【仕入れ編】己を信じて最強の海鮮丼を目指せ!
K-1グランプリ2017 in焼津さかなセンター
静岡県は太平洋に面する、いわゆる海あり県。日本でもっとも深い湾の駿河湾も有し、海に関する話題は事欠かない。
なかでも県内各地にある漁港のおかげで、新鮮で豊富な魚介類が揃っているのはよく知られた話。
K-1グランプリは、そんな魚介類たちを自らのセンスで選び抜き、己を信じて最強の海鮮丼を目指す競技会である――。
こんにちは、K-1グランプリ審査委員長の吉松です。
いままでmitecoでは、「J-1グランプリ(除夜の鐘)」「B-1グランプリ」「P-1グランプリ(斬新パスタレシピ)」を追ってきたようですね。K-1グランプリはこれらの新章だといえるでしょう。将来的にはA~Zまでのグランプリを全て制覇する予定と聞いています。
さてK-1グランプリ2017は、以下のふたつの工程で進めます。
仕入れ:舞台は焼津市にある「焼津さかなセンター」。全国屈指の漁獲量を誇る焼津漁港で獲れた新鮮な魚介類をはじめ、地元ならではの土産物も並ぶ大規模な市場。ここで参加者には最強の海鮮丼を作るために必要な食材を、予算2,000円以内で仕入れてもらう。
プレゼン:舞台は静岡市にある「mitecoオフィス」。手に入れた食材をどんぶりとして仕上げ、「どこが最強なのか」をそれぞれアピールしていく。
以上を踏まえて、設ける審査項目は3つ。ただし参加者には審査直前まで、一切の審査項目を伝えません。みなさんもぜひ予想をしながらグランプリを見守ってください。
それではK-1グランプリ2017の開幕です。
※今回のK-1グランプリは2017年3月下旬に開催されました。
焼津さかなセンターにてルール説明
K-1グランプリ2017の参加者は、miteco編集部の3名。焼津さかなセンターの中央口に並んでもらいました。
左から山口拓巳、馬場葵、安藤悟です。
もう一度だけ繰り返しますが、参加者には審査項目を審査直前まで伝えません。この場で伝えているのはこれだけです。
吉松 |
みなさん、よくお集まりいただきました。ここ焼津さかなセンターでは、最強の海鮮丼を作るために必要な食材を予算2,000円以内で仕入れていただきます。なお、食材の制限は一切ありません。仕入れたあとはオフィスに戻ってどんぶりを作り、プレゼンをするという流れです。 |
安藤 |
審査項目は? |
吉松 |
審査直前で発表します。 |
馬場 |
えええ・・・。どうしよう。 |
山口 |
焼津漁港で獲れた魚介類のみとか、静岡県産のみとか、仕入れる海鮮に関するルールもなし? |
吉松 |
ありません。あなたの考える最強の海鮮丼をとにかく目指してください。ただし、ひとつだけアドバイスがあります。 |
安藤 |
アドバイス? |
吉松 |
焼津さかなセンターはショッピングだけでなく、コミュニケーションも楽しむところです。歩いていると普通にお店の人から声をかけられます。それだけに、交渉次第ではもしかするともしかするかもしれません。 |
安藤 |
ほお・・・。 |
最強の海鮮丼を目指して仕入れスタート
仕入れはひとりずつ順番にやっていきます。審査委員長からひとつ言っておくと、ここが勝負の肝です。
参加者はいったいどんな食材をチョイスするのか、そして店員さんとうまくコミュニケーションが取れるのか、その様子を見ていきましょう。ちなみに撮影要員として馬場には山口が、安藤と山口には吉松が同行してお届けします。
1番手:馬場
参加者のうち最年少でかつ、唯一の女性となる馬場葵。若さと紅一点の感性に期待は高まります。
山口 |
何種類ぐらい乗せるつもりなの? |
