介していきたい。
(取材協力/宮島ムー)
※本記事は地元民のウワサをまとめました。信ぴょう性その他について保証するものではありません。