プロが教える夜景撮影のコツ!
撮影経験0でも浜松の夜景が撮れました
最近はすっかり秋めいてきて、夜になれば薄着では少し肌寒いなと感じるようになりましたね。
そうなってくると、なんとなく人恋しくなったり、思わず休日に街に繰り出したくなったりしませんか? もっといえば、だれかとどこかへ出かけてロマンあふれる体験をしたい、そんな風に感じることもないでしょうか。
たとえば、夜景を見たり・・・。
そんなわけで、今回からあんまりロマンを感じられない男、山口(26)が県内の夜景スポットを散策しつつ「必見の夜景スポットを探す」という企画をお送りします。
よっしゃ夜景撮影だ! ・・・あれちょっと待てよ
とはいえ、この企画をするにあたりある問題がありました。
それは、「編集部が夜景を撮ったことない」ということ。というか、そもそもmitecoを立ち上げるのにあたってはじめて一眼レフカメラなるものを手に持った僕ら。夜景には触れるタイミングがなかったんですから、当然、誰も撮れません・・・。
しかも、多分難しいし・・・。
ですが、企画が決まったからにはやらねばならん!
わからないんだったら聞くしかない!
はい。ということで、いま、浜松市内のとある喫茶店にて、夜景の撮り方を教えてくれる人を待っています。
しかし、寒い・・・・。夜景の企画って貧乏くじなんじゃないか・・・。
・・・。
あ、
きました。
青木さんです。
青木雄太
静岡県浜松市在住のプロのデザイナーさん。なにを隠そうmitecoのサイトデザインを一手に引き受けてくれた方。写真も上手、絵も上手、おまけに料理も上手とかなり腹ただしいスペックの持ち主。最近、猫を飼い始めてコンテンツ力を上げようともくろんでいる。ちなみに、山口、吉松の大学の先輩にあたる。
青木 | やっほー。とりあえずご飯食べながら設定を教えるよ。 |
山口 | ・・・。はい、よろしくお願いします。 |
夜景の撮影はそんな難しくない!
こちらが今回の夜景撮影で使用した機材です。
青木 | で、夜景の撮影なんだけれど、じつは設定と機材さえわかればそんなに難しいわけじゃない。 |
山口 | え、 そうなんですか!? ネットで調べたときは「撮影のなかでも難易度が高い!」ってどこでも・・・。 |
青木 | そう。iPhoneならね。 |
山口 | ・・・。 |
青木 | コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)でも同じなんだけど、まずめちゃめちゃ暗い場所での撮影だからシャッタースピードはすごく遅く設定しなければならない。でも、そうすると絶対に手ぶれしちゃう。
だから、三脚がまず必須。そのうえで、設定をマニュアルモードにしていじっていくから、一眼レフ(ミラーレス一眼でも可)でないと撮影が相当に難しくなってしまうというわけ。 |
山口 | なるほど。 |
青木 | 逆に言うと、それらの機材が揃っていて、設定さえ覚えちゃえばそんなに難しくないんだよ。 |
夜景撮影に持っていきたい機材
- 一眼レフ(ミラーレス一眼でもOK)
- 三脚
これらの機材は、写真好きの方であれば持っている方も多いはず。機材の意味では一眼レフを買うこと以外に大きな障害はなさそうです。
夜景撮影での設定
今回の撮影で使う基本の設定がこちら。ISOやシャッタースピードに注目です。
山口 | 機材の説明はわかりましたが、具体的にはどんな設定で撮るのでしょう? |
青木 | 夜景の撮影は基本的にマニュアルモードで覚えておくと、いろいろなシーンに対応しやすくなるからおすすめ。で、設定は絞り値(F値)を優先に、シャッタースピード、ISO、露出補正と決めていくんだけど・・・。
夜景撮影では、「暗いからといってISOを上げるのはご法度」と覚えておいて。 |
山口 | というと・・・? |
青木 | ISOを上げれば確かにシャッタースピードを短くしていけるんだけど、ノイズがすごく走りやすい。とくに空は真っ暗になるから、とんでもなく荒い写真になってしまう。
ということで、三脚を使ってシャッタースピードを気にしない、という方向にもっていくのが基本なんだ。 |
山口 | なるほど。 |
青木 | で、F値なんだけどこれは、開放ではなくちょっと絞るくらいにするのがおすすめ。これも開放すると少し画質が悪くなってしまうからで。遠くまできちんと撮る夜景では多少絞ったくらいがいいよ 。
F値でいうと、レンズにもよるけどF5.6~F8くらいになると思う。 |
青木さんの使用するカメラを上から撮っています。モードはマニュアル「M」、絞り値などはこちらからも確認できますね。
夜景のカメラ設定
- 撮影モードはマニュアルに
- 絞り値はF5.6~F8で「ちょっと絞る」
- ISOは上げない!
