掛川の文房具カフェ「konohi(コノヒ)」
遊び心のあるレトロで店内で静かな時間を
モノだけでなく、長く暮らしに根付いてきた風習とか、文化とか。あるいは、人に対する細かい気配りだとか。
そういったものをぜーんぶ、大切にしたいなあ。そんな気持ちになれるひとときを過ごせるカフェに出逢いました。
掛川市の「stationery cafe konohi(ステーショナリーカフェコノヒ)」。天竜浜名湖鉄道・いこいの広場駅からすぐのところにある、西洋風の古い小学校のような建物です。
店名の直訳は、すなわち文房具カフェ。国内外からセレクトした文房具とカフェが調和した、印象的な佇まいに惹きこまれる空間です。
遊び心のあるアナログ調の店内
入口の引き戸を開けてすぐのところに並ぶ、ガラスペンやつけペン用インク。
「今日というこの日を大切に過ごしてほしい」
姉妹で営むコノヒには、そんな想いが込められているそう。姉の吉川暢子さんは文房具、妹の育美さんは調理を担当(主に)していますが、全体としておふたりでの共同作業です。
取材者として表現するうえで失礼かもしれませんが、その姉妹がとても癒されるキャラクターで……。おふたりの客に対する姿勢がそのまま、屋号にリンクしている気がしました。
上の写真は2階の様子。おもりのついた紐を引くと、1階のキッチンにいるおふたりにつながり、呼べる仕掛けです。このアナログ感がなんともいえません。
建物は3年前のオープンに際して新築されたもの。なんとなく、異国の修道院のような趣もあります。
あえてエイジングを施した壁だったり、実験室のような小部屋もあったり。細かく見ていくといろいろな遊びに気付きます。
時代を超えて愛されてきた国内外の文房具
雑貨が並ぶ日常品類も、レトロで雰囲気のあるものばかり。文房具はガラスペンやハサミ、マスキングテープやスタンプ、紙モノまでさまざまですが、海外から買い付けたものが中心です。
手紙に封をする際に赤い蝋を垂らし、その上から押すことで封蝋印ができる「シーリングスタンプ」。
古いヨーロッパの映画などで見たことがあります。向こうではいまでもこういう文化が残っているようですね。
「日本では郵便局で機械に通す際、印が擦れて消えてしまうみたい……。だから相手に手渡しできるときに限るかな」
と、オーナーの暢子さん。手紙だけでなく、プレセントのラッピングやパッケージングにも使えそう。気品や高級感を演出するのにぴったりです。
こちらはkonohiオリジナルのビンテージ・ノート。半世紀前に発行されたドイツの本を、表紙や見返しはそのままに、装丁修復の技術で紙を入れ替えています。鉛筆やインクで書きやすい紙です。
中世の時代から続く手織式の製本機で、一つひとつ丁寧に手づくり。単なる手づくりではなく、古くなったものに新しい息吹を与えた形です。
温故知新……ってこういうことだよなぁ、と。しみじみ感じた次第です。
家製パン&スープの味わいに、ほっ。
カフェメニューは自家製スープやホットサンド、手作りスイーツなどを提供しています。
ドリンクは有機茶葉をベースにしたスウェーデンの紅茶「TE HANDEL」や和紅茶、豆と焙煎にこだわったコーヒーなど。
看板メニュー「スープとパンのセット(税込み750円)」。白いちじくとクリームチーズのプチパン、山ぶどうのブリオッシュ。
スープはハーブとスパイスをちょっぴり効かせたオニオンスープで、丁寧なホームメイドの味わいにほっとします。
ハーブティーが苦手な人でも飲みやすい「ひとときティー(秘密のお砂糖入り)」。香りが心地よく鼻に抜けていきます。
ハーブはレモングラスとペパーミント。“秘密のお砂糖”が飲みやすく感じる要因だと思ったので、その正体を尋ねてみました。
「秘密です」
……ですよね。だって秘密のお砂糖だもの。
妹の育美さんが作る焼き菓子の販売もあります。素朴でやさしい味わいをぜひ試してみてください。
個性豊かな文房具と、手づくりの温かみに触れる空間。せわしなく過ぎる日常、その些細な時間も大切にしようと思う、癒しのひとときでした。