【プレゼン編】己を信じて最強の海鮮丼を目指せ!
K-1グランプリ2017 in焼津さかなセンター
K-1グランプリ。それは己の考える最強の海鮮丼を作る競技会です。
「仕入れ」「プレゼン」の2工程で進められる本グランプリ。参加者たちは前回、全国屈指の漁獲量を誇る静岡の魚市場「焼津さかなセンター」にて、最強の海鮮丼を作るために必要な食材を予算2,000円以内で仕入れました。
参加者はmiteco編集部の3名。左から山口拓巳、馬場葵、安藤悟です。
あらためまして、こんにちは。K-1グランプリ審査委員長の吉松です。
いま参加者たちはどんぶりを作ってプレゼンをするために、次の舞台となるmitecoオフィスに向かっている途中。この間に仕入れの様子を少し振り返っておきましょう。
店員 |
いまなら1パック500円だよ。予算はいくら? なに? 900円? わかったよ。2パックで900円にしてあげるよ。 |
馬場 |
あ、ほんとですか。でもふたつも・・・。 |
店員 |
はい、ふたつね! はいはい(袋に詰め始める)。 |
安藤 |
打線でいったら上位打線以外が欲しくて。たとえば、やっぱりバチマグロは4番じゃないですか。 |
店長 |
そうだね。バチマグロは代表で言うなら筒香だな。そんでこれが青木で――(赤エビを指しながら)。
じゃあ、わかったよ。4番に1,000円使えばいいじゃん。うちはほかを1,000円で出してあげるよ。 |
安藤 |
おお! ありがとうございます! お願いしてもいいでしょうか? |
山口 |
見てきた感じ、こちらにしか生しらすと生桜えびふたつで1,000円っていうのはないですね。 |
店員 |
そうかもしれないね。うちは頑張っているからね。ぜひ買って行ってよ。 |
山口 |
ぜひ買わせていただきます。最強の海鮮丼にさせていただきます。 |
このように一人ひとりの性格が出た仕入れ。それぞれのドラマがあって――。
おっと。
そうこうしているうちに、参加者がオフィスに到着したようです。前回の振り返りはここまでにして、K-1グランプリ2017の締めくくり、プレゼン編に参りましょうか。
※mitecoオフィスは4月頭に移転しています。記事中に登場するのは、本グランプリが開催された3月下旬時点のオフィスですのでご了承ください。
mitecoオフィスで海鮮丼の準備から
こちらが舞台となるmitecoオフィスです。すでに参加者は仕入れた食材を広げてやる気マンマンですね。一人ひとりの食材は以下の通りです。
馬場
「釜揚げしらす」「いくら1パック」「マグロのたたき2パック」
安藤
「ズワイガニ」「いくら」「ホタテ」「赤えび」「釜揚げしらす」「釜揚げ桜えび」「バチマグロ」
山口
「生しらす」「生桜えび」「かつお」
食材の数でいうと安藤がダントツ。それでも豪華さでいえば山口も負けていません。馬場は・・・そうですね。張り切っていきましょう。
プレゼンを控え、一人ひとり(?)丹精を込めて準備中です。馬場は切るものがなかったので暇そうでしたけど。ちなみに海鮮以外のご飯、大葉、わさびはK-1グランプリ審査委員会から支給されています。
命運を決めるプレゼンスタート!
お待たせいたしました。参加者たちの「最強の海鮮丼」が完成したようなので、K-1グランプリ2017のクライマックスとなる「プレゼン」のスタートです。プレゼンの順番は公平にじゃんけんで決めます。
じゃんけんの結果、勝利した山口はトップバッターを選択。続く安藤は2番手を選び、馬場がトリを務めることになりました。以下、会場の様子をそのままお届けします。
トップバッター:山口
山口 |
え~・・・。僕たち駿河湾からやってきました! |
馬場 |
なになに(笑) |
吉松 |
誰? |
安藤 |
丼目線なの? |
エントリーNo.1:静岡発、miteco丼 ~僕たち駿河湾からやってきました~
山口 |
こちら静岡発、miteco丼です。やはり今回は編集長が参加しないということで、僕がmitecoを語ってみようかと。その責任感のもとで作っています。 |
吉松 |
おお。頼もしい。※審査委員長はmiteco編集長も務めています。 |
山口 |
この丼の魅力はですね、全て駿河湾産の海産物を揃えています。しかも生桜えびと生しらすは、静岡県でしかほぼ食べられないもの。県外から見たら幻の食材ですよ。だから最強です。 |
駿河湾の特産がずらり。こう並ぶと神々しさすら感じられます。
安藤 |
熱がすごいな。 |
