渓谷美が壮大な湖で爽快のアクティビティを!
感動に出会う大井川鐵道沿線の旅【9話目】
大井川鐵道沿線の楽しいモノ・コトを紹介する連載。このたびの舞台は井川線ひらんだ駅です。
ひらんだ駅に入るトロッコ列車。
ひらんだ駅の目の前には、長島ダムの建造によって形成された美しい人造湖・接岨湖(せっそこ)が広がっています。接岨湖は過去に国体のカヌー競技でも使用されました。
その経緯から、接岨湖はカヌー競技場として整備され、いまでも多くのカヌーイストが訪れる場所になりました。嬉しいことに、私たち一般人もココでカヌー体験できるプログラムがあるのです。
多彩なアクティビティを提供!「エコティかわね」
カヌー体験の申し込み窓口は、「エコティかわね」という一般社団法人になります(以下、エコティ)。
活動イメージ画像。 画像提供:エコティかわね
エコティは平成20年、町民有志で設立された「川根本町エコツーリズムネットワーク」が母体。そのころから、川根本町の豊かな自然環境を活かした各種体験プログラムを提供してきました。たとえばトレッキングやコケ玉づくり、田植え体験などなど……。なかでも大人気なのがカヌー体験です。
こちらカヌー体験のガイド、芦沢哲哉さん。エコティにおける活動のかたわら、全国に展開している「asobi基地※」のアウトドア部活動に携わるなど、フリーランスで精力的にアウトドアの魅力を発信してきました。
芦沢さんからパドルの漕ぎ方などのレクチャーを受け、遊泳スタート! ……と、ここで念のため、カヌーと“カヤック”の違いについて説明します。
厳密に記述すれば、ココで体験するのはカヤックのほう。わかりやすい違いはパドルの形状で、水を掻くためのブレードがカヌーの場合は片端、カヤックの場合は両端に付いているのです。
ダブルブレードパドルというもので、これによりパドルを都度持ち替えなくても漕げるようになっています。カヌーの1種ではありますが、なかでも初心者向けの仕組み。湖なら流れも穏やかなので、転覆というケースも滅多にありません。
……とはいえ、念のためライフジャケットは装着し、いざ出航です。
※asobi基地:大人も子供も平等に、みんなで理想の子育て環境をつくるためのプラットフォーム。詳細は公式ホームページをぜひ。
自然の一部になったよう…最高に気持ちいい!
芦沢さんにデッキのお尻を押してもらい、おそるおそる水に浮かびはじめます。おお、思ったより安定している。よおし漕ぐぞ。
芦沢 |
パドルのブレードを、水面に対して垂直にあててください。垂直でないと、うまく漕げませんから。 |
遊泳前のレクチャーで聞いていたにも関わらず、さっそくバチャバチャとやってしまっていた私。ああ、カメラが……。
芦沢 |
それと右から左、左から右へと漕ぎ手を換えるとき、右手首を返すといいですよ。意識しなくても、手首を返せば勝手に垂直になります。 |
Takashi |
おお、なるほど。 |
2人乗りや3人乗りであれば漕ぎ手を揃えないとなりませんが、今回は私1人ということもあり、すぐに慣れました。あたりの景色を眺める心の余裕ができてくると、これがまた気持ちいい。
Takashi |
これなら、お年寄りやお子さんでも体験できそうですね。 |
芦沢 |
そうですね。先日は78歳のおばあさんも体験されましたよ。お子さんももちろんOK。 |
Takashi |
カヤック体験は、年間どれくらの方がいらっしゃいますか? |
芦沢 |
ざっと300人ほどかなあ。新緑や夏休み、紅葉のシーズンはとくに人気で。いまではいろんなオプションをつけて遊んでいますね。 |
Takashi |
というと、たとえばどんな? |
芦沢 |
いまから向こうの沢へ上陸しますが、そこの浅瀬でプカプカ浮きながら涼んだり、探検ごっこしたり、ハンモックでくつろいだり。基本的にはレクチャーさえ済ませたら、なるべく自由に過ごしてもらおうという考えですね。 |
体験にきた子どもたちが水遊びをしている様子。 画像提供:エコティかわね
Takashi |
しまった……水着を用意してくるんだった。夏はたしかに気持ちよさそう! |
のんびりと漕いで10分ほどで沢へ到着。エコティではこの場所を「ウリ島」と呼んでいるそうです。韓国語で「みんなの、私たちの」という意味。
ドローン撮影によりウリ島を俯瞰。
プライベートキャンプ場としても使えそうなウリ島。徒歩や車では来られないので、1種の離島という風情です。ひと汗かいたあとの空気もおいしい。
ウリ島の森に入って宝さがしやハンモック体験も。 画像提供:エコティかわね
ウリ島よりも少し距離のあるところにもうひとつ、ユウズク沢という上陸可能な場所があります。ウリ島か安倍沢か。初回体験者はこのどちらかまで行きます。2回目以降は……じつはあの秘境駅まで行けるのだとか。
唯一無二の桃源郷ツアー!
芦沢 |
体験料金が4,500円で、そこから1,000円増しにはなってしまうのですが、経験者向けの湖上駅下までのツアーもあります。 |
Takashi |
おお…そうか、接岨湖って向こうまでつながっているんだった! |
奥大井湖上駅のあるレインボーブリッジ下まで行ける。 画像提供:エコティかわね
Takashi |
いつも上から撮影している湖上駅とレインボーブリッジ……。たしかに下から眺められる機会は、これっきゃないですね! |
芦沢 |
ですね。紅葉スポットなので秋も最高ですよ。 |
ユウズク沢周辺も紅葉が素晴らしい。 画像提供:エコティかわね
あの絶景秘境駅を下から眺められるカヤックツアー。紅葉シーズンともなればあたり一面の紅に黄色……。その光景が目に浮かぶようです。水上から眺める渓谷美と赤い橋のコントラストはもはや、この世の桃源郷ではないでしょうか。
紅葉に染まるレインボーブリッジを上空から撮影したもの(撮影2016年秋)。
芦沢 |
晴れの日もいいんだけど、じつは雨の日がこれまた、素敵なんですよ。霧がかかった渓谷が神秘的で。だから雨天でも体験は受け入れています。 |
最後に、井川線をゆくトロッコ列車に手を振って、ウリ島ともお別れ。
夏休みということもあり、トロッコから私たちを呼ぶ子どもたちの声がこだましました。
奥大井最高。カヤック最高です!