馬場 |
4種類! |
山口 |
ひとつあたり500円くらいを目指していくと。 |
馬場 |
そうですね。でも並んでいる値段を見る感じ、うまくやらないと1種類で終わりそう・・・。 |
店員 |
しらすいかがですか! |
馬場 |
しらす~! いくらですか? |
店員 |
2パックで500円。 |
馬場 |
え、安い。1パックでは? |
店員 |
ひとつ? ひとつならイワシの煮たやつを併せて500円にするよ。 |
馬場 |
イワシの煮たやつかあ。でも今日は海鮮丼を~(企画趣旨の説明)。 |
店員 |
じゃあ、いらないね。はい、しらす。300円ね。 |
山口 |
・・・なんかパッて買わされた感じするけど、しらすで大丈夫だったの? |
馬場 |
そうですね・・・。大丈夫です。 |
山口 |
そう? じゃあ、次はなにを買うの? |
馬場 |
マグロのたたきとかつおといくらです。 |
山口 |
お、そこまで決まってるんだ。でも予算内でいけるか? |
――歩き回っただけの数十分
馬場 |
もうほとんど見ました。もうなに買ったらいいかわかんない。 |
山口 |
(笑)迷いすぎじゃない? |
馬場 |
やっぱりお魚は1,000円出さないと買えないみたいで・・・。 |
山口 |
意外とするねえ。2,000円の予算ってかなり難しいかもね。これは。 |
馬場 |
うわ~どうしよう。・・・もう終わりだ。しらす丼だ。 |
店員 |
いくら2パック1,500円! |
馬場 |
わ!! 1パックだとおいくらですか? |
店員 |
800円だねえ。 |
馬場 |
1,000円札と700円があるから、100円値切りたい・・・。 |
山口 |
チャンスですよ。 |
馬場 |
このいくらってどんぶりに乗せてもおいしいですよね。 |
店員 |
おいしいですよ~。新鮮でプリプリだからね。買ってって! |
馬場 |
買おうかな、って思ってます。 |
店員 |
はい。800円ね。ありがとうございます。 |
馬場 |
あ、こちらこそありがとうございます。 |
山口 |
押しよわっ・・・。 |
馬場 |
残り900円。最悪、かつおはなくてもよくて・・・。マグロのたたきに行きましょう。 |
山口 |
わかりました。 |
※道中で2,800円のかつおを見つけて交渉しましたが、当然のごとく失敗に終わりました。
馬場 |
見つけた。マグロのたたきだ~! ほしいです。 |
店員 |
いまなら1パック500円だよ。予算はいくら? なに? 900円? わかったよ。2パックで900円にしてあげるよ。 |
馬場 |
あ、ほんとですか。でもふたつも・・・。 |
店員 |
はい、ふたつね! はいはい(袋に詰め始める)。 |
馬場 |
はい。ありがとうございます。 |
山口 |
また押し切られた~(笑) |
店員 |
あ、ラップで包んでいいなら800円にするからね。 |
馬場 |
時間もそこそこなので以上です。 |
山口 |
さすがに笑った。なんか買った食材、ぜんぶ平べったくない? |
馬場 |
うふふ。それはどうでしょうか? 秘策があるんですよ。 |
1番手:馬場
持ち前の気の弱さによって店員に押し切られまくった結果に。でも秘策とはいったい・・・? ゲットした食材は「釜揚げしらす(300円)」「いくら1パック(800円)」「マグロのたたき2パック(800円)」の3種類。計1,900円でフィニッシュです。
2番手:安藤
2番手はmiteco編集部の一員でかつ、運営会社「株式会社エストリンクス」の代表取締役を務める安藤悟。審査委員長の「コミュニケーションを楽しむ」という言葉になにかを汲み取った様子ですが・・・?