山口 |
そんなどんぶりを一般家庭でも食べられますよ、というPRも兼ねましてこの形にしました。また生しらすの白、生桜えびのピンク、そしてかつおの赤というグラデーションも考えています。 |
吉松 |
ほうほう。考えられていますね。シンプルながら凝ってる。 |
山口 |
ええ。静岡が詰まった最強丼でございますよ。以上、よろしくお願いします。 |
静岡発、miteco丼 ~僕たち駿河湾からやってきました~
左上に生桜えび、中央にカツオ、右上に生しらすを配置した静岡ならではのどんぶり。どんぶりのふちに生しらすが引っ付いているのは配慮不足? とはいっても、全体のバランスが整っているうえ、色使いもきれいで食欲をそそります。幻の食材というだけに値段が張りがちなところを予算内で抑えたのも素晴らしいですね。
(審査員長評)
2番手:安藤
安藤 |
本丼は侍ジャパン丼と名付けます。 |
吉松 |
だろうと思いました。 |
馬場 |
ずっと野球の話をしてましたよね。 |
山口 |
安藤監督か。 |
エントリーNo.2:侍ジャパン丼
安藤 |
ネーミングの由来はですね。野球をもとに値切りしたからです。最強の打線をコンセプトに多彩なメンツを揃えました。 |
吉松 |
たしかに多彩ですね。山口さんと葵ちゃんの2倍以上。 |
安藤 |
ええ。それらをグラデーションにして並べるのはもちろん、しらすや桜えびの薄い味から濃厚な赤えび、ズワイカニ、バチマグロ、いくら、ホタテと続くように配置しています。バランスよくお召し上がりいただけるかと。 |
クリーンナップを囲むに仕事をさせるための戦略が整っています。
山口 |
ん、いくらとホタテはどこですか? しかも7つだから打線組めていないですよね? |
吉松 |
急にヤジがとんできた。 |
安藤 |
いやいや、大葉とご飯がいるじゃないですか。それで9番まで埋まります。ただし、いくらとホタテはズワイガニと赤えびの下に隠れてしまいました。 |
吉松 |
あ~・・・。それはちょっと残念ですね。 |
安藤 |
丼が小さかったというか、思いのほか買えてしまったというか。そこが盲点でしたね。 |
侍ジャパン丼
グランプリ期間中、侍ジャパンは順調に勝ち進んでいた時期でした。しかし、結果としてベスト4に終わってしまいましたね。まあ、それは置いておいて、これだけの選手を揃えたことにあっぱれ。とくに赤えび、バチマグロ、ズワイガニのクリーンナップは強力です。しかしホタテといくらが隠れてしまったのはやはり残念。ズワイガニにはご飯粒もついています。
(審査員長評)
トリ:馬場
馬場 |
・・・。 |
吉松 |
なんだこれ・・・。富士山か・・・? |
馬場 |
お、ご名答。名付けて、ふ、ふじさん・・・。 |
安藤 |
??? |
馬場 |
富士山と僕たちの希望丼です。 |
エントリーNo.3:富士山と僕たちの希望丼
山口 |
ひっひっひ(笑) |
安藤 |
ばか笑える(笑) |
吉松 |
間違いなく一番面白い(笑) |
馬場 |
・・・えーとですね。マグロのたたきで富士山を表現しておりまして、しらすは降り積もった雪を。そしてこちら、裾野に広がるいくらがですね、静岡県に並ぶ家の明かりですとか。そういうきらめきなんですね。 |
吉松 |
おおお~! |
馬場 |
その明かり一つひとつにみなさんの暮らしがあって、その人たち一人ひとりが静岡の未来を担っていく、という。 |
みなさんの暮らしと静岡の未来が詰まった明かりたち。
安藤 |
っぷ(笑) |
吉松 |
はっはっは(笑) |
馬場 |
いや、笑うところじゃ・・・。まあ、そういうことで富士山と僕たちの希望丼を作りました。 |
吉松 |
失礼しました。言っていることは素晴らしいんだけどね。街頭演説かと思った。 |
馬場 |
別にふざけているわけではないんです。 |
吉松 |
ごめんて。 |
山口 |
でも、なんで宝永山がないんですか? 富士山への愛はないんですか? |
安藤 |
めんどくせえ(笑) |
富士山と僕たちの希望丼
静岡おじさんが出てきたのでこの辺で。仕入れに失敗していたのでどうなることかと思っていましたが、不安をかき消すようなびっくりアイデア丼。マグロのたたきで富士山を作ることは、始めから考えて動いていたそうです(ただし2パックは想定外)。コンセプチュアルで見た目も華やかですね。でも食欲が一切わかないのは・・・なぜでしょうか。
(審査員長評)
最強の海鮮丼に選ばれるのはどれだ・・・!?
