静岡県産の変わり種かき氷「てんじくや」
看板メニューは「ゆで落花生かき氷」!?
かき氷を愛してやまない「ゴーラー」より先日、とってもおいしそうなかき氷の紹介がありましたね。
私も負けじと行ってきました! 店の所在地はまた富士宮なのですが、こちらは文政元年(1818)創業の老舗氷屋さんです。
天竺屋の7代目、渡辺浩正さん。
「渡辺冷蔵」として創業し、「天竺屋」を屋号とする「食酒甘味茶屋 てんじくや」。富士宮本宮浅間大社からほど近くにあります。純度の高い氷「純氷」を使っているとのことですが、老舗の氷店が手掛けるかき氷とは果たして、どんなものなのか……?
時間をかけてじっくり氷結! 透明度の高い「純氷」
純氷、というのをご存じでしょうか。一般家庭において、氷は-25℃くらいの製氷機を使って急速に生成させますが、氷屋さんが作る“本物の氷”は、それとは異なります。
渡辺冷蔵が純氷を保存する部屋を見せていただきました。
氷屋さんで製造されている純氷とは、水道水に含まれている不純物を取り除きながら、純粋な部分だけを集め、じっくりと時間をかけて生成したもの。
渡辺冷蔵では純氷を仕入れ、アイス缶を-2℃程度の製氷室に保存して凍らせています。また同氷の加工販売もおこなっているとのこと。
渡辺 |
一般の氷は不純物が混じっているため、綺麗な結晶ができません。加えて、余分な匂いや味が残る。一般家庭ではカルキの影響も受けますし、透明度も低く、白く濁ります。仕入れている純氷は、そういった問題を取り除く作業に時間と手間をかけているものを使っていますね。 |
Takashi |
たしかに、この氷は隅々まで透き通っていて、見た目の違いもはっきりしていますね。余分な匂いや味が含まれていると、それを使う飲料や食品の味覚にも関わってきそう。 |
渡辺 |
だから、たとえばバーなどでこだわっているところは、純氷を使っています。バーテンダーが丸い氷を砕く姿を見たことがあるでしょう。お酒の味だけでなく見た目の美しさにも影響しますし、それに純氷は溶けにくいという性質もあるんですよ。 |
Takashi |
バーを選ぶときの基準のひとつにもなりそうです。かき氷でいうなら、シロップの味にも影響しますよね。食感なども違うのでしょうか。 |
渡辺 |
かき氷の氷の食感は削り方にもよるのですが、一般の氷よりもふわふわ感を演出しやすいです。削りを薄くすればするほどふわふわになりますね。まずはぜひ試してみてください。 |
……と、いうわけでいよいよ、保存室に隣接する甘味茶屋へ。
看板メニューは変わり種! 絶品「ゆで落花生かき氷」
居酒屋と渡辺冷蔵のあいだに挟まれて敷設されている茶屋スペース。茶屋スペースでは5〜9月にかけて、居酒屋では通年でかき氷を提供しています。
かわいらしい手描きメニュー。種類も豊富。
シロップにもこだわっていて、ほとんどが手づくり。静岡県産のフルーツを使った生シロップなど、地産地消も意識されています。同じく地産地消にこだわった居酒屋のほうの店内には、とてもレトロなかき氷機がありました。
かき氷機の隣にあるのは昔使われていた、電気を使わない冷蔵庫。中に氷を敷き詰めて冷やす。
ということでまずは、こちらから試食。
静岡みかんと静岡いちごのハーフ&ハーフ。氷にもシロップにもこだわったかき氷は、やはりほかとは一線を画します。透明度の高い氷はふわふわすぎず、ある程度、シャリシャリとした食感も残している感じ。生の果実を丁寧にしぼったシロップの甘みと酸みが活きています。
そしてもう1品。これこそ筆者が一番気になっていたものです!
その名も「ゆで落花生かき氷(黒蜜がけ)」。かき氷に落花生の組み合わせとは……。はじめて出会うシロモノです。
渡辺 |
落花生は富士宮の名産で、昔から地元で親しまれてきました。あえて茹でてみて、塩っけを演出したらどうかなと思って。黒蜜の甘さとのバランスを考えて作っています。 |
Takashi |
これは……クセはないけどクセになりそうな味ですね。マイルドで氷との相性もいい! |
渡辺 |
富士市で開催されている「富士のふもとの大博覧会(ふもと博)」では金賞をいただいて、好評を得ました。以来、ウチではこれが一番人気ですね。 |
富士、富士宮においては、唯一残っている氷屋がこの天竺屋です。その長い歴史を引き継ぎながら、居酒屋に甘味屋と、多彩な味覚を提供する渡辺さん。氷の真髄ともいえる純氷の価値を、この先も伝え続けてほしいと願います。