バーの扉は思っていたよりも軽い?
「HATERUMA」で“とっておきの一杯”に出会う予感
かつては東海道の宿場町、三嶋大社の門前町として栄えた三島市中央町。三島駅と三嶋大社を結ぶそのエリアには、昔ながらの洋品店や金物屋が軒を連ねる商店街があります。
60余年の歴史を持つこの商店街。各店をゆっくり眺めながら三嶋大社方面に歩くと、テラスと大きなガラス窓が開放的な印象を与える「HATERUMA WINE & DINING(ハテルマ ワイン&ダイニング)」に到着します。
東海道の門前町、商店街にあるワインダイニング
店先に置かれたワイン樽、整列したワインボトルに、美食の予感がひしひしと!
2012年のオープンから6年間、国道136号沿いに店を構えていた「hateruma」が、三島市中央町に「HATERUMA WINE & DINING」として移転したのは昨年のことです。
間接照明が照らす店内へ入るとまず目に飛び込むのが、大きめに取られたカウンターテーブル。
そして目の前に広がるボトルの数々! 豊富な種類のワインのみでなく、ウイスキーやリキュール各種、幅広いラインナップに胸が高鳴ります。
座り心地のいいソファ席もあり、友人との話に花が咲きそうです。
ワイン好きのため、だけじゃないお酒
とはいえ、ずらりと並ぶお酒の数々、「飲兵衛に見えてじつは果てしなく下戸」という私などは少し尻込みしてしまいそうな雰囲気・・・。
でも、お酒を飲めない方や、苦手な方でも大丈夫。
店長・田村さんは、美容師からバーテンダー、その後出会った一杯のイタリアンワインの影響でソムリエの資格まで取ったという変わった経歴の持ち主です。
ソムリエの方といえば、胸元にキラリと光るバッジが醸し出す重厚なオーラ。お酒の知識が皆無な私なんて、お話すらできない雲の上の人かと思っていました。
しかしカウンターに立つ田村さんの胸元に、バッジは付けられていません。
「なんでも気軽に聞いて欲しいから」と、くしゃっと笑う田村さん。
いろいろなお酒が置いてあるのでワインが苦手な方でも自分の好きなお酒が見つかるかもしれないし、ノンアルコールカクテルの種類も大変豊富なのでまったく飲めない方でも楽しめます!
「こんなドリンクが飲みたい」と、ひとこと田村さんに伝えてみてください。自分のペースで、自分の好きなように、自分のための時間を過ごすことができます。
「ヨーロッパのお母さんの手料理」で地産地消
こだわりはお酒だけではありません。飲み歩き・食べ歩きが趣味という店長・田村さんは、お酒に合うお料理にも精通しています。
ベースはイタリア・フランス・スペイン料理にあるものの、特定の食スタイルにこだわらず「ヨーロッパのお母さんの手料理」のようなメニューを提供しています。
こちらは「箱根山麓豚のローストと三島馬鈴薯のマッシュポテト(税込1,706円)」。野菜と一緒にローストされた豚の甘みが際立ち、シンプルなのに丁寧、飲み込むのが惜しいほどの旨みを噛み締めます。
目にも鮮やかな「彩り野菜タワー アンチョビソース添え(1,380円/税込)」には、目も舌もお腹も大満足。切り方が工夫されており、食感がひと口ごと劇的に変わるため、最後までじっくりと味わうことができます。
実際に体験してみた!「ふらっとひとり飲み」
時刻は22時30分、人の行き交いで賑わう週末の三島市中央町。柔らかな灯りの照明が照らすHATERUMAのドアは開放されており、するっと店内にお邪魔します。
私はお酒があまり強くありません。ワインは一杯が限度!
さっそくカウンター席に腰掛け、田村さんと会話をしながら、“一杯”を注文します。
「今日は白の気分です。前に飲んだときに、フランスのブルゴーニュ地方のワインをおいしいと思いました。自然派で野性っぽい感じの・・・あ、酸味も好きです。」
好きなワインの銘柄やブドウの種類がわかればその名前を。もしわからなくても、いつも家で飲んでいるワインのラベルを写メで撮って見せるだけでもいいんです。
それに似たものをオススメしてくれたり、もしお店に好みに合うものがなかった場合も、わざわざ似たものを仕入れまでしてくれるというのだから、脱帽。
そして「前菜4種(一人前〜1,380円)」も注文。ローストビーフ、パテドカンパーニュ、海のマリネ、レバーパテ。真ん中にはグリーンリーフ、紫キャベツのマリネ、キャロットラペ。
田村さんが選んでくれたフランス・ローニュ地方の白ワインは、なんだか華やかな果実と白い花の香りのする、爽やかな一杯。ワインと共に提供される、シャキシャキという食感が楽しい、さっぱりとしたお野菜のマリネが嬉しいです。
さて、まずはパデドカンパーニュをひと口。じんわりと口に広がる上質な肉の脂、鼻に抜ける甘みにうっとり。丁寧な手仕事を感じさせる一品に言葉も失い、ため息にも近い声が漏れます。
なによりも驚いたのは、ふらっとひとり飲みの敷居が思っていた以上に低かったこと。構えていたぶん拍子抜けしました。
雨音を聞きながら物思いにふけるもよし、田村さんがお酒を準備する、その丁寧な一動作一動作を見つめているだけでも、あっという間に時間が過ぎていきます。
少し躊躇してしまいがちな、理由なく重く感じることもあるバーの扉。
「お店を出るときに、お客様の帰りの扉が軽くなるように」。料理やお酒を通して表現されたHATERUMAの徹底した信念と、カウンター越しの店長・田村さんとの会話で、帰りの扉も、足取りすらも軽くなります。
日常的な夜があなたにとって特別な一夜になるかもしれないし、苦手だったお酒が“とっておきの一杯”に変わる瞬間に、出会えるかもしれません。なんだかそんな、予感がしました。