今回の夜景スポット「滝沢展望台」
さて、一通りの説明を受け終わった僕は、いよいよ実践へ。今回、選んだのは浜松屈指の夜景スポットという呼び声も高い「滝沢展望台」です。
浜松市街から、どんどんと北上していき、あたりは真っ暗になって、それでもまだまだ山を登ったところにあるロケーション。最後の道は結構急な坂なんですが、対向車が来てしまってもおよそすれ違うことは難しいので、運転には十分に注意してくださいね。
山口 | (仕事とはいえ、なんで青木さんと絶好のデートスポットに・・・) |
青木 | さ、さむい・・・。 |
夜景のベストシーズンは気温が下がり、空気が澄んでくる冬のシーズンです。また夜景を見られるのは、見晴らしがよく遮るものがない分、風も当たりやすい場所。野外での撮影は温かい恰好をしていくとよさそうです。
あと、撮影もよいですが、めちゃめちゃきれいなんで普通に恋人とかと来たほうがいいです。きっと絶景も3割増しできれいに見えるでしょう。間違っても野郎ふたりで、三脚とカメラを抱えてくるような場所じゃありません。
夜景撮影はただただ沈黙と執念の作業でした
さて、先ほど教わった通りにセッティングをしていきます。三脚の高さは、構図に特段のこだわりがなければカメラの操作がしやすい目線から肩くらいの高さに固定します。
青木 | 三脚は、できれば3つの足の長さを別々に調整できるタイプのやつがいいよ。ここは、きちんとタイルが敷かれて安定しているけれど、段差や坂のある場所での撮影も夜景では想定されるから。 |
山口 | なるほど。僕の三脚は別で調整可能なタイプですから安心ですね。 |
いよいよ撮影開始。と、唐突に
青木 | あ、シャッターはセルフタイマーを2秒以上に設定してね! |
山口 | え? |
青木 | いくら三脚に固定しても、シャッターボタンを押すときに手ぶれしちゃうでしょ。
で、このシャッターボタンを押すときの手ぶれはだいたい2秒くらいって言われているから、セルフタイマーでシャッターが開くまでの時間を変えるんだ。 |
山口 | な、なるほど。 |
ちなみに、夜景を取るときのシャッタースピードは前の画像にもある通り、15秒以上の露光を行っています。だから、一度構図を決めてシャッターボタンを押してからは無言で待ち続けなければなりません。
しかも、わずかな振動でも長い露光時間ではブレが発生するので、カメラの周りでは歩き回らないのが鉄則です。ひたすらじっと待つしかありません。
写真が撮れたら、すかさずモニターで確認。でも、対象が遠いのでなかなかピントが合いません。なので、またピントを調整したり、明るさの微妙な違いを出すために露出補正やシャッタースピードをいじったりして、撮影を繰り返します。これをふたりでやってる光景はなんともシュールです。
こんな感じで「バッチリ!」と思ってもよく見るとピントがずれてしまうということばっかりなんですよね・・・。
夜景での撮影のポイント
- 三脚は足が別々に調整できるタイプを選ぼう
- シャッターはセルフタイマーを2秒以上に設定しよう
- 撮影をしたらピントの確認をして満足いくまで続ける執念を持とう
いい写真が撮れたときの喜びはすごいぞ
というわけで、セッティングから1時間弱。20代の男性ふたりが、次々に訪れるカップルを尻目に黙々と撮影を続け、そのうちに煩悩が消え去り、無我の境地に達しようとしているとき。やっとこさ、「こ、これは・・・!」と思える写真が撮れました。
青木さんにも、「お、これはいい感じだね」と言われた写真。浜松のシンボルタワーであるアクトシティ(写真右)がきちんとわかるように撮るのには、かなりピント調整が難しい・・・!