参加者の最強の海鮮丼が出揃い、それぞれのプレゼンタイムも終了しました。図らずも三者三様の海鮮丼となったので、個性がぶつかり合う名勝負になっている気がします。
それでは最後に、いままでベールに包まれてきた「審査項目」の発表、そして審査項目を踏まえた「結果発表」を行います。
隠され続けた審査項目
吉松 |
みなさん、まずはお疲れさまです。仕入れ、海鮮丼、プレゼンと、どれも私の予想を上回る内容で驚きを隠せません。見事でした。 |
山口 |
ありがとうございます。 |
吉松 |
それでは最優秀賞を決めるために、まずは審査項目を発表させていただきます。 |
吉松 |
ひとつは「具材の数」です。私、仕入れの前に「焼津さかなセンターはコミュニケーションを楽しむところ」と申し上げました。普通のスーパーとは違う、魚市場ならではの文化があります。具体的にいえば、値切りをはじめとした交渉の余地がある場所なんですよ。 |
馬場 |
うわ~・・・。 |
安藤 |
やっぱりそういうことだったのか。 |
吉松 |
みなさん回ってみてわかったと思いますが、市場のお店のうち、はじめから海鮮丼1人前の食材を用意しているところはほぼありません。そして普通に買い物をすると、食材ひとつで予算ギリギリなんてこともザラだったはず。今回のK-1グランプリ、最強を目指すうえで市場での交渉は必須なんですよね。 |
安藤 |
なるほどねえ。 |
吉松 |
それを測るために、まず具材の数を審査項目に挙げさせていただきました。なお、仕入れた食材の質も考慮しますよ。 |
山口 |
よかった。安心した。終わったかと思った。 |
吉松 |
続きまして審査項目のふたつ目は「プレゼン力」、もうひとつは「彩り」とさせていただきます。前者は先ほどのプレゼンの説得力とかその辺で、後者は単純に海鮮丼の見た目によるところです。見た目がきれいでおいしそうかっていう。 |
馬場 |
急に雑になった。 |
山口 |
なにも考えていなかった説。 |
吉松 |
静粛に。ちなみに彩りに関しては、悟さん(安藤)が野球の話題で交渉したヨシケイ水産さんが「どんぶりの中で濃い色と淡い色でグラデーションを作ったほうがいい」と話していましたが、ここは大きなポイントになりますよ。 |
参加者 |
お。これはチャンスかも・・・? |
K-1グランプリ2017フィナーレ
吉松 |
それでは以上を踏まえまして、結果発表です。 |
――ダン、ダラダラダラダラダラララララララララララ(ドラムロール)
――ダラダラダラララララララララララ
――ダラダラダラララララララララララ
――ダンッ
吉松 |
最優秀賞は「静岡発、miteco丼 ~僕たち駿河湾からやってきました~」です! |
最優秀賞:静岡発、miteco丼 ~僕たち駿河湾からやってきました~
山口 |
おっっっしゃー! |
馬場 |
おわ~~~。やっぱり。ダメだった。 |
安藤 |
だー。負けたか。具材の数なら絶対に負けてなかったのに。 |
吉松 |
講評といきましょう。まず悟さんの具材の数は、参加者のなかでダントツの評価です。しかし海鮮丼にしたときに、2種類は下に隠れてしまった。そのせいで本来のポテンシャルを活かし切れていない印象です。またプレゼンでもその心境を吐露してしまったので、トータルで見て2位となりました。 |
安藤 |
次回に活かさせていただきます。 |
馬場 |
ってことは私が最下位・・・。 |
吉松 |
交渉は全敗、海鮮丼はアイデアこそよかったですが、食欲がまったくわかなかったので。あくまで海鮮丼ですからね。でもプレゼンは参加者のうち最高評価です。 |
山口 |
あれ、僕はなんで最優秀賞なんですか? |
吉松 |
全体的に減点対象となる箇所が少ないですよね。平均点が高い、隙がない。具材の数は3つながらも、難しいと思われたカツオを見事な交渉でゲットした。プレゼンも静岡への熱い想いを最後まで語っていましたし、海鮮丼のコンセプトとグラデーションもいいですね。いますぐ食べたい。 |
というわけで、K-1グランプリ2017in焼津さかなセンターの最優秀賞は、山口の「静岡発、miteco丼 ~僕たち駿河湾からやってきました~」になりました。おめでとうございます。「in 焼津さかなセンター」と名乗りながら、後半は「in mitecoオフィス」になったことをご容赦ください。
さてこれだけは伝えておきたいんですが、ご飯を詰めたどんぶりを持って、焼津さかなセンターを歩き回ることはしないようにお願いします。じつは仕入れ前に同センターの大家さんにこのような相談をしたところ、「食堂ではないので・・・。ほかのお客様にも迷惑になりますし・・・」と断られました。当たり前ですね。
それでは前編でもお伝えしましたが、そのうちA~Zまでのグランプリは全て制覇するらしいです。よろしくお願いします。次回作にご期待ください。さよなら、さよなら。
※海鮮丼は編集部でおいしくいただきました。