吉松 |
それでは参りましょうか。 |
安藤 |
なにかヒントくれない? |
吉松 |
いまの僕はただの付き添いです。 |
安藤 |
つれないねえ。 |
安藤 |
あの、いま最強の海鮮丼を作るために、食材探しをしているんですけども。ただね、予算は2,000円以内なんですよ。 |
店員 |
なんか面白そうなことやってますね。でも予算が厳しいなあ。 |
安藤 |
店員さんが思う最強の海鮮丼ってなんですか? |
店員 |
えーとね、ちょっと待ってね。それなら参考になる写真がありますよ。 |
店員 |
これ。どんぶりの中で濃い色と淡い色を使い分けて、グラデーションを作るんですよ。そうなるとマグロは絶対だし、赤えびやホタテ、いくらもほしいところかな。贅沢するなら生しらすもいいと思う。 |
安藤 |
は~。なるほど。でもそれだけ具材を揃えようとしたら、小売りで買うしかないですよね。 |
店員 |
そうですね。まあ、まとめて売っているところが多いから、1人前となると要相談ですよね。 |
安藤 |
そうか~。わかりました。店員さん、お名前は? |
さち |
さちです。 |
安藤 |
さちさんね。いいアドバイスをもらえました。ちょっと回ってからまた来ます。 |
吉松 |
わお。さすがですね。情報集めから始めましたか。 |
安藤 |
まあまあ。1人前だと小売りしてもらわなきゃダメってことね。これは交渉次第なところあるね。 |
吉松 |
そういうことですね。 |
安藤 |
あのさ、俺は打線が組みたいんだよね。 |
吉松 |
どういうことですか? |
安藤 |
4番ファースト、タラバガニ。近鉄のノリみたいな感じで。 |
吉松 |
たとえが古い。 |
安藤 |
だからまずは4番から探さないとね。チームの主軸をね。 |
――ぐるっと1周したのち最初のお店へ
安藤 |
こんにちは。戻ってきました。 |
さち |
あら、いらっしゃい。ありがとうございます。 |
安藤 |
チームの4番打者を探してきたんですけど、バチマグロとかいいらしいですね。 |
さち |
4番打者? ・・・まあ、バチね。かなりいいけど少し高いかな。うちにもあるけど500gのまとめ売りしかないです。 |
安藤 |
そうなんですか。残念。ちなみに赤えびとかホタテとかはあります? |
さち |
ありますよ。でもこれもまとめて売ってるからなあ。ちょっと待っててください。 |
店の奥から店長登場。
店長 |
あのさ、君たちは何人で食べるのよ? |
安藤 |
えーとですね・・・(趣旨説明)。 |
店長 |
なるほどねえ。 |
安藤 |
打線でいったら上位打線以外がほしくて。たとえば、やっぱりバチマグロは4番じゃないですか。 |
店長 |
そうだね。バチマグロは代表で言うなら筒香だな。そんでこれが青木で――(赤えびを指しながら)。
じゃあ、わかったよ。4番に1,000円使えばいいじゃん。うちはほかを1,000円で出してあげるよ。 |
安藤 |
おお! ありがとうございます! お願いしてもいいでしょうか? |
吉松 |
(すっげえ) |
安藤 |
お店の名前はバッチリ宣伝しておきますね。 |
店長 |
(笑)お願いするよ。 |
気前がよすぎるのは、「ヨシケイ水産(吉恵水産)」さんです。どうぞよろしくお願いします。
このあと4番となるバチマグロは、ほかの店で交渉をしてきちんと手に入れました。1パックで定価1,700円のところを、1人前に切り分けてもらってほぼ半額ですって。
2番手:安藤
野球で例え続けたのはよくわかりませんが、さすがの交渉術で素晴らしい成果を上げました。ゲットした食材は「ズワイガニ」「いくら」「ホタテ」「赤えび」「釜揚げしらす」「釜揚げ桜えび」「バチマグロ(800円)」の7種類。計1,800円でフィニッシュです。※バチマグロ以外は併せて1,000円。
3番手:山口
ラストは生粋の静岡っ子、山口拓巳。並々ならぬ静岡愛を持っていることで知られていますが、どんな想いを持って食材を仕入れるのか・・・。
吉松 |
行きましょうか。 |
山口 |
悟さんも葵ちゃんも見てきたけど、悟さんはずるいよね。葵ちゃんなんて押し切られて買わされてたのに。 |
吉松 |
