あの「生クリーム大福」元祖はここだった!?
地域寄り添う人気お菓子屋「菓匠あさおか」
こんにちは。ライターのこうだです。
掛川市に暮らし、静岡市に通学中の身ですが、どちらでもない周智郡森町の情報をお届けします。
とはいえ、私と森町との関りは全くないことはなく、高校生のときに吹奏楽部員として何回か練習に行っていました。
そんなわけで取材に伺ったのは、練習で使わせてもらった「森町文化会館ミキホール」……?
ではなく、森町文化会館ミキホールのすぐ近くにある「菓匠あさおか」です!!
外観に大きく「生クリーム大福」と書いてありますが、菓匠あさおかは和菓子から洋菓子まで、さまざまなスイーツを取り扱うお菓子屋さん。
私が森町に行ったときには必ず立ち寄ります。取材には店主の奥様にあたる浅岡弘子さんが応じてくださりました。
私にとっての「菓匠あさおか」
写真左が菓匠あさおかの浅岡弘子さん。
お店のことを聞く前に、私と菓匠あさおかさんとの思い出を浅岡に聞いてもらいました。あとのお話にも少し出てくるのですが、お菓子屋さんで人それぞれの思い出ができることって多いみたいです。
甲田 |
あさおかさんは高校生のとき、部活動でミキホールを使った帰りにいつも寄っていました。後輩もつい最近ミキホールへ練習に行ったそうで、そのときは顧問の先生からあさおかさんのお菓子を差し入れしてもらったと話していました。 |
浅岡 |
そうだったんだね。いつも先生はお菓子を買っていってくれますよね。 |
甲田 |
覚えているんですね! 私にとってあさおかさんのお菓子はごほうびでした。 |
ちなみにこのとき、浅岡は先生の名前を言い当て、しばらくその先生の話で盛り上がりました。後輩にも聞かせてあげたかったくらいです。
甲田 |
あと私が実際に寄ってみる前から、母が森町に行くと絶対に「シュー太郎」を買って帰るんですよね。 |
このシュー太郎、注文後にクリームを詰めてもらえるんです!
浅岡 |
そうなのかー。懐かしい味なんだね。 |
甲田 |
小学校、中学校のころは、私自身が森町に行くことは少なかったんですけど、あさおかという名前はずっと記憶に残っていました。高校生になるとお隣のミキホールに行くようになって。 |
浅岡 |
「ああ、ここじゃーん!」みたいな! |
甲田 |
はい! そこでつながりましたね。 |
浅岡 |
つながったね。やっぱり実際に見ると印象は深くなるよね。 |
甲田 |
また行きたくなりますよね。今日取材に行くことを父がいつの間にか知ったらしくて、出かけるときにシュー太郎を買うように言っていました。みんな楽しみにしているんです。 |
浅岡 |
ありがとうございます。家族みんなで楽しんでくれるんだね。 |
お仕事中の店主さんもときどき様子を見に来てくれました。
このとき店主さんと私の父に親睦があると発覚して盛り上がったのですが、それはまた別のお話ですね。
「生クリーム大福」が看板商品になるまで
さてさて、菓匠あさおかさんの看板商品といえば「生クリーム大福」。地元では「あさおか=生クリーム大福」と言ってもいいほど知れ渡っています。でも昔からあるわけではなかったんです。
看板商品の「生クリーム大福」。 画像提供:菓匠あさおか
甲田 |
ホームページを拝見して気になったことですが、生クリーム大福は平成7年(1995年)に3代目の店主さんが販売を始めたんですよね。 |
浅岡 |
そうですね。もう23年も経ちました。ちなみに3代目はいまも店主を務めていて、4代目は役員として勤務していますよ。 |
甲田 |
生クリーム大福を作るきっかけはどうでしょうか? |
浅岡 |
いま3代目って言ったけど、2代目の80過ぎのおじいちゃんは、森町の明治町っていうところで卸業者をしてたの。
その人のときにいまの場所に引っ越してきて、卸しは多少するけど、自分のお店でお菓子を売り始めたんですよね。
3代目はそのあとを継いで入って、「この先、伸びていくためにはなにか新しいお菓子を……」って思っていたんだけど、なかなかヒット商品って難しいじゃんね。 |
甲田 |
そうですね……。 |
画像提供:菓匠あさおか
浅岡 |
こっちはすごくおいしいもの作ってるつもりでも、お客さんに広めるっていうのはすごく大変で。
なんかいいものないかなっていうときに、いしだ茶屋さん※の社長さんが「生クリーム大福っていうお菓子があるんだけど、それ作れる?」っていう話を持ってきてくれて。「なんだそれはー!?」みたいな。 |
甲田 |
急展開ですね。 |
浅岡 |
「どんなお菓子なんだ?」っていう話で試行錯誤を重ねたら、出来上がったは出来上がったんだけど最初はやっぱり売れないんだよね。 |
甲田 |
いま食べてる側としては、普通においしいなって思って食べてるんですけど、なかなか和菓子に生クリームって合わせないものですよね。 |
浅岡 |
そうなんですよね。当時は静岡県西部では生クリーム大福を誰も売ってなくって、言ってもわかってもらえない。全然売れなかったから、来る人みんなに無料で食べてもらったんですよ。そしたら「おいしいじゃん!」ってなって。 |
いしだ茶屋さん:いしだ茶屋。あさおかと同じく森町に構えるお茶販売店。「お茶ソフトクリーム」をはじめとしたスイーツも人気。
浅岡 |
それから周りでちょっと知れ渡ってきたときに、コンビニが生クリーム大福を始めて。普通でいうと「うちのは売れなくなっちゃうじゃん!」って思うよね。 |
甲田 |
そうですね。 |
浅岡 |
ところが、コンビニがうちを宣伝してくれたわけ。 |
甲田 |
すごい! なんだか意外です。 |
浅岡 |
「生クリーム大福っておいしいじゃん! だけど、知ってる? あっちにもっとおいしいのがあるんだよ!」っていう話になってくれたらしくて。そこから遠くからも人が来てくれるようになって。 |
甲田 |
生クリーム大福が売れたきっかけとして、地域とのつながりが大きかったんですね! これほど苦労話が詰まっていたなんて、全然知りませんでした。 |
お菓子作りのやりがいは、お菓子が残す思い出
甲田 |
個人的に気になったことを伺いたいのですが。お菓子を扱う仕事って女子が一度は憧れると思っていて、お菓子屋さんならではのやりがいを教えてほしいです。 |
浅岡 |
学校でお菓子作りの講師をやった関係でうちへ勤めに来てくれた子もいるし、それも嬉しいじゃんね。お菓子が将来の仕事を決めたのも嬉しいし。 |
浅岡 |
……あとはやっぱりみんなが喜んでくれることですよね。リピーターがいらっしゃるってことは、それだけ喜んで買っていってくれるっていうことで。
いまは高校生になる子だと思うんだけど、お誕生日ケーキの代わりに味噌まんじゅうをお盆に山にするんだって。 |
甲田 |
えっ! すごい(笑)想像できない。 |
浅岡 |
そういう子もいたりして。いろんな家庭の楽しみ方を聞けたりすると「そうなのー」って盛り上がったりする。 |
甲田 |
聞いてるほうも楽しい気分になりますね。ありがとうございました! |
「地域に寄り添うことを大事にしている」と語ったくださった浅岡さん。ニーズを追うことに苦しんだ経験も多いはずですが、明るくふるまう姿が印象的でした!
商品だけではなく、その人柄も人気を集めているはず。取材後、近くにいたお客さんが生クリーム大福を買っていくのを見て、私も嬉しい気分になったのは秘密です・・・。