ちなみに、同じような構図で青木さんが撮影したものが、記事の一番はじめにもあるこの写真。
んー。やっぱりなんだか雰囲気がいい。こればかりは知識というより経験とのことですから、これからたくさんの夜景を撮って僕ももっときれいな写真が撮れるように頑張ります! 最後にホワイトバランス(WB)についてなんですが、これは好みの分かれる部分。
やはり、青っぽさを出したほうが夜景っぽくなるのですが、この場合は電球を選ぶようにしましょう。逆に蛍光灯を選ぶと赤っぽい感じになって、工場夜景にはいいかもしれません!
こちらが同じ構図で撮影したWBを「蛍光灯」にしたもの。赤みが入ってこれはこれできれいですよ。
夜景撮影番外編
今回の青木さんによる夜景撮影講座では、いろいろなシチュエーションや構図についても一通り教えていただきました。そんななかでも印象的だったものを紹介します。
1. 望遠レンズを使った夜景
夜景は光を多く取り入れるために「広角レンズ」の使用が基本ですが、どうせシャッタースピードが長くなるという点は変わりません。
そこで、いっそ望遠レンズを使って夜景を撮ろうというのもOK。とくに、対象物をくっきりとズームして映せるのは望遠ならではの撮影です。
こちらが青木さん撮影の望遠レンズの夜景。
ただし、見てのとおりこれではどこから撮ったかまったくわかりません
その場で見た雰囲気を映したい、という方はあまりズームせずに広角レンズをチョイスするのがよさそうですね。
ちなみに、ズームで悩む方におすすめは50mmの焦点距離で撮ること(エントリーモデルに多いAPS-C機の場合は35mm)。この焦点距離は人の視野とだいたい同じなので、景色を説明するのにもピッタリです!
2.アーティスティックな雰囲気を出せるアーチ
撮影時には地面の振動でブレてしまわないように、シャッターを開いている間はじっと待つしかありません。が、このブレを逆手に取って、うまく写真に利用するのが「アーチ」をつける撮影です。
高速道路など、車のヘッドライトが映り込む構図で足を「どん!」と地面に打ち付けてブレを発生させます。
ロックバンドのPVとかでも出てきそうな、きれいな写真ができます! ただ、夜景としてはやっぱりどこで撮ったかがわかりづらいというのが難点です。
あと、いきなり地面を踏みつけるしぐさは、周りに人がいる場合はちょっと変な人だと思われるかもしれません。ハートが強い人におすすめの撮影方法といえます。
3.あ、三脚忘れた! という緊急時の撮影方法
説明したように、夜景撮影では三脚は必須のアイテムです。しかし、万が一三脚を忘れてしまったり、たまたま行った旅行先での夜景をどうしても撮影したい! と思ったりすることもあるかもしれません。
で、そういうときはもう、自分がいかにブレないかを考える必要があるとのこと。足を肩幅大に開いてカメラのストラップを腕に巻き付けます。さらに、柱などがあればそれにもたれかかるように・・・。
こんな感じです。ちょっとカッコイイと感じるのは僕だけでしょうか。恋人と夜景を見に来たときに「あ、ちょっと待って。この景色を撮影したいから」と言いながらこんな風な感じでやってみてください。何かしらの反応が得られるでしょう。
いかがでしたでしょうか。これから、僕は県内の夜景スポットを紹介していきますが、せっかくですので一眼レフやミラーレス一眼をお持ちの方は、ぜひ夜景にチャレンジしてみてください。また、「ここの夜景すごいぞ!」という情報をご存知の方はぜひ、編集部にご一報ください!