はっはっは(笑)悟さんはかなり粘って交渉してましたね。 |
山口 |
まあ、僕も頑張ります。 |
店員 |
お兄さん、これ1,000円でいいよ~。 |
山口 |
これなんですか? 見たことないですね。 |
店員 |
まぐろ生ハムっていってね。うちのイチオシなんだよ。 |
山口 |
でもな~。じつはいまですね――(趣旨説明)。 |
店員 |
へ~そうなの。じゃあ、ちょっと合わないかもね。海鮮丼ならいくらかねえ。 |
山口 |
・・・でもいくらなんか王道すぎて、僕つまんないって思うんですよ。 |
吉松 |
うお~言った。 |
店員 |
お兄さん言うねえ。いいよいいよ。じゃあ、生桜えびとか生しらすとかどう? パックだけど。 |
山口 |
生ですか! 最高ですね。パックだとちょっと多いから・・・1人前に分けることはできますか? |
店員 |
それはちょっとできないねえ。 |
吉松 |
残念でしたね。 |
山口 |
そうですね。・・・でも思ったんですけど、生しらすと生桜えびは県外じゃ食べられないわけですよ。 |
吉松 |
そうですね。 |
山口 |
なのにふたりは買っていないと。 |
吉松 |
ええ。 |
山口 |
静岡を舐めているんじゃないでしょうか。 |
――ひと通り回ったのち「平田商店」へ
山口 |
見てきた感じ、こちらにしか生しらすと生桜えび1パックずつで1,000円っていうのはないですね。 |
店員 |
そうかもしれないね。うちは頑張っているからね。ぜひ買って行ってよ。 |
山口 |
ぜひ買わせていただきます。最強の海鮮丼にさせていただきます。 |
吉松 |
(生しらすに生桜えびってめっちゃ王道なのでは?) |
山口 |
よっしゃ。順調。残り1,000円でかつおを仕入れたいんですよね。 |
吉松 |
お、かつおですか。あらゆる魚のなかでもっとも好きです。 |
山口 |
そうでしょうとも。知ってますよ。しかも静岡はかつおの漁獲量で日本一。焼津漁港は冷凍かつおの水揚げ量が日本一※。押えないわけにはいかないでしょう。 |
吉松 |
静岡魂・・・。 |
※冗談ではなくて本当のことです。静岡県公式ホームページ「かつおの漁獲量、生産額日本一」をご参照ください。
――かつおを求めて「マル信」へ
山口 |
こんにちは。次は僕の番になったんですけど・・・。
※馬場が交渉失敗したお店です。 |
店員 |
頑張ってるね(笑) |
山口 |
もう1,000円しかなくて。でもかつおがどうしてもほしくて。・・・なんとか1,000円分で切ってもらえないですかね? |
店員 |
さっきも言ったように難しいんだけど・・・。わかった。店長に聞いてくるからちょっと待ってね。
※繰り返しになりますが、こちらのかつおは1パック2,800円で売られています。 |
あれ。なんと山口、愛想のよさ(?)で馬場が失敗したかつおをゲットしました。「生しらす、生桜えび、かつおの並びって王道すぎない?」という疑問は、この際不問とします。
3番手:山口
難攻不落かと思われたかつおをファインプレーで射止めました。ゲットした食材は「生しらす(500円)」「生桜えび(500円)」「かつお(1,000円)」の3種類。計2,000円でフィニッシュです。
参加者全員、仕入れ終わりました!
一人ひとりの仕入れにドラマがありましたね。ここまで魅せてくれるとは予想以上。審査委員長は驚きです。まとめとしてそれぞれが仕入れた食材を見てみましょう。
1番手:馬場
「釜揚げしらす(300円)」「いくら1パック(800円)」「マグロのたたき2パック(800円)」
計1,900円
2番手:安藤
「ズワイガニ」「いくら」「ホタテ」「赤えび」「釜揚げしらす」「釜揚げ桜えび」「バチマグロ(800円)」※バチマグロ以外の食材は併せて1,000円。
計1,800円
3番手:山口
「生しらす(500円)」「生桜えび(500円)」「かつお(1,000円)」
計2,000円
続いては仕入れた食材をどんぶりにして、「どこが最強なのか」をアピールするプレゼンタイム。最強の海鮮丼にふさわしい材料も多いので、いまからプレゼンが楽しみです。
それでは、いまからオフィスに向かいます。みなさん少々お待ちください。