三種の神器と清水区草薙って関係あるの?
焼津神社は地元のひとに愛される神社でした
こんにちは、編集部の山口です。
「草薙(静岡市清水区)っていう地名は、三種の神器のひとつ、草薙剣と関係しているんじゃないか?」
という学生時代からの疑問を解決すべく、26歳になった僕は古事記を読み、
⇒三種の神器と清水区草薙って関係あるの? 調べたらいろいろワケがわからなくなった件
しかし、これだけでは全然わからなかったので、実際に現地に行ってみました。
⇒三種の神器と静岡市草薙って関係あるの? 草薙神社に行って感じた伝説の息づく気配
ここまでの僕の足取りについては、これらの記事を読んでもらえれば大方はわかるはずです。
調べていくうちに出てきたもうひとつの謎
もともとは、草薙という地名と神話の関係を突き止めるために調査を始めましたが、その過程でもうひとつの疑問が沸いてきました。「草薙と焼津、本当はどっちが伝説の地なの?」というものです。
ヤマトタケル伝説には、「野原で火を放たれたヤマトタケルは、剣で草を薙ぎ、火打石で向火を起こして難を逃れた。そしてこの悪企みを図った国造(その地方を収めていた偉い人)を斬り、その死体を焼いたために、その地は「焼津」と呼ばれるようになった」と明記されています。
つまり、同じ伝説にあやかって地名が付いた場所が2か所、さらにそれぞれが伝説に由来した神社を持つ、というなんとも奇妙な感じになっていたのです・・・。
ちなみに草薙神社と焼津神社は、東名高速を経由しても42分(25.4km)もかかるほど離れています。
日本地図から見れば微々たる距離なのかもしれませんが、いくらヤマトタケルでもこれだけの広大な土地を、火打石と剣だけで焼け野原にしたとは考えづらいもの。
仮に事実であるとすれば、草薙剣(現在は名古屋市熱田神宮に安置)はちょっと人類が持つには危なすぎる力だと言わざるを得ません。
焼津神社に行ってみた
で、例によって真相を探るために、焼津神社へ行くことにしました。
草薙神社の件でもそうでしたが、いくら考えても仕方ありません。「百聞は一見に如かず」とは昔からよく言われているものです。
そもそも、mitecoの事務所は下川原なので、草薙神社よりも焼津神社に行くほうが近い。
ただし、せっかくなので編集長に同行を頼みましたが断られました。こんな個人的な疑問に固執して、他の記事を書こうともしない僕に愛想をつかしたんでしょうか・・・。あっちは、ビールを飲んだり、女の子と話したりとなかなか楽しそうですがね・・・。
焼津神社の駐車場にある看板。焼津の中心部にも近く、“地元の神社”という感じがします。
さて草薙神社とは違い、焼津神社は市街地にある神社。その分「秘境感」のようなものはなく、地元の人がよく利用しているような雰囲気があります。
実際に、焼津神社でのお祭りは地元の人にとってお馴染みのもので、毎年大盛り上がりになるのだとか。
また、「神ころがし」という幼い子の健康・成長を祈願した儀式もあるらしいです。焼津出身であれば経験したことがある方もいるのではないのでしょうか?
焼津神社の大鳥居。立派な佇まいです。
こっちにもいたあの祭神
参道を少し進むとさっそく現れました。僕にとっては2度目ということになります、ヤマトタケルさんです。
焼津神社の祭神は、草薙神社と同じくヤマトタケル。ということで、こちらにも石像が建てられていました。草薙神社の石像と比べると落ち着いた顔をしていますが、もしかすると一難去ったあとをイメージして作られたものなのでしょうか?
・・・石像の表情から、草薙神社のほうが伝説の内容に近いような気がしてきました。
出発する前から少し思っていたのですが、焼津といえば港町の印象が強い町です。そのため、「野原で火攻めに遭う」という状況がなかなかイメージできません。
とはいえ、境内にはうっそうと木が生えていることもあり、この地でもおかしくはないのかな、とも思います。まだ草薙と焼津、どちらが伝説の地なのかは判断しづらいです。
市民に愛される神社
ヤマトタケル像をひとしきり眺めたあとは、社殿やいろいろな建物を見てみることに。すると、ここは思った以上にさまざま場面で、市民から利用されている神社だということがわかってきました。
たとえば、この奥にある絵馬。草薙神社では見かけなかった光景で、こんなにもたくさんの数がかけられています。
で、ヤマトタケルになんの願掛けかと思いきや、菅原道真※に宛てたものでした。
※菅原道真:平安時代の貴族で学問に秀でたことで有名な方。その功績もあって現在は北野天満宮で奉られています。
石碑には菅原道真の短歌が刻まれています。
じつは、これは焼津神社の中にある「焼津天満宮」。菅原道真といえば京都にある北野天満宮が知られていますが、全国各地にはこのように同氏をお祀りする天満宮があります。
ということなので、「絵馬は受験に関するものなのかな?」と見てみると
・インターハイ優勝!★全国制覇★
・安産!
・一攫千金
※プライバシー保護の観点から拡大した写真は掲載できません。
と学問の神様では一筋縄で叶えられそうにない願いがびっしり!
ここが天満宮と認知していない方もいるかもしれません。
しかし、全国制覇!のようなものは、英雄ヤマトタケルを奉る神社だけに、何かしらのご利益は得られそうですね。
なにより、絵馬の多さは地元のひとが通っている証拠だと感じます。
「なにか願い事があれば焼津神社に行こう」と考えているからこそ、これだけ多くの絵馬がかけられるのではないでしょうか?
焼津神社の社殿は歴史もすごい!
天満宮と絵馬を見たあとは、そのまま奥に進んで拝殿(参拝者がお参りするところです)でお参りしました。
こうして見てみると、市の名前を冠するだけあって荘厳な造りです。しかし、草薙神社のようにヤマトタケルを彷彿させるような扁額(神社にある横に長い額)は掲げられていません。
拝殿は確かに荘厳な佇まいですが、まだまだ新しさを感じる建物でした。
また神社の撮影をしながら、あちこちに立てられている焼津神社の成り立ちや祭神についての立て札を見ていましたが、なによりもびっくりしたのが創建は409年ということ。なんとここは、1600年以上も愛されている神社だったんです。
古くから今川氏や徳川氏といった同地の領主に大切にされてきており、伝説に始まり、史実の人物までつながる、というなんとも深い歴史を持っているようでした。
草薙神社も1800年前にはあったと「由緒」に書かれていたこともあるので、静岡はかなり古い時代から人が住み、また日本の成り立ちにも関わっていたのかもしれません。そう考えると、歴史ある地元により誇りが持てるような気がします。
ちなみに、社務所では巫女さんがお守りを売ったり、御祈祷の受付をしてくれたりします。
縁日には屋台が出ます。多くの人でにぎわうようですから、地元の活気に触れたいという方は足を運ぶのもいいかもしれません。
・・・しかし、肝心の「草薙と焼津、どっちが本当の伝説の地なのか」という疑問に対して、答えにつながるようなものは見つかりませんでした。
強いていえば、ヤマトタケルの石像の表情とそれぞれの地域の土地柄が、なにかのヒントになるかもしれません。
せっかくここまで調べたので、最後にひとつの仮説を立ててみようかと考えています。
学生時代の疑問から始まった調査も次で最後。まとめ記事に続きます。