思い出に寄り添うような優しさ
ふわふわかき氷が一年中楽しめる甘味処「chuan」
入道雲、ひまわり、スイカ、花火、蚊取り線香。夏を連想させる言葉は、他の季節より多いような気がする。かき氷だってそうだ。扇風機の生ぬるい風を浴びながら食べた冷たいかき氷。夏の思い出の一部となっているかき氷は、私たちの「夏」という記憶に寄り添ってくれているのかもしれない。
一年中かき氷を楽しめる甘味処「chuan(チュアン)」。果肉たっぷりの自家製ソースやインパクトのある見た目を楽しめるエスプーマ※など、さまざまなかき氷を楽しめます。そんなchuanの全容を調査してきました。
※スペイン語で「泡」を意味し、食材やソースを専用の器具に入れて泡状にする手法のこと
街の中心街に佇む甘味処
静岡駅から歩くこと10分。青葉シンボルロードを青葉通交番に向かって歩き、道路を挟んだ右手に見えてくるのがchuanです。
店内はカウンターとテーブル合わせて10席ほど。カウンターにはかき氷や白クマなど可愛らしい小物が並んでいます。
外には4人掛けのテラス席。街の景色を見ながら食べるのも良さそうです。
暑い日には行列ができ、混んでいるときは1時間以上待つことも…! 午前中であれば、比較的並ばずに食べることができますよ。
ちなみに開業して今年で5年目を迎えるchuanは、昨年から開催されている「静岡 茶氷プロジェクト※」に参加しているお店のひとつ。プロジェクトの参加店舗数は12店舗から30店舗に増え、かき氷の人気を物語っています。
※茶氷プロジェクト:それぞれの産地のお茶を使った「茶氷」メニューを販売するイベント。静岡県中部エリア5市2町(静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、吉田町、川根本町)のお茶カフェや飲食店30店舗(フェス限定店舗含む)が参加。2019年7月1日(月)〜9月30日(月)まで開催される。
呉服町通りには茶氷プロジェクトの旗も飾られていました
静岡の特産品はお茶やみかんだけではない
chuanの特徴は、かき氷に静岡の特産品を使っていること。抹茶やほうじ茶はもちろん、季節限定で販売されているメニューの食材もすべて静岡産の材料を使用。
期間限定メニューは毎年ほぼ同じものですが、シロップのかけ具合や果物ののせ方などを工夫し、改良を重ねています。
練乳ホイップは+100円でトッピングできます
今回いただいたのが、静岡抹茶氷+練乳ホイップのせ(600円・税込)。抹茶の味が濃いのですが、かき氷で味わっているからかそこまで苦みはなく、パクパクと食べすすめられます。
上にかけられたムースと一緒に食べると、抹茶の苦みとムースの甘さの絶妙なハーモニーが楽しめます。氷のシャリッとした食感とクリーミーなムースの食感の違いも楽しいです。
ゴロッとした桃は食べ応え抜群!
次にいただいたのは、桃のかき氷(800円・税込)。先ほどの抹茶氷と比べると、さっぱりとした味わいに仕上がっています。トロッとした桃のシロップはもちろん、添えられている桃の果肉がみずみずしく、食べ応え抜群! 氷の下にも桃があるので、食べ終わってしまう悲しむ心配もありません。
ところで、皆さんは桃が静岡の特産品なのをご存知でしょうか? 実は、静岡は全国でも一、二を誇る“早出し※”の桃の産地なのです。
たとえば、早出しの桃として有名な「広野の桃」は、静岡市駿河区の長田地区で作られています。一般的な桃は7月が旬と言われていますが、広野の桃は5月下旬~6月下旬と1か月ほど旬が早いのです。
chuan店主 野村さん
ただし、一等品とされる桃は、東京や名古屋などの都市部に出荷されてしまうため、市内での流通はあまり多くありません。都心では1個500円ほどの高値がつくこともあるとか。
chuanの桃のかき氷には、この広野の桃をふんだんに使っているのです。美味しくないはずがない…。
※早出し:農作物を時期より早く出荷すること
老若男女、誰もが楽しめるものを
かき氷を食べて、頭が「キーン」となった経験はありませんか? あの頭の痛みは、「アイスクリーム頭痛」とよばれています。名前とは裏腹に痛みは全然可愛くない…。
でもchuanのかき氷は食べても痛くなりませんでした。一体なぜなのか、chuanの店主である野村さんにお話を伺ってみました。
――かき氷を食べると頭が痛くなることが多いんですが、今日は二杯も食べたのに全然平気でした。これは一体なぜでしょうか?
野村 |
頭がキーンとならない理由は、氷の「温度」と「削り方」です。氷が冷たすぎたり削り方が粗かったりすると、頭が痛くなってしまうんですよ。口のなかでふわっと溶けるように、氷は-2℃で管理し、細かく削るようにしています。
また、トッピングをのせたとき氷が溶けないように、果物やシロップも近い温度で管理しています。 |
――天然氷を使っているから頭が痛くならないのかと思っていました。氷はもちろん、果物の管理が難しそうですね。
野村 |
特に、期間限定メニューには旬の食材を使いたいと思っているのですが、どうしても天候に左右されてしまいます。実が熟しているかどうかも一つひとつ違うので、自分で確認して、使うタイミングを調整していますね。 |
かき氷は夏に食べるのが“粋”な気もしますが、これはちょっとナンセンス。野村さん曰く、「夏前の4・5月や冬の時期がおすすめ」とのこと。氷が気温の影響を受けにくく、より細かく削れるので、口当たりがよく滑らかな味わいに仕上がるそうです。
これまで「かき氷なら何杯でもいける!」と言っている方の気が知れなかったのですが、正露丸を常に持ち歩いている私でもぺろっといけちゃいました。美味しいかき氷は何杯でも食べられる…。
静岡の特産品をふんだんに使ったかき氷が楽しめるchuan。「老若男女が楽しめるお店にしたい」と野村さんは語ります。ひんやりと冷たいかき氷は、子どもから大人まで、皆の思い出に残る優しいスイーツなのかもしれません。令和最初の